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第10章:綱成くん、その首頂戴な【北条綱成撃破】
機動防御で地黄八幡を蹴っ飛ばす
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1551年9月中旬
申の刻(午後4時)
茂林寺西方1里
東雲尚政(どんどん頭だけ成長していく狐)
散在する薄の繁みに隠れ、40名で編成された小隊が、所々で近づいた敵に種子島を放つ。
早合3つを撃ち尽くすと後退。
この繰り返し。
だがこの平地では馬は隠せない。
よって、次第に対抗策が練られ包囲されないように1射したら後退するようになってきた。
やはり柔軟性があるな。地黄八幡とはよく言ったものだ。地力がある。
あと1里は後退する余地はある。このまま続けてもよいが、そろそろ陽が沈む。
あと半刻もすれば逢魔が刻だ。敵も味方も相手が見えにくくなる。
さて、どちらに有利になる?
射撃の方が不利なことは承知。
徐々に敵の陣形が変化してきた。
二つの魚鱗が前面に作られつつある。
これは……殿が言っていた「ぱんつぁーかいる」という陣形か?
それとよく似ている。
こちらの少数に分かれた射撃陣に対応したのか?
だがあれは、こちらが固定した陣であることが条件だ。
一応、今までの方式を改めた方がよさそうだな。
うううむ。
やはりこういう時は殿だったらどうするか、そう考えてみるか。
「敵さんの気持ちになること大事」
と言っていた。
綱成は後背を由良・佐野・太田に慕われ(追われ)、殿軍が戦いつつこちらへ向かってきている。
前進するしかないのだ。
一番怖いのは立ち止まること。
そして兵が浮足立つこと。
このどちらかを敵に起こさせれば、進退窮まるに違いない。
このまま後退していいのか?
同じことの繰り返し。
相手は安心するに違いない。
ならば、意表を突くしかない。
何処を衝く?
側面は駄目だ。
直ぐ対応される。
何度もやっているのでもう効果はない。
では……
これだ!!!!
「総員。傾注!
これより敵、殿軍に横槍を入れる!
乗馬して敵の北側を全速で機動! 殿軍を崩し、お味方に敵の尻を後ろから思い切り蹴飛ばしてもらうっ!!
さあ、お楽しみはこれからだ!!!!」
300騎の1里迂回、大反撃が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
同日酉の刻(午後5時)
茂林寺西方半里
太田資正(やっと出た道灌様の子孫)
やばいぜ。
もう夕刻だ。
夕日を背にしている敵の方が有利だな。
あの殿軍はしぶとい。
綱成直轄の陣か?
馬印がないところを見ると本人はいないようだが。
だがもう500の兵が400位にすり減ったようだ。
普通なら潰走しているだろうな。
陽が落ちる。
逢魔が刻だ。
周囲が見えにくい。
突進すれば崩せるかもしれんが、その後の取りまとめが大変じゃい。
どうすべ。
その時、右手より多数の騎馬が敵の殿軍に近づき……
轟音!
あれは先ほどから聞こえていた種子島か!? 6列の縦列が敵の左翼に近づき横列になり発砲。
その後1列ごとにそのまま乗馬したまま発砲、元へと戻ってゆく。
その数300ほど。
6回の火縄銃の連続射撃。
瞬く間に敵の殿軍が潰走した。
この機を逃すような俺様じゃねえ。
「全員。突撃!
目の前の敵、1匹たりとも逃がすんじゃねえ! 追い散らして敵の本隊も崩しちゃれ!!」
味方が逃げ込めば、その備えはめっぽう弱くなるのが常識だ。
「お前もいっちゃれ!」
儂は足元で座っていたソレに声をかける。
ソレは物凄い勢いで走り去った。
自分の顔が獰猛になっているのがわかるぜ。
ここが先途だぞい!
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻
赤岩の渡し東方5町
北条綱成(自信過剰な、あ、一応実力伴っているけど相手が悪すぎる超有能部将)
追いつかれた。
殿の玉縄衆が崩れた。あの騎馬隊が散らばって引き返したのは、北側を回り込むためであったか。殿の横から種子島を放ちおった。
逢魔が刻で発見が遅れたか。
完全な奇襲となった。
もう前進するしかない。
残りの精鋭玉縄衆200を先鋒に渡し場を占領。その後背水の陣にて夜間を過ごすしかない。
儂としたことが何たるざまよ。物見をもっと増やすべきだったか?
「敵300。
前方より近づきつつあり!
長柄です!!」
長柄でのぶったたき合いか。
玉縄衆なら押し通れる。
陽が落ちるまでに決着をつけてやる。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻同場所
後藤透徹
「おおお!
あそこに見えるは地黄八幡・網成の首!!!!
儂が獲ったる。
待っとれよ~~~~~!!」
申の刻(午後4時)
茂林寺西方1里
東雲尚政(どんどん頭だけ成長していく狐)
散在する薄の繁みに隠れ、40名で編成された小隊が、所々で近づいた敵に種子島を放つ。
早合3つを撃ち尽くすと後退。
この繰り返し。
だがこの平地では馬は隠せない。
よって、次第に対抗策が練られ包囲されないように1射したら後退するようになってきた。
やはり柔軟性があるな。地黄八幡とはよく言ったものだ。地力がある。
あと1里は後退する余地はある。このまま続けてもよいが、そろそろ陽が沈む。
あと半刻もすれば逢魔が刻だ。敵も味方も相手が見えにくくなる。
さて、どちらに有利になる?
射撃の方が不利なことは承知。
徐々に敵の陣形が変化してきた。
二つの魚鱗が前面に作られつつある。
これは……殿が言っていた「ぱんつぁーかいる」という陣形か?
それとよく似ている。
こちらの少数に分かれた射撃陣に対応したのか?
だがあれは、こちらが固定した陣であることが条件だ。
一応、今までの方式を改めた方がよさそうだな。
うううむ。
やはりこういう時は殿だったらどうするか、そう考えてみるか。
「敵さんの気持ちになること大事」
と言っていた。
綱成は後背を由良・佐野・太田に慕われ(追われ)、殿軍が戦いつつこちらへ向かってきている。
前進するしかないのだ。
一番怖いのは立ち止まること。
そして兵が浮足立つこと。
このどちらかを敵に起こさせれば、進退窮まるに違いない。
このまま後退していいのか?
同じことの繰り返し。
相手は安心するに違いない。
ならば、意表を突くしかない。
何処を衝く?
側面は駄目だ。
直ぐ対応される。
何度もやっているのでもう効果はない。
では……
これだ!!!!
「総員。傾注!
これより敵、殿軍に横槍を入れる!
乗馬して敵の北側を全速で機動! 殿軍を崩し、お味方に敵の尻を後ろから思い切り蹴飛ばしてもらうっ!!
さあ、お楽しみはこれからだ!!!!」
300騎の1里迂回、大反撃が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
同日酉の刻(午後5時)
茂林寺西方半里
太田資正(やっと出た道灌様の子孫)
やばいぜ。
もう夕刻だ。
夕日を背にしている敵の方が有利だな。
あの殿軍はしぶとい。
綱成直轄の陣か?
馬印がないところを見ると本人はいないようだが。
だがもう500の兵が400位にすり減ったようだ。
普通なら潰走しているだろうな。
陽が落ちる。
逢魔が刻だ。
周囲が見えにくい。
突進すれば崩せるかもしれんが、その後の取りまとめが大変じゃい。
どうすべ。
その時、右手より多数の騎馬が敵の殿軍に近づき……
轟音!
あれは先ほどから聞こえていた種子島か!? 6列の縦列が敵の左翼に近づき横列になり発砲。
その後1列ごとにそのまま乗馬したまま発砲、元へと戻ってゆく。
その数300ほど。
6回の火縄銃の連続射撃。
瞬く間に敵の殿軍が潰走した。
この機を逃すような俺様じゃねえ。
「全員。突撃!
目の前の敵、1匹たりとも逃がすんじゃねえ! 追い散らして敵の本隊も崩しちゃれ!!」
味方が逃げ込めば、その備えはめっぽう弱くなるのが常識だ。
「お前もいっちゃれ!」
儂は足元で座っていたソレに声をかける。
ソレは物凄い勢いで走り去った。
自分の顔が獰猛になっているのがわかるぜ。
ここが先途だぞい!
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻
赤岩の渡し東方5町
北条綱成(自信過剰な、あ、一応実力伴っているけど相手が悪すぎる超有能部将)
追いつかれた。
殿の玉縄衆が崩れた。あの騎馬隊が散らばって引き返したのは、北側を回り込むためであったか。殿の横から種子島を放ちおった。
逢魔が刻で発見が遅れたか。
完全な奇襲となった。
もう前進するしかない。
残りの精鋭玉縄衆200を先鋒に渡し場を占領。その後背水の陣にて夜間を過ごすしかない。
儂としたことが何たるざまよ。物見をもっと増やすべきだったか?
「敵300。
前方より近づきつつあり!
長柄です!!」
長柄でのぶったたき合いか。
玉縄衆なら押し通れる。
陽が落ちるまでに決着をつけてやる。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻同場所
後藤透徹
「おおお!
あそこに見えるは地黄八幡・網成の首!!!!
儂が獲ったる。
待っとれよ~~~~~!!」
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