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第8章:嫁取り物語~
あの城作るぞ!
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1548年9月上旬
上野国那波城
瀬川正則(甲斐性無しの事務屋の仕事馬鹿)
殿のお達しに依り、旧那波領の内政全般を差配するよう仰せつかった。
そろそろ親父殿から離れて独立した仕事をこなしたいと望んでいたため、喜び勇んで那波へ来た。
家臣は1名連れてきたが、もう60を過ぎた老臣なので頭が固く書類整理しかできないだろう。代わりとして公園から飛び切り優秀な行政官を寄こすという。
そのものが目の前で三つ指をついて挨拶をする。
「華蔵寺公園から参りました。
まつ、と、申します。
どうぞお仕事の事をお申しつけくださいませ」
まさか女子が来るとは思っていなかった。だが殿のお墨付きがあるくらいだ。きっと仕事はできるのであろう。
此度は実務の研修という事だ。1~2年すれば殿の祐筆(行政書士のような仕事)として、戻るのであろう。
「で、では、これより殿による旧那波家臣と各地の庄屋への仕置をする。
祐筆をいたせ」
◇ ◇ ◇ ◇
「まずはね。新田昌淳くん!
那波を落とした功で、楽隠居~。でかい城郭付きお寺さん。華蔵寺で好きな本、いっぱい読んで楽して暮らしてね~。その代わり良い本一杯集めてね♪」
「ありがたき幸せ」
真田殿が、うんうんと嬉しそうに頷いている。調略の際に、この条件で、との合意をしたらしい。
子息は武将としてよりも内政をしたいと珍しいことを希望するため、私の下で様々な仕事をすることになっている。
「つぎは~~~。……」
殿が次々と旧家臣と各集落の長(庄屋と名付けられた)に対して、配置・村集落の年貢や賦役を確認していく。
まつはそれを確実に記述して整理していた。
なかなかの美形……コホン……
◇ ◇ ◇ ◇
同日評定後
長野政影
(政賢君のボヤキを聞く係り)
「つくづく思い知ったなぁ。
人間の暮らしと幸せって、人それぞれでただ単に数字で測れるもんじゃあないなって。領地の広さ石高や収入が増えても嬉しい人もいれば負担に思う人もいるんだって。
でも領主のできることは限られているから、出来る限りの富を増やす努力をするしかないのかな。領土を増やすとか銭増やすとかすればいいけど、それだと他の領土を切り取るとかなっちゃうし。
だから生産力を増やす!
効率を良くする!
間違ってはいないと思う。人は働いて結果が出せ、人のためになって初めて幸せなんだと思うんだよね。でもそれを邪魔する仕組みそのものを破壊しないと、本当の幸せをつかむのは難しいんだろうなぁ」
奥の居室へ帰る道すがら、殿は誰にいうでもなく呟いていた。今回の那波城調略の際に出された新田殿への褒美に、改めて感じるところがあったらしい。
また、那波の領土の荒廃ぶりを見て、これに一役買ってしまった自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
「こんな戦の世の中で、幸せと生きる喜びを見つけるのは大変だねぇ。
でも。それでも!
人間って暗闇の中で小さな光があればそれを明るいと思えるんだろうなぁ。
そんな明かりを灯すのが僕の役目なのかな? この世に生まれさせてくれた恩返しか。せめて自分の周りにいる人くらいは幸せを感じて欲しいな。皆が明るい光を目指せる大胡にはしたいなぁ」
殿はいつになく饒舌だ、しかも真面目にしゃべっておられる。初めての大きな戦に気が立っておられるのであろう。
「でも一人の人間としてこの世を動かそうとするのは簡単じゃあないよ、げえむとちがって。人間、何年たっても学ぶところが多いなぁ。感謝です、ハイ」
げえむというのが何かは知らないが、もしかしたら悪夢を見てうなされているときに、そのげえむとやらで学ばれているのであろうか?
そのような事は些細な事。
今重要なことは、殿が皆の幸せを願い、常にそれを目標として行動している事だけがわかればよい。
そう胸に刻み込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
1548年10月上旬
上野国那波城
真田幸綱(上田城を夢想する昌幸のおとうちゃん)
「いやぁ~。
何度見てもここいら辺りは平地だね~。赤城榛名があんなに遠いぃ~~~」
殿が、何度目かの感嘆の声を上げる。急造ではあるが臨時の櫓を作り、四方を見下ろせる3重の建物を作った。雨露を凌げる程度じゃが。
これから那波城の防備を固めるという。縄張りの概略を記した見取り図を見て、ぶったまげた。
(儂もいささか上州訛りがうつってきたか)
今までの城郭の常識を全く覆すものであった。
「ここね。2年くらいで20000の大軍でも跳ね返せる城にしちゃいましょ~。でね、城代はとりあえず真田一族!」
「はっ。ありがたき幸せ」
この城は北条方へのにらみを利かせ、利根川・広瀬川・桃ノ木川の交通の安全を確保するための要衝となる。
北条方が南から攻めるとすれば、ここを通らねばならぬ。通らぬとすれば殿の親族である厩橋城を落とさねば大胡までこれぬ。
東は新田の由良殿の領地。
これで防備は整うはず。
儂はこの城の縄張りを任された。大まかな縄張りは殿の着想じゃが。その構造を知悉するものが、城主城代になるのが普通。信州上田ではないが、儂の城となるかもしれん。本腰を入れて、一世一代の堅城にせねば。
上田に城を作るときにはここよりも、もっと堅城に。
そのための精進だ!
「平地でもね。いいお城作れると思うよ~。
お城はネットワー……うん、連携して初めて威力を発揮するから。でね、ここと大胡・上泉城をハイウェイでつなぐの」
「はいうえいとは?」
殿は右の人差し指を口の端に当て、上を向いて一瞬考えたのちこうおっしゃられた。
「棒道、かな?
できるだけ速く移動できるように、真っ直ぐな道路を作るんだ~。大分製鉄用のコークス作れるようになったので、タールが出ちゃうからこれと煉瓦で舗装、凸凹のない道にしようかなって」
つまり北条方がどこに来ても、戦力を集中できるようにするという事か。
「内線作戦っていうんだ♪
各個撃破、あーとおぶうぉ~~~~!
しゅりーふぇ~ん!」
「で、殿。この城の見取り図にある空白ですが……」
儂は、途方もない玩具を与えられた餓鬼じゃな。殿の戯言も耳に入らず、城の構造に夢中になっていた。
幸せものじゃ。
上野国那波城
瀬川正則(甲斐性無しの事務屋の仕事馬鹿)
殿のお達しに依り、旧那波領の内政全般を差配するよう仰せつかった。
そろそろ親父殿から離れて独立した仕事をこなしたいと望んでいたため、喜び勇んで那波へ来た。
家臣は1名連れてきたが、もう60を過ぎた老臣なので頭が固く書類整理しかできないだろう。代わりとして公園から飛び切り優秀な行政官を寄こすという。
そのものが目の前で三つ指をついて挨拶をする。
「華蔵寺公園から参りました。
まつ、と、申します。
どうぞお仕事の事をお申しつけくださいませ」
まさか女子が来るとは思っていなかった。だが殿のお墨付きがあるくらいだ。きっと仕事はできるのであろう。
此度は実務の研修という事だ。1~2年すれば殿の祐筆(行政書士のような仕事)として、戻るのであろう。
「で、では、これより殿による旧那波家臣と各地の庄屋への仕置をする。
祐筆をいたせ」
◇ ◇ ◇ ◇
「まずはね。新田昌淳くん!
那波を落とした功で、楽隠居~。でかい城郭付きお寺さん。華蔵寺で好きな本、いっぱい読んで楽して暮らしてね~。その代わり良い本一杯集めてね♪」
「ありがたき幸せ」
真田殿が、うんうんと嬉しそうに頷いている。調略の際に、この条件で、との合意をしたらしい。
子息は武将としてよりも内政をしたいと珍しいことを希望するため、私の下で様々な仕事をすることになっている。
「つぎは~~~。……」
殿が次々と旧家臣と各集落の長(庄屋と名付けられた)に対して、配置・村集落の年貢や賦役を確認していく。
まつはそれを確実に記述して整理していた。
なかなかの美形……コホン……
◇ ◇ ◇ ◇
同日評定後
長野政影
(政賢君のボヤキを聞く係り)
「つくづく思い知ったなぁ。
人間の暮らしと幸せって、人それぞれでただ単に数字で測れるもんじゃあないなって。領地の広さ石高や収入が増えても嬉しい人もいれば負担に思う人もいるんだって。
でも領主のできることは限られているから、出来る限りの富を増やす努力をするしかないのかな。領土を増やすとか銭増やすとかすればいいけど、それだと他の領土を切り取るとかなっちゃうし。
だから生産力を増やす!
効率を良くする!
間違ってはいないと思う。人は働いて結果が出せ、人のためになって初めて幸せなんだと思うんだよね。でもそれを邪魔する仕組みそのものを破壊しないと、本当の幸せをつかむのは難しいんだろうなぁ」
奥の居室へ帰る道すがら、殿は誰にいうでもなく呟いていた。今回の那波城調略の際に出された新田殿への褒美に、改めて感じるところがあったらしい。
また、那波の領土の荒廃ぶりを見て、これに一役買ってしまった自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
「こんな戦の世の中で、幸せと生きる喜びを見つけるのは大変だねぇ。
でも。それでも!
人間って暗闇の中で小さな光があればそれを明るいと思えるんだろうなぁ。
そんな明かりを灯すのが僕の役目なのかな? この世に生まれさせてくれた恩返しか。せめて自分の周りにいる人くらいは幸せを感じて欲しいな。皆が明るい光を目指せる大胡にはしたいなぁ」
殿はいつになく饒舌だ、しかも真面目にしゃべっておられる。初めての大きな戦に気が立っておられるのであろう。
「でも一人の人間としてこの世を動かそうとするのは簡単じゃあないよ、げえむとちがって。人間、何年たっても学ぶところが多いなぁ。感謝です、ハイ」
げえむというのが何かは知らないが、もしかしたら悪夢を見てうなされているときに、そのげえむとやらで学ばれているのであろうか?
そのような事は些細な事。
今重要なことは、殿が皆の幸せを願い、常にそれを目標として行動している事だけがわかればよい。
そう胸に刻み込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
1548年10月上旬
上野国那波城
真田幸綱(上田城を夢想する昌幸のおとうちゃん)
「いやぁ~。
何度見てもここいら辺りは平地だね~。赤城榛名があんなに遠いぃ~~~」
殿が、何度目かの感嘆の声を上げる。急造ではあるが臨時の櫓を作り、四方を見下ろせる3重の建物を作った。雨露を凌げる程度じゃが。
これから那波城の防備を固めるという。縄張りの概略を記した見取り図を見て、ぶったまげた。
(儂もいささか上州訛りがうつってきたか)
今までの城郭の常識を全く覆すものであった。
「ここね。2年くらいで20000の大軍でも跳ね返せる城にしちゃいましょ~。でね、城代はとりあえず真田一族!」
「はっ。ありがたき幸せ」
この城は北条方へのにらみを利かせ、利根川・広瀬川・桃ノ木川の交通の安全を確保するための要衝となる。
北条方が南から攻めるとすれば、ここを通らねばならぬ。通らぬとすれば殿の親族である厩橋城を落とさねば大胡までこれぬ。
東は新田の由良殿の領地。
これで防備は整うはず。
儂はこの城の縄張りを任された。大まかな縄張りは殿の着想じゃが。その構造を知悉するものが、城主城代になるのが普通。信州上田ではないが、儂の城となるかもしれん。本腰を入れて、一世一代の堅城にせねば。
上田に城を作るときにはここよりも、もっと堅城に。
そのための精進だ!
「平地でもね。いいお城作れると思うよ~。
お城はネットワー……うん、連携して初めて威力を発揮するから。でね、ここと大胡・上泉城をハイウェイでつなぐの」
「はいうえいとは?」
殿は右の人差し指を口の端に当て、上を向いて一瞬考えたのちこうおっしゃられた。
「棒道、かな?
できるだけ速く移動できるように、真っ直ぐな道路を作るんだ~。大分製鉄用のコークス作れるようになったので、タールが出ちゃうからこれと煉瓦で舗装、凸凹のない道にしようかなって」
つまり北条方がどこに来ても、戦力を集中できるようにするという事か。
「内線作戦っていうんだ♪
各個撃破、あーとおぶうぉ~~~~!
しゅりーふぇ~ん!」
「で、殿。この城の見取り図にある空白ですが……」
儂は、途方もない玩具を与えられた餓鬼じゃな。殿の戯言も耳に入らず、城の構造に夢中になっていた。
幸せものじゃ。
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