首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

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第7章:最初の首取りです!

今呂布とは戦いたくない

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 1548年8月30日未の刻(午後1時)
 赤石砦南部主正面
 後藤透徹(今孔明ならぬ、今呂布)


「ぅぅう、おおおおりゃぁ~~~~!!!!」

 儂がぶん回した朱槍で敵の足軽3人が吹き飛んだ。
 もう前面には逃げ出す敵しかおらん。まだ物足りないが、そろそろ潮時と後ろで背中を守る槍持ちの官兵衛がそれを告げる。

「後藤の旦那。敵の右翼と左翼前進して、後備の招集兵とぶつかります」
「わぁかったぁ~~~。ではどちらに行けばよい!?」
「敵右翼、左手の敵が近いです。そこに横槍を入れてから戻りましょう」

 官兵衛は10年以上儂に仕え、背中を守るだけでなく周りをよく見て、いろいろと教えてくれる。

 妻の慶が嫁に入った時について来た。
 お目付け役だなぁ。悪いことはできぬ。
 クソッ。

 じゃが、頭がとても切れるので重宝している。背は5尺くらいだがはしっこいすばやい。まるで殿のちいさい版じゃな。身体はちっとばっか大きいけどな。
 それに、それほど切れるわけではないが。

「者ども~~~! 
 左旋回、左手の敵の脇腹をど突いたれ~~~~!!!!」

 おおおお!!!!

 こいつら、よく兵が練れてきたなぁ!
 倍の敵にも負ける気はせぬ。もっとも儂が真っ先に突っ込めばじゃがな!

 左手の敵300の腹に向けて突進する。瞬く間に壊乱する敵備え。
 さあ、これで元の位置に戻るか。

「戻ったら水と塩を取らせましょう。今の内です。西の敵はこちらが向かっていくのを見て引いています」

 そうだな。気づかなんだ。
 今の内じゃ。
 こう暑いと、どれだけ水を取れるかで勝負が決まる。

 矢倉の上を振り返ると、殿が竹筒の水を飲み干してしまい、中身をのぞき込んで残念な顔をしている。
 飲みすぎると、倒れるぞい。

「お仁王ちゃ~ん!
 大胡に帰ったら新しいおちゃけ作ったから皆でのも~~~
 グビグビ!
 だからみんなも生きて帰ろ~ねぇ~!!」

 おおおお!!!!
 と、皆益々元気が出てくる。

 しかし、もうすぐ息が上がる頃合いじゃ。
 あと半刻は持たぬ。
 それまでにあいつが仕事を終えなければ、こちらが壊滅する。

 頼んだぞ!
 大胡の狐!



 ◇ ◇ ◇ ◇

 同日同刻
 粕川東岸蕎麦畑
 東雲尚政(合羽の色が緑の夏場は「緑の狐」です)

 
 ヒュッ、
 ヒュヒュッ、
 ヒュッっと
 無数の矢が、音もなく飛び交う。
 
 敵の足軽がバタバタと倒れていく。既に殆どの徒侍と兜首を弩弓で討ち取った。

 わが東雲隊300。
 全てが3方向から伏撃、完全なる奇襲。
 10間まで敵方は誰も気づかなかったようだな。

 馬鹿め。
 物見を2名しか出さぬのか? 呆けておる。
 戦乱の世、ボーッと生きてんじゃねえぞ!
 易々と気取られずに討ち取れた。

 今、目の前で繰り広げられているのは、虐殺だ。
 戦ではない。

 逃げ惑う敵を3方向から射殺している。
 もう壊乱状態だ。
 蕎麦の根っこよりも赤い血飛沫が舞い散る。

「打ち方やめい! 矢の無駄だ」

 南に逃げていく敗残兵は放っておこう。

 皆の者に、繁みに馬銜はみを噛ませ繋いでおいた馬を連れてこさせ、乗馬の指示を与える。


 東雲隊は全て騎馬だ。
 装備は兵250が弩弓2丁と手槍。
 中には滑車のついた込み入った仕掛けの強力な弓を装備した者もいる。

 弓と矢は50名の運搬兵が一人に付き馬5頭で持ち運ぶ。

 手槍は使い捨てだ。
 馬上槍など愚か者のすることだ。一度突けばもう仕舞。振り回すことなどできはしない。

 できるのは後藤のおっさんのような化け物だけだ。馬の腹をぎゅっと足で絞り体を固定しなければ、敵兵に槍が当たっただけで自分が落馬する。

 さて、これから南下。どこまで早く移動できるかでこの戦の勝敗が決まる。既にお日様は中天にある。約束の刻限まであと半刻。

 たどり着いて勝利の美酒を仰ぐことができるか??



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