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第7章:最初の首取りです!
さあ始まるぞ。魔女の大釜
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1548年8月30日巳の刻(午前10時)
赤石砦南方主正面
後藤家譜代家臣:駒形信元
(大胡隊第2小隊長)
砦の一重の柵は、最終防御線だと言われた。
普通は柵越しに弓矢を交わしたり長柄で突き合ったりする事が、砦での戦い方となる。
しかし、此度の戦はできるだけ敵の侵攻を遅くすることが、目標であるとの命令。 時が来て、総攻めで敵主力を撃破するまで、なるべく被害を抑えることを厳命されている。
今、私の小隊の兵40が配置されているのは、柵の南方2町(200m)に作られた簡単な陣だ。
土俵で作られた土塁の上に矢盾が数枚だけの貧弱な防御であるが、「矢が防げればい~んだよん。こっちの矢が尽きたら後退してね♪」と殿がおっしゃった。
干戈は交えず、矢など投射武器だけの戦いのための塁である。できる限り多くの手負いを敵に出すことが目的だ。
この塁の前方1町(100m)には、ずらりと逆茂木が並ぶ。
この逆茂木は敵に向けて先が尖るように切り落とした枝を向け、根に近い幹を地面に固定するものだ。
大量に作られ始めた鉄でできた金具。
この二股に分かれた(U字型)ものを地面に突き刺して固定するため、太刀程度では中々壊すことはできない。
2か所だけわざと隙間を開けているが、そこに敵が入ってきた際には集中して矢を放つことになる。
その前面に私の小隊と、もう一つの小隊が配置されている。
北条方は、もうその鹿塞の、すぐ近くまで近づいてきている。
矢を交わせる距離だ。
さあ、これから半日が勝負。死なない程度に頑張れと、兵に指示した。
「死んだら命令無視で今日の酒は無しだ!」
と檄を飛ばした。
皆の笑いを見て、小隊の実力を発揮できると確信した。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻
南部主正面北条方
黒田義直(成田先手武者)
「この木は太刀では切り落とせませぬ。無理に切りましたところ、歯こぼれいたしました」
「地面から抜くこともかなわぬか?」
そうだとの言葉が返ってきた。今回はいらぬと思い鉈を用意しなんだ。あるにはあるが、後方の小荷駄に積んである。
さらにはあの木でできた妨害物に近づいていくと、矢の雨が降る。
既に手負いの兵が10名以上出ている。
儂の率いる備えは、先手に命じられた成田泰季様の配下。足軽100名を束ねている。先手の最先鋒を任された。
もののふの誉れだ。
それだけの実力があると、自他ともに認めている備えである。
それが既に1割の兵を失っている。
何とかせねば……
「あの入り口は罠であろうが、矢盾を2名で持ち上げその陰に隠れて仕寄るぞ。弓を持っている者はできるだけ援護せい。その間にあの小癪な木を何とかせい」
儂が先頭に立って矢盾で仕寄り、一気にあの塁を抜く。太刀持ちの足軽50もいれば、5間まで仕寄った後、全力で駆ければ一気に片が付く。
「仕寄り、準備できました」
一つの矢盾に5名が隠れ前進を始める。
よし。敵は一射しただけで諦めた。
今頃、動揺しているだろう。
士気はこちらが高い。
そう思ったとき……
前を行く矢盾が吹き飛んだ!?
ここまで近づくと見えてきた。
敵の矢盾に隠れて、巨大な弩弓がいくつも配置されている。また1つ、矢盾が吹き飛び、兵が3名ほど後方へ飛ばされた。大けがを負ったものもいる。
このままでは、まったく戦わないうちに我が備えが壊滅してしまう!
大声で撤退を命じたが、先の場所まで帰り着く足軽は何人いるだろう。
そう思った時、足に激痛が走る。
儂も後退できるか、怪しくなった。
南部正面戦力比
350vs1600
戦闘後
350vs1500
赤石砦南方主正面
後藤家譜代家臣:駒形信元
(大胡隊第2小隊長)
砦の一重の柵は、最終防御線だと言われた。
普通は柵越しに弓矢を交わしたり長柄で突き合ったりする事が、砦での戦い方となる。
しかし、此度の戦はできるだけ敵の侵攻を遅くすることが、目標であるとの命令。 時が来て、総攻めで敵主力を撃破するまで、なるべく被害を抑えることを厳命されている。
今、私の小隊の兵40が配置されているのは、柵の南方2町(200m)に作られた簡単な陣だ。
土俵で作られた土塁の上に矢盾が数枚だけの貧弱な防御であるが、「矢が防げればい~んだよん。こっちの矢が尽きたら後退してね♪」と殿がおっしゃった。
干戈は交えず、矢など投射武器だけの戦いのための塁である。できる限り多くの手負いを敵に出すことが目的だ。
この塁の前方1町(100m)には、ずらりと逆茂木が並ぶ。
この逆茂木は敵に向けて先が尖るように切り落とした枝を向け、根に近い幹を地面に固定するものだ。
大量に作られ始めた鉄でできた金具。
この二股に分かれた(U字型)ものを地面に突き刺して固定するため、太刀程度では中々壊すことはできない。
2か所だけわざと隙間を開けているが、そこに敵が入ってきた際には集中して矢を放つことになる。
その前面に私の小隊と、もう一つの小隊が配置されている。
北条方は、もうその鹿塞の、すぐ近くまで近づいてきている。
矢を交わせる距離だ。
さあ、これから半日が勝負。死なない程度に頑張れと、兵に指示した。
「死んだら命令無視で今日の酒は無しだ!」
と檄を飛ばした。
皆の笑いを見て、小隊の実力を発揮できると確信した。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同刻
南部主正面北条方
黒田義直(成田先手武者)
「この木は太刀では切り落とせませぬ。無理に切りましたところ、歯こぼれいたしました」
「地面から抜くこともかなわぬか?」
そうだとの言葉が返ってきた。今回はいらぬと思い鉈を用意しなんだ。あるにはあるが、後方の小荷駄に積んである。
さらにはあの木でできた妨害物に近づいていくと、矢の雨が降る。
既に手負いの兵が10名以上出ている。
儂の率いる備えは、先手に命じられた成田泰季様の配下。足軽100名を束ねている。先手の最先鋒を任された。
もののふの誉れだ。
それだけの実力があると、自他ともに認めている備えである。
それが既に1割の兵を失っている。
何とかせねば……
「あの入り口は罠であろうが、矢盾を2名で持ち上げその陰に隠れて仕寄るぞ。弓を持っている者はできるだけ援護せい。その間にあの小癪な木を何とかせい」
儂が先頭に立って矢盾で仕寄り、一気にあの塁を抜く。太刀持ちの足軽50もいれば、5間まで仕寄った後、全力で駆ければ一気に片が付く。
「仕寄り、準備できました」
一つの矢盾に5名が隠れ前進を始める。
よし。敵は一射しただけで諦めた。
今頃、動揺しているだろう。
士気はこちらが高い。
そう思ったとき……
前を行く矢盾が吹き飛んだ!?
ここまで近づくと見えてきた。
敵の矢盾に隠れて、巨大な弩弓がいくつも配置されている。また1つ、矢盾が吹き飛び、兵が3名ほど後方へ飛ばされた。大けがを負ったものもいる。
このままでは、まったく戦わないうちに我が備えが壊滅してしまう!
大声で撤退を命じたが、先の場所まで帰り着く足軽は何人いるだろう。
そう思った時、足に激痛が走る。
儂も後退できるか、怪しくなった。
南部正面戦力比
350vs1600
戦闘後
350vs1500
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