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第6章:陰謀するよ
斬首作戦だぁ~
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1548年2月14日夕刻
上田原合戦場南西30町塩野神社脇
網走在施符
(某北の国最強スナイパーの名前をもじって勝手に命名された可哀そうな人)
「網走殿、そろそろ仕掛けるぞ」
村上の一族と言ったか、素ッ破の頭目が耳元近くで囁いた。未だ人に「網走」と言われても実感がわかないが。
どうでもいい事じゃが、夜眼が効き体力頑健なものを集めているちゅうんで大胡に出かけてみた。
うまいもん食わせてくれるならいいがと出かけたら、なんか変なもんを持たされた。重い筒のようなもんを左腕が痺れるくらい構えさせられ、微動だにせん奴だけが夜目を試された。森の中で何処を人が動いているかを見つけて知らせるんだ。
そんくらいは朝飯前よ。
「ご~かくだよ~。君、よっろしくね~♪」
素っ頓狂な馬鹿に明るい大声をあげる小さな若侍に背中をど突かれながら、飯食わしてもらいここに住むかと聞かれた。
俺は皆から破戒坊主と言われちょるから飯代酒代が足りぬ。
流石に野盗には堕ちたくない。
「ついでだからこの際還俗して、お酒いっぱい飲まない? 只で焼酎飲めるよ~。肴もつけるね」
この誘い思わず乗った。
それで殿の命名で
「網走在施符」
と名乗ることになった。
今でも慣れんがな。
殿は命名してからニヤニヤして「これで君は雪の中で最強すないぱー!」というていたな。
それが5年前。
種子島を持たされ山奥で毎日訓練させられた。
俺は元々、山の出だから割とすんなり過ごせたが、酒と肴が欲しいだけの柔い奴らはすぐ音を上げやめて行った。
残ったのは儂とあと2名。
今、その3人で野に伏せている。
目の前には風林火山という有名らしい幟が立っている。甲斐の大名、武田晴信がいるらしい。負傷していることがわかっちょるがどのくらいの傷なのかはわからん。
ここを村上の素ッ破が急襲するそうだ。
その喧騒から逃れるやもしれぬ晴信を待ち伏せするために山のある北側以外の3方向に一人ずつ伏せているのだ。
こちらに出立するときには、福々しい顔の30がらみの武士が、両手で俺の肩を掴み涙を俺の顔に塗り付ける位に顔を近づけ「頼む。たのむっ!」と何度も首を垂れてきた。
よくわからんが成功すれば今度は美しい女子を手配してくれるとか。
頼まれなくてもやってやるぜ、と思った。
神社に火矢が放たれた。
既に周りは薄暗い。その中で茅葺の屋根が明るく燃え出す。警備の兵が慌ただしく走り回り、陣幕の中に動きが見えた。
ここからだと30間はある。
昼間なら7割は当てる自信があるが、この暗闇では20間がやっとだな。俺の持ち場は南に延びる間道。右に曲がって諏訪に抜ける。合戦後の対陣場所と正反対の方角だ。
こちらに来るか?
松明を持った雑兵を先頭に、槍持ちの徒武者が数名こちらに向かってくる。
その後を……来た!
戸板に乗せられた晴信らしき武将。
あと3間待とう。
心を落ち着けながら、火縄を吹く。これが夜目に目立つのが問題だ。
身体で隠しながら、火縄を火バサミに固定する。
草で偽装した隠れ家から銃口だけ出し、尻を地面に突き、立てた片膝の上で銃身を固定して構える。
もうすこし、
もうすこしだ。
火蓋を切り、
じりじりと待つ。
東で銃声がした。
その音で目の前の徒武者の足が止まる。
戸板も止まった。
少し遠いが、静止している。
据え物に当てるように楽な的だ。俺はそろりと引き金を落とした。
グォンと反動とともに、3匁の丸弾が飛ぶ。桶側胴くらいなら簡単に貫ける。
負傷した武将が甲冑を纏っているとは考えていない。当たればそれで仕舞だろう。
戸板がひっくり返る。
そのため殺ったかどうかは確認できない。
「こっちだ!
あの叢。曲者じゃ!」
ちぃっ、もう見つかったか。確認できないが、それより早くここを離れねば。
ええ女子であればいいがな。
楽しみじゃ。
上田原合戦場南西30町塩野神社脇
網走在施符
(某北の国最強スナイパーの名前をもじって勝手に命名された可哀そうな人)
「網走殿、そろそろ仕掛けるぞ」
村上の一族と言ったか、素ッ破の頭目が耳元近くで囁いた。未だ人に「網走」と言われても実感がわかないが。
どうでもいい事じゃが、夜眼が効き体力頑健なものを集めているちゅうんで大胡に出かけてみた。
うまいもん食わせてくれるならいいがと出かけたら、なんか変なもんを持たされた。重い筒のようなもんを左腕が痺れるくらい構えさせられ、微動だにせん奴だけが夜目を試された。森の中で何処を人が動いているかを見つけて知らせるんだ。
そんくらいは朝飯前よ。
「ご~かくだよ~。君、よっろしくね~♪」
素っ頓狂な馬鹿に明るい大声をあげる小さな若侍に背中をど突かれながら、飯食わしてもらいここに住むかと聞かれた。
俺は皆から破戒坊主と言われちょるから飯代酒代が足りぬ。
流石に野盗には堕ちたくない。
「ついでだからこの際還俗して、お酒いっぱい飲まない? 只で焼酎飲めるよ~。肴もつけるね」
この誘い思わず乗った。
それで殿の命名で
「網走在施符」
と名乗ることになった。
今でも慣れんがな。
殿は命名してからニヤニヤして「これで君は雪の中で最強すないぱー!」というていたな。
それが5年前。
種子島を持たされ山奥で毎日訓練させられた。
俺は元々、山の出だから割とすんなり過ごせたが、酒と肴が欲しいだけの柔い奴らはすぐ音を上げやめて行った。
残ったのは儂とあと2名。
今、その3人で野に伏せている。
目の前には風林火山という有名らしい幟が立っている。甲斐の大名、武田晴信がいるらしい。負傷していることがわかっちょるがどのくらいの傷なのかはわからん。
ここを村上の素ッ破が急襲するそうだ。
その喧騒から逃れるやもしれぬ晴信を待ち伏せするために山のある北側以外の3方向に一人ずつ伏せているのだ。
こちらに出立するときには、福々しい顔の30がらみの武士が、両手で俺の肩を掴み涙を俺の顔に塗り付ける位に顔を近づけ「頼む。たのむっ!」と何度も首を垂れてきた。
よくわからんが成功すれば今度は美しい女子を手配してくれるとか。
頼まれなくてもやってやるぜ、と思った。
神社に火矢が放たれた。
既に周りは薄暗い。その中で茅葺の屋根が明るく燃え出す。警備の兵が慌ただしく走り回り、陣幕の中に動きが見えた。
ここからだと30間はある。
昼間なら7割は当てる自信があるが、この暗闇では20間がやっとだな。俺の持ち場は南に延びる間道。右に曲がって諏訪に抜ける。合戦後の対陣場所と正反対の方角だ。
こちらに来るか?
松明を持った雑兵を先頭に、槍持ちの徒武者が数名こちらに向かってくる。
その後を……来た!
戸板に乗せられた晴信らしき武将。
あと3間待とう。
心を落ち着けながら、火縄を吹く。これが夜目に目立つのが問題だ。
身体で隠しながら、火縄を火バサミに固定する。
草で偽装した隠れ家から銃口だけ出し、尻を地面に突き、立てた片膝の上で銃身を固定して構える。
もうすこし、
もうすこしだ。
火蓋を切り、
じりじりと待つ。
東で銃声がした。
その音で目の前の徒武者の足が止まる。
戸板も止まった。
少し遠いが、静止している。
据え物に当てるように楽な的だ。俺はそろりと引き金を落とした。
グォンと反動とともに、3匁の丸弾が飛ぶ。桶側胴くらいなら簡単に貫ける。
負傷した武将が甲冑を纏っているとは考えていない。当たればそれで仕舞だろう。
戸板がひっくり返る。
そのため殺ったかどうかは確認できない。
「こっちだ!
あの叢。曲者じゃ!」
ちぃっ、もう見つかったか。確認できないが、それより早くここを離れねば。
ええ女子であればいいがな。
楽しみじゃ。
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