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第3章:初陣だよ
補給大事、超大事!
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1546年4月下旬
上野国大胡城大広間
上泉秀胤
(元服したばかりの若武者。14歳)
殿に参謀見習の任を仰せつかった。
参謀とは謀に参加するということか? この「参謀旅行」というものに答えがあるという訳だな。
その後、常備兵力の8割の出陣という非常識な発言も含め、荷駄で持ち運ぶ資材や「補給処」の設置。
大胡勢250の規模にしては、考えられない量の物資が用意されることになった。
これができるのは、ひとえに殿の蓄財・殖産興業が実ったことにある。
撤退進路になると思われる場所には、数人の守備兵を立てて、兵糧・刀槍・矢の類を密かに配置する。
そこを基軸として策を練るという。
今まで聞いてきた戦話とは、全く違う世界にこれから出陣するらしい。
殿といると飽きることはないようだ。
殿の言う「人生楽しも~」か。
某も楽しむとするか。
◇ ◇ ◇ ◇
佐竹義厚
(流れの荷役夫の頭。計算が出来るので頭になっちゃいました)
なんだかんだ言って、 おいらが一番働かされるんじゃね~か?
殿さんは「そだよ~。戦は補給で決まるんです~♪」だと。
「だからね。この中で一番偉いのはあっちゃんなんだよ♪」
なんか乗せるのうまいやな。
でもうれしくなんかないぜ。
その後の言葉。
「荷駄に始まり荷駄に終わるのが大胡勢の真骨頂なんだよ!」
はいはい。最前線に突っ込ませるわけですね。
……あぁあ。生きてけえれる(帰れる)かなぁ……
◇ ◇ ◇ ◇
瀬川正親
(内政一本で食っています!)
「殿。某、戦のことはわかりませぬが、大丈夫なのでしょうか? これほどの焼酎を持参して、長対陣の弛緩した兵が飲み、さらに弛緩するのでは?
兵だけでなく武将も……」
儂は金と米の勘定しかしたことがないので合戦に参加したことはないが、後藤の奴の酒乱にはほとほと苦労している。
あそこまで酒に飲まれるものも珍しいと思うが、酒飲みというものは長く酒を断っている程、酔いしれるとのこと。
「英気を養う」と称して、酒を飲むものが多いが、そこを突かれたら悲惨な事になりはせぬか?
そう進言した。
殿は、「あっ。それはまずいねぇ……」と、思いが至らなかったことを皆に謝った。この素直さをいつまでも持っていてくだされば、名君になられるのでは、と思う。戦に出たこともない儂ごときにわかるわけもないが。
「う~ん。じゃあね。せめて武将以上は酒だけでなく肴を用意しよう。そしてそれを口実に、肴ができてから別々に……」
「それは無理でござろう。
陣を同じくしている者が飲んでいるのに、指を咥えて飲まずにいられようか。必ずや盃を酌み交わして、大宴会にあいなり申す!」
後藤の奴が言うと、なんだか真実味が出てくるのが不思議だ。
「え~ん。何かいい方法ない??
焼酎持って行って大宴会。士気崩壊。夜襲・潰走。
そんな未来しか見えないよ~~~~」
一同、皆、腕を組んだり顎を捻ったりするのみ。
だれも何も発言しない。
然れば……
「では、餌で釣るというのはいかが?」
「なになに? その餌ってなに?」
儂は、まだ報告をしていなかった新しい特産品の名前を出す。
「干し椎茸。
これを使った都風料理を食べたい者は、順番が来るまで暫し飲酒は待たれいと、お伝えいたせばいかが? 約束をたがえて飲み干してしまった陣には、干し椎茸の料理は配膳しないという約束に」
「それいいかもっ!
干し椎茸って超高級品じゃん? あれ、遂に栽培できるようになったの??」
儂は大きくうなずいた。
合戦を知らぬ儂が戦評定で中心となるとは、世も変わったものよ。
尤もこの大胡だけじゃろうがな。
上野国大胡城大広間
上泉秀胤
(元服したばかりの若武者。14歳)
殿に参謀見習の任を仰せつかった。
参謀とは謀に参加するということか? この「参謀旅行」というものに答えがあるという訳だな。
その後、常備兵力の8割の出陣という非常識な発言も含め、荷駄で持ち運ぶ資材や「補給処」の設置。
大胡勢250の規模にしては、考えられない量の物資が用意されることになった。
これができるのは、ひとえに殿の蓄財・殖産興業が実ったことにある。
撤退進路になると思われる場所には、数人の守備兵を立てて、兵糧・刀槍・矢の類を密かに配置する。
そこを基軸として策を練るという。
今まで聞いてきた戦話とは、全く違う世界にこれから出陣するらしい。
殿といると飽きることはないようだ。
殿の言う「人生楽しも~」か。
某も楽しむとするか。
◇ ◇ ◇ ◇
佐竹義厚
(流れの荷役夫の頭。計算が出来るので頭になっちゃいました)
なんだかんだ言って、 おいらが一番働かされるんじゃね~か?
殿さんは「そだよ~。戦は補給で決まるんです~♪」だと。
「だからね。この中で一番偉いのはあっちゃんなんだよ♪」
なんか乗せるのうまいやな。
でもうれしくなんかないぜ。
その後の言葉。
「荷駄に始まり荷駄に終わるのが大胡勢の真骨頂なんだよ!」
はいはい。最前線に突っ込ませるわけですね。
……あぁあ。生きてけえれる(帰れる)かなぁ……
◇ ◇ ◇ ◇
瀬川正親
(内政一本で食っています!)
「殿。某、戦のことはわかりませぬが、大丈夫なのでしょうか? これほどの焼酎を持参して、長対陣の弛緩した兵が飲み、さらに弛緩するのでは?
兵だけでなく武将も……」
儂は金と米の勘定しかしたことがないので合戦に参加したことはないが、後藤の奴の酒乱にはほとほと苦労している。
あそこまで酒に飲まれるものも珍しいと思うが、酒飲みというものは長く酒を断っている程、酔いしれるとのこと。
「英気を養う」と称して、酒を飲むものが多いが、そこを突かれたら悲惨な事になりはせぬか?
そう進言した。
殿は、「あっ。それはまずいねぇ……」と、思いが至らなかったことを皆に謝った。この素直さをいつまでも持っていてくだされば、名君になられるのでは、と思う。戦に出たこともない儂ごときにわかるわけもないが。
「う~ん。じゃあね。せめて武将以上は酒だけでなく肴を用意しよう。そしてそれを口実に、肴ができてから別々に……」
「それは無理でござろう。
陣を同じくしている者が飲んでいるのに、指を咥えて飲まずにいられようか。必ずや盃を酌み交わして、大宴会にあいなり申す!」
後藤の奴が言うと、なんだか真実味が出てくるのが不思議だ。
「え~ん。何かいい方法ない??
焼酎持って行って大宴会。士気崩壊。夜襲・潰走。
そんな未来しか見えないよ~~~~」
一同、皆、腕を組んだり顎を捻ったりするのみ。
だれも何も発言しない。
然れば……
「では、餌で釣るというのはいかが?」
「なになに? その餌ってなに?」
儂は、まだ報告をしていなかった新しい特産品の名前を出す。
「干し椎茸。
これを使った都風料理を食べたい者は、順番が来るまで暫し飲酒は待たれいと、お伝えいたせばいかが? 約束をたがえて飲み干してしまった陣には、干し椎茸の料理は配膳しないという約束に」
「それいいかもっ!
干し椎茸って超高級品じゃん? あれ、遂に栽培できるようになったの??」
儂は大きくうなずいた。
合戦を知らぬ儂が戦評定で中心となるとは、世も変わったものよ。
尤もこの大胡だけじゃろうがな。
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