首取り物語~北条・武田・上杉の草刈り場でざまぁする~リアルな戦場好き必見!

👼天のまにまに

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第2章:夢をかたちにするゾ!

戦が近いぞ!

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 1546年5月上旬
 大胡南東2里華蔵寺周辺
 冬木元頼
(大胡の兵器技術の要。産業部門にも足突っ込んでいるのでヒィコラ言っている)


 ここ3~4年で急激に増えたため池と、湧き水を使った水車があちこちに目につく。作るたびに人足が集まり、またその手で水路と水車が増えていく。

 大胡の殿さまが采配を振るい、打ち出の小槌を振るかのように無尽蔵にばら撒かれる銭。それにより、元々水捌けのよい扇状の台地の扇端で湧き水による耕地が南へ伸び始める華蔵寺跡周辺。
 ここより北は荒れ地が多く、僅かばかりの水田と桑畑が広がっていた。

 それが今では北側も次第に水路が増え、田畑が広がりを見せ始めている。そして、ここ湧き水の出る一帯は、水車の力で様々な工作が行われ始めた。

 殿さまに言わせれば「瀑布線ほどじゃないけど水力使うにはちょうどいいね」ということだ。今も私の両脇で梅雨の増水を受けて2台の水車が勢いよくまわっている。


 はじめは無人の粉ひき水車。
 次に段差のある水路から田んぼに水を揚水する道具として。
 そして生糸の糸繰り動力に。

 今は、やっと稼働し始めた高炉で作られる銑鉄を型に流し込めるようになってから作られるようになった、鉄の棒を細く伸ばしていく作業に使用している。
 この「針金」は様々な所に使われている。

 高炉自体のふいご動力としても便利だ。
 さらには鉄の棒も太さによって、いろいろな道具に使用され始めている。
 それを水車の軸に使い始めてから効率も飛躍的に上がった。

 金具も昨年までは、青銅しか作れなかった鋳物が鉄製に替わり、様々な道具や器械の部品として使われる計画中だ。

 戦武具周旋方に命ぜられた私の腕の見せ所だ。
 殿から軍備全般を任せられたことにより、鉄生産に熟知するようになってしまった。


 そして秘匿されているものとして、武具の改良も行われているわけだ。
 金属製の装具が多数作られた。

 しかしそれに伴い重量化した甲冑などは、新たに藤蔦を加工して軽量化を行なっている。俗にいう「大胡胴」などが典型だ。殿が好んで着けるために「松風胴」とも呼ばれている。

 「大胡笠」も軽量の割には防御力が強い。
 長柄足軽の怪我が少なくなったと評判だ。大量に配備され始めた弩弓にも、鏃や絡繰り金具として鉄が大量に使用されている。

 同じく大量に使う鏃は鋼ではなく、銑鉄を鋳型に入れて成形したものを研磨して製造している。

 貫通力を犠牲にして手数を増やす目的もある。頭数の少ない大胡勢に使い捨ての弩弓が先制攻撃力を与えている。
 両足で固定しつつ全身の力で、弦を引いて矢を番えるものが現在の主流だ。

 他にも投射武器として投槍器を使用した投げ槍。
 これは100から最大で250匁(400~1000g)の槍を30間先(60m先)まで投げる。
 近寄るにつれ次第に重い槍を投げることにより、殺傷力が増す。

 また、印地打ち(投石)に使える縄も工夫が凝らされるようになった。長弓は訓練が間に合わないために、現在は種子島の量産を急いでいるところだ。


 天文11年からの4年間、比較的平穏だった坂東も、そろそろ時が満ちてきたようだ。

 戦の時期が近づいている。
 戦備えを急がねば……


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