転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!

👼天のまにまに

文字の大きさ
上 下
70 / 70
第13章:天下を光っつ光っつにしてやんよw

6畳1間の夢(最終話です)

しおりを挟む
 
「うぉりゃああああ!!」

 義元との戦闘が続いている一本道を渡り、天海の潜む藪に突っ込んで崖を登っていく。
 奴がいる付近の藪がごそごそ動いている。
 逃がすかよ!

 俺は奴の進む方向へ回り込んだ。

「逃がすと思ったか。この糞坊主! 未来から追ってきてやったぜ」
「……」

 僧形の男が這ってこちらへ向かって来る。
 その顔は100歳をとうに超えたように小さくなっている。体はシューシュー音がして小さくなっていく。
 まるで超人ロッ君みたいな音だな。
 こっちの悪党は逆にしおれていくが。
 きっと一人寂しく、ぼっちでロッ君していたんだろうな。

「ち、力を使い過ぎた……無念じゃ」
「へぇ~、そりゃそうだよね。普通の人間が往復400年以上タイムリープして平気なはずないよね」

 結局、何かを代償にしないと、あの一子相伝の被害者はスキルを使えないらしい。時渡りの代償は、この肉体の老化か。

「お前の望みは潰えた。これからこの日本はサブカルに覆われて大繁栄を遂げるんだ。安心してくたばれ」
「……いまわきわに、ヲタクは何というセリフを言うのだ」
「お前、言う気はないだろうけど教えてやる。あいむゆあふぁ~ざ~、だ」
「では儂らしく訳して言うてやる。儂はお前の父だ……」

 俺はこいつの正体を知った時から、そのセリフを待っていた。だから思いっきり言ってやったんだ。

「おまえは俺の父なんかじゃない。俺の父はな。義父の杉原定利、剣術の師、上泉信綱、そして第六天魔王織田信長だ!」

 ずざっ!

 しなびた体を刃で刺す。
 しなびているとは思えないほどの血が飛び散る。
 こいつのお蔭でどれだけの無駄な血が流れたか。

 俺が直接手を下したものが多いけど、そんなことしなくても治めることはできたはず。こいつが陰で暗躍して被害をさらに大きくした。

 せっかく北伊勢の一向一揆とか、伊賀攻め、雑賀攻めを無くすことが出来たのに。比叡山がそむいたのも、こいつのせいだろう。
 将軍を押さえ込むこともできただろうし、ひそかに暗殺もできたかもしれない。それが出来なかったのはこいつのせいだ。

 これでいいかい? 信ちゃん。
 天下はこのまま無事統一することできるよ。良かったね。安心して成仏してね。きっと誰かが天下を統一して……

 ……誰が天下を取るの?

 信ちゃんいなくなっちゃったし、秀吉もいない?
 家康君、まだ若いし、50万石くらいしかないから天下は取れないよね。

 俺?
 光秀?
 利家のに~ちゃんはすぐ「この北陸は十兵衛のもんだぜ」とかいって俺に差し出すだろうしな。
 伊賀甲賀はなぜか俺に歯向かわない。
 伊勢は完全に平民が俺びいき。
 美濃も尾張も文化的に俺の支配下。

 数えてみると、400万石超えている?
 金融産業も抑えているし、日本のGDPの1/3は手中にある。

 これ1576年に帰った途端「あなたが天下人、確定! おめでとうございます!」とか割玉から垂れ幕と紙吹雪が落ちてくる的な状況?

 か、帰りたくない。
 天下人は嫌でござる。
 拙者、働きたくないでござる!

 でも、寧々ちゃんとかアゲハ置いてきちゃったし。
 ここにいては『俺』の邪魔になるだけ。

 なんとか逃げる方法はないもんか?


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ただいま~。今日も疲れちゃったよ。寧々ちゃん、今日のおかずは何?」

 俺は6畳間に入っていく。
 フローリングの床に、質素な格安ジュータン。
 遂に使えるようになったシリコンで作られたフィギュアがずらりと並ぶ板ガラス付き木製ラック。
 もちろん壁にはアイドルポスター。最近結成された『明智坂47』の写真だ。

 で。
 片隅にはベビーサークル。
 その上には自作ベビーメリーがカラコロと音を立てる。
 その下には寧々ちゃんそっくりの顔をした女の子。

 奥のキッチンでは寧々ちゃんが、アゲハに料理を教えてパニックを起こしている。相変わらずの風景。


 俺、光秀。
 遂に天下人に祭り上げられちゃいました。
 最低でも「サブカル教教祖にはなりたくねぇええ!」と懇願したら、それだけは許してくれたよ、みんな。
 冬木のやつに教祖代理を押し付けた。

 そのかわり、この巨大な江戸城で天下人として新規採用されました。
 8時から5時までのパートタイマー。
 え? それって正規社員じゃね? 
 そう思うよね。
 ベル持ちでいつでも呼び出されるんです。『5時から男』になりたかったんですけど、光秀。

 天下人なんか重役出勤でいいんじゃね?
 と、思っていた光秀が甘かったです。はい。

 自分で作った稟議書制度に首を絞められている今日この頃。ハンコの豆ダコが出来ました。


 信ちゃんの葬儀が行われて、織田家をどうするか、例の『清須会議』でもめるかと思ったら、最大のライバルになるはずの柴田のおじさまいないし。
 利家は家来とか言い張るし。
 ハスキー滝川は、「性に合わない」とか姿をくらますし。

 家康君は俺に助けられた恩を返さねばと、家来から突き上げを喰らったそうで。

 もうライバル、誰もいないんです。
 信雄、信考とかは若すぎ。18じゃ誰も相手にしてくんない。
 皆に織田家の勢力を光秀に明け渡せと迫られ引っ込みました。
 みんな、なぜか「あのときの借りを返すぞ」とか、昔話をするんだよな。
 俺、そんな大層な事、なんかしてあげたっけ?


 とにかくだ。
 でっかい江戸城の片隅にヲタク臭のする空間をでっち上げたぞ!
 やっと天下を平定した気分。
 この6畳1間が俺の天下だ。


「光秀様。本日は城内の長屋街を巡回していただきとうございまする」

 入り口から石田三成の呼び出し。

「わかった、わかった。もう残業代記録しておいてよね」
「は。1時間983円でございますね」

「やっすいな~」と思いつつ、自分で決めた最低賃金に思いを馳せる。

「天下人は最低賃金で働く事」
 こう決めちゃいました。
 これで誰もやり手がいなくなれば謀反なんかないかな~っと、甘い考え。でもなんかみんな「なんと名君であらされるか!」とか言うけどね。当たり前でしょ? 人間、6畳1間で十分よ。
 家なんか広いと掃除が大変なだけ。


「お~。今日も腰痛患者さんいっぱいだね。針は細いのちゃんと使ってよね。あと加熱殺菌」

 整形医院を、なぜか大奥で始めちゃった黒古。
 大奥っていったって、うちの身内だけだよ。

「外来患者さんが多くってね。江戸の大工さんとか怪我が絶えなくてね~」


 その隣からは三味線が聞こえる。

「雪風。人形浄瑠璃は流行ってるか?」
「もう弟子がいっぱい来ちゃって大変よ! もっと入城管理しっかりしなさいよねっ!」

 糸を何十本も操りながら三味線や人形を操っている元忍者。


「慶次! 傾奇踊りは人気が出たか~?」
「殿さんよ、何とかしてくれ。みんなMM踊りの方がいいとかぬかしおって。俺は引退するぞ!」


 俺は奥の療養所に入る。
 半兵衛っちが休んでいる所だ。

「半兵衛っち。体の調子は大丈夫か?」
「は……い。まだ死ねませぬ。これからもっと……」
「無理するなよ。天下は平定できたんだからゆっくり休んでね」
「いえ、殿から、もっともっと戦の神髄を……」

 そう言って、鉄の心臓5を出して来る。

「さあ、ゲームを始めましょう、殿」

 しかたないな。
 また夢の戦、仮想の戦を始めるかね。
 ゲームはヲタクの神髄。

 人生はゲームだよね。
 遊び心で渡っていこうよ。




 偽光秀 『完』
しおりを挟む
感想 31

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(31件)

月影 流詩亜(旧 るしあん)

完結 お疲れ様でした。

光秀くん、ピラミッドの頂点へ。

でも、逆さにすると 天下人は1人で国民を支えるように見えるんですよね。

最後にヲタクが勝つ !

解除
月影 流詩亜(旧 るしあん)

闇落ちコワイワー

「敵! 敵本陣に磔《はりつけ》にされた者が……

| ←←が足りない為にルビが振られていません。


報告なので却下してくださいね。

解除
月影 流詩亜(旧 るしあん)

山崎ぱん、ぱん、ぱ~ん!祭だぜ


そういえば、歴史では光秀の母親が人質に成ったと記憶しています。

秀吉くんも天海ボウズも進退窮まったような気がします。

👼天のまにまに
2023.05.04 👼天のまにまに

ここのざまぁがちょっと弱くて。
次回はもっと綿密に書きます

解除

あなたにおすすめの小説

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。 第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。