転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!

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第12章:ドラゴンスレイヤー!

逃げる大将には杉谷善住坊を!(謙信と狙撃手視点)第12章おわり

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 <上杉謙信視点です>

「左翼のお味方、壊滅したとの報告!」
「右翼、山斜面にて激戦中。消耗著しく、増援の要請!」
「先鋒柿崎勢、壊滅! 柿崎影家さま、討ち死に!」
「次鋒壊滅、三の陣、甘粕勢と交錯の際に敵の射撃。壊乱してこちらへ向かっております!」

 敵にはこちらの策を読む者がいる。
 いや、儂と同様の策を同じ機に打って出ているのか。
 竹中半兵衛というたか。あなどっておった。

 儂がここで待ち受けているのを知るのはたやすい。織田は伊賀甲賀を使っていると軒猿(越後の忍び)が言うておった。
 しかし15000の兵が待ち受ける狭い谷間に、まさか1000の騎馬にて突っ込んでこようとは。

 敵の大将、明智光秀。
 軒猿の調べでは、妙に軽い人物だという。それでいて硬軟まじりあった外交内政を行うという。
 しかし戦ではその結果、見るからに危うい。どう見ても猪武者を周りの者が助けていると見ていた。
 戦では頭は軽いと。


 しかしどうじゃ。
 鉄砲に騎馬を取り入れ、移動力と打撃力を持たせて敵の隙をついて攻撃、危うくなったら逃げる。
 そんな備えを配下として育てている。
 機動力が命のそれが先鋒で追ってきた故、谷間には入り込まぬと見ていた。もしも入り込んだとしたら叩きのめしてやろうと。

 じゃが叩きのめされているのは、わが越後勢ではないか。
 たとえ1000丁以上の鉄砲があっても、周りを矢盾で囲み、その間から弓兵で応戦させ、機を見て一気に突撃させようと。数で圧倒しようと。

 が、数で圧倒されたのは、我らであった。
 鉄砲の乱射と思いきや、まず兜首から討ち取られ、指揮系統がずたずたにされたところへ弾幕を張られた。

 そこへ数百の騎馬隊が突入してきた。
 白煙な中から、内側だけ赤い外套がいとうをはためかせ突撃してくる迫力に、柿崎勢も甘粕勢もかき乱されて、2人とも討ち取られた。

 狭い谷間の南北には弓兵を配備し、敵の兜首を狙わせていたが、それもことごとく討ち取られた。多分伊賀と甲賀のものの仕業。


 儂は手にした馬上盃のウヰスキーを一気に飲み干す。

「備えを立て直せ。四の陣で防いでいる間に本陣を中心に、矢盾を再配備。長柄を並べて敵の突撃に備えよ」

 ここはひきつけてから一気に突撃する。
 防ぐ側になったらしまいよ。
 こちらも敵の大将を討ち取る気で行かねば。

「馬廻りは後ろで鋒矢ほうしの陣。突入の準備。儂も出る。
 目指すは明智光秀の首。その向こうに織田の本陣がある。そこまで押し返す!」

 応!

 ……すでに遅い。
 この満身創痍の軍勢では、そこまでたどり着けぬ。
 じゃが光秀の首を取らねば敗走した我が軍勢、俱利伽羅峠までの間で討ち取られ、二度と再起は出来ぬ。

 ここは何としてもあの首を……

 クラッ。

 視界がまわる。
 衝撃。
 落馬?
 儂がか?

 酒を飲み過ぎたか。

「御実城さまを後ろへ。お味方に見せるな。敵にも気取られてはいかぬ!」
「もはやこれまで。謙信さまをお逃がしいたせ!」
「我ら馬廻りが身代わりに突撃いたそう!」

 酒で戦に負けるだと?
 この強い酒。
 たしか張り紙に『参鳥居』の真ん中に『明印あけじるし』と書いてあった。
 もしや……あ奴の仕業か?
 ここまで遠大な仕掛けをしていたのか?

 気が遠くなった。

「御実城様!お気を確かに! 近習共、早く馬に御乗せして峠に!」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 <杉谷善住坊視点です>

 甲賀が織田家、いや明智の殿さんに支配され、追い出されていた俺も故郷に帰ることが出来た。

 もう帰れないと思っていたから未練はねぇが、昔の仲間を育てよと言われた。
 忍びとしてではなく、忍びのごとく隠れ移動する鉄砲狙撃手にせよと。

 賤ヶ岳では12人の仲間と戦ったが、連中の狙撃術は凄かった。奴らには教えられた。その教え方も様々で、うまい奴らも下手な奴らもいた。

 そのうまい奴の教え方を見習って、多くの狙撃手を育てた。


 まあそれはいい。
 今回は、明智の殿さんに大物を狙えと言われた。
 越後の龍、上杉謙信を狙撃して名を上げよと。

 それは出来たらいいさ。
 だがな、狙撃が出来るような場所までは近づけまい。
 と思っていたら、
「謙信を少数の護衛のみで逃亡させる故、そこを仕留めよ」
 ときたもんだ。

 まさかと思ったぜ。
 いくらうちの殿さんが戦上手であっても、あの軍神を敗走させることなど出来まいて。

 そう思ったが「もしもそこを通ったらでよいから伏せておれ」との命令。

 明智の部隊では命令は絶対。
 罰則は決まってはいないが、周りの者が許さねえ。
 よくこんなにまとまった軍勢が出来たもんよ。

 皆、殿さんをしたっている。
 それに気づいていないのは当の本人だけのようだがな。


「善住坊どの。参りましたぞ」

 小さな声とハンドサインで、副隊長が伝えてくる。
 了解と答え、俱利伽羅峠へ向かう山道を見下ろした。

 真正面に騎馬6騎。
 中央に騎乗している武将が怪しいな。白い練り絹の越後上布で頭を覆っている。聞く限りではこいつが謙信だ。
 だが他の連中も怪しい。
 全員倒すのは難しいか。普通ならば。

 部下12名にハンドサインで目標を指示。
 敵1名に対して2名の狙撃。これならそうそう外すことはあるまい。

 射撃開始地点を騎馬が超える。
 全騎が射程内に入る。

 俺は伏せたまま、上げていた右拳を思いっきり下げた。

 ズガン!
 ズガン!
 ズガン!

 12発の一式弾が外れようのない距離で放たれた。
 しかし!
 一騎。騎乗した武士が伏せていたせいか外れた。

 運のいい奴め。
 だが俺が相手でその運も尽きたな。
 まだ弾が残っている俺の冬木式4号銃の銃口から、必中の弾丸がそいつの頭に命中した。

 部下が素早く敵の首を掻き切る。
 その首、大事に見分にかけてやる。
 誰が謙信なのかは知らねぇが、この時期に逃げてくる奴は偉い奴に決まっている。

 だが。
 うちの殿さん程、肝が据わっていない奴だぜ。
 殿さんなら、最後まで逃げねぇぜ。
 だからみんなが必死に守ろうとしているんだ。

 分かったか。
 越後のヘタレ武将め!

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