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第10章:東の蛮族を潰します!
印地と鉄砲。コスパはガン無視!
しおりを挟む1571年2月
遠江国。浜松城
「よくお越しくださった。光秀殿の救援を徳川がどれだけ待ちに待っていたか。この家康、深く感謝いたす」
若いね。家康君。
外交戦略が鬼なタヌキ親父も、29歳の若造。
こんなに窮地を伝えるのは、援軍であってもまずくない?
でも「御恩は一生忘れません」を期待していた光秀には、ちょっと物足りません。
これは張り切って仕事して「どんなことがあってもお友達です」的な言質を取りたいな。
今ね。
戦国時代で勇名をはせる武田勢が、三河と遠江(静岡と愛知の当たり)を支配している徳川さんちにケンカ吹っ掛けて来たんです。
どうやら将軍からお手紙が届き、「信長やっつけて!」という命令が。そんなこと言われなくても京都目指したかったんでしょね。
「佐久間様。手勢はいか程?」
「光秀殿が4500。こちらは既に5500。織田勢10000がこの浜松に到着。
滝川殿配下の鉄砲隊も500配備されておる」
今回の救援軍の指揮官、佐久間信盛のおっさんが偉そうに答える。
この人『退き佐久間』なんて言われていて、殿が得意とか言われているけどホントかいな?
どう見てもふつ~のおっさんだよ?
ヲタク知識では最後の追放劇しか印象に残っていないけど、実際には今、織田軍の最大戦力を率いているのはこの人。
あ~、思い出した。
この人追放された後、その戦力は嫡男信忠がそっくりそのまま引き継いだんだっけ? とにかく今は多分この人の最盛期なんでしょうね。
「武田勢、総兵力27000。現在、ほとんどが信玄の本隊に合流したと見ておりまする」
伊賀忍の情報です。
甲賀の連中だけじゃなくてね、伊賀の忍びもウチに来ちゃいました。
アゲハの件で、伊賀の百地・藤林・服部君たちと仲良くなっちゃってさ。
涙を流して喜んでいたよ? 「光秀さまに一生お仕えいたしまする、ゼエゼエ」とか言っちゃってさ。
這いつくばるほど感激していたっけ。
なんか涙が血のように赤かったけど、何かあったのかな?
「家康殿。いくら信玄が素通りしていくような進路を取っていると言っても、こちらの倍の兵がおりまする。
一撃をして引き返すなど無謀」
三方ケ原の戦いですね。
家康の生涯で一度の野戦で敗退した戦い。ぼろ負けして脱糞しながら逃げ帰ったんだよね。
相当、怖かったんですね。
光秀わかります。怖いのは嫌いです。脱糞はしたくないので、ここは信ちゃんが東海道を通って東に本隊連れて来たときに挟撃するため、この浜松城に籠っていましょ!
「いや。それでは臆病のそしりを受けます。そんな主君にわが三河武士が忠誠を見せるはずがない」
それがやっぱり原因ですよね。
個人的な感情だけで動いて大敗をしたわけじゃない。いいとこ見せねば三河武士たちがついてこない。
この前まで一向宗の家臣と血みどろの戦いしていたんだから。
ねじ伏せるためには力を見せつけなくちゃなんない。
「それは大事なことです。ですが負けてしまっては元も子もない。ここは信長様の救援を待ち……」
「それでは我が三河勢だけでも出陣いたす。佐久間殿はこの城をお守りしていただきたい」
ありゃ~、佐久間さんの消極策、信ちゃんの指示なんだけど。言うこと聞かない若い家康君。
何とかできないかな。
ここはやっぱり江戸時代でも、ヲタクの民の天下泰平に導きたい。そして光秀は、そのヲタクに守られて引きニートします。
「そこまでおっしゃるのなら、明智勢だけでもご協力いたしましょう」
「光秀殿! それでは信長様の命をたがえまするぞ」
「いえ。ここは臨機応変というもの。城を守っている間に三河勢が大敗北することは、信長様の意図に反しまする。ここは忍んで出陣を。光秀、伏してお願いいたす」
これできっと家康君の憶えめでたくなったぞ!
「致し方ない。
総兵力で武田勢の後備えを叩いて、直ぐに籠城へ。その時はそれがしが殿を」
ということで、三方ケ原へ出陣となりました。
武田勢
27000
VS
織田勢
10000
徳川勢
8000
◇ ◇ ◇ ◇
三方ヶ原
12時
やると決まれば、少しでもよい戦場配置にしたい。
正史では浜松から北北西に延びる鳳来寺道という道を追跡して、待ち伏せされちゃいました。
信玄は、その先にある祝田坂というところを下っていくと見せかけて、引き返して魚鱗の陣を敷いたはず。
だから先回りして傾斜の高い所から攻撃できた。
なので逆に東の高いとこに精強な三河武士を斜線陣形で配置ました。
敵が来ると分かっていれば、持ちこたえるんじゃね?
その南には6500の佐久間勢が鉄砲隊を前面に押し立てて、横陣を敷いている。分厚い布陣です。
で、明智隊は機動力あるから東から迂回し、敵の最左翼を高所から横槍をつける。
3500の部隊、まだ騎馬が1500しかないけど、それに2人乗せて機動した後、鉄砲撃つ人を降ろして騎馬突撃します。
三方ヶ原の東に、武田の別動隊が回り込まれないようにいる。
伊賀の人たちの偵察があると楽ですね。
ついでに武田の物見狩りもしてくれるので、こっちの出方は分からないはず。
でも最初から3500も敵の東にいるとさすがにわかっちゃうでしょ?
なので現在、俺、家康君の陣にいます。臨機応変に対応できるしね。
「武田勢、こちらの布陣を見て動揺しているようですな」
「しかし間髪入れず、こちらの弱点を突く陣形にしてくるところ、歴戦の信玄坊主。御油断召されるな」
こちらの佐久間隊の西、最左翼に回り込んでいく山形昌景隊3000。
もちろん、そちらにも布陣しているよ、お味方。
だいたい谷があるからそうそう回り込めない。
「敵の印地打ち、始まりました!」
先鋒の小山田信茂が石投げる部隊を前面に出してきて、拳くらいの石をハンマー投げの要領で投げて来る。
石はそこらから拾って来たんでしょ。でもそれ当たると死傷者出る。桶側胴に当たってもダメージ。コスパいいですね。
だいたい80m近く飛ぶからね。弓よりも先制攻撃できる。鉄砲よりも先にこれが飛んでくるよ『普通なら!』
ぱぱぱぱ~~ん!
ぱぱぱぱ~~ん!!
「佐久間隊の鉄砲連射、始まります」
敵の印地打ち部隊数百人がバタバタと倒れていく。
いやね。
こっちの鉄砲、100mが決戦距離になっているし。当たらなくてもいい。数で押していきます!
多分、2500発くらいは使ったと思うけど、半数を死傷させれば目的達成。
士気を削ぐためにやっているから大盤振る舞いです。
普通の鉄砲隊ならできませぬ。
鉄砲隊の前には矢盾並べてあるし。
安心して撃ちましょ。
ここ、長篠じゃないけど武田の方々、敗走していただきます。
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