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第6章:京都行ったから本気出す!

頭痛。腹ペコ。けいれん。(第6章終わり)

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 いや~。
 あの2人。
 超強力じゃね?

 ほとんど2人で1000人程の三好の先鋒をやっつけちゃいましたよ。
 これって鉄砲隊いらないよね?
 銭の無駄。
 あいつらにだけお給料与えて、後はリストラ。

 ちなみに俺は閑職に飛ばされて、倉庫の片隅で無駄な仕事をするんだ。書類の整理とか、調べ物とか。
 え?
 最近は全部AIがやってくれるって?

 なんだよ。あの作業は大事な『怠け者のプロ』がやる分野だぞ。きちんと『お仕事レッドリスト』に入れて保護しといてね!


「殿。負傷者が帰って参りました。数は約6名。そのうち2名はアゲハ殿と雪風殿」
「あいつらが負傷?」
「その様です。アゲハ殿は腹を負傷したらしく苦しそうにもだえながらよろよろと歩いてまいります。
 雪風殿は全身が痙攣けいれんして相当な痛みと見えまする」

 ホントだ。
 どうしたアゲハ。
 スキル『無敵』とか『怪力!』とか使わなかったのか?

 崩れかけた寺の山門を、苦しそうに入って来るアゲハと雪風。

「おい。レッドクロス少女! 出番だ」
「なによ。ブラックサン少年! 気安く命令しないで下さませんこと?」

 黒古のやつ。
 IF戦記ネタも知っているとは。恐るべし! ちょっと甘く見ていた。
 今度は絶対に分からないネタを探してやるぞ!


「ご主人様ぁ。お腹が、お腹がぁ……」

 俺の前に倒れ込むアゲハ。地面に落ちる前にキャッチ。

「どうした? 敵の攻撃を受けたのか? 敵はそんな新兵器でもあったのか?」
「違うです。針……」

 針?

「さあどいて。鈍感勘違い少年。せ~のっ!」

 黒古がアゲハの前に大型のザルを置いた。
 上には白米の塩おにぎり。それが大量に!

 ひゅんっ!

 目にも止まらぬ速さで起き上がったアゲハ。
 ザルごと抱えておにぎりにかぶりつく!

「うまうまうま。お仕事するとお腹がすきますです」

「お、おまえ。腹の傷は……」
「傷なんてつきませんのよ。『無敵!』スキル使用時は文字通り無敵ですわ。
 でもその副反応でTCA回路が超加速。クエン酸が大量消費。エネルギー代謝が活発化するけど、そのお陰で一気に糖分なくなっちゃうんですわよ。
 それ以外は知りませんわ。
 だって針刺すのが仕事ですのよ、わたくし」


 結局、反応原理は分からないんだな。
 俺の加速なんか、何が体の中で起きているかなんて発見したらノーベル賞100個くらい貰えるぞ。


 爆喰いしているアゲハのとなりに、今度は雪風が倒れ込んできた。
 こいつは抱き留めてやらん。
 と思ったが、一応俺たちの味方だし、今回いい働きをしたから、優しく抱き留めてやった。
 今度、ありがとうを言ってもいいんだからね!


「な、なによ。この手足の痙攣は! 聞いていないわよ。黒古おねー……鍼灸師! ちゃんと説明しなさいよね!」

「え~っとね。あなたのスキル『糸まきまき』は超DEX上昇をもたらすのですわ。
 だからよ~く走れたし、糸もよく操れたでしょ?
 でもその代わり、反動で手足が痙攣《けいれん》しちゃうのよね。こむら返り、痛いでしょ?」

 全身、こむら返り。
 経験したくない。


 黒古が俺と同じように雪風に痛み止めの針を刺していく。

 あ~。
 何というか。
 これは戦力にはなりませんね。
 やっぱり鉄砲隊必要っす。

 あくまでも副作用という事ですね。
 副反応では決してない!

 でもきっと寧々ちゃんも「わたくしも光秀様に嫌われないように、美容と若返りを!」とか、言っちゃうんだよね。
 どんな副作用が出ちゃうか心配だぁ……


 ◇ ◇ ◇ ◇


 俺達は、意気揚々と本圀寺に引き返した。

 この寺は山を背にして立っている。
 南西から攻め上るしかない。
 ここまで敵の士気を落としておけば、あとは鉄砲の一斉射撃だけで数日は持ちこたえることが出来るだろう。

 と、半兵衛っちが言っていた。
 もちろん俺の見立てじゃないっす。


「おお、ここにおりましたか。明智殿。
 貴殿の奮戦ぶり、遠くから見ておりました。
 素晴らしき軍勢をお持ちのようで。この細川藤孝、心強く思うとともに明智殿との親交を深めたく。
 そのこと切に願うようになり申した」

 あ~。
 この細川藤孝くん。
 将軍の家臣ね。
 正史では親友とも言っていい仲?
 最後はビビッて参戦してくれなかったんだよね、秀吉との決戦に。
 娘を嫁入りさせたのに。

 基本、都人だから仕方ないよね。寝業師だよ。
 剣は剣聖の弟子だけど俺とは話が合わない。だって、連歌とか、その手の文化が超得意なハイソですから。
 小市民の光秀、あまり好きくない。

「上様(将軍のこと)も、こたびの奮戦、大いに喜んでおり、早く明智殿をお連れいたせと矢の催促」

 い、嫌だなぁ。
 この将軍家には近づきたくないっす。
 だって信ちゃんに潰されるの目に見えてるし。
『家来になれコマンド』連発してくるだろうなぁ。



「よう参った。もっと近こう。もっと近こう寄れ」

 白粉、お歯黒、眉ぞり将軍が、自分から寄って来る。
 あの~、お口臭いんですが。
 顔近づけないで。
 思わずのけぞりそうです。

「そなたの武略。かの鎌倉殿(源の頼朝)の弟君、九郎判官ほうがん(源義経。超Tuee!武将)のごとき戦ぶり。
 余は感心した。
 あの剛勇な武者は弁慶の如し。
 敵に突っ込む女子はまるで巴御前。
 ぜひ我に力を貸してたもれ」

 またヘッドハンティング来ました><;

「ありがたきお言葉成れど、某の忠誠、すでに信長様に。
 この命尽きる時まで、お仕えいたす所存」

 まあ、嘘ではないよ。
 本能寺か何かで信ちゃんが死ぬまで仕えるよ。
 秀吉が天下取ったら、そっちの家来に鞍替え。
 秀吉死んだら、家康君。
 これで天下りコース完璧だ!

 あ、そうだ。
 そろそろ家康君とも仲良くなっておかないとだね。


「ではこれはどうじゃ。
 九郎判官様のごときその戦いぶりをたたえて、左衛門尉の官位を……」

 やめてくれ~~~。
 それって頼朝と仲たがいさせたお公家さん達の策謀じゃない?
 義経も傲慢だったけどさ、光秀、傲慢じゃないです。
 ゴーマニズムは宣言、いたしません!
 自分のことも『ワシ』とは言わないし。


 渋々、引き下がる将軍と細川藤孝。
 やだなぁ。こいつら。
 人を操り人形にしようとする悪者だよ。

 光秀、近寄ることは『いたしません!』

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