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第4章:ちょっと伊勢を切り取ってこよう
危うし伊勢国!(北畠具教視点)
しおりを挟む<北畠具教視点>
1567年9月
北伊勢。千草城東方
北畠具教
(お公家さんになっているとっても偉い大名。なのに剣豪という変な奴)
ばばばばば~~~ん!!!
ずががが~~~~ん!!!!
ばんばんばん、ばば~~ん!!!!
「何をやっておる! 早く総攻めをせよ!」
「はっ。ですが敵の鉄砲の音に、足軽が怯んでおりまする」
「あのようなもの。ただ音が大きいだけではないか! 相当近づかねば当たらぬ!」
織田の軍勢6500と聞く。
我が方は8000余り。数で押し切れるはずよ。ましてや、この南朝より勇名をはせる北畠の武士の軍。
たかが守護代の家老程度の家柄の子倅に負けるはずがなかろう。
ここは徒武者が先陣を切り……
「敵は土嚢を積み上げ、障害物としておりまする。遠矢の牽制が効きませぬ。20間(40m)にすら近づけませぬ!」
「ええい! 誰か先陣を切り武名をあげる者はおらぬか!?」
「上様。某が」
「いえ。それがしが先に」
馬廻り(親衛隊)の者共が名乗りを上げる。
士気至って旺盛。
「ではその方ら。敵、中軍を崩して参れ。その後、千草城の救援じゃ」
「「ははっ!」」
千草も南朝の忠臣の家柄。よく奮戦しておる。これを助けねば我ら北畠の名誉にかかわる。
「して、右手北方の丘に向かった者共は?」
「はっ。母衣衆(伝令)の知らせでは、丘へ登った敵兵、わずか30。近在の逃げ遅れた百姓が見ておりました(もちろん、半兵衛の手の者)」
「では、そろそろ丘を攻める頃合いか?」
パ~~ン。
パ~~~ン。
パ~~~~ン。
なんだ、あの小さき音は。
あれが鉄砲か? さぞや小さき鉄砲を撃って……
「お味方、騎馬武者が次々に倒されていきまする!」
「おう、なんたること。徒武者までも!!」
「なんと。物頭まで倒されていく!!!!」
なんだと?
あの音、たかが数丁の鉄砲ではないのか?
なぜそんなに当たる?
「お味方、総崩れ! 退却……いえ、逃げ帰って参りまする!」
「丘の上から、20騎あまり。お味方の背後より突撃。丘に向かった兵は散り散りに。敵はその勢いを駆ってこちらへ向かってまいります!」
「ええい! 後備えを差し向けよ!」
なんという速さだ。
味方が崩壊するのも早いが、この進撃の速さは異常。
「間に合いませぬ! さらに後備えに敵鉄砲隊200余りが向かいまする。横から射撃開始。陣形が崩れていきます!」
見る見るうちに後備えが崩壊していく。
これが鉄砲の威力なのか?
「丘の上から突進してきた騎馬武者に馬廻りを向かわせよ!」
さきほど半数の馬廻りを前線に投入してしまった。残り僅か40騎。
半数、20騎の敵と檄突……しない?
ばばばば~~ん!!!!
敵の騎馬武者が馬を止めた途端、前かがみになり、後ろに騎乗していた兵が鉄砲を構えて、馬廻りの者の中央に集中して放つ。
10騎が倒れた。
その後、また鉄砲を取り出し、こちらへ射掛ける。
ばばばば~~~~ん!!!!
6騎が倒れる。
敵が突撃を再開。
24騎の馬廻りの者は怖気づいている。
その中央を人馬共に巨躯の騎馬武者が突入してきた。
儂が狙いか?
よき面構えじゃ。
胆力もある。
ではこの儂自ら相手してくれよう。大人しく刀の露と消えよ。
剣聖と謳われた(塚原)卜伝殿に授けられし『一の太刀』を受けて見るがよい!!
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