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第4章:ちょっと伊勢を切り取ってこよう
慶次の上司も大変です
しおりを挟む丘の上です……
俺のすぐ後ろに大きな幟が立っています……
馬印はまだ使う許可出てないので、でかでかと桔梗紋を染めた旗です……
多分ね、先の墨俣の噂は伊勢にも流れてきているんだよね……
まだ鉄砲の特性は理解していないだろうから、俺を脅威と感じる。だからこその囮。だからここを攻める連中は結構な人数が派遣されるだろう……
それを……『俺一人で』防ぐ!?
俺の目の前には20丁に増えた簡易ライフル銃を持った隊員が膝をついて並んで控えている。それを順次俺に渡して来るわけだ。
ライフル銃の欠点は弾込めの時間が長い事。精々1分間に1発。だから20丁を順々に俺に渡すわけ。
ついでにこの頃の火縄銃って、直ぐに銃身が熱くなる。それで火薬が燃えて暴発とかもある。一会戦で10発くらいにしておかないと危険だ。
つまり。
20丁で200発、俺が撃つ。
予備の鉄砲もあるし、数百発は撃てるけど。常人だと肩を脱臼するどころじゃないっす。
なんでこんな作戦を半兵衛っち考えるんだよ!!!
……ああ、俺が自ら買って出たことになっているのね。
光秀、見栄っ張りだから「ちがう」とか言えないの。
だってみんなをがっかりさせたくないじゃん!
期待度、忠誠心が急降下すれば、俺の命すら危うい。
「狼煙につられてきましたな、殿。およそ1167人」
慶次が伝えて来る。
お前さ、どんだけ目がいいんだよ?
あのバードウォッチング的な協会にでも入っているのか?
カチャカチャカチャ。
「先頭の足軽。射程圏内に収まりました。距離200!」
こうなったらもう、撃って撃って撃ちまくるしかない。
俺の身長よりも長い、元祖冬木スペシャルを構えて敵の先手を指揮する騎馬武者の頭に狙いを定めた。
ずが~~~~んんん!!
命中。
脳漿が飛び散り、騎馬武者が落馬する。
周りが慌てふためく。
うろたえる足軽を鎮めるために、太刀を振り回して指揮をする徒武者の位置が分かった。
それを順々に狙撃していく。
中央の備えの指揮系統が、まず寸断された。今度は下士官である足軽頭が慌てて周りを鎮めようとする。
こいつらも次から次へと撃ち倒す。
ごめんな。悪気はないんだ。配下のみんなが俺を持ちあげるからいけなんだよ。
俺はただただ、おうちへ帰って二次元したいだけなんだよ。早く帰りたいから、どんどん撃つね。なるべく痛くないようにヘッドショットするから。
中央の敵は崩壊、逃げ出した。かかとで後頭部を蹴って走っている奴もいる。きっと今回もちびったり脱糞したりしているのだろうなぁ。
左右の敵も混乱中。
それでも果敢に攻め上って来る。
やめて。来ないで。
もういいでしょ?
と、思いつつも俺は、こっちから見ると右手、敵の左翼を狙い撃ちし始める。もうここまで100mを切った。
すると手筈通り、待っていた明智機動部隊の中でも選りすぐりの狙撃上手が、膝撃ちで狙撃を始める。
敵左翼崩壊。
右翼の足が止まった。
一旦、後退だろう、ここは。
しかしその後ろには、利家に~ちゃんが率いる220の主力が到着している。さすが半兵衛の作戦! もう勝ったも同然。
「そろそろ……」
終わりにしようか、と言おうとしたんだよ。
おうちに帰りたい。
帰って作りかけのフィギュアに色塗るんだ。
「そうですな、そろそろ突撃の頃合い。さすが殿さん。期を見るに敏。皆の者、乗馬!」
ええ?
まだお仕事するの?
もう敵部隊、崩壊寸前じゃん。
「ささ。殿さんも御乗馬を。そして突撃の鬨の声を、いざ!」
慶次、お前が先頭きって突入すれば、敵なんか逃げ散るよ。俺の出番無い。
何その目は。信頼しきっている表情。
その目は、俺の先駆けを見てみたいと言っている。
どうしてこうも俺の部下は俺を働かせようとするんだ!?
俺はしぶしぶ、お馬さんにまたがり大声をあげた。
こうなったら自棄だよ、もう。
「皆の者。乗馬襲撃! 目標、丘斜面から退避しようとしている敵、およそ300」
「298人しかおりませぬ故、ご安心を」
・・・・・・涙目
「躍進距離200。突撃~~~~!! 前へっ!!!!」
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