転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!

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第3章:美濃攻めしよう

墨俣十六夜城その1

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 1566年10月(新暦で通します)


「なんとかせよ!」

 いつもの信長語翻訳係、司会の丹羽五郎左さんが説明を始める。

「美濃攻めの敗因の一つが、国境の長良川を渡り、補給戦の伸びきった時に、安藤、氏家、稲葉などの国衆に側撃されるなどして稲葉山城まで進撃できないこと。
 よって攻撃策源地を対岸に設置します」

 というようなことを、現時語にて解説。

「橋頭堡作ろ~ね」という事です。


「キンカン! 申せ!」

 最近慣れてきました。
 信長語。

 これは
「お前んとこに敵として大活躍していた軍師の半兵衛っちが来たよね。その子のいうことにはどうすればいいかな~?」
 ということ。

「はっ。廃城となっている墨俣を修築。そこを拠点とし渡河地点を確保。順次、稲葉山城への道を作るのが得策かと」

 すでに安藤さんちと氏家さんちは、美濃の支配者である斎藤龍興に見切りを付けているから、積極的には攻撃してこないという予測も言っといた。


 信ちゃんはあごに手をやり少し考えた後、

「猿! 修築せよ。一月でやれ」

 無難な指名だよね。
 前例があると信頼あるよ。この前の石垣の修理は速かったからね。
 でも、

「は。有難く拝命いたします! ですが、この猿。7日にて修築して見せまする!」

 そうなんだ~。
 太閤記なんかの墨俣一夜城。無理だよね。
 何もない所に砦を一夜にして作るとか、令和のゼネコンでも不可能。
 まあ、はりぼてならできるけど。


 7日間。吹きすぎじゃね?
 あそこ見たことあるけど、廃城というか廃墟だよ。崩れた土塁あるけど、石垣なんかは当たり前だけどない。堀もなければ建物一切ない。

 たとえ一重の柵だけで囲むだけでも、襲撃を気にしながらだったら1か月が妥当。

 これを成功させたらもちろん大きな戦功で、武将連中も少しは黙るだろうけどさ。秀吉の配下って何人?
 今、秀吉の禄は500貫文(1000万円)。家臣は2人? 総動員しても20人行かないんじゃね?

 多分、長良川を取り仕切っている蜂須賀党(蜂須賀小六っていう頭目が率いてる野盗まがいの連中)を調略するんだろうけど、太閤記のように木曽川に上流で切り倒して加工した資材を、いかだにして流すとかどう考えても無理ゲーでしょ?

 どうするんだろ?
 お楽しみ。

 と思っていたら、評定が終わった途端に信ちゃんに呼び出されました。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「キンカン。お主の部隊はどうじゃ」

 どのくらい使える練度かとの問いだね。

「は。総員、250名。鉄砲500丁、馬匹150。一日に一斉射撃20回程度は繰り返せるかと。補給をしていただければ、敵2000程度ならば10日間は持ちこたえられます」


 このタイミングで呼び出されたということは、秀吉の援護でしょ。やることは。

「(柴田)権六に兵1000を預け、支援させる。1月は持たせよ」

 1000は多いよ。
 補給が大変。補給部隊の護衛までしなくちゃならなくなる。支那戦線の日本軍みたいになる。

「しかし、補給が。300程度の兵で支援をお願いいたしたく」

 信ちゃん、やっぱ頭いいよね。補給の事を考える余裕が頭にある。

「では勝三郎(池田恒興つねおき。信長の乳兄弟)に長柄と弓300をつける。合力せよ」

 あ~。
 それヤヴァイやつ。
 向こうが超上役じゃん。指揮権が向こうになっちゃう。戦術の自由性がなくなる。

「采配はどちらに」

「キンカン。お主じゃ」

 ひぇえええ。
 また無茶振りブッ込んできました~
 俺が信ちゃんの乳兄弟に指図なんてしたら古参連中が~
 どうしよ。
 どうしよ。

「以上じゃ」

 信長。
 向こうを向いてスタスタと行ってしまった。


 光秀、知ってる。
 信、光秀がアタフタするの楽しみにしてることを。しかも笑顔で。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「すまないな。信長様は悪気があるわけではない。少し稚気が多いだけじゃ」

 それが悪気っていうんです、池田の恒興さん。
 でも何、この悟った感のある性格の池田恒興。もっとおっかない奴か、腹黒武将かと思ったよ。中国大返しで真っ先に秀吉についたから雪崩うって秀吉有利に。こいついなけりゃ光秀生き残れた?

 あの信ちゃんについていく幼馴染が、こんな悟りを開くとは思えない。
 ああ、信ちゃんの後始末が多くて達観しちゃったんですね、納得。


「それでは、明智殿。この配置でよろしいか」

 川原の目立たないところに張られた陣幕の中で、矢盾をテーブルにして作戦会議。
 いや~、この地図作るの大変で。
 百姓や漁師に化けた技術者が三角測量して作ったんだよ。何人か斬り殺された時は泣いたね。真面目にだよ? 御茶らけるほど人間腐っちゃいません。


「池田様。作戦の要諦ようていは、敵を混乱させる事。決して正面から戦い、損害を与えたり撃退しようとしたり思わないでください」

 半兵衛っちが念を押す。
 有名な八面埋伏ですね。
 そこら中に伏兵を置きます。普通にやったら、こっちも味方がどこにいるか分からなくなります。だって向こうの方が地理に詳しいから。

 そこで、ちゃちゃら、ちゃっちゃ、ちゃ~ん!
『1/5000の地図~~』

 方位磁針がギリギリ間に合いました。
 これで各分隊、同士討ちしないで狙撃、面制圧射撃できますです。


「ご主人様~。敵が動き出しましたです~」

 どこからかアゲハの声。空蝉の術という奴だ。
 これって糸電話みたいな奴だったから、改良して20m位遠くても使えるようにしてやった。糸じゃ作れなくて5mの針金を4本繋げて作っている。

「あまり意味がない。使えない」と言ったが、「これで聞くご主人様の声がご褒美なのです♪」という意味不明な答え。


「アゲハ。木下殿のはかどり具合は?」

「え~と。北側正面の柵がもう少しで出来上がりますです」

 新月の夜から始めて、作業開始から2日。
 結構なスピードだな。流石内政マシーン。チート野郎だぜ。

「では参ろうか。明智殿」

 結局、上司かぜ吹かせている池田くん。
 きちんと計画通り動いてくれるんだろうか。


 光秀、とても心配。

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