転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!

👼天のまにまに

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第1章:織田家に早めに就職しておこう

槍の又左

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 真面目な連中の描写です。

 1560年6月
 尾張国桶狭間
 富永氏繁
(今川義元馬廻り衆。主人公に最初にいじめられる可哀そうな人)


 義元様を、早く大高城へお入れせねば。

 我ら馬廻り(親衛隊)のすべてを犠牲にしても、義元様さえ無事でいればこの戦い、再興を期せるはず。
 まだ兵力差は圧倒的なのだ。



 ずが~~~ん!!

 左手より轟音。

 何事?
 1呼吸(5秒)ほど置いて更に1回、2回、3回。

 見ると、前を行く馬廻りの者が落馬している。

 なんと。
 兜に穴が開いて、血と脳漿を右へぶちまけている。

 これは……
 西国大名たちがしきりと使い始めた種子島か?
 織田の子倅こせがれも数多くそろえているという報告もある。

「富永さま! 左手に矢盾。草木で隠されております!」

 見るとその辺りが白煙で覆われ始めている。
 種子島を発射した煙か。

 音は4発。
 最低4人はいる。

 しかしそれに続いて、矢が飛んでくる。これも正確にかち武者達の顔を射貫いている。

 儂の顔にも飛んできた!

 手にした太刀で払いのけるが、左からの矢はかわし辛い。
 次々とお味方の騎馬が倒れる。

「富永さま。残る手勢は3騎。御指示を!」
「弓兵を並べよ。敵の吶喊とっかんに備えよ!」

 この急行軍だ。
 長柄足軽は本陣のしんがりに全ておいてきた。

 弓兵も5名のみ。
 だが数名の吶喊とっかんならば、射すくめることできよう。

「矢盾より大男が。その後ろにもう一人小兵こひょう
「それだけか?」

 おかしい。
 後ろで援護をする者がいると思った方が良い。

「徒の者。あの武者が深田から出ようとする足場の悪い時に、敵を仕留めよ」

 幸い、あぜ道は2本のみ。
 2名は曲がりくねった同じ道をこちらへ駆けて来る。

 矢が5本、また5本。
 2名の敵兵に飛ぶ。

 いいぞ。
 大男は兜のしころを傾け矢を防いでおり、前進できないでいる。

「この間に義元様をお逃がしいたせ!」

 既に20間ほどまでに義元様の騎馬は近づいてきている。
 この伏兵をかわせば、あとは平地。一気に大高城まで駆ける事、できよう。


 と、その時

 大男の影から、脇をすり抜けるように小兵が現れ、突進してきた。腰の後ろから2本の小刀を抜き放つ。
 5人の弓兵はすかさず、そちらへ目標を変えて矢を放つ。


 しかし!

 そいつは両手の小振りの刀にて、矢を斬り落として何事もないように突き進んでくる。
 しかも足元は深田。
 なぜ沈まんのだ!

「徒の者は小兵を押さえよ!
 弓兵は大男を射すくめよ。
 死ぬ気で押さえよ!!」

 皆の士気は高い。
 伊達に馬廻りに採りたてられているわけではない。

「なに奴?」
「うがぁ」
「ふゅう」
「ごふっ」

 兵が倒された気配。何事? 左手を見る。
 そこには弓兵が瞬く間に倒されていくのが見えた。
 灰色の髪に、緑と茶色のまだら模様の小さな影が、弓兵の背中を飛び越え、股の間を、脇を、舞うようにすり抜け、足軽達の首筋や脇・内ももを切り裂いていく。

 新手か。
 大男と小兵に気を取られ過ぎた!
 別のあぜ道を回り込んだやつに隊列を掻き回される。
 見たこともない身なりだが伊賀甲賀の者か?

「うぉりゃぁ! どけぃ。
 我は織田家、信長さま(元)馬廻り衆、前田又左衛門利家。
 今川治部太夫義元殿が首、頂戴しに参った!
 命が惜しいものはすっこんでろ!」

 長大な手槍を振り回しつつ接近する大男の武者に、馬廻り衆は吹き飛ばされ突き刺されて、次々と果てていく。

 その脇を縫うように、儂に正面から小兵が迫って来た。
 速い!

「なに奴!
 名を名のれぃ!」

 若い。
 小兵は十三四か?

「名乗りを上げるのも仕事の内かな~。
 めんどくさいけど教えてあげるよ。
 美濃明智の住人。
 明智十兵衛光秀。
 じゃあな。おっさん」

 目も止まらぬ速さで馬の左に回り込んで、太刀を振るおうとした儂の右腕を掴み引きずり落とす。落馬の衝撃で息が詰まる。

 ぐふっ。
 鎧通よろいどおしで脇腹をえぐられたらしき痛みと共に、今度は目の前に血飛沫ちしぶきが見えた。

 皆の者。
 義元さまを守……


 ◇ ◇ ◇ ◇


 今川義元
(海道一の弓取り。治部太夫👈とにかく偉い奴)


「義元さま!
 前方、富永さまが討ち死に!
 我らが退路をこじ開けます故、その間に大高城へ!」

 近習の者の切羽詰まった声。
 ここに伏兵がいたとは。
 織田のたわけにしてはようやるわ。

 いや。
 そんなことを言うている暇はない。儂はここで首を取られるわけにはいかぬ。
 まずは尾張を手に入れ、美濃・近江を手中に、そして……


「今川治部太夫殿。その御首みしるし、いただき申す!
 我が名は服部小平太一忠。
 見知り置かれぃ!」

 後ろから追ってきた徒武者が坂を降りる勢いを駆って、槍をつけて来た。儂は槍を防ぐとともに、この武者の膝頭ひざがしらを太刀で割った。

「おう。
 小平太。大丈夫か?
 隣にいるは新介か?
 この獲物は俺に譲れ!」

「犬千代!
 貴様なぜここに!」

 儂をはさむように、坂の下から攻め上って来た伏兵の大男が、儂を包囲しようとしている者と呑気のんきに話をしている。

 おのれ。
 海道一の弓取りと言われた儂を軽く見るなよ!

 太刀で愛馬の尻を叩き、坂下に向かい突進した。
 大男は槍をしごいて突き出してきたが、太刀でそれを跳ね上げすれ違いざまに首を狙う。

 ぎゃりんっ

 脇差で防がれたか。

 だがもう誰も目の前にはいない。
 このまま大高城へ……


 ずががが~ん!!

 愛馬が前へもんどりうって倒れる。
 地面に投げ出され、息が詰まる。

 背中に衝撃。
 槍か。
 ごふっ……ごれは助から、んか。


「前田又左衛門利家。
 海道一の弓取り、今川義元を討ち取った!!!!」

 ああ。
 軍勢を率いて瀬田の大橋を渡って、京へ入りたかっ……

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