転生ヲタク光秀~本能寺、したくなあぁあ~~い!

👼天のまにまに

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第1章:織田家に早めに就職しておこう

桶狭間で就活!

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 1560年6月
 尾張国桶狭間山南方
 偽明智十兵衛光秀
(全然、光秀らしくない! だって息子なんだもん)



「桶狭間の山向こうは今頃、大宴会真っ最中だねぇ。
 俺たち、外で酒気帯び運転をつかまえようとしているパトカー的な人?」


 さきほどのひょう混じりの豪雨が止んで、すでに一刻(2時間)。

 桶狭間山の北斜面では、すでに信長の精鋭が攻め上っているかな?
 山頂には、遠征と先日までの沓掛くつかけ城攻めで疲労している今川義元の本陣があるんだよ。

 正面突破で信長子飼いの馬廻り連中が、キリをむように敵の前備えを突き破って本陣に突っ込んでいるんだろうな。あいつら超強えから。


 ただいま俺、明智十兵衛光秀は負けた今川義元が、多分大高城へ逃げていくじゃね?という逃走ルートに伏せています。


「また訳の分かんね~ことを。
 それより十兵衛よ。本当にこっちへ来るんだろうな。わざわざ勝手働き覚悟でお主について来たんだ。
 間違ったら、ただじゃ済まねえぞ。この乾坤一擲けんこんいってきの大勝負で功名を立てねば、金輪際信長さまの勘気が解けない」

 となりで伏せている大男。
 こいつ、前田利家といいます。 
 加賀前田百万石作っちゃった人。

 だけど、ただいま無職。
 就活中。
 俺と同じだね。

 ただ違うのは、こいつは信長の子飼いの部下であったこと。茶坊主を斬り殺して出奔しゅっぽんした。元気いっぱいヤンチャな22歳の男の子。

 浪人たちが戦に参加する陣借り受付で知り合ったとき、俺が「良いことをした!」と大声で褒めてやったら、意気投合したんだよ。

 坊主は俺の敵だ。


「ああ。色々な説があるが、義元は桶狭間山から南へ逃げてくる。
 大高城に入りたいんだろうな」

「そこを仕留めるか」

「そうだ。義元の首取れば、帰参ができるんじゃね?」

 前田利家よ。
 お前。あと3年は許してもらえない可愛そうなやつだけど、俺の伝手つてになって一緒に再就職だ!
 感謝してくれてもいいんだからね。


「それにしても十兵衛。なんで先のことを知っているんだ?
 さっきの雹も言い当てた。
 まさか正体は坊主か陰陽師か?」

「あいつらと一緒にするなっ!
 俺は霊感商法が大っ嫌いだ!
 あいつらを根絶するのが、俺の人生の目標の一つなんだよ」

 話すと長くなるので省略するけど、14年前まで俺は令和の時代に生きていた。そこで新興宗教に家財全部を吸い取られて、散々な目に合ったんだ(泣

 だから許せん。
 全ての腐れ宗教を根絶やしにしてくれる!

 とまあ、そう願っていたら変な坊主姿の奴に、この世界へ強引に連れてこられたわけ。Re:0歳から始める戦国幼児苦労譚とか、思い出したくないよ。

 齢12で父、討ち死に。
 母、病死。
 父、まさかの明智光秀?

 落ち武者狩りを逃れている所を助けてくれた行商人のおっさんに見栄張って光秀と名乗ったら、苦笑いしながらも仲間にしてもらい、なぜかそのままいみな(光秀とか信長という名前の部分)になっちゃいました。



「御主人さま。
 本陣、動き始めましたです。
 御用意を~」

 草木で偽装した矢盾に隠れている俺たちのすぐ後ろ。
 水路の凹みに身を隠して、四方を警戒していた元伊賀忍アゲハが、妹系のアニメ声で伝えて来る。

 黒髪を目立たないように灰色に染め、後ろで三つ編みにしている。まるで銀髪三つ編み少女だよ。

 どう見ても現代人の忍者のイメージとはかけ離れている髪型だけど、忍者らしくない目立つからやめろと言っても、意味深に顔を赤らめて「これでいいです、ぽっ」と小さな声で答えるのみ。

 色鮮やかな錦の切れ端をリボン結びで留めようとしたときは、流石に止めた。その時は、とても残念な顔をしていた。
 世の中に絶望を感じた様な目つきだった。

 装束は俺の勧めで、今回は季節に合わせた自衛隊の迷彩服3型を少しコーデして色を濃くしたものだ。

 布地がやわなのに加えて、色素材がなさ過ぎてちょっと物足りないのが残念。

 そして、このアゲハは壊滅的に家事スキルが低いんだよ。
 自作しているけど布を破ってしまうたびに、俺の方を見て世界の終わりを目にしたような表情をする。

 結局、仕方がないので俺が繕ってやるんだよなぁ。


「目の前、15間(30m)。深田の中の一本道だ。逃げ場はない。
 こちらからは、あぜ道が2本。
 手はず通り、そこを伝って襲撃するぞ」

 アゲハの小さな手が、俺の小さな背中に背負った長大な4丁の鉄砲を外して油紙を取り払い、俺に渡す準備をしている。

 熊の毛皮で作った尻当ての上に腰を下ろし、片膝を立てる。
 その膝の上に俺の身長より長い150cmくらいある長大な銃身を載せ、発砲準備。

「さて。
 俺が最初に4発発砲。次に弩弓どきゅう(クロスボウ)を4射。アゲハはコンパウンドボウで6射。
 敵の足軽頭以上の、指揮をとっている奴を狙う。
 あとは又左。槍の出番だ。
 よろしくな」


 利家はその大きな手をがっつりと握り、
「応よ」
 と頼もしく返事を返してきた。


 今川の馬廻り衆が、坂を降りて来た。
 俺は引き金を「ことり」と落とした。


 遂に始まっちまった~。
 俺、明智十兵衛光秀の戦が。
 ガクブルだよね、殺しが当たり前の戦国時代なんて。
 齢14(実年齢44だけど)。
 ビビリなのは仕方がないさ。

 けどせっかく戦国時代に生きるんだ。
 令和の時代では、絶対に手に入らないだろう憧れの年金生活と安楽な老後を目指して、この戦国の世を楽して生き延びるんだ。

 これから勝ち馬、織田家に早めに就職する。光秀って中途採用でみんなからハブられて苦労したみたいだからね。。出木杉君だったんだろうね。

 桶狭間ごろから正社員になっていれば、そんなに邪険にされないはず。
 光秀っぽいことすると危険だから目立たず、それでいてちょっとは勲功立てて。そうすりゃ生き残れると思う。無理しなければ。

 この正史の知識でチートできる範囲でチートしたいけど、あまり自信はない。だって俺の知識、全部サブカルだし~。

 だがそれでも同人ゲームも含めて戦国物は大抵プレイしている。
 きっとうまくいくはずだ。
 そうに違いない。
 きっとそうだ。
 そう思いたい。
 だといいな。
 であってくれ~~!


 で、最後の仕上げは、ここに強引に連れて来た腐れ坊主。奴を斬り捨てる。どこにいるかはまだ見つけていないが必ず見つけだしてやる。顔はしっかりと憶えている。

 お前の頼み、『日本の伝統的文化を守れ』なんかくそくらえ!
 この時代を限りなく俺の住み慣れたオタク文化満載な世にするんだ。
 
 大きな城建てて、その片隅に小さな6畳間作って、以前のサブカル空間を再現して至福の時間を取り戻してやるのだぁ~!




 ◇ ◇ ◇ ◇

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