73 / 101
む
しおりを挟む
オルレアンにはすっかり忘れていたことがあった。そう、それは、穴をよじ登るためのはしごだ。それをニームが引き上げてしまったばかりに、オルレアンは穴の奥へ探索に出かけたのであった。オルレアンは暗闇の中を気の向くままに歩き進めながら、元の穴の下に戻れたとしても、自分はどうやって穴をのぼればいいのだろうか。オルレアンはあてもないまま歩き続けた。そのときはまた、穴の底から、おーいと叫んでみればいい。運がよければ、クモの糸くらいは天から垂れてくるかもしれない。オルレアンはそのような楽観的な態度で、恐れも不安もなく、暗闇を突き進んだ。そのうち、天から光が差し込む、地面にぽっかりと光の輪のできたところに、オルレアンはたどりついた。そのまま光に吸い込まれて、どこまででもいけそうだと思った。オルレアンはその中に立つと、上を見上げた。青い穴がすっぽり空いていた。それがいつの青空かはっきりとはいえなかったが、たぶんあちらで過ごした時間のぶんだけ、こちらの時間も過ぎたのだろうと思った。オルレアンの見上げた青空が、アルルの庭で穴に入る前に見上げた青空と同じ色だと、オルレアンは思った。
オルレアンははしごを上って無事に穴のから抜け、裏庭を出た。錠前で閉ざされていたはずの鉄柵も、錠前が外されてあった。オルレアンはパスィヤンス病院の庭を通り過ぎ、門の外に出て、歩みを進めた。
オルレアンはパスィヤンスのどこにアルルがいるのかを知らなければならなかった。闇雲に病院中を走り回ってもたぶん徒労に終わるだけだろう。オルレアンは老婆の宿へと向かった。オルレアンが十年後の約束をしたのはアルルとだけではなかった。オルレアンは下準備をすでに終えていた。あるいは、終わっていたといってもよかった。オルレアンは大工と約束していた。パスィヤンス病院を設計したあの大工だ。パスィヤンス病院の構造について、いちばん詳しいのは誰か。設計した人間に決まっている。アルルがどこにいるのかを知らなければ、アルルを救い出すことはできない。
十年前の世界で、オルレアンは大工を訪ねていた。十年後、大工からパスィヤンス病院の設計図をもらいたいと依頼するためだった。大工はダンケルクと話していたときと同じ小屋の中にいた。オルレアンは中からダンケルクの声が聞こえないことを確かめると、小屋に入っていった。大工は驚いた様子もなく、オルレアンを見た。オルレアンは手短にいった。
オルレアンははしごを上って無事に穴のから抜け、裏庭を出た。錠前で閉ざされていたはずの鉄柵も、錠前が外されてあった。オルレアンはパスィヤンス病院の庭を通り過ぎ、門の外に出て、歩みを進めた。
オルレアンはパスィヤンスのどこにアルルがいるのかを知らなければならなかった。闇雲に病院中を走り回ってもたぶん徒労に終わるだけだろう。オルレアンは老婆の宿へと向かった。オルレアンが十年後の約束をしたのはアルルとだけではなかった。オルレアンは下準備をすでに終えていた。あるいは、終わっていたといってもよかった。オルレアンは大工と約束していた。パスィヤンス病院を設計したあの大工だ。パスィヤンス病院の構造について、いちばん詳しいのは誰か。設計した人間に決まっている。アルルがどこにいるのかを知らなければ、アルルを救い出すことはできない。
十年前の世界で、オルレアンは大工を訪ねていた。十年後、大工からパスィヤンス病院の設計図をもらいたいと依頼するためだった。大工はダンケルクと話していたときと同じ小屋の中にいた。オルレアンは中からダンケルクの声が聞こえないことを確かめると、小屋に入っていった。大工は驚いた様子もなく、オルレアンを見た。オルレアンは手短にいった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる