うさぎ穴の姫

もも

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 オルレアンは老婆に老婆の未来をそう忠告した。
「なせそのようなことがわかる」老婆はオルレアンの予言に素直に耳を傾けた。
「ぼくはそれを知っているからです」
「では、なぜそれをわざわざ私に教えてくれる」
「目の前にいるあなたはいつ息絶えてもおかしくないようにさびれている。ぼくの知っているあなたは生き生きとしていた。今のあなたは生きる目的を失っているようにみえる。あなたに生きる目的を差し上げましょう」
「ふん、親切なこった」
 老婆はそこではじめてオルレアンの言葉に興味なさそうにして、視線をそらした。「お主は私のことなど考えていないさ。お主の本当の目的はなんだ」
「あなたの力を借りたい」
「その目的は」老婆はオルレアンに興味を取り戻したようだった。
「あなたはアルルという少女を知っていますね」オルレアンは尋問のようにそう聞いた。そのことが老婆を警戒させたのか、老婆は「知らない」と目を泳がせながらそうウソをついた。
「なぜウソをいうんです」
「アルルなんて娘は知らない」
「そんなはずはない」
「では逆に聞こう。なぜお主は私がアルルという娘を知っていると知っている。なぜ私がその娘を知っていると思う」
「あなたはパスィヤンス病院の最初の患者だった。そしてそのとき、アルルを見たんじゃないですか?」
 老婆は眼球が液体となってこぼれ落ちてしまうかと思うように、目を見開いて、目を震わせた。オルレアンの推測は的を射たもののようだった。オルレアンは言葉を続けた。「おそらくあなたがアルルを見たのは偶然だった。アルルの両親はあなたにアルルを見せるつもりなんてなかった。しかし絶対に見せてはいけないものという神経質で脅迫的な考えも当時はまだなかったのかもしれない。ダンケルクは名医の評判を得るにつれ、アルルを大切に保護すべきものから、隠し通さなければならないものに、なかったもののようにしなければならなくなった」
 オルレアンは自分の推理をそう披露した。老婆は近くに置いてあったロウソクを燭台ごと手にとった。
「お主は一体なにものだ」
 老婆の警戒心は依然として解かれなかった。むしろオルレアンの当時を直に見てきたような叙述は、老婆の恐怖心をむしろたかぶらせた。老婆が手に持っているロウソクの火は、オルレアンには向けられていなかった。老婆はそれでオルレアンに危害を加えようとは思っていないようだったし、与えたとしても危害の程度はたかが知れた。老婆がそのか細い火で破滅させたがっているのは自分自身だった。
「あなたはなにに怯えているのですか?」
 



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