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オルレアン、ニームと口論になる
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オルレアンのその答えにニームはしばらく次の言葉を失って、肩を落としていたが、ニームはやがて喉の奥を鳴らすようにして苦しそうに笑うと、怒りを向ける矛先を失ったように自分の右の腿をドンドンとなぐった。
「ぬるい!ぬるすぎるぞ!」ニームは唾を飛ばして、オルレアンにそう叫んだ。
「なぜ君が怒る」
「これだけぼくを巻き込んでおいて、君が求めていたのはその程度のものなのか!」
「悪いが、君が勝手に巻き込まれてきたように、ぼくには見える」
「君はなんという無責任だ」
「ぼくがなにを見つければきみは満足したというんだ。神の正体か、それとも善の定義か」
「無責任なものは、たいていそういう戯言を言って真面目な人間を見下そうとする」
「しかしぼくには本当にわからないんだ」
「なにが」
「君はこの病院になにも後ろめたいことがないことが一番の満足ではないのか」
「それは」ニームは顔面を蒼白させたが、額からは変わらず汗が流れ続けていた。
「まるで君はぼくにこの病院の秘密を見つけて欲しいみたいだ。君はなにか知っているのではないか?」
「ぼくはなにも知らない。ほんとになにも知らない。ぼくがなにも知らないのはなにもないからだ」
ニームはひどく怖れ震えていたが、ウソをついているようにもオルレアンには見えなかった。
「やはり今日は帰ったほうがいいんじゃないか」オルレアンは冷静にそう提案した。
「ぼくは平気だ」
「平気そうには見えない」
「裏庭に入るチャンスは今日しかないぞ」
「それならそれでしかたない」
ニームはひどく煩悶しているようだったが、顔中の汗を上着でぬぐって、「ぼくは大丈夫さ。さあ行こう」とオルレアンの言葉を待たずに裏庭の中に進んでいってしまった。それはオルレアンにとって、オルレアンの行動の選択肢を最も限定してしまう行為であった。オルレアンは半ば強制されて、ニームに続いて裏庭を歩いて行った。
ニームは草をかけわけ率先してうさぎの住む巣穴を探しているようだったが、オルレアンはその近くで同じように土いじりをしていたが、先ほどからとは一転して、たぶんうさぎの巣穴は見つからないのだろうと感じていた。そして一方で、防空壕は見つかるのだろう。そして、防空壕はきっとニームが見つけ出してくれるのだろうと予感していた。
「あった!あったぞ!」
オルレアンの予感に応えるように、ニームがそう声を張り上げた。オルレアンはニームに近づいて見ると、そこにはぽっかりとひとがひとりずつ入っていけるくらいの小さな穴が空いていて、穴の外にかぎ爪がついた、下に降りるためのはしごがかかっているのが見えた。
「ぬるい!ぬるすぎるぞ!」ニームは唾を飛ばして、オルレアンにそう叫んだ。
「なぜ君が怒る」
「これだけぼくを巻き込んでおいて、君が求めていたのはその程度のものなのか!」
「悪いが、君が勝手に巻き込まれてきたように、ぼくには見える」
「君はなんという無責任だ」
「ぼくがなにを見つければきみは満足したというんだ。神の正体か、それとも善の定義か」
「無責任なものは、たいていそういう戯言を言って真面目な人間を見下そうとする」
「しかしぼくには本当にわからないんだ」
「なにが」
「君はこの病院になにも後ろめたいことがないことが一番の満足ではないのか」
「それは」ニームは顔面を蒼白させたが、額からは変わらず汗が流れ続けていた。
「まるで君はぼくにこの病院の秘密を見つけて欲しいみたいだ。君はなにか知っているのではないか?」
「ぼくはなにも知らない。ほんとになにも知らない。ぼくがなにも知らないのはなにもないからだ」
ニームはひどく怖れ震えていたが、ウソをついているようにもオルレアンには見えなかった。
「やはり今日は帰ったほうがいいんじゃないか」オルレアンは冷静にそう提案した。
「ぼくは平気だ」
「平気そうには見えない」
「裏庭に入るチャンスは今日しかないぞ」
「それならそれでしかたない」
ニームはひどく煩悶しているようだったが、顔中の汗を上着でぬぐって、「ぼくは大丈夫さ。さあ行こう」とオルレアンの言葉を待たずに裏庭の中に進んでいってしまった。それはオルレアンにとって、オルレアンの行動の選択肢を最も限定してしまう行為であった。オルレアンは半ば強制されて、ニームに続いて裏庭を歩いて行った。
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「あった!あったぞ!」
オルレアンの予感に応えるように、ニームがそう声を張り上げた。オルレアンはニームに近づいて見ると、そこにはぽっかりとひとがひとりずつ入っていけるくらいの小さな穴が空いていて、穴の外にかぎ爪がついた、下に降りるためのはしごがかかっているのが見えた。
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