うさぎ穴の姫

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オルレアン、裏庭に入る

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翌日、オルレアンはニーム病院の前で落ち合ったが、ニームは院長に挨拶と裏庭に入る許可をもらうために、ダンケルクに面会を求めにまず院内に入るというのだった。
「まず、君ひとりで建物の裏に回っていってくれ。病院の壁に沿って歩いていけば柵が張られたところまでたどり着くだろう。そこが裏庭だ」
「ぼくも院長のところまで一緒に行こうか」
「君はぼくがなんのために君に付き合ってやっているのか忘れたのか」
「わかってるさ。なるべく早く頼むよ」
ニームは憤りを隠さない歩調で歩き去っていった。
オルレアンはニームから少し時間を置いてから、すでに知ったような顔で病院の門から入ると、人の目を盗んで、日当たりのいい穏やかな患者の顔であふれた公式な庭を通り抜けて、関係者以外立ち入り禁止の建物の裏側へ回った。庭で散歩している患者たちは、みな病人とは思えないほがらかな顔をしていた。悲しさの影はどこにも落ちていなかった。これだけの病人やケガ人を、ひとり漏らさず癒しているのであれば、ダンケルクはたしかに名医に違いなかった。
建物の裏側には、向こう側に入れないように柵が設置されていて、オルレアンの歩みを塞いでいた。柵には頑丈に鋭利なトゲがついた鉄線が敷かれていて、侵入者に対する敵意をむき出しにしていた。
オルレアンが暇を持て余して、うさぎがこの柵の下を掘って中に入った形跡はないか探して、あるいは自分も穴を掘ってニームを待たずに中に入ってしまおうかと考え始めたとき、ようやくニームが現れた。
「遅かったじゃないか」
「君はどの立場で文句を言うんだ」ニームはポケットから鍵を取り出して、柵につけられた南京錠を開けると、柵を押し開いた。「さあ、入るがいい」
「ちょっと待て」オルレアンはそう言ってニームをじっと見た。
「待てない。時間がない」ニームはせっかちにそう言って、足を小刻みにゆすっていた。
「君はひどく汗をかいている。体調が悪いのか?」
「ああ。今日はひどく暑いようだ」
「健康な若者である君が堪える暑さなら、この病院の患者たちはのんきに庭で散歩なんてできないだろう?」
「鍵を探すのに手間取っただけさ」ニームはそう言って何個か別の鍵もついた、裏庭に入るための鍵のついたキーチェーンをガチャガチャさせた。
「君が探してくれたのか」
「病院の邪魔になるようなことはさせないと言ってあっただろう」
「ありがとう」
「それで、君は入るのか入らないのか」
「もちろん入るさ」




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