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アトラクション3 ダークゴーランド
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「――っはぁ!」
ガバッ。カラカラの喉のまま、呼吸を繰り返す。
気が付けば、さっきの薄暗い通路にて座り込み、半裸の身体を抱き締めていた。
「……っ、うぅ」
涙腺が決壊した。
悔しくて、悲しくて、でも何よりも怖くて――、
「なんで、なんでぇ」
よりによって、あんな嫌いなヤツに。しかも女の身体で、どうして陵辱されないといけねーんだ? 私がナニをしたってんだ。
「(ま、さか)エリカと、この遊園地を、こき下ろしまくったから?」
いや、だとしても、こんな目にまで遭わされないといけないのか? そもそも何をどうなったら女になれんだよ。
知ってはいたがココは狂っている。ルールも、物も、精神も、何もかも全てが常軌を逸している!
「おか、しぃ。あり、えねぇ」
鼻水を何度か手の甲で拭く。柔らかくて小さく、震えていた。
うずくまっていたが、やがて寒さか、あるいは恐れか、五分としない内にヨロヨロと立ち上がっては、チノパンを引きずって歩き出す。
「ひぐっ、――くそぉ」
負けたうめきを無様に吐き出しつつ、壁にやった手が、小さな扉に触れる。
思考停止状態の私は何も考えず、いや、何も考えられずに、取っ手を回して中へと入ってしまう。ガチャ。
そこは狭い倉庫のようで、沈黙と暗黒のままに私を迎えた。
「(倉庫? か)寒みぃ」
上はマッパで、下はダボダボのチノパンなんて、犯してください、と言っているようなものであった。
「(どうした、ら)――ん?」
錆びだらけのロッカーが、壁の一角を並んで埋めていた。その一つだけが半開きになっており、藁にもすがる思いで手を突っ込む。
「暗くて見えないが、手に触ってんのは布か何か?」
引っ張りだした柔らかい素材にて、乳房のあたりに付着している気色悪い粘液を拭う。
「(乳首に付いた唾液)つまりさっきのは悪夢じゃないってことか――」
早く汚れを取るために力を込める、乳首を強く擦ってしまい、ピクンっと身体が浮くつど、
「っ――ぐぅ」
拭き取った粘液よりも倍の涙を流した。
「……?」
今更になって、手に掴んだ布の正体を確認する。入り口へと戻り、廊下から入る糸みたいに細い光にて確認する。
「なんで、こんなものが?」
それは女子高校生の制服とエロい黒のローライズショーツだった。
「(まぁ、無いよりはマシだが)……ブラはねーか」
戸惑いつつも、今の格好よりヒドくなることは無いだろうと、握りしめる。
相当の屈辱に耐えて、チノパンとボクサーパンツを脱ぎ捨てた後、制服一式とショーツを着用する。音もなく、柔らかな布が、やはり柔らかな肌と触れ合う。
胸回りがやや窮屈なことと、スカートの丈がかなり短いことを除けば、何とか着こなせた。鏡は無いものの、おそらく現役女子高生と言っても通用するレベルだと思う。全く嬉しくないが――、
「(にしても)はぁ」
廊下の照明にて気付いたが、私が通っていた高校の女子が着ていたものと、デザインがそっくりだった。
一体、遊園地はどうなってんだ。そもそも本当に遊園地なのか?
「……とにかく急ごう」
出来るだけ足音を忍ばせて、この悪夢から逃げ出すことを夢見て歩き出す。
「(もう、もう次に同じ目に遭わされるわけにはいかない。絶対に)――行ったか?」
私は汚れカビた化粧室から顔を覗かしつつ、途中で拾った黒のスニーカーのかかと部分直す。
制服に着替えて廊下を進んだ後、背後から迫る音に気付き、必死に走って化粧室へ隠れた。
さっき感じた気色悪い感覚の、残りカスが乳首を犯す中、
「フェ、フェイントとかじゃねーよな?」
一度は離れた足音に、もう一度だけ注意を払う。動くのは危険だが、じっとしているのはもっと危険な気がした。
なぜなら、この狂った世界そのものが、私を追い込んでいる気がしてならなかったからだ。
「(にしても、今更だがこのスカート)おかしすぎだろ」
丈が短か過ぎだ。裾が股下十センチメートルあたりって、ちょっと屈んだら余裕で見える。
「たまにくっそ短い丈の女子はいたけど、あれは胴元をヘソのあたりまで上げて履いているからだろ」
コレはただひたすら短い。
「(ま、見せなきゃいいだけの話か)とかく、今はこの気色悪い世界から脱出が大事だ」
――だが、どうやって?
考えながら化粧室を出てさらにと走る。すると、
「おっ?」
トンネルのような長い廊下の終点がようやく見えて、やっと屋外に出でられた。が、
「なん、だ? こりゃ――」
絶句する。
夜の、遊園地? っと言えばナイトカーニバルみてーなのを思い起こす、おめでたい奴がいるかもしれねーが、
「頭、おかしいだろ?」
月も星も無ぇ夜空の下、まず血だらけの馬や串刺しにされたマネキンが回る回転木馬が目に飛び込んでくる。次に拷問器具が配置され、よくわからない液体で満たされている珈琲食器、そして一見まともに見えるが、終着地点が壁になっている絶叫装置が林立していた。
それらどれもが赤と黒の光を明滅させて、不協和音と共に狂ったように動いていやがる。
しかも遠くを見ても、似たアトラクションが、鏡合わせみたく拡がっていて、なのに来客一人見当たらないという異常事態。
「くそっ。どう、する?」
振り返る。
オレが抜けてきた不気味な通路は依然そのままだが、ここを戻っても碌な目にはあわねーだろう。
「(なら、進むしかねーだろ)冗談じゃねぇよぉ」
力無く、この狂狂回る狂気所を歩く。どこからともかく生臭いような、嫌な臭いが立ち込めて、鼻を冒し始める。
歩き始めて五分。何がやばいって、このとち狂った景色じゃなくて、四方八方から鳴り響く怪音がたまらなく苦痛だった。
私がアトラクションの傍を歩くと、自己アピールみたくけたたましい音を鳴らし始める。
レリャレリャレリャー!
イーブブ、イーッブブ!
プルルルル、ドウドウ!
!ビウビブビブビブビ!
「くっそ、うるせぇ!」
オレの絶叫など簡単に掻き消されるほどで、耳を閉じても貫通してくるほどだ。
「――っ!」
突如、身体が強張り、頬を汗が伝う。なぜなら、目の端が捉えてしまったからだ。
前方に、あの、イカレ狂った道化師が、同じく狂った回転木馬に乗ってやがる。
ヤツは血管がちぎれそうなくらいに頭を回転させて、天を仰いで絶叫している。
「ハァ、ハァ、ハァ」
過呼吸のまま、見つけられていないことを祈りつつ、近くのお化け屋敷? みたいな建物の陰に身を隠す。もちろん入場はしない。
――大丈夫だ、バレてない。あいつは笑いながら乗り物で遊んでやがったのだから、
「ふぅ」
息を吐き出しつつ、三角座りで思考する。
だがどうすればいいんだ? あの道化師から逃げるったって、どこに逃げたら――、
「(普通の鬼ごっこなら制限時間か出口があるはず)だったら」
学の無い頭を捻りつつ、長考していたその時、
「……パンツ ミーエタ」
ふと、三角座りしている膝の下あたりから、声がする。
「あっ?」
私は思わず声をあげて、スカートを引っ張り立ち上がる。
壊れた玩具のような声は、小さな猿の人形っぽい何かから発せられていた。
「い、いつの間に」
マグカップくらいの大きさで、歯茎を剥き出しにしつつ、さっきの言葉を繰り返していた。
「パンツ ミーエタ! パンツ ミーエタ! パンツ」
「――死ねっ!」
カァン。思い切り蹴飛ばす。
「クロ! パンツ ミ―エタ ク」
バキャ!
壁に激突して壊れた。
「くそが、余計な体力使わせやがって」
肩で息をしつつ、汗を拭う。まるであのピエロ野郎とそっくりな口調であったために、異常に焦らされた。
――そう言えば。確か道化師は、オレを初めて捕まえた時に、五つ目、っと言い、さっきは四つ目、と言っていた気がする。
「これってどう考えても、カウントダウンだよな」
となるとチャンスはあと三回。それも保証はない。
逃げるしかねーけど、どうやっ、
「パンツ ミーエタ クロ……」
ゾワッ、っとする。
ぶっ壊した玩具に目をやるも、傾いており、壊れているのは間違いなかった。――となると?
オレは、それこそ壊れた玩具のように首を後ろへ回す。
パン。
オレの肩に、成人男性の二倍近くの赤い手袋が叩きつけられる。
「……ミィィッ、ツーメ、ツカマエタァ!」
「おいこらぁ、聞いてんのか、ユウ!」
バァン!
「ひっ!」
意識を取り戻した私は、制服姿そのままに椅子に座り、肩を震わせる。心臓が高鳴る。なぜなら、室内は明るく、しかも見覚えのある場所であったからだ。
夕陽が曇り硝子から差し込む六畳ほどの広さのそこは、――そうだ。高校の時の生活指導室にそっくりであった。
「――ったく。いい加減にしろよテメェ」
怒鳴り声の主は、ジャージ姿のやたらガタイの良いおっさんで、
「……なん、で?」
私が高校時代に最も嫌いだった生活指導員の教師だった。
「あ? なんでじゃねーだろお前!」
ガン!
「っ!」
目の前にある机の脚を蹴り、そのせいで細い鉄の脚が軽くひん曲がる。
――そうだ。コイツは俺の地毛が金髪であることや、ちょっと服装が崩れているとかでやたらと呼び出してきた糞先生だった。
噂じゃあ、保護者への面目を保つためとか、点数稼ぎとか色々と言われていたが――、
「問題だらけのお前は、ほんっとロクなことをしねぇなぁ。……おい、立て」
狂育指導よろしく、生徒が逆らえない理由があった。まず、あの筋肉ダルマみてーな身体に、柔道有段者という実績のためだ。さすがに手の出しようが無ぇ。
ましてや女の状態の私には――、
「(……いや、コイツなら)そう、だ」
今回の前に道化師野郎に掴まった時は、プライドが邪魔して助けを求められなかった。今回はその失敗を活かすしかない。
この異常事態、もはや藁にも縋る思いで訴える。
「――せんせぇ、聞いてくれよ!」
椅子に座る私は、壁のように立つヤツを見上げながら、甲高い声で説明する。
「わけわかんねぇピエロ野郎に追われてるんだ。助けてくれ!」
怯えと焦りが詰まった私の声が、狭い生活指導室に響く。
「……」
浅黒く焼けた眉間に、皺を刻みながらも一応は黙って聞いてくれた。
「先生だったら、あの道化師をぶっ倒せるかもしれねぇ。なぁ生徒を助けて――」
「さっきから何わけわかんねーこと言ってんだぁ! お前ぇ!」
バァン!
振り降ろされた丸太みてーな腕が怖くて、思わず頭を守るも、殴られたのは机だった。
「あのなぁ。他の連中が下校しているこの時間に、なんで呼ばれたのかわかってんのかぁ?」
――わからない。十回以上呼び出された俺には、どのことだったかなんて、覚えているわけが、
「立てっつたろオラァ!」
唾を飛ばしながら怒鳴る。糞、こんなことしてる間も、あの道化師野郎がどこで何をしているかわかんねーのに。
「(何でこの糞ヤバい状況がわからねーんだよぉ)――は、ぃ」
ガタッ。
下を向いて席を立つ。
「……」
何だ? また黙ってからの怒声か? それとも指導か? 私は下を向いているままだから、教師の表情とかは良くわかんねーけど。
ガァァン! ズリリ。
目の前の長机を壁へ引きずり押しやがった。これで私と教師を隔てるものはなくなった。
「ユウ」
あ、この感覚はやべぇ。張り手してきやがるパターンだ。私は思わず目を強く瞑る。
「――?」
だが、何もされない? ……ひょ、ひょっとして。今の私が女だからかな? 五秒くらい経ったかと思うと、
「なんだこの短いスカートは?」
「なっ」
思わず顔を上げる。そこには、いかにも気色悪い笑みを浮かべる教師の顔があった。四十台降半くらいの脂ぎった、いやらしい表情と共に、
「校則違反だよなぁ。この丈の長さは?」
確かに短けぇが、拾ったのがコレだったんだから仕方がないだろ? ――ってか、私以外にだって一人や二人はいただろうが。
「こんな見えそうな恰好しているから、他の男子生徒共が勉強に手を付けられず、悶々としちまうんだよ」
こいつ何の話してんだ? 頭まで筋肉で出来てんのか?
「せんせ。何を言って――」
「他に校則違反が無いかを確認する。スカートをたくし上げろ」
「……は?」
何、言ってんだコイツ。筋肉どころか、腐ってんじゃんーのか? 心臓が締め付けられるような恐怖を感じつつ、一歩、二歩と後退する。
「どうせお前のことだ。ヤリマンのビッチなんだろ? センセが確認してやるよ」
嗤いつつ、見下しながらこっちへ来やがる大男。糞くそ糞! ドン。
背面のドアに当たる。振り返って取っ手に細い指を絡ませる。ガチャガチャ!
「(なんで部屋の外から鍵が掛けられるんだよ)――うわっ!」
私の倍以上の大きな手で、細い腕を服の上から掴む。大人と子供に近い差すら感じる。
「おいユウ。センセの言うことが聞けねーなら、センセが直にやってやろうか?」
涎を垂らしそうな歪んだ口元と共に、私を部屋の隅へと追いやる。
ほんと最低なゴミ野郎だ。自分より何倍も弱い女を追い詰めるこの状況を愉しむなんて。
「(やばい、ヤバイけど)くぅ」
こいつの要求を呑むのはやばいけど、こいつが私に好き勝手するのはもっと狂気。
「ま、待ってセンセ!」
私は震える瞳で、すがるように見上げる。
「す、する。するから待って!」
見下した表情のまま、ヤツは手を離す。私はビクビクしつつ、両手をスカートの裾へ伸ばす。
「早くしろ」
涎を垂らす肉食獣に恫喝される、草食獣みたく危機的な状況だった。
……にしても、私は、こんな辱めを――大嫌いなこいつ相手に本気で受け入れるのか? 震える手が、迷って動かなくなる。
「――やっぱセンセが」
「! 待って、まって」
黒くて太い腕が伸びきる前に、私は思わず力一杯スカートの裾を掴みあげてしまう。
「……ぶっ、あっはっは! おい、ユウ。いくらたくし上げろって言っても、ヘソの上まで全力で上げるとか、頭弱すぎだろ」
狂師は指を指して唾を飛ばして嗤いやがった。
「ぁ」
僅かに残った私の紙切れみたいなプライドは、クシャクシャにされ、小便をかけられたようにすら感じた。
「あーっはっは!」
だが確かに、私も私だ。恐怖と緊張のせいとは言え、まるでラッコを垂直にしたみたいに、スカートを捲りあげて硬直するなんて、
「はぁ~、ほんと馬鹿だなお前。――まぁ頭が悪い女が履きそうな黒のエロパンツってのも納得だ」
恐怖と羞恥で言葉も出ねぇ。涙腺が熱くなる。
「おいおい。どうしちまった? ユウちゃん」
――糞が。決まってんだろ、悔しいんだよ。お前みたいな教師の皮を被った狂人野郎に、膝を屈して下着を見せているから――、
フニ。
「ひやゃやっ!」
「おいおい、ちょっと触っただけで可愛い声出すじゃねぇか」
絶叫の後、気持ち悪い感覚が股間付近で蠢く。私はワケが分からないと言った表情で、涙ながらに視線を下へ向ける。
ヤツのゴツゴツとした太くて浅黒い人差し指が、私の下着の一番柔らかい部分を押し撫でてやがる!
「指導教員として質問だ。何人とヤッたんだ? このいやらしいマンコでよぉ」
指の腹の部分で、押し上げたり擦ったりするつど、全身が鳥肌になったんじゃねーかってくらい、ゾワッとする。
「なに、すんだよ!」
私は思わずスカートの裾を手放し、元凶の太い腕を掴む――ガシ。
「あ? ほーれほれ」
スリスリスリ、ズニュ。
「ひやああぁぁぁ!」
情けなさと恐怖と、生理的嫌悪感で絶叫する! 私が両手でいくら掴んでも、先生の腕どこから指一本すら制御できず、何もかもヤラれたい放題のままだった。
「どうだ? だんだん気持ち良くなって来たんじゃねーのか? ユウちゅぅあ~ん」
徐々に顔を近づけながら、指に力を入れて来やがる。そのたびに、股間は柔らかく変形し、まるでゴキ●リ風呂に入れられたような感覚が、全身を冒す。
「やめっ、本当にもうやめてぇ!」
顔を歪めて懇願する。肉体の不快感と、精神の倒壊により、壊れた人形みたく頭を下げた。
――何より、嫌悪感以外の、何か得体の知れない脱力感が、股間を中心に広がりつつあるのに、底知れぬ恐怖を抱いたから、
「そんなにやめてほしいのかぁ?」
顔を近づけながらの耐え難い圧であったが、
「はい――、はいっ!」
プライドも何ももはやあったもんじゃない。首を竦めて目をつむり、涙ながらに何度も敬語でお願いする。すると――、
バッ。
鬼の腕みたいな怪腕が、ゆっくりと私の股間から離れる。
「えっ、――あっ」
や、やめてくれた?
ドクンドクンと、恐怖で打ち鳴らされた心臓が、やっと少しずつ脈を整えられる思いだ。
「せ、先生。ありがとう。私、本当に――」
「脱げ」
……は?
ジィィィン。頭の奥が痺れるような感じがする。さっきから、恐怖と安心の過度な往復で、考えることが出来なくなってきた。
「ユウ。パンツ脱げ!」
バァン! 直ぐ隣の壁がかなり強い力で殴られる。
「ひぅっ!」
なんで? すぐ隣は職員室なのに、何で誰もこの異変に気付かねんだよぉ!
「うぅ、っ」
だが、一つ前にピエロ野郎に掴まった時みたく、きっと救けは来ない。だったら、自分でやらないと、またコイツが犯るとか言い出しかねない。
「……」
涙の粒で視界が歪む中、せめて顔を背け、スカートの中に手を入れ、黒の下着を脱ぎ降ろす。
シュルル。布と皮膚が擦れる小さな音を立てる中、悔しくて言葉も出ねぇ。そんな私に、
「貸せ!」
返答する間もなく、脱いだばかりの下着を奪い取る。そしてあろうことか、
「スンスン……あ~、イヤらしい匂いがするぞ~。女子高生らしい、発情してるニオイが」
身体が氷みたく硬く冷たくなる。信じらねぇ、私が今しがた履いていた下着を、悦びながら嗅いでやがる。
「こっち来い」
ぶっとい手で、私の細い手首をグイっと掴む。もはや宙づりに近い状態で、さっきどかした壁際の机の上に座らせられる。
冷たくてツルツルな机の感触が、おなじくツルツルな生の尻と太腿に拡がる。
「な、ナニ、を」
震える唇に指を当てながら、呻くように質問する。
「せっかくだから、不純異性交遊について確認してやろう」
「ふ、フジュンイセイ?」
「ほんと、頭が弱えーなお前は。つまり、ユウちゃんの性器がどれくらい使い込まれているかの検査をするっことだ」
「! やめっ」
ガッ!
股を全力で閉じるも、片手で容易に、
「はい。御開帳~」
二割も力を使っていない、っといった様子で左右へこじ開けられる。柔らかな関節は、暴力野郎の欲しいままになまめかしく動く。
女の秘部が、照明灯の下で、文字通りさらされる。
「おっほ~、これが問題児ユウの大事な所かぁ」
もう何一つ遠慮しないという表情と共に、鼻息が届く距離まで顔面を近づけてくる。
「毛がだいぶ薄いなぁ~。剃ってんのかぁ?」
「(狂ってやがる狂ってやがる狂ってやがる)やめろよぉぉ!」
過呼吸気味に叫び、両手で頭に掴みかかろうとすると。
ガシッ!
「ったい!」
私の細腕は簡単に掴まれるが、その隙に股を締め直す。だが、手首にギリギリと力を込められる。血が、脈が止まりそうになる。
「痛いっ、ひたぃ!」
鈍くも潰されるような激痛で、涙と声が同時に漏れ出る。
「ユウ。肢を開け」
ギチギチと、灼けるような激痛で意識が遠退きそうであった。私はあっけなく、
「――ます。開きますぅ!」
バサ!
スカートがはためく中、一瞬で白旗をあげる結果となった。
スッ。
腕の痛みが弱くなる。狂師が手を離したからだろう。
「さっきから思うんだが、ユウのそういう泣いている顔を見るとさぁ」
ヤツの息が股間に何度もあたる。そのつど、薄い陰毛が海の中の海藻みたく揺れ動く。
「本当にゾクゾクしてくるんだよなぁ」
涙で引っ付く長いまつ毛の隙間から、眼下を見下ろす。
「じゃあ、いただきあ~す」
……そう地獄を。
チュブ、レロ。
「ッッッ!」
もうクタクタの身体が壁にむかってビーンっと伸びてぶつかる。
「ハムハム、――ぷはぁ。これがユウの陰毛の味かぁ」
糞糞糞糞嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
信じらんねぇ、コイツは私の下の毛を口に含んで、舐め吸っては、口で引っ張るって行為を繰り返しやがる!
「どれどれ~」
グィッ。
そしてでかくて毛の生えた指を、肢の根元付近へと這わして、トドメと言わんばかりにダメ押しにと拡げやがった。
「はい。観音開き~。おぉ、すげぇ。百五十度くらい開脚できてんぞ、お前」
「ひう、っ」
暴力で好き勝手される私は、もう泣きながら顔を横に向けるくらいの抵抗しか出来なかった。
「じゃあユウちゃんの小陰唇、センセの舌で捲ってあげま~す」
「やめ、てぇ……」
レロ、レロン!
「も、やぁぁぁ!」
言葉に出来ない感触と共に、私の小さな肉のひだは、狂師のでかい筋肉の塊みてーな舌の前に、何の抵抗もなく左右に開かれて、唾液を塗りたくられる。
「おほっ、ユウ。なんだよこの処女桃色は!」
教師の眼前に、私の未使用の膣が明け開かれる。
「ちょ、ちょっと待てちょっと待て。まさか、ばっ、処女ってことはねーよな!」
何、興奮してやがる。キモイってレベルじゃねぇぞ!
コイツの手が初めて震え、同時に私の内太腿を痛いくらいに押し握り、そして。
「あ、味見させろユウ!」
「味見てって何……ひやぁぁ!」
レロン、チュル、チュル。
嘘だ嘘だ嘘だぁ! こ、コイツの、し、舌が。私の膣の中を、な、舐めやがった!
頭が破裂しそうな気色悪い感覚が股間から全身へ伝う一方、いくらかの痛みを感じる。
「ぷはっ。……おいおいマジか。教員の間でクソビッチと名高いあのユウちゃんが、まさかの処女だったなんてよぉ!」
教員なんて全員死ね!
――だがそれより、顔中を液体塗れにして、なお私の股間を舐め吸うこの教師を、ど、どうにかしねーと、
レロレロ、ピチャピチャ。
「ひっ、ぐぅ」
わざと音を立てて舐められる。肥溜めを口に突っ込まれるよりも不快な感触を股間から感じる中、
「(……なん、だ?)ぁ、ぅ」
透明な感じの、よくわからないナニかに、膣を押し上げられるような感じがする。女になってから何度か感じ、そして目を背けた感覚だ。
「どうだ? ユウ、俺のクンニテクは?」
気持ちいいわけねーだろボケ! 今になって確信する。AVなんてレイプ物以外も全部やらせだ!
でかい舌で、俺の膣口と尿道口を舐め上げ、飽きたと思うと膣道の肉壁を肉棒みたいに擦りやがる。
「ハァ、ハァ」
十分くらい経ったか? 未だに強姦狂師からの脱出方法を思いつけないまま、好き勝手にされ、
「美味しいぞぉ、お前のマン汁~」
罵られながら耐える。
「(だが、なんだ? 腹の下あたりが、なんだか、あちぃ)う、えっ」
ついに頭がおかしくなってきのたか、ボーっとしてくる。下腹部に変な、だが暗い熱みたいなのを感じ始めた時、
「あ、こっちを舐め忘れてた」
無精髭の口の周りをべちゃべちゃにしつつ、視線を僅かにズラす。
「(――なに言ってやが)……いいいっ!」
歯茎を剥き出しに、青筋を立てて叫んでしまう。
コイツのふざけた舌が、私の陰核をほじくりやがった!
「おおっ、そんなに気持ちいいか。センセ、自信が出てくるなぁ」
キショい視線で見上げられることで、私の視界すらも犯してくる。
「や、やめ!」
チュゥ、ロレ、チュゥ。
「! あああぁ!」
凄まじい痛みと、それ以上の得体の知れない電気みてーな何かが、私の中の大事な何かを弛緩し、同時に膨張させる。
「やめ。やめっ、やめぇ!」
やばい、何かクル! わかんねーけど、絶対ヤバい感じのが、風船みてーに腹の下で膨らみやがる!
「よぉし、彼氏じゃ無い、俺の舌でクンニ初イキしろ、ユウ!」
「めてっ! ほんとやめてぇ!」
赤く腫れそうな陰核を、前歯で触れ、さらに的確につつき、あげく口で舐め吸いやがる!
天井を向きつつ、私は開けた口から涎を垂らしているのにすら気付かず、最後は、
「チュバチュバ、――ユウ、いっちまえぇ!」
「あーっ! あああっ!」
ジュババッ!
「――ぁ」
チョロ、チョロロロロ……。
ビクッと身体が痙攣したように横に揺れた。時間の感覚が失われた後、温かい感触が、股間から沁み拡がった。
ガバッ。カラカラの喉のまま、呼吸を繰り返す。
気が付けば、さっきの薄暗い通路にて座り込み、半裸の身体を抱き締めていた。
「……っ、うぅ」
涙腺が決壊した。
悔しくて、悲しくて、でも何よりも怖くて――、
「なんで、なんでぇ」
よりによって、あんな嫌いなヤツに。しかも女の身体で、どうして陵辱されないといけねーんだ? 私がナニをしたってんだ。
「(ま、さか)エリカと、この遊園地を、こき下ろしまくったから?」
いや、だとしても、こんな目にまで遭わされないといけないのか? そもそも何をどうなったら女になれんだよ。
知ってはいたがココは狂っている。ルールも、物も、精神も、何もかも全てが常軌を逸している!
「おか、しぃ。あり、えねぇ」
鼻水を何度か手の甲で拭く。柔らかくて小さく、震えていた。
うずくまっていたが、やがて寒さか、あるいは恐れか、五分としない内にヨロヨロと立ち上がっては、チノパンを引きずって歩き出す。
「ひぐっ、――くそぉ」
負けたうめきを無様に吐き出しつつ、壁にやった手が、小さな扉に触れる。
思考停止状態の私は何も考えず、いや、何も考えられずに、取っ手を回して中へと入ってしまう。ガチャ。
そこは狭い倉庫のようで、沈黙と暗黒のままに私を迎えた。
「(倉庫? か)寒みぃ」
上はマッパで、下はダボダボのチノパンなんて、犯してください、と言っているようなものであった。
「(どうした、ら)――ん?」
錆びだらけのロッカーが、壁の一角を並んで埋めていた。その一つだけが半開きになっており、藁にもすがる思いで手を突っ込む。
「暗くて見えないが、手に触ってんのは布か何か?」
引っ張りだした柔らかい素材にて、乳房のあたりに付着している気色悪い粘液を拭う。
「(乳首に付いた唾液)つまりさっきのは悪夢じゃないってことか――」
早く汚れを取るために力を込める、乳首を強く擦ってしまい、ピクンっと身体が浮くつど、
「っ――ぐぅ」
拭き取った粘液よりも倍の涙を流した。
「……?」
今更になって、手に掴んだ布の正体を確認する。入り口へと戻り、廊下から入る糸みたいに細い光にて確認する。
「なんで、こんなものが?」
それは女子高校生の制服とエロい黒のローライズショーツだった。
「(まぁ、無いよりはマシだが)……ブラはねーか」
戸惑いつつも、今の格好よりヒドくなることは無いだろうと、握りしめる。
相当の屈辱に耐えて、チノパンとボクサーパンツを脱ぎ捨てた後、制服一式とショーツを着用する。音もなく、柔らかな布が、やはり柔らかな肌と触れ合う。
胸回りがやや窮屈なことと、スカートの丈がかなり短いことを除けば、何とか着こなせた。鏡は無いものの、おそらく現役女子高生と言っても通用するレベルだと思う。全く嬉しくないが――、
「(にしても)はぁ」
廊下の照明にて気付いたが、私が通っていた高校の女子が着ていたものと、デザインがそっくりだった。
一体、遊園地はどうなってんだ。そもそも本当に遊園地なのか?
「……とにかく急ごう」
出来るだけ足音を忍ばせて、この悪夢から逃げ出すことを夢見て歩き出す。
「(もう、もう次に同じ目に遭わされるわけにはいかない。絶対に)――行ったか?」
私は汚れカビた化粧室から顔を覗かしつつ、途中で拾った黒のスニーカーのかかと部分直す。
制服に着替えて廊下を進んだ後、背後から迫る音に気付き、必死に走って化粧室へ隠れた。
さっき感じた気色悪い感覚の、残りカスが乳首を犯す中、
「フェ、フェイントとかじゃねーよな?」
一度は離れた足音に、もう一度だけ注意を払う。動くのは危険だが、じっとしているのはもっと危険な気がした。
なぜなら、この狂った世界そのものが、私を追い込んでいる気がしてならなかったからだ。
「(にしても、今更だがこのスカート)おかしすぎだろ」
丈が短か過ぎだ。裾が股下十センチメートルあたりって、ちょっと屈んだら余裕で見える。
「たまにくっそ短い丈の女子はいたけど、あれは胴元をヘソのあたりまで上げて履いているからだろ」
コレはただひたすら短い。
「(ま、見せなきゃいいだけの話か)とかく、今はこの気色悪い世界から脱出が大事だ」
――だが、どうやって?
考えながら化粧室を出てさらにと走る。すると、
「おっ?」
トンネルのような長い廊下の終点がようやく見えて、やっと屋外に出でられた。が、
「なん、だ? こりゃ――」
絶句する。
夜の、遊園地? っと言えばナイトカーニバルみてーなのを思い起こす、おめでたい奴がいるかもしれねーが、
「頭、おかしいだろ?」
月も星も無ぇ夜空の下、まず血だらけの馬や串刺しにされたマネキンが回る回転木馬が目に飛び込んでくる。次に拷問器具が配置され、よくわからない液体で満たされている珈琲食器、そして一見まともに見えるが、終着地点が壁になっている絶叫装置が林立していた。
それらどれもが赤と黒の光を明滅させて、不協和音と共に狂ったように動いていやがる。
しかも遠くを見ても、似たアトラクションが、鏡合わせみたく拡がっていて、なのに来客一人見当たらないという異常事態。
「くそっ。どう、する?」
振り返る。
オレが抜けてきた不気味な通路は依然そのままだが、ここを戻っても碌な目にはあわねーだろう。
「(なら、進むしかねーだろ)冗談じゃねぇよぉ」
力無く、この狂狂回る狂気所を歩く。どこからともかく生臭いような、嫌な臭いが立ち込めて、鼻を冒し始める。
歩き始めて五分。何がやばいって、このとち狂った景色じゃなくて、四方八方から鳴り響く怪音がたまらなく苦痛だった。
私がアトラクションの傍を歩くと、自己アピールみたくけたたましい音を鳴らし始める。
レリャレリャレリャー!
イーブブ、イーッブブ!
プルルルル、ドウドウ!
!ビウビブビブビブビ!
「くっそ、うるせぇ!」
オレの絶叫など簡単に掻き消されるほどで、耳を閉じても貫通してくるほどだ。
「――っ!」
突如、身体が強張り、頬を汗が伝う。なぜなら、目の端が捉えてしまったからだ。
前方に、あの、イカレ狂った道化師が、同じく狂った回転木馬に乗ってやがる。
ヤツは血管がちぎれそうなくらいに頭を回転させて、天を仰いで絶叫している。
「ハァ、ハァ、ハァ」
過呼吸のまま、見つけられていないことを祈りつつ、近くのお化け屋敷? みたいな建物の陰に身を隠す。もちろん入場はしない。
――大丈夫だ、バレてない。あいつは笑いながら乗り物で遊んでやがったのだから、
「ふぅ」
息を吐き出しつつ、三角座りで思考する。
だがどうすればいいんだ? あの道化師から逃げるったって、どこに逃げたら――、
「(普通の鬼ごっこなら制限時間か出口があるはず)だったら」
学の無い頭を捻りつつ、長考していたその時、
「……パンツ ミーエタ」
ふと、三角座りしている膝の下あたりから、声がする。
「あっ?」
私は思わず声をあげて、スカートを引っ張り立ち上がる。
壊れた玩具のような声は、小さな猿の人形っぽい何かから発せられていた。
「い、いつの間に」
マグカップくらいの大きさで、歯茎を剥き出しにしつつ、さっきの言葉を繰り返していた。
「パンツ ミーエタ! パンツ ミーエタ! パンツ」
「――死ねっ!」
カァン。思い切り蹴飛ばす。
「クロ! パンツ ミ―エタ ク」
バキャ!
壁に激突して壊れた。
「くそが、余計な体力使わせやがって」
肩で息をしつつ、汗を拭う。まるであのピエロ野郎とそっくりな口調であったために、異常に焦らされた。
――そう言えば。確か道化師は、オレを初めて捕まえた時に、五つ目、っと言い、さっきは四つ目、と言っていた気がする。
「これってどう考えても、カウントダウンだよな」
となるとチャンスはあと三回。それも保証はない。
逃げるしかねーけど、どうやっ、
「パンツ ミーエタ クロ……」
ゾワッ、っとする。
ぶっ壊した玩具に目をやるも、傾いており、壊れているのは間違いなかった。――となると?
オレは、それこそ壊れた玩具のように首を後ろへ回す。
パン。
オレの肩に、成人男性の二倍近くの赤い手袋が叩きつけられる。
「……ミィィッ、ツーメ、ツカマエタァ!」
「おいこらぁ、聞いてんのか、ユウ!」
バァン!
「ひっ!」
意識を取り戻した私は、制服姿そのままに椅子に座り、肩を震わせる。心臓が高鳴る。なぜなら、室内は明るく、しかも見覚えのある場所であったからだ。
夕陽が曇り硝子から差し込む六畳ほどの広さのそこは、――そうだ。高校の時の生活指導室にそっくりであった。
「――ったく。いい加減にしろよテメェ」
怒鳴り声の主は、ジャージ姿のやたらガタイの良いおっさんで、
「……なん、で?」
私が高校時代に最も嫌いだった生活指導員の教師だった。
「あ? なんでじゃねーだろお前!」
ガン!
「っ!」
目の前にある机の脚を蹴り、そのせいで細い鉄の脚が軽くひん曲がる。
――そうだ。コイツは俺の地毛が金髪であることや、ちょっと服装が崩れているとかでやたらと呼び出してきた糞先生だった。
噂じゃあ、保護者への面目を保つためとか、点数稼ぎとか色々と言われていたが――、
「問題だらけのお前は、ほんっとロクなことをしねぇなぁ。……おい、立て」
狂育指導よろしく、生徒が逆らえない理由があった。まず、あの筋肉ダルマみてーな身体に、柔道有段者という実績のためだ。さすがに手の出しようが無ぇ。
ましてや女の状態の私には――、
「(……いや、コイツなら)そう、だ」
今回の前に道化師野郎に掴まった時は、プライドが邪魔して助けを求められなかった。今回はその失敗を活かすしかない。
この異常事態、もはや藁にも縋る思いで訴える。
「――せんせぇ、聞いてくれよ!」
椅子に座る私は、壁のように立つヤツを見上げながら、甲高い声で説明する。
「わけわかんねぇピエロ野郎に追われてるんだ。助けてくれ!」
怯えと焦りが詰まった私の声が、狭い生活指導室に響く。
「……」
浅黒く焼けた眉間に、皺を刻みながらも一応は黙って聞いてくれた。
「先生だったら、あの道化師をぶっ倒せるかもしれねぇ。なぁ生徒を助けて――」
「さっきから何わけわかんねーこと言ってんだぁ! お前ぇ!」
バァン!
振り降ろされた丸太みてーな腕が怖くて、思わず頭を守るも、殴られたのは机だった。
「あのなぁ。他の連中が下校しているこの時間に、なんで呼ばれたのかわかってんのかぁ?」
――わからない。十回以上呼び出された俺には、どのことだったかなんて、覚えているわけが、
「立てっつたろオラァ!」
唾を飛ばしながら怒鳴る。糞、こんなことしてる間も、あの道化師野郎がどこで何をしているかわかんねーのに。
「(何でこの糞ヤバい状況がわからねーんだよぉ)――は、ぃ」
ガタッ。
下を向いて席を立つ。
「……」
何だ? また黙ってからの怒声か? それとも指導か? 私は下を向いているままだから、教師の表情とかは良くわかんねーけど。
ガァァン! ズリリ。
目の前の長机を壁へ引きずり押しやがった。これで私と教師を隔てるものはなくなった。
「ユウ」
あ、この感覚はやべぇ。張り手してきやがるパターンだ。私は思わず目を強く瞑る。
「――?」
だが、何もされない? ……ひょ、ひょっとして。今の私が女だからかな? 五秒くらい経ったかと思うと、
「なんだこの短いスカートは?」
「なっ」
思わず顔を上げる。そこには、いかにも気色悪い笑みを浮かべる教師の顔があった。四十台降半くらいの脂ぎった、いやらしい表情と共に、
「校則違反だよなぁ。この丈の長さは?」
確かに短けぇが、拾ったのがコレだったんだから仕方がないだろ? ――ってか、私以外にだって一人や二人はいただろうが。
「こんな見えそうな恰好しているから、他の男子生徒共が勉強に手を付けられず、悶々としちまうんだよ」
こいつ何の話してんだ? 頭まで筋肉で出来てんのか?
「せんせ。何を言って――」
「他に校則違反が無いかを確認する。スカートをたくし上げろ」
「……は?」
何、言ってんだコイツ。筋肉どころか、腐ってんじゃんーのか? 心臓が締め付けられるような恐怖を感じつつ、一歩、二歩と後退する。
「どうせお前のことだ。ヤリマンのビッチなんだろ? センセが確認してやるよ」
嗤いつつ、見下しながらこっちへ来やがる大男。糞くそ糞! ドン。
背面のドアに当たる。振り返って取っ手に細い指を絡ませる。ガチャガチャ!
「(なんで部屋の外から鍵が掛けられるんだよ)――うわっ!」
私の倍以上の大きな手で、細い腕を服の上から掴む。大人と子供に近い差すら感じる。
「おいユウ。センセの言うことが聞けねーなら、センセが直にやってやろうか?」
涎を垂らしそうな歪んだ口元と共に、私を部屋の隅へと追いやる。
ほんと最低なゴミ野郎だ。自分より何倍も弱い女を追い詰めるこの状況を愉しむなんて。
「(やばい、ヤバイけど)くぅ」
こいつの要求を呑むのはやばいけど、こいつが私に好き勝手するのはもっと狂気。
「ま、待ってセンセ!」
私は震える瞳で、すがるように見上げる。
「す、する。するから待って!」
見下した表情のまま、ヤツは手を離す。私はビクビクしつつ、両手をスカートの裾へ伸ばす。
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涎を垂らす肉食獣に恫喝される、草食獣みたく危機的な状況だった。
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「――やっぱセンセが」
「! 待って、まって」
黒くて太い腕が伸びきる前に、私は思わず力一杯スカートの裾を掴みあげてしまう。
「……ぶっ、あっはっは! おい、ユウ。いくらたくし上げろって言っても、ヘソの上まで全力で上げるとか、頭弱すぎだろ」
狂師は指を指して唾を飛ばして嗤いやがった。
「ぁ」
僅かに残った私の紙切れみたいなプライドは、クシャクシャにされ、小便をかけられたようにすら感じた。
「あーっはっは!」
だが確かに、私も私だ。恐怖と緊張のせいとは言え、まるでラッコを垂直にしたみたいに、スカートを捲りあげて硬直するなんて、
「はぁ~、ほんと馬鹿だなお前。――まぁ頭が悪い女が履きそうな黒のエロパンツってのも納得だ」
恐怖と羞恥で言葉も出ねぇ。涙腺が熱くなる。
「おいおい。どうしちまった? ユウちゃん」
――糞が。決まってんだろ、悔しいんだよ。お前みたいな教師の皮を被った狂人野郎に、膝を屈して下着を見せているから――、
フニ。
「ひやゃやっ!」
「おいおい、ちょっと触っただけで可愛い声出すじゃねぇか」
絶叫の後、気持ち悪い感覚が股間付近で蠢く。私はワケが分からないと言った表情で、涙ながらに視線を下へ向ける。
ヤツのゴツゴツとした太くて浅黒い人差し指が、私の下着の一番柔らかい部分を押し撫でてやがる!
「指導教員として質問だ。何人とヤッたんだ? このいやらしいマンコでよぉ」
指の腹の部分で、押し上げたり擦ったりするつど、全身が鳥肌になったんじゃねーかってくらい、ゾワッとする。
「なに、すんだよ!」
私は思わずスカートの裾を手放し、元凶の太い腕を掴む――ガシ。
「あ? ほーれほれ」
スリスリスリ、ズニュ。
「ひやああぁぁぁ!」
情けなさと恐怖と、生理的嫌悪感で絶叫する! 私が両手でいくら掴んでも、先生の腕どこから指一本すら制御できず、何もかもヤラれたい放題のままだった。
「どうだ? だんだん気持ち良くなって来たんじゃねーのか? ユウちゅぅあ~ん」
徐々に顔を近づけながら、指に力を入れて来やがる。そのたびに、股間は柔らかく変形し、まるでゴキ●リ風呂に入れられたような感覚が、全身を冒す。
「やめっ、本当にもうやめてぇ!」
顔を歪めて懇願する。肉体の不快感と、精神の倒壊により、壊れた人形みたく頭を下げた。
――何より、嫌悪感以外の、何か得体の知れない脱力感が、股間を中心に広がりつつあるのに、底知れぬ恐怖を抱いたから、
「そんなにやめてほしいのかぁ?」
顔を近づけながらの耐え難い圧であったが、
「はい――、はいっ!」
プライドも何ももはやあったもんじゃない。首を竦めて目をつむり、涙ながらに何度も敬語でお願いする。すると――、
バッ。
鬼の腕みたいな怪腕が、ゆっくりと私の股間から離れる。
「えっ、――あっ」
や、やめてくれた?
ドクンドクンと、恐怖で打ち鳴らされた心臓が、やっと少しずつ脈を整えられる思いだ。
「せ、先生。ありがとう。私、本当に――」
「脱げ」
……は?
ジィィィン。頭の奥が痺れるような感じがする。さっきから、恐怖と安心の過度な往復で、考えることが出来なくなってきた。
「ユウ。パンツ脱げ!」
バァン! 直ぐ隣の壁がかなり強い力で殴られる。
「ひぅっ!」
なんで? すぐ隣は職員室なのに、何で誰もこの異変に気付かねんだよぉ!
「うぅ、っ」
だが、一つ前にピエロ野郎に掴まった時みたく、きっと救けは来ない。だったら、自分でやらないと、またコイツが犯るとか言い出しかねない。
「……」
涙の粒で視界が歪む中、せめて顔を背け、スカートの中に手を入れ、黒の下着を脱ぎ降ろす。
シュルル。布と皮膚が擦れる小さな音を立てる中、悔しくて言葉も出ねぇ。そんな私に、
「貸せ!」
返答する間もなく、脱いだばかりの下着を奪い取る。そしてあろうことか、
「スンスン……あ~、イヤらしい匂いがするぞ~。女子高生らしい、発情してるニオイが」
身体が氷みたく硬く冷たくなる。信じらねぇ、私が今しがた履いていた下着を、悦びながら嗅いでやがる。
「こっち来い」
ぶっとい手で、私の細い手首をグイっと掴む。もはや宙づりに近い状態で、さっきどかした壁際の机の上に座らせられる。
冷たくてツルツルな机の感触が、おなじくツルツルな生の尻と太腿に拡がる。
「な、ナニ、を」
震える唇に指を当てながら、呻くように質問する。
「せっかくだから、不純異性交遊について確認してやろう」
「ふ、フジュンイセイ?」
「ほんと、頭が弱えーなお前は。つまり、ユウちゃんの性器がどれくらい使い込まれているかの検査をするっことだ」
「! やめっ」
ガッ!
股を全力で閉じるも、片手で容易に、
「はい。御開帳~」
二割も力を使っていない、っといった様子で左右へこじ開けられる。柔らかな関節は、暴力野郎の欲しいままになまめかしく動く。
女の秘部が、照明灯の下で、文字通りさらされる。
「おっほ~、これが問題児ユウの大事な所かぁ」
もう何一つ遠慮しないという表情と共に、鼻息が届く距離まで顔面を近づけてくる。
「毛がだいぶ薄いなぁ~。剃ってんのかぁ?」
「(狂ってやがる狂ってやがる狂ってやがる)やめろよぉぉ!」
過呼吸気味に叫び、両手で頭に掴みかかろうとすると。
ガシッ!
「ったい!」
私の細腕は簡単に掴まれるが、その隙に股を締め直す。だが、手首にギリギリと力を込められる。血が、脈が止まりそうになる。
「痛いっ、ひたぃ!」
鈍くも潰されるような激痛で、涙と声が同時に漏れ出る。
「ユウ。肢を開け」
ギチギチと、灼けるような激痛で意識が遠退きそうであった。私はあっけなく、
「――ます。開きますぅ!」
バサ!
スカートがはためく中、一瞬で白旗をあげる結果となった。
スッ。
腕の痛みが弱くなる。狂師が手を離したからだろう。
「さっきから思うんだが、ユウのそういう泣いている顔を見るとさぁ」
ヤツの息が股間に何度もあたる。そのつど、薄い陰毛が海の中の海藻みたく揺れ動く。
「本当にゾクゾクしてくるんだよなぁ」
涙で引っ付く長いまつ毛の隙間から、眼下を見下ろす。
「じゃあ、いただきあ~す」
……そう地獄を。
チュブ、レロ。
「ッッッ!」
もうクタクタの身体が壁にむかってビーンっと伸びてぶつかる。
「ハムハム、――ぷはぁ。これがユウの陰毛の味かぁ」
糞糞糞糞嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
信じらんねぇ、コイツは私の下の毛を口に含んで、舐め吸っては、口で引っ張るって行為を繰り返しやがる!
「どれどれ~」
グィッ。
そしてでかくて毛の生えた指を、肢の根元付近へと這わして、トドメと言わんばかりにダメ押しにと拡げやがった。
「はい。観音開き~。おぉ、すげぇ。百五十度くらい開脚できてんぞ、お前」
「ひう、っ」
暴力で好き勝手される私は、もう泣きながら顔を横に向けるくらいの抵抗しか出来なかった。
「じゃあユウちゃんの小陰唇、センセの舌で捲ってあげま~す」
「やめ、てぇ……」
レロ、レロン!
「も、やぁぁぁ!」
言葉に出来ない感触と共に、私の小さな肉のひだは、狂師のでかい筋肉の塊みてーな舌の前に、何の抵抗もなく左右に開かれて、唾液を塗りたくられる。
「おほっ、ユウ。なんだよこの処女桃色は!」
教師の眼前に、私の未使用の膣が明け開かれる。
「ちょ、ちょっと待てちょっと待て。まさか、ばっ、処女ってことはねーよな!」
何、興奮してやがる。キモイってレベルじゃねぇぞ!
コイツの手が初めて震え、同時に私の内太腿を痛いくらいに押し握り、そして。
「あ、味見させろユウ!」
「味見てって何……ひやぁぁ!」
レロン、チュル、チュル。
嘘だ嘘だ嘘だぁ! こ、コイツの、し、舌が。私の膣の中を、な、舐めやがった!
頭が破裂しそうな気色悪い感覚が股間から全身へ伝う一方、いくらかの痛みを感じる。
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レロレロ、ピチャピチャ。
「ひっ、ぐぅ」
わざと音を立てて舐められる。肥溜めを口に突っ込まれるよりも不快な感触を股間から感じる中、
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気持ちいいわけねーだろボケ! 今になって確信する。AVなんてレイプ物以外も全部やらせだ!
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「ハァ、ハァ」
十分くらい経ったか? 未だに強姦狂師からの脱出方法を思いつけないまま、好き勝手にされ、
「美味しいぞぉ、お前のマン汁~」
罵られながら耐える。
「(だが、なんだ? 腹の下あたりが、なんだか、あちぃ)う、えっ」
ついに頭がおかしくなってきのたか、ボーっとしてくる。下腹部に変な、だが暗い熱みたいなのを感じ始めた時、
「あ、こっちを舐め忘れてた」
無精髭の口の周りをべちゃべちゃにしつつ、視線を僅かにズラす。
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コイツのふざけた舌が、私の陰核をほじくりやがった!
「おおっ、そんなに気持ちいいか。センセ、自信が出てくるなぁ」
キショい視線で見上げられることで、私の視界すらも犯してくる。
「や、やめ!」
チュゥ、ロレ、チュゥ。
「! あああぁ!」
凄まじい痛みと、それ以上の得体の知れない電気みてーな何かが、私の中の大事な何かを弛緩し、同時に膨張させる。
「やめ。やめっ、やめぇ!」
やばい、何かクル! わかんねーけど、絶対ヤバい感じのが、風船みてーに腹の下で膨らみやがる!
「よぉし、彼氏じゃ無い、俺の舌でクンニ初イキしろ、ユウ!」
「めてっ! ほんとやめてぇ!」
赤く腫れそうな陰核を、前歯で触れ、さらに的確につつき、あげく口で舐め吸いやがる!
天井を向きつつ、私は開けた口から涎を垂らしているのにすら気付かず、最後は、
「チュバチュバ、――ユウ、いっちまえぇ!」
「あーっ! あああっ!」
ジュババッ!
「――ぁ」
チョロ、チョロロロロ……。
ビクッと身体が痙攣したように横に揺れた。時間の感覚が失われた後、温かい感触が、股間から沁み拡がった。
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