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六本目 嬌声関係

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「ったく。風呂場の方が、後始末はやりやすいだろうがよぉ」

「まぁいいじゃありませんか、係長さん。一人目が射精し終わっても、二人目が使んですから」

 相手会社の倉庫にて、土下座をしてお願いした結果、とりあえず自宅へと戻ってこれた。狭い脱衣所にて、ブツブツと毛むくじゃらな腹を叩く係長と、ニタニタと笑う痩せた霜毛さんが、音を立ててベルトを外していた。
 どうせされるなら、でと、そう思い立ち、頭を下げて犯される場所を変えたのだ。
 別に女の子にされた事への復讐とか、そう言うのではなかった。確かに驚くべき身体変化をもたらされた。けど、この一ヶ月少しの間に、与えられた濃密な日々と、命を救ってくれた彼らが揺蕩たゆたう、この湿気の溜まった狭い場所以外、破瓜はかのショックに耐えられそうになかったから。
 浴室を思いつつ、係長らのすぐ傍で、今となってはもう着ることもないであろう、男物の服を脱ぎ始める。身体のあちこちにはまだ唾液と埃の汚れがあり、汚された状態であったのは言うまでもなかった。
 ニヤニヤ笑う二人は、前戯とばかりに胸やお尻を突いたり、つねったり叩いたりしてきた。恥辱で震えつつも、黙ったまま、浴室の扉を開ける。
 ガチャ。
 湯気を割って、真っ先に浴槽内を確認する。

「(あ、みんな元気だ)……よかった」

 カラフルに揺れる触手を持つ彼らは、いつも通りに見えた。
 ――けど、ぼくと係長達のヤリとりが進むにつれて、その様相を豹変させていくのだ、その時は考えもしなかった。

「おい、さっさと壁に手をつけよ――うおっ! なんだこれっ」

 物怖じせず浴室へ入るぼくとは異なり、ギョっと、まるで害虫がひしめいている部屋を眺めるみたく、二人は顔が変貌する。

「うえっ。き、気色悪いっ」

「――というか、もはやおぞましいですね」

 全裸で浴槽内の命をこき下ろす二人を、小さく睨む。

「ひ、ひどい。係長達がぼくにしようとしている強姦ことの方が、よほど気色悪いし、おぞましいですよ」

「お前は賭けに負けただろうが。好きにしていいっつったのもお前だろぉ」

「だ、だからココでしたら――」

 ガッ、と右の二の腕の辺りを強く掴まれる。軽い身体と重い胸が、簡単に揺れ動かされる。

「こんな吐き気のする所でセックスできっか。霜毛さん、コイツのベッドの上でりましょ」

「えぇ、もちろんですよ」

「! う、嘘つき。お風呂場でも良いって言ったじゃないですかっ」

「こんなSFみてぇな場所なんて、普通思わねぇだろうが。こんな萎えるところでヤレっか。さっさとこい!」

「当然ですよ。――しかし、水羽クンは顔と身体以外は本当におかしい方みたいですねぇ」

 抵抗はするけど、女の自分が係長と霜毛さんの腕力に敵うわけがなかった。
 わらう彼らは、空いている方の手を伸ばし、乳首や陰毛を掴み遊びながら、引きづり出そうとしてきた。
 涙目のぼくは、別れをイソギンチャク達に告げようと、顔を向けた時であった。
 ――ピュ!
 白くて小さな二本の触手が、水面から覗かせたかと思うと、まるで水鉄砲みたく、下品にのたまう係長らの口の中に、液体を飛ばし飲ませる。

「! オエッ。な、なんだ」

「にが、苦いっ。ペ、ペッ!」

 ぼくから離した両手で顔を拭き、さらに口の中を指でゴシゴシと洗い始める。その隙を突いて――チャポン――湯船の中へと逃げるも、当然ながら大した距離は稼げなかった。
 けど温かく、馴れ親しんだ液体おゆに身体を浸けることで、こんな緊迫状態にも関わらず、わずかに安心できた。

「くそ、クソが。この男女。処女膜ブチ抜いてなか出ししてやるから、さっさと来やがれ!」

 血走った目でそう叫ぶと同時に、四本の腕が伸びてくる。――けどそれより早く、浴槽から生え出た色とりどりの触手が、強姦魔かれらへ向けて、ボクでも見たことが無いよう、体液を一斉に噴射し出す。
 ピュ、ピュゥ!

「うげ、なんだよこれっ!」

「冷っ、熱ぅ!」

 まるで見えているかの様な、的確な射的であった。口は元より、目や股間などの粘膜部分に、粘性の液体がどんどんと付着していき、体内へと浸透させているみたいであった。

「なん、だ。このクソギンチャク――は!」

 だがすでに、息も絶え絶えと言った感じだったが、それでも二人は浴槽の縁までやってきて、ボクの両手首を掴む。顔を背けて身体を縮こまらせるけど、さっきまでとは異なり、握力も威勢もなかった。

「えっ?」

 恐る恐る視線を戻す。――そこには、世にも情けない顔で、眉毛を八時二十分に曲げ下げた係長と霜毛さんの顔が浮いていた。
 ご自慢の男性器ナニは、平常モードに移行しており、玉袋にいたっては、風邪をひいた時みたくダランと垂れ下がっていた。

「ち、ちきしょう。全身の力が、抜ける――」

「なん、何だか、ナニも元気が、沸かなくなって来ましたよ……」

 しょんぼりと呟くと、四つん這いに近い体勢になりつつ、我先にと脱衣所へと後退しようとした。
 ハッ、っと今後の事を思い、ボクは中腰になりつつ声高に叫ぶっ。

「こ、金輪際。ボクに関わらないでくださいね? そうしないと、今日の事を会社や警察に言いますから!」

「ひ、ひぃ。わ、わかった。――こ、こんなワケのわからねぇ生き物を風呂で飼う女なんて、いや、嫌だぁ」

「あ、貴女あなたこそ。に、二度と僕達の前に、姿を見せないでくださひ」

 後半はもはや涙声だった。脱衣場にて着衣する僅かな音が響くと、過呼吸気味な喘ぎをして、二回ほど転倒する音を鳴らした。
 やがて、玄関扉の開閉音が小さく聞こえ、それっきりであった。

「ハァ、ハァ」

 パシャン。
 風呂場内で女の子座りをしつつ、湿気を多く含んだ浴槽の空気にて、肺を満たす。視界に見える髪を、耳後ろへ揃えると――喉が渇いた――と最初の感想を抱いた。
 ドクン、ドクン。
 上縁面にそっと手を置き、高鳴る心臓を静めようと、浴槽内を眺める。
 やはり色とりどりの触手が、先ほどまでの乱痴気らんちきを忘れたかの様に、お湯の流れを優雅に味わうみたく、揺れていた。
 危機的状況を再び救ってもらったという恩義を返す風に、指ですくうと、プルプルっ、笑うみたく震える。

「……女の子にされちゃったのは、本当に驚いたけど――何度も何度も助けてくれてありがとう」

 突き抜けた異常が、ボク日常なにもかもを変えたのはわかっているし、後悔が無いと言えば嘘になる。
 けど、この浴槽内で彼らと過ごした日々が、何の変哲もない、焼き回しの日々を量産していくだけのボクを変えてくれたことも、また事実だった。
 それに何より、温かくって、安心できて、気持ち良くって……そんな安心の非日常をもって、出会ったあの日から、ぼくを満たし続けてくれたのだ。
 目をつむり、息を吐き、肩の力を抜いて、浴槽へ身体を預ける。

「――ふ、あっ」

 町中の銭湯の、一番風呂に浸かったお客さんみたいな、気の抜けた声を、腹の底から吐いてしまう。
 汗もだけど、不潔な係長達の唾や体液が、お湯へと溶け消えていく。
 嫌がるかな? とちょっと心配したけど、応えるみたく、サワサワと柔らかな皮膚を撫でてくれる。もちろん摂食が目的かもだろうけど、綺麗にするみたく、あるいは労るみたくじゃれついてきた。
 可愛い――そう思い、目尻を下げたその時であった。

「んんっ!」

 心地よさで弛緩した隙を、見事に突かれた。
 左側から赤の、右側から黄色の触手が、先端でもって、それぞれのプックリした乳首に巻き付き始めたのだ。
 舐めるみたいな、撫でるみたいな、どちらにせよ気遣うみたいに、そして求めるみたいな仕草は、さっきの係長らの前戯と比べると、全く不快でなく、何倍以上もドキドキさせた。
 ボクはお湯を二口飲むと、拒絶するでも手伝うでもなく、ジーっと乳首に巻き付いた触手へ目をやっていた。
 左の赤い方は、先端に頂球を作り、マッサージするみたいに、コリコリっと乳首を変形させてくる。

「ひゃん!」

 痛みを伴うギリギリのところで、力を抜き、ぷっくり膨れ戻ったところをさらに圧っしてきた。桃色の電流が、弱くも確実に左乳首から、乳房へ、そして脳と下腹部へ何度も走った。
 次いで、右の黄の触手は、ピシッ、と先端が四方に割れると、噛み咥えるみたく、歯なき歯を乳首に立ててくる。それはまるで歯茎はぐきにて甘噛みされるみたいであり、左とは異なる痛気持ち良さが、乳首を苛めた。

「んあ。ダ、メぇ」

 さっきから漏れ出る声は、あたかも最愛の恋人の前戯によって、心の底からみだれる、女の嬌声きょうせいそのものだった。
 次いで、顔の両横から、青と白の複数の触手が水面を突き破り姿を現せる。乳首への刺激で、喘ぎ声を量産しているボクは、馬鹿みたいに口を開けつつ、薄目で眺めた。

「――えっ?」

 二色の触手は絡まり合い、やがて一本の極太な触手の群体みたいな形体を織り成す。トロンとした瞳のボクは、だがやはりそのまま、限界まで顎を緩めて、受け入れの姿勢を示す。
 ガボッ――ジュロ、ロレ、ンゴッ。
 口に突っ込まれながら思った。偶然か必然か、それは男性の平均的な性器の同じか、少し大きいくらいの形状だったと。けど、柔らかく滑らかで、臭さや生理的嫌悪感はまるで無かった。

「んぉ。じゅる、ちゅぶ」

 ほんの三十分前とは考えられないくらいの、緩んだ表情のボクは、舌と口内全体を使って、触手の塊へ奉仕をしていた。
 亀頭みたいに出っ張った触手の雁首部分へと舌先を這わせると、刺激のつど先端から抽出される、青と白の体液によって、喉をうるわせた。
 先ほどの輪姦レイプ未遂のような、汚くて忌まわしい行為とは対極の、優しくも喉を灼くみたいな刺激と快楽に、乳首は尖り、下腹部は熱くなっていった。

「(アソコが、熱く、なって)――ンア!」

 お尻付近の黒くて大きなイソギンチャクが、明かな力強さと意思でもって、動き出したのだ。
 黒い体幹みきの部分を伸縮させたかと思うと、ぼくの方へ、口盤を中心に折り曲げ寄ってくる。生え茂る触手をさせたかと思うと、触手環の直径が、体幹と同じくらいに収束していく。
 口内で淫らに舐め吸う触手の集合体と、形や大きさは似ていたが、密度や硬度は比較にならないほどであった。
 ――シュル、シュルル。
 足元近くのイソギンチャクが、まるで加担するとばかりに、足首を縛りあげてくる。生温かいお湯の中で、ゆったりと水面へと持ち上げて、そして開かれる。
 それはまるで、好ましい異性からの求愛こうびに応じるため、開脚をして、女の肉の祭壇を捧げるみたいな、高揚感に胸がほだされた。

「ジュル、レロ、おぅふ」

 下品な声が示す。恥じらいは建前とばかりに、口の中で交じり合う触手を舐め吸うことで、肯定した。
 そもそも、これらは全て異なった個体のなずなのに、まるで一つの生物であるみたく、ぼくと姦淫しようとするその神秘に、驚いた。
 黒いイソギンチャクの、男性器ペニスみたいな触手塊――疑似男性器ぎじペニスが、ゆっくりと動き、やがてピンク色の小陰唇に触れる。
 ――クチッ。

「ガボッ――んふ、あぁ!」

 鉛色の強い性刺激により、思わず開いた口から、青と白の触手が抜けこぼれる。胸元にひっき落ちて細分化ばらけつつ、乳輪のあたりに引っ付き、そして擦れうごめいた。
 乳首からの快感がもはや痛いくらいに増幅される頃、股間においても熱い性衝動が、いよいよ炸裂し始めるっ。
 グンニ、ズルグニュ――ブチ。

「アアッ、ぁあん!」

 黒人の肉棒オチンコみたいな疑似男性器は、まるで狭い海中洞窟へ、餌を求めて入り込むみたく、温かい粘液に満ちた肉壁を、少しずつ擦り入り、やがて処女膜を貫通していった。
 同時に感じる痛みと圧迫感は確かに凄まじかったが、水中であることと、挿入物がゴムに近い質感であることに、いくらか救われた。
 そして何より、まるでこちらを気遣いする様な奇異な優しさに、あるいは支配せんと欲する本能に、心を濡らされてしまい、苦痛がある程度は減った。

「ひゃ! あんっ!」

 さっきとは異なる、本気の喘ぎ声が浴槽にこだまし続ける。自分の嬌声さけびを聞くつど、頭の中がますます女の子になっていくのを感じた。いや、むしろに、さっきから自分の声で耳を犯している気すらした。
 疑似男性器は亀頭に当たる部分を、膣内に収め終えて、一旦進行を停止していた。膣内は同種の異性の男性器オチンコと誤認し、キュウキュウと圧しつつ、また温め続けた。
 そしてその間も、乳首は舐め擦られ、撫でられ、噛まれることにより得られた性的刺激に身震し、思わず目を瞑って溜息を喘ぎ声を捧げ続けた。

「ダメっ――ダメぇ」

 甘い自分おんなのこの声は、湯気のごとく立ち昇り、やがて湯船へと溶け沈んでいった。
 ……グニュ、ゴリ。
 再開とばかりに、疑似男性器が膣の最奥を目指して侵攻していく。本格的に膣道が拡張されることにより、激痛が発生しそうになった時であった。
 一本の細い触手がうなじを這うみたくのぼってきたかと思うと――プスリ。

「ンッ」

 首筋の辺りに軽い痛みが走る。小さな涎が口の端からこぼれたかと思うと、どういうわけか、股間付近の痛みが薄れていった。
 最初は痛みで麻痺してきたのかと思ったが、ひょっとしたら、毒や薬に近い成分を、直接注入されたのでは? と残った理性あたまで、ボンヤリと考えた。

「至れり、尽くせ、り……おぁん!」

 けものみたいな声を吐き出すぼくに対して、それでは、と言わんばかりに、疑似男性器がねじり入ってくる。
 もう膣内の八割ほどを埋められていて、ボクの一部になっていると言えるほどの存在感を放っていた。
 子宮口の手前にて止まったかと思うと――今度は、勢いよく、引き、抜かれてぇ、イクゥッ!
 ゴリュリュズリュ!

「んんんあああっ!」

 一瞬、失神したのではと思えるくらいの衝撃が下腹部を乱反射し、気がつけば口は裂けそうになるほど開いていた。
 ――そう、か。引き抜かれる際、体幹部分に生え出た吸着疣きゅうちゃくいぼが、普通の男性器だと擦れない部分を引っ掻いたり押したため、強くて複雑な性的刺激を発生させたんだ。

「こ、こんなの。何回も、されたら、頭の中が、真っピンクになっちゃ――ぅうウ!」

 そうこぼしながら、身体中が紅く染めあげられ、男では決して得られないであろう快楽の暴力に、トキメキが止まらなかった。
 膣内を味わうみたく微動していた亀頭部分が、再始動とばかりに、再び子宮口を目指して突き進む。今度はほぼ痛みを感じなかったため、膣壁を通して、雄々しい疑似男性器の形状や質感を何度も味わえた。
 挿入される時も心地良いが、やはり、引き抜かれる時が――。
 ズリョリョリョヌニョ!

「はぁぁぁん! んひゃ、アアッ!」

 膣が――ううん――ボクの子宮全体が発熱していた。設計された人間同士の交尾なんかより気持ち良すぎて、どうしたらいいのかわからず、でも絶頂の準備だけはしなきゃと、子宮は臨界点を高めていくのだ。
 出し入れのつど、量産された愛液が湯船の中に溶けていっているみたいで、他の触手がおこぼれにあずかろうと、股間付近が賑やかになる。

「はぁん。んふぅぁ」

 想定外の快楽に、茫然自失になりかけたボクの身体のあちこちを、いつの間にか触手みんなが這っていた。
 まるで――もっと愛液出して、あるいはもっと汗を流して――と伝えるみたく。それらに触れていると、ご飯をねだる子供みたいな、愛おしさを感じてしまう。
 ズリュグニュ。

「んほおん!」

 顔をわざと不細工に歪ませて、口から舌を出して絶叫する。
 いつの間にか疑似男性器は、こちらへ全く配慮しない早さと強度でスタンプしていた。快感に脳がついていけず、気がつけば、限界まで開脚し、受け入れ態勢を示していた。
 足先がピクピクしてきて、身体全体が熱くなる。膣内は、浸入してきたお湯に愛液を含ませては、浴槽へ戻す作業にのみ従事していた。
 グニョン、ズルリュリュ、グパン、ニュニュグチュ!
 乳首はピンちして、鼻水と涙と涎を量産しては風呂の中へ注いだ。
 汗を噴き出しつつ、失禁したり、放屁したりを繰り返していると、下腹部で何かが膨らんでくる。あたかも熱膨張しているみたいな感覚にて、破裂しそうになる寸前だった。
 やがて天井へ向けて青筋を立てつつ、綺麗な顔をこれでもかと歪ませて――、

「い、いぐ、イグゥ!」

 ビクンッ! 
 と腰を中心とした身体が震え、膣穴が限界まで収縮し、疑似男性器に食い込む。
 ――ドポッ、ピュツ、ドピュル。
 最後の一滴まで搾りつくさんと、膣が痙攣けいれんするほどであった。熱の塊が何回も子宮口へと放たれ、その度、得も言えぬ多幸感に胸も股間も満たされた――。

「ハァ、ハァ……んっ、はぁん」

 浴槽に浮かぶ自分は、何度目かの瞬きの後、やっと現状を把握しようとする気になった。
 膣内は、黒いイソギンチャクの体液らしきもので満たされていた。
 その残渣ざんさが、小さな泡とと共に膣口より出こぼれて、湯船に浮いていく。指ですくうと、白くて半透明な、粘性のある液体に見えた。
 精子みたい――という言葉は口にしなかった。

「……」

 膣の温かさと余韻を味わいつつ、上半身を起こす。乳首に触手が引っ付いたまま、股間の辺りで一際存在感を放ち続ける、黒いイソギンチャクの体幹をそっと握る。
 先ほどまでボク膣内なかにいたソレは、まるで賢者タイムみたく、少し縮んだ形状のまま、何事もなかったみたいに揺れていた。
 濡れた髪を耳後ろへ整えつつ――亀頭を形作っていた触手部分を手でまとめ上げて。

「ジュルル、レロロ」

 口内にて舐め頬張る。
 それはまるで、愛しい恋人の、吐精後の男性器をお掃除するみたいに。もしくは、服従を意味する、誓いのキスをするみたいに――。

「これからも、よろしくね?」 

 胸にまとわり付いている、触手の一本が、乳首を引っ掻いた。
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