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第三章 協会
十七話 荒れた国有林
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老人の腰の様に曲がった赤松が生え揃う、尾根を乗り越え歩む。件の小川方面へ向かって歩む二人は、笹をかき分け、真砂土の斜面を滑る様に降りる。
「――ったく。だから最初から付いてくるなと言ったろうが」
ぶつくさ文句を言う神薙は、仕事を増やすなと言わんばかりであった。
「なんまんだぶなんまんだぶ。はぁ~、地獄に仏とは正にこのことやでぇ」
両の手を擦り合わせて、神薙の後ろを、半人前の坊主が擦り歩く。当然、返答すらしない神薙は、器用に手帳に書き記しながら大きな木の根を跨ぐ。
「とこりで、さっきから何を書いとんのや?」
「手帳へ落とし込んだ林班図に道程を記載して、現在地の割り出しと目的地への経路案内に役立たせている」
「そ、そんなもん、人力で出来るんかいな?」
「即席かつざっくりだが、携帯は圏外だから仕方あるまい。磁石は用意出来ていないが、太陽の位置からおおよその方角も見てとれる。ちなみに切り株の年輪から方角を読み取るというのは都市伝説だから、当てにするな」
何者やねん? っという言葉を、岸堂は喉元で飲み込む。
「竹黙ヶ原を走る小川の数は限られている。とりあえず最寄りから当たっていくぞ」
「合点承知の助!」
休息を挟む代わりに、歩行速度を少しばかり落とすも、時刻は十四時ニ十分を刻んでいた。
最初の小川まではあと少しの距離となると、僅かな間の繋ぎとして、岸堂が話題を投げる。
「そういや、なんで霊装する時って、わざわざ霊装名を言わんとあかんのやろな?」
先にも述べた通り、ほんの雑談感覚であったが、ただでさえ神経質な神薙を、さらに逆撫でてしまうこととなった。
「――お前、本当に霊装協会の正会員か?」
「? んなことゆわれたかて。会員になるのに試験も何もあらへんやん。霊装が出来るかと軽い身辺調査くらいやし」
知らんもんは知らんと、悪びれる様子も示さない岸堂へ、不要な世話を焼く。
「言霊原理だ。聞いたことくらいあるだろう」
「コトダマゲンリ?」
溜息と大息を同時に吐くという、器用なことをやってのける神薙であったが、これ以上、好感度が下がることもあるまい、と機械的に続ける。
「霊装と能力者はしばしば車と運転手に例えられる。例えば車は――速い、燃費が悪い、頑丈、小回りが利く――などだ。そして運転手は――癖がある、スピード出しすぎ、操作が上手い――などの特性がある」
「それは聞いたことあるわ。十人十色ってな」
「あぁ。だが、どんな車でも運転手でも、必ず鍵をもって動力を起動させないと動かないし、動かせない」
「なるほど? そのキーの代わりが……」
言霊なんか? っと息をあげつつ、神薙の説明に岸堂は頷く。
「そうだ。霊装名とは、真名と呼ばれ、非常に意味を持つ言葉だ。能力の初期発露と共に、世界で一番最初に知るのは、当たり前だが当該能力者に他ならない。どんな経緯が、才能が、運命があろうとも、端緒に口にするのを赦されるは、持ち主は、その固有名称を鍵として、意思を以って口にすることで、世界へ起動する。これ全て、霊装の顕現に他ならない」
――『言(葉を以って)、霊(装を纏う)』――原理と、古来の霊装能力者達は読んだという。
雲間を刺し抜いて、陽が照らす。僅かに温められた大気が流れる山の中の土を、踏み抜く。
「なっる、ほっどぉ~」
まるでお気に入りのバンドグループの音楽を聴いているみたく、岸堂は頭を前後させていた。
説明という名の説教に疲れたのか、珍しく呼吸を整えるような動作をする神薙は、足下の枝を踏み折りつつ、続ける。
「最初にこの言霊を作った人物は、霊装能力者だったのかもしれないな」
雑談の果て、やがて幾らか視界が開けてくる。
「おっ、やっと抜けたか?」
二人の足元先は、三メートルほどの極小の崖になっていた。崖下は花崗岩や玄武岩などのありふれた岩が大なり小なり敷き詰められた、小川となっていた。
川幅は三メートルほどだが、川を満たす水量が極度に少ないことから、岩下を伏流している様相で、岩の上を立って歩くことも可能であった。
小川近くには樹木が生育しておらず、その分だけ林冠が開き空けて、弱い陽光が降り注いでいた。
「降りるぞ」
「おう」
川に敷き詰められた角礫を踏みしめた二人は、改めて周囲を見渡す。上流から下流へと蛇行しており、下流方面の両岸にて、柵のごとく伸びる木々やその枝葉によって行く手を阻まれる様は、天然の要害を彷彿とさせた。
「! 神薙、ちょっと待った」
「わかった」
周囲を警守しつつ、神薙は手帳を取り出す。
岸堂の【最期の伝言】は一度発現すれば、霊媒を所持している限り、継続的に有用な情報を得られることが多い(断片的なモノがほとんどだが)。
意識を集中させる岸堂。その間も聴覚に神経を割く神薙の耳には、初冬の風と川の岩下の小さなせせらぎだけだった。
「(近くまで来ているとは思うが)――先の言葉に出た笹の群生が、この辺りには見られないな」
だが、足下を流れる小川の潺以外には、遥か上空を揺蕩う凍雲以外に、大きな変化は認められなかった。
「――カリュウ、ワカレル、ササ、キケン」
その一言一句を、神薙が忘れることも無いのだろうが、すぐさま手帳へ記し、林班図と照らし合わせる。
それとなく腕を組む岸堂も、もっともらしく唸る。
「ふぅん。何となくはわかるけど、ワカレル、ってなんやろな?」
「地図によるとここから百メートルほど下流にて、川が二方向へ枝分かれする」
「なる。そこで笹が密生しとったら――」
「あぁ。身の危険を感じたら、霊子装甲を即座に展開しろ」
神薙の言で、自身の頬を軽く叩く岸堂は、身を強張らせて歩き出す。
その後、雑談はもちろんこと、呼吸音や足音も僅かに歩み進む。沈黙が周囲を包む中、目的地が見えてくる。
「これは、確かに笹だらけやなぁ」
水が無い小川は十五メートル程先で枝分かれしており、その間、つまりは二人の正面にある小さな陸の孤島には、スズタケが槍のごとく周囲に伸び張っていた。
「よ~伸びとるなぁ。一番長いので四メートルはあるんちゃうか?」
曲がり撓り、外敵を排除せんと、防衛するように揺れていた。いくらか楽観的に眺める岸堂へ、だが神薙が叫ぶ。
「岸堂、下がれ!」
「へっ?」
何一つ異常を感じ取れなかった岸堂が、神薙の警守を聞いた後、改めて正面の笹の島へ目をやる、と。
ガサガサガサッ。
正面、いやその左右からほぼ同時に三体のナニかが出現する。音と笹の揺れ具合から察知するに、一般的な大型犬くらいかと思われた。
「!」
――だが、実際に覗かせた姿の、頭部や胴体、それに付随する器官、そして大きさもだが、さながら中東に生息する――。
「うおっ。さ、蠍!」
慌てて大股にて、神薙の後ろに跳び下がる岸堂であった。
――だが、奇々怪々な場景を真に目の当たりにするのは、正にこの後となる。
バサッ、パキィ。
尾にあたる部分が、笹の茂みをかき分け現れ、ようやく妖しげな蠍の全貌が、露わとなる。
――そう、黒い尾の先にあるのは毒液滴る針などでは無く、大きさといい形といい、さしずめ猿の顔面そのものであった。
「なっ」
「はぁぁぁっ? 気色悪っ!」
無言で二人を見降ろした後、まるで会話するかのごとく、尾の部分――つまり顔をそれぞれ左右へと振り、三回ほど視線を交わせる。
幻覚生物は特異な個体が多いというが、正に最たる例であった。
「ニチャ、ニチャニチャ」
「「!」」
連中は喉元の奥より――舌の代替えであろうか――藍紫色の液体が滴る、棘の様なものを刺し伸ばしてくる。
「【見えざる霊銃】! 岸堂、避けろ!」
「はえっ?」
蒼き瞳を閃らせる神薙の言葉で、我を取り返した岸堂は、理由も分からず左へと転がる。
目の端で確認した神薙は、盾になる必要が無いことを判断し、霊銃のグリップを握りつつ、右へ跳んだ。
――ビチャビチャ!
神薙の予見通り、蠍猿は毒らしき液体を飛散するも、幸いなことに射速は遅く、放物線を描いて緩やかに、二人が元いた場所に落ちていった。
パァン、パァン!
受け身をとった直後という無茶な態勢から、神薙は霊銃を構え持ち、中央と対面右のそれぞれを射撃する。
「アグェ? ギャエッ! イギエエェェ」
中央の一体を狙った一発は数センチ上目に逸れて、笹を焼くだけに終わった。だが、右のソレは猿の顔の、鼻上から頭部を消し去ることに成功する!
残った口が涎をまき散らしながら、狂った様に劈き声をあげるも、最期は胴体も鋏も地べたへだらしなく這いつくばり、徐々に消失していった。
「(やはり尾の部分の、あの猿の顔が急所か)――なっ!」
残った二体は、同胞が殺されたと同時に、神薙――というよりはその手に握られた霊銃を二度見した後、急ぎ背後の笹の海へと消えていった。
「……」
再び毒液が笹の中から飛んでこないかを警戒する中、岸堂が起き上がる。
「いったた、石で肩甲骨を打ってもうたで」
背中を抑えながら、緩やかに立ち上がる。辺りには静寂が戻っていた。
「に、してもさすが神薙やな。早速一匹倒すなんて。やっぱりお前とアイツは別格やなぁ」
そんな賛辞を当然のごとくかわす神薙は、猿蠍達がいた笹林から、目を外せないでいた。
「少し面倒な相手かもしれん」
「え? な、なにがやねん?」
先の緒戦を見るに、うまく照準を合わせれば霊銃一発で倒せる。敵の攻撃手段についても、確かにあの毒は不気味だが、量も速度もそれほど脅威には感じられなかった。
それらを踏まえて、神薙は白い息を吐く。
「あの二体、逃げる寸前の動作と視線から、同類が死んだ原因を、俺の霊銃に因るものと、おそらく理解している様子だった」
「め、目の前で倒したんやぞ? それがどうしたって言うねん?」
「火器の知識をもたない幻核生物が、弾も火も吹かない俺の霊銃の脅威を、おそらくかなり正確に把握したということだ」
「――あっ」
確かに奇異であった。幻核生物はおよそ頭が遅い(様に見える)。それはこの世界と切り離された世界より、来訪しているためと考えられているからであった。
一方、それを補うかの様に、強靭な肉体や特異な能力を備えているのが常だが――。
「(猿知恵か否か)……今後は射線の通らない不利な地形での戦闘を想定する必要がある。行くぞ」
「だ、大丈夫か?」
その質問に一瞥もくれない神薙は、言い飽きたとばかりにこう言い放った。
「幻核生物相手に、最も不要な問いの一つだ」
眼前に聳える陸の孤島、だが異形を孕んでいるであろうソレは、まるで不善なる城砦のごとく、神薙達の瞳に映った。
「ちょ、おい。お、置いてくなゆーてるやろ!」
潜入路を見据えて動く神薙の後を、慌てふためきながら岸堂が追う。
* * *
蠍猿が潜んだと考えられる眼前の笹島へは――神薙の目からすれば――二ヶ所の侵入経路がある風に視えた。
一つは当然、連中が逃げ失せた笹の門に閉ざされた、頑強なる正門であった。そしてもう一つは島の横腹に見える、まるで誘うかのごとき、笹が倒れて作られた狭い突破口だ。
「……」
だが、あらゆる想定を行う神薙は、数多の経験と組み合わせて、事実を知っていた。
幻覚生物が相手の場合、どちらも不正解という場面に遭遇することが、あるということを。
「どど、どうすんねん大将?」
悩む表情を消しつつも、長考は敵の選択肢を増やすだけ、あるいは逃亡の機会を与えるのみと判断し、歩み進む。
「こっちだ」
抑揚の無い神薙の選択は迂回路、つまり側面を突く常套手段であった。
「あ、明らかに罠っぽくあらへんか?」
確かに。突飛に投げ倒された笹の道を、なぜだと思うのは当然であった。しかも人一人分の道幅は、偶然にしては出来過ぎている。
「――お前がいるから仕方がない」
「へっ? な、なんて?」
笹が重なり合う軽やかな音と、だが緊張で、聞きそびれた岸堂へ、神薙は口を開く。
「いいか? 死にたくなかったら、俺から二メートル以上離れるな」
「! は、はい!」
トゥンク、っとおよそ気色悪い鼓動を一度だけ鳴り響かせた後、雑魚のごとく神薙の跡を追う。
ザッザッザ。笹の孤島の側面より這いあがり、数メートルほど歩み進む。
「な、なんやこれ?」
岸堂が顔を歪ませるのも無理はなかった。二人の眼前に広がるのは、笹が円形に倒れた小さな空間であった。
直径三メートルほどのそれは、かつて平成の頃に流行った謎の円を彷彿とされる綺麗な円形であった。だがその周囲は、やはり笹の槍が壁の様に生い茂り、仕切られていた。
神薙が進むのに従い、岸堂も後ろを歩む。二人が円の中心くらいに到達した頃であった。
ガサッ、ガサガサ!
「ちょぉっ!」
二人の周囲、つまりは視界不全の笹海から畏怖なる音が、待っていたと言わんばかりに、蠢き鳴り響く。
「薙っ、薙!」
「二人称に忙しい奴だな。――中央付近で背中を俺に預けろ」
震える背中は、凛として不動な神薙の背中と、鏡合わせの態勢をとる。
ガサガサ、ガサガサ!
依然として不規則に鳴る音は、笹の海から曲悪に発せられ続けていた。音から位置を割り出そうにも、それを予見するがごとく、前へ後ろ横へとずれ響く。
「かかか、神薙! どど、どうすんねんっ?」
「……同じ事を短時間に複数回も尋ねるな。俺から二メートル以上離れるな」
信じとるでっ! っと、神薙に比べて明らかに脆弱な霊子装甲を展開する岸堂は、震え立っているのが精一杯であった。
「ひ、ひぃ!」
……不図に音が止む。迫りくる威喝が、加虐心に任せて煽るのを止めたのか、あるいは本腰を入れたのか。
不気味な沈黙が、しじまが覆う。
「な、薙っ!」
「――そうだな。もっと泣き喚いていいぞ」
まるで見捨てる風に呟く。
「ここ、こんな時に何ゆーとんねんお前ぇ!」
神薙は広範囲に割いていた神経を三方向、いや、二方向程度へと絞る。
サ――ガサァ!
手近な笹が揺れる。
猿蠍が姿を見せるより、岸堂が口を開くよりも速く、神薙の逆手が動く。
「――へっ? うぼぁ!」
神薙は上半身を半回転させると同時に、岸堂の襟首を掴み持ち、瞬時に笹床へ叩きつける。
ぶへぇ! ――などという声は聞こえないばかりに、岸堂が向いていた方へと向き直る。ほぼ同時に、気味悪く口を開いた猿の顔、つまりは毒針を構えた状態で、岸堂が立っていた場所を目掛け、飛びこんでくる!
「アギャギャ!」
攻撃動作を予見された猿蠍だが、その表情に別段の焦りは認められず、寧ろ微笑さえ浮かべている余裕であった。
それもそのはず。幾ら正確無比な射撃手であったとしても、岸堂を庇い、態勢を立て直し、照準を合わせるという動作を、一秒以内に為せる道理はなかった。
仮に攻撃の手番を放棄して避けたとしても、追撃を受けずに目前の笹の海へ飛び込み逃げられる完璧な一手と言えた、――だが。
「!」
相手は、あの神薙であった。
飛びかかってくる蠍猿の頭部を補足した神薙は、銃身を流れる様に水平に構え持ち、腕を振りかぶる。
「ギャッ?」
なんだ? っと少し気にしつつも、刺突する速度を緩めない蠍猿の顔面が、あろうことか、黒く塗りつぶされた。
バギィッ!
「!」
猿蠍の鼻から目、頭部を直線的に捉え、打撃位置に見据えて、まるで剣の様に銃身を振り抜く!
「ャ! ッ、ァァ、ィ」
凄まじい強度を誇る黒き霊銃の銃打は鼻骨を撃砕し、眼球を損壊させ、かち割った頭骨の破片をそのまま脳へと刺し込む!
「ヒッ、ヒビビ、ィッ!」
断末魔をあげるよりも早く、頭部を打ち振り抜く。ビチャン、とだらしなく、あるいは汚らしく、笹の上に身体全てを投げ堕とす。
もはや趨勢は決していたが、眉一つ動かさず、霊銃を持ち直す。
パァン! パァン!
確殺の咆吼が放たれる。
「……」
忌まわしき不浄な存在が蒸発し、霧散する耳障りな音が、清浄なる森の中を泳いだ。
「よし、あと一体だな」
「ちょちょちょ、待てやぁ!」
三秒に満たない戦闘風景に目を丸くしつつ、身体を起こしながら、岸堂が声高に叫ぶ。
「? 敵の頭数を減らせて、お前も無事。何が不満だ?」
「な、なんやねんお前の今の超反応。まるで幻覚生物の動きを読み切った様な動きやったやんけ!」
蒼い瞳の神薙は、銃身の汚れだけを気にしつつ、仕方なさそうに答える。
「毒液飛ばしでは攻撃速度が遅いため、毒針による一撃必殺を採用してくる想定でいた。お前がいい具合に慌てふためいたおかげで鳩尾、つまりは正面へ攻撃が行くよう調整でき、読み切って迎撃した次第だ」
一応は俺に来るパターンも想定しておいたがな、と付け足す。
「囮かいな俺は! ――にしても、銃で殴るとは恐れいったわ」
最後の一体を用心しつつも、解説を続ける。
「敵の策も悪くは無かったが、遠距離攻撃だけを警戒している様相が見え見えだった。知力はあっても知能はなさそうだ」
「――神薙相手に知恵比べとか、さすがに同情するわ」
さて、っと周囲を伺う神薙であったが、今度こそ、物音一つ聞こえなかった。
「最後の奴、ひょっとして森の奥深くまで逃げよったか?」
「いや、おそらくこの近くにいるはずだ」
「なんでわかんねん?」
冬の風が赤松の枝を小さく揺らせる。
「同類への仲間意識は薄いが、俺達、つまり外敵の排除に知恵を絞る様子は見てとれる。ゆえに、今の戦いぶりをどこかで観察している公算は高い」
「なるほど。自分の番に活かそうっていう魂胆か。すこいやっちゃなぁ」
生い茂る笹の海を見下ろせるのは、さらに高い樹々のみであった。もちろん、そちらへ目をやる神薙であったが――ふと、遠くの広葉樹の枝葉が、不自然に揺れた様に感じた。
「この位置を覗き見るには、高木へよじ登って視る以外にない。行くぞ」
「お、おう!」
笹に潜んでの奇襲に注意しつつ、移動と索敵を始める。
「ところで、神薙」
「なんだ?」
「助けてもらってアレやねんけど。次はもう少し優しく助けてくれへん?」
「あ?」
なんでもありまへん――っと神薙の三歩後ろを歩く半人前の坊主であった。もっとも、過去に星宮を庇った時と比べれば、扱いがぞんざいな感は否めなかった。
まぁ、神薙のことであるから、異性どうこう以前に、戦闘への向きや不向きについて、性別差による不均衡の是正などではと推察される。が、そんな事まで考えない岸堂は、兎に角と、神薙の後を追った。
* * *
ザリ、パリ。
ヒノキや低木の落ち葉を踏みしめ歩く。時折、踏み折れる枯れ枝は、脆く、その半端な硬さゆえに、折れるのであった。
「おらんなぁ」
先程、神薙が怪しいと睨んだ椚を、すぐそばから視認する。伸び荒れる枝葉のせいで、頂点部までは見通せなかったが、おそらくは否であろうと、判断する。霊装を維持したまま、神薙は周囲を見渡す。
「(もしさっきの戦闘を見ていたのなら)――遠近両用の戦闘手段、鳩尾の防御、索敵している、という全てのカードを揃えているはずだ。逃げの一辺倒か? いや、しかし」
ふと、樹冠から差し入る光が、橙色に変わりつつあるのに気付く。時刻は十五時半。十二月の山間部なら陽が陰ってくる時間帯であった。
鋭く冷い微風が、岸堂の光る頭をそっと撫でる。
「寒っ」
「(夜を待たれると厄介だな。さりとて手分けして探すのは、向こうの思う壺といったところか)それくらい我慢しろ」
「まぁ、寒いのはええけど、どうすんねん? 霊装探偵」
真砂土を踏みしめる神薙に、かすかな焦りが見え始める。
「(妙だな。さっきから何かを見落としている気がする)あのなぁ、聞くばかりではなく、お前も少しは考えろ」
――んなこと言われても、っとぶつくさと言い出す。
それも無理はなかった、霊装を行いつつ荒れた国有林の斜面を上へ下へと移動するのは、その気候も相まって、疲労が蓄積していると言わざるを得なかった。
やむなく、息抜きをかねて問いを投げかける。
「普段の依頼で詰まった場合、どう対処している?」
「詰まるゆーてもなぁ。たまに受ける依頼は、殺害された被害者の犯人捜査の補助とかやねん。霊装を使って必要な情報を得て、協会を通して警察へ提出してるだけやし」
ぼやく岸堂は、だが弛緩しかけたその表情を、急に引き締める。
「神薙ちょい待ち。――えっ、なんや?」
「どうした?」
「いや、町盛さんの声が聴こえにくいねん。――ちょ、ちょっと、待ってや町盛はん。焦るとこっちがわからんから、さっきみたくゆっくり」
焦る? なぜだ。むしろ優勢な情勢と考えていた神薙は、岸堂の言に眉を動かす。
「おっ、聴こえそうや。えっと。リター、ミエナイ、バケモノ、ケイタイ――なんのこっちゃら?」
「りたー? 視えない、化物……けいたい?」
ここに来て新しい単語がいくつか耳に入ったことで、神薙ですら思わず、疑問符を浮かべてしまう。
視界外ということはわかるが、リター? ケイタイ?
「どういうことだ?」
そう口走りつつも――そういえば、亡くなった男性は森林施業に関する技官(※技術吏員)だ、と思い出す。
山に関してならある程度、樹々はもちろん、動物の生態にも詳しい精通者だ。
「リターは、上層木から落ちて来る葉や枝が溜まる層。つまり、足裏のこの層だ」
ガサ、ガサ、っと数枚の落ち葉を踏み込む。……ケイタイとは、生物形態の事、か?
「! しまっ!」
目を見開いて岸堂へ視線を飛ばす。無警戒の彼への距離は五メートル。霊銃を右手に構えたまま、慌てて駆け出す。
「岸堂っ!」
「は?」
神薙は空いた手を握り締める。
外観の奇妙さや攻撃手段、その印象的な猿顔についての特性ばかりに気を取られていたが――あの幻核生物の身体的形態、つまりはその有様の大半が蠍なのだ。
砂漠に生息する蠍は、柔らかい地面であれば、潜伏することが可能!
モコッ。
――まだ危機を察知できていない岸堂と、駆け出す神薙の間の、リター層が、僅かに盛り上がる。
「……アギャギャギャッ!」
体積した枝葉を吹き飛ばし、真砂土の中から、歯茎が剥き出しの蠍猿が跳び現れる。
――だが、その毒針は、岸堂ではなく、神薙の鳩尾であった!
「くっ!」
「か、神薙ぃ!」
岸堂を庇いにいくことを読み切っていた蠍猿は、神薙の裏をかく事に成功する。
ガキィン!
鉄と鉄がぶつかり合う様な鋭く高い音が林内に響く。
――鳩尾を狙うことを知っていた神薙は、辛うじて霊銃の銃身部分にて鳩尾を防御する。
しかし。
「アァギャ、グィャァ!」
「なにっ」
ガギィ!
蠍猿は両手の鋏を、音が出るほどの威勢にてかっ開き、神薙の霊銃を持つ右腕の、関節を狙いって挟み締める!
「うぐ!」
熱い疼痛が、右腕から全身の神経節へと走り抜ける。
岸堂の安否にばかり気が向き、霊子操作が疎かになり、装甲が希薄化してしまったのだろう。
「――まだまだ修練不足、だなっ」
「ギャギャギャギャ!」
神薙に対して目を見開き、口は歪に生えた黒い歯を打ち鳴らし、あらん限りの威嚇を行う。
「はぁっ!」
蒼い眼光を、最後の蠍猿に突き刺しながら、右手の霊銃を左手へ手早く投げ渡し、そして――。
パァン!
黒き霊銃の五回目の咆哮が、荒れ果てた人工林に響く。顔という名の尾を失った幻核生物は、両の鋏を――だらん――と落とし、重怠そうに地面へと落下していった。
ドチャ。
「ふぅ。相手が悪かったな」
左手で右手を軽く抑えつつ、消失を見届ける。
「か、神薙っ、大丈夫かいな!」
尻餅を着き、見守ることしか出来なかった岸堂が、焦りながら即座に駆け寄ってくる。
「あぁ、大丈夫だ」
右手の袖を捲るに、少し赤味を帯びてはいたが、医学知識が乏しい岸堂の目でも、せいぜい軽い打撲程度に見えた。
「心配したけど、ほんますごいやっちゃな。MMOゲーム風(※オンラインロールプレイングゲームの意)に言うなら、遠近両用のナイト・ウィザードやで!」
「? TVゲームの例えを言われて、俺がわかるわけないだろうが。そんなことよりも――」
袖を直しつつ、漸く霊装を解いた神薙は、一度だけ息をつく。
「(不意打ちも千差万別だな。――だが、学べた)さぁ、依頼は達成だ。帰るぞ」
「せやな! ――って。ちょ、ちょっとだけ待ってくれ、神薙!」
帰路の策定のため、手帳の地図を開ける神薙は、何事かと振り向く。だが、姿勢を正した岸堂が、手を合わせて中空へ向かい、頭を下げていた。
「町盛はん。友人の神薙が、仇とってくれましたわ」
そう言って一礼を行う。風が森の枝葉を揺らす中、十秒ほど頭を傾け、やがて姿勢を戻した。
手帳に目線を戻しつつ、尋ねる。
「さっきも聞いたが、供養できたわけじゃないんだろ?」
大仰な行為とその意図に、不思議がる神薙であったが、照れくさそうに笑い返す。
「せや。そもそも、誰か一人でもその死を悲しんでくれたのなら、供養なんて終わってんねん。――だから、俺らを助けてくれたのは、帽子に残った仏はんの思念に過ぎひんし、相手に伝えるすべもあらへん」
弱い、あるいは優しいと呼べる木漏れ日が照らす中、岸堂は霊媒たる帽子を、大事そうに握った。
「でもな、自己満かもしれんけど、ええやんけ。報告やお礼を言うくらい。それに一万回言ったら、一回くらいはあの世の魂に、届いてるかもしれへん」
「……」
岸堂は職業柄、または依頼により、遺体に接することが幾度もあった。しかし、一度として霊魂なるものを見たことは無いと言う。
鋭い名剣のごとき科学という名の物差しが、あらゆる概念を分かつ令和のこの時代。昔と違い、善霊も悪霊も、もはや存在出来てなくなったのかもしれない。
「(しかし)――そうか」
先月、草壁町の外場邸にて、不思議な声を聴いた気がしたのを思い出す。
尺度が、世界が変わろうと、変わらないものがあるのかもしれない、と。
あるいは神薙自身、遠い過去の、記憶の残像と照らし合わせようとしたのかもしれない。
目を細める神薙へ向き直る。
「終わったで」
「――あぁ、帰るぞ」
再び静寂を取り戻した森の中で、誰にもわからない程度に、小さく頷いた神薙が、そう呟いた。
「――ったく。だから最初から付いてくるなと言ったろうが」
ぶつくさ文句を言う神薙は、仕事を増やすなと言わんばかりであった。
「なんまんだぶなんまんだぶ。はぁ~、地獄に仏とは正にこのことやでぇ」
両の手を擦り合わせて、神薙の後ろを、半人前の坊主が擦り歩く。当然、返答すらしない神薙は、器用に手帳に書き記しながら大きな木の根を跨ぐ。
「とこりで、さっきから何を書いとんのや?」
「手帳へ落とし込んだ林班図に道程を記載して、現在地の割り出しと目的地への経路案内に役立たせている」
「そ、そんなもん、人力で出来るんかいな?」
「即席かつざっくりだが、携帯は圏外だから仕方あるまい。磁石は用意出来ていないが、太陽の位置からおおよその方角も見てとれる。ちなみに切り株の年輪から方角を読み取るというのは都市伝説だから、当てにするな」
何者やねん? っという言葉を、岸堂は喉元で飲み込む。
「竹黙ヶ原を走る小川の数は限られている。とりあえず最寄りから当たっていくぞ」
「合点承知の助!」
休息を挟む代わりに、歩行速度を少しばかり落とすも、時刻は十四時ニ十分を刻んでいた。
最初の小川まではあと少しの距離となると、僅かな間の繋ぎとして、岸堂が話題を投げる。
「そういや、なんで霊装する時って、わざわざ霊装名を言わんとあかんのやろな?」
先にも述べた通り、ほんの雑談感覚であったが、ただでさえ神経質な神薙を、さらに逆撫でてしまうこととなった。
「――お前、本当に霊装協会の正会員か?」
「? んなことゆわれたかて。会員になるのに試験も何もあらへんやん。霊装が出来るかと軽い身辺調査くらいやし」
知らんもんは知らんと、悪びれる様子も示さない岸堂へ、不要な世話を焼く。
「言霊原理だ。聞いたことくらいあるだろう」
「コトダマゲンリ?」
溜息と大息を同時に吐くという、器用なことをやってのける神薙であったが、これ以上、好感度が下がることもあるまい、と機械的に続ける。
「霊装と能力者はしばしば車と運転手に例えられる。例えば車は――速い、燃費が悪い、頑丈、小回りが利く――などだ。そして運転手は――癖がある、スピード出しすぎ、操作が上手い――などの特性がある」
「それは聞いたことあるわ。十人十色ってな」
「あぁ。だが、どんな車でも運転手でも、必ず鍵をもって動力を起動させないと動かないし、動かせない」
「なるほど? そのキーの代わりが……」
言霊なんか? っと息をあげつつ、神薙の説明に岸堂は頷く。
「そうだ。霊装名とは、真名と呼ばれ、非常に意味を持つ言葉だ。能力の初期発露と共に、世界で一番最初に知るのは、当たり前だが当該能力者に他ならない。どんな経緯が、才能が、運命があろうとも、端緒に口にするのを赦されるは、持ち主は、その固有名称を鍵として、意思を以って口にすることで、世界へ起動する。これ全て、霊装の顕現に他ならない」
――『言(葉を以って)、霊(装を纏う)』――原理と、古来の霊装能力者達は読んだという。
雲間を刺し抜いて、陽が照らす。僅かに温められた大気が流れる山の中の土を、踏み抜く。
「なっる、ほっどぉ~」
まるでお気に入りのバンドグループの音楽を聴いているみたく、岸堂は頭を前後させていた。
説明という名の説教に疲れたのか、珍しく呼吸を整えるような動作をする神薙は、足下の枝を踏み折りつつ、続ける。
「最初にこの言霊を作った人物は、霊装能力者だったのかもしれないな」
雑談の果て、やがて幾らか視界が開けてくる。
「おっ、やっと抜けたか?」
二人の足元先は、三メートルほどの極小の崖になっていた。崖下は花崗岩や玄武岩などのありふれた岩が大なり小なり敷き詰められた、小川となっていた。
川幅は三メートルほどだが、川を満たす水量が極度に少ないことから、岩下を伏流している様相で、岩の上を立って歩くことも可能であった。
小川近くには樹木が生育しておらず、その分だけ林冠が開き空けて、弱い陽光が降り注いでいた。
「降りるぞ」
「おう」
川に敷き詰められた角礫を踏みしめた二人は、改めて周囲を見渡す。上流から下流へと蛇行しており、下流方面の両岸にて、柵のごとく伸びる木々やその枝葉によって行く手を阻まれる様は、天然の要害を彷彿とさせた。
「! 神薙、ちょっと待った」
「わかった」
周囲を警守しつつ、神薙は手帳を取り出す。
岸堂の【最期の伝言】は一度発現すれば、霊媒を所持している限り、継続的に有用な情報を得られることが多い(断片的なモノがほとんどだが)。
意識を集中させる岸堂。その間も聴覚に神経を割く神薙の耳には、初冬の風と川の岩下の小さなせせらぎだけだった。
「(近くまで来ているとは思うが)――先の言葉に出た笹の群生が、この辺りには見られないな」
だが、足下を流れる小川の潺以外には、遥か上空を揺蕩う凍雲以外に、大きな変化は認められなかった。
「――カリュウ、ワカレル、ササ、キケン」
その一言一句を、神薙が忘れることも無いのだろうが、すぐさま手帳へ記し、林班図と照らし合わせる。
それとなく腕を組む岸堂も、もっともらしく唸る。
「ふぅん。何となくはわかるけど、ワカレル、ってなんやろな?」
「地図によるとここから百メートルほど下流にて、川が二方向へ枝分かれする」
「なる。そこで笹が密生しとったら――」
「あぁ。身の危険を感じたら、霊子装甲を即座に展開しろ」
神薙の言で、自身の頬を軽く叩く岸堂は、身を強張らせて歩き出す。
その後、雑談はもちろんこと、呼吸音や足音も僅かに歩み進む。沈黙が周囲を包む中、目的地が見えてくる。
「これは、確かに笹だらけやなぁ」
水が無い小川は十五メートル程先で枝分かれしており、その間、つまりは二人の正面にある小さな陸の孤島には、スズタケが槍のごとく周囲に伸び張っていた。
「よ~伸びとるなぁ。一番長いので四メートルはあるんちゃうか?」
曲がり撓り、外敵を排除せんと、防衛するように揺れていた。いくらか楽観的に眺める岸堂へ、だが神薙が叫ぶ。
「岸堂、下がれ!」
「へっ?」
何一つ異常を感じ取れなかった岸堂が、神薙の警守を聞いた後、改めて正面の笹の島へ目をやる、と。
ガサガサガサッ。
正面、いやその左右からほぼ同時に三体のナニかが出現する。音と笹の揺れ具合から察知するに、一般的な大型犬くらいかと思われた。
「!」
――だが、実際に覗かせた姿の、頭部や胴体、それに付随する器官、そして大きさもだが、さながら中東に生息する――。
「うおっ。さ、蠍!」
慌てて大股にて、神薙の後ろに跳び下がる岸堂であった。
――だが、奇々怪々な場景を真に目の当たりにするのは、正にこの後となる。
バサッ、パキィ。
尾にあたる部分が、笹の茂みをかき分け現れ、ようやく妖しげな蠍の全貌が、露わとなる。
――そう、黒い尾の先にあるのは毒液滴る針などでは無く、大きさといい形といい、さしずめ猿の顔面そのものであった。
「なっ」
「はぁぁぁっ? 気色悪っ!」
無言で二人を見降ろした後、まるで会話するかのごとく、尾の部分――つまり顔をそれぞれ左右へと振り、三回ほど視線を交わせる。
幻覚生物は特異な個体が多いというが、正に最たる例であった。
「ニチャ、ニチャニチャ」
「「!」」
連中は喉元の奥より――舌の代替えであろうか――藍紫色の液体が滴る、棘の様なものを刺し伸ばしてくる。
「【見えざる霊銃】! 岸堂、避けろ!」
「はえっ?」
蒼き瞳を閃らせる神薙の言葉で、我を取り返した岸堂は、理由も分からず左へと転がる。
目の端で確認した神薙は、盾になる必要が無いことを判断し、霊銃のグリップを握りつつ、右へ跳んだ。
――ビチャビチャ!
神薙の予見通り、蠍猿は毒らしき液体を飛散するも、幸いなことに射速は遅く、放物線を描いて緩やかに、二人が元いた場所に落ちていった。
パァン、パァン!
受け身をとった直後という無茶な態勢から、神薙は霊銃を構え持ち、中央と対面右のそれぞれを射撃する。
「アグェ? ギャエッ! イギエエェェ」
中央の一体を狙った一発は数センチ上目に逸れて、笹を焼くだけに終わった。だが、右のソレは猿の顔の、鼻上から頭部を消し去ることに成功する!
残った口が涎をまき散らしながら、狂った様に劈き声をあげるも、最期は胴体も鋏も地べたへだらしなく這いつくばり、徐々に消失していった。
「(やはり尾の部分の、あの猿の顔が急所か)――なっ!」
残った二体は、同胞が殺されたと同時に、神薙――というよりはその手に握られた霊銃を二度見した後、急ぎ背後の笹の海へと消えていった。
「……」
再び毒液が笹の中から飛んでこないかを警戒する中、岸堂が起き上がる。
「いったた、石で肩甲骨を打ってもうたで」
背中を抑えながら、緩やかに立ち上がる。辺りには静寂が戻っていた。
「に、してもさすが神薙やな。早速一匹倒すなんて。やっぱりお前とアイツは別格やなぁ」
そんな賛辞を当然のごとくかわす神薙は、猿蠍達がいた笹林から、目を外せないでいた。
「少し面倒な相手かもしれん」
「え? な、なにがやねん?」
先の緒戦を見るに、うまく照準を合わせれば霊銃一発で倒せる。敵の攻撃手段についても、確かにあの毒は不気味だが、量も速度もそれほど脅威には感じられなかった。
それらを踏まえて、神薙は白い息を吐く。
「あの二体、逃げる寸前の動作と視線から、同類が死んだ原因を、俺の霊銃に因るものと、おそらく理解している様子だった」
「め、目の前で倒したんやぞ? それがどうしたって言うねん?」
「火器の知識をもたない幻核生物が、弾も火も吹かない俺の霊銃の脅威を、おそらくかなり正確に把握したということだ」
「――あっ」
確かに奇異であった。幻核生物はおよそ頭が遅い(様に見える)。それはこの世界と切り離された世界より、来訪しているためと考えられているからであった。
一方、それを補うかの様に、強靭な肉体や特異な能力を備えているのが常だが――。
「(猿知恵か否か)……今後は射線の通らない不利な地形での戦闘を想定する必要がある。行くぞ」
「だ、大丈夫か?」
その質問に一瞥もくれない神薙は、言い飽きたとばかりにこう言い放った。
「幻核生物相手に、最も不要な問いの一つだ」
眼前に聳える陸の孤島、だが異形を孕んでいるであろうソレは、まるで不善なる城砦のごとく、神薙達の瞳に映った。
「ちょ、おい。お、置いてくなゆーてるやろ!」
潜入路を見据えて動く神薙の後を、慌てふためきながら岸堂が追う。
* * *
蠍猿が潜んだと考えられる眼前の笹島へは――神薙の目からすれば――二ヶ所の侵入経路がある風に視えた。
一つは当然、連中が逃げ失せた笹の門に閉ざされた、頑強なる正門であった。そしてもう一つは島の横腹に見える、まるで誘うかのごとき、笹が倒れて作られた狭い突破口だ。
「……」
だが、あらゆる想定を行う神薙は、数多の経験と組み合わせて、事実を知っていた。
幻覚生物が相手の場合、どちらも不正解という場面に遭遇することが、あるということを。
「どど、どうすんねん大将?」
悩む表情を消しつつも、長考は敵の選択肢を増やすだけ、あるいは逃亡の機会を与えるのみと判断し、歩み進む。
「こっちだ」
抑揚の無い神薙の選択は迂回路、つまり側面を突く常套手段であった。
「あ、明らかに罠っぽくあらへんか?」
確かに。突飛に投げ倒された笹の道を、なぜだと思うのは当然であった。しかも人一人分の道幅は、偶然にしては出来過ぎている。
「――お前がいるから仕方がない」
「へっ? な、なんて?」
笹が重なり合う軽やかな音と、だが緊張で、聞きそびれた岸堂へ、神薙は口を開く。
「いいか? 死にたくなかったら、俺から二メートル以上離れるな」
「! は、はい!」
トゥンク、っとおよそ気色悪い鼓動を一度だけ鳴り響かせた後、雑魚のごとく神薙の跡を追う。
ザッザッザ。笹の孤島の側面より這いあがり、数メートルほど歩み進む。
「な、なんやこれ?」
岸堂が顔を歪ませるのも無理はなかった。二人の眼前に広がるのは、笹が円形に倒れた小さな空間であった。
直径三メートルほどのそれは、かつて平成の頃に流行った謎の円を彷彿とされる綺麗な円形であった。だがその周囲は、やはり笹の槍が壁の様に生い茂り、仕切られていた。
神薙が進むのに従い、岸堂も後ろを歩む。二人が円の中心くらいに到達した頃であった。
ガサッ、ガサガサ!
「ちょぉっ!」
二人の周囲、つまりは視界不全の笹海から畏怖なる音が、待っていたと言わんばかりに、蠢き鳴り響く。
「薙っ、薙!」
「二人称に忙しい奴だな。――中央付近で背中を俺に預けろ」
震える背中は、凛として不動な神薙の背中と、鏡合わせの態勢をとる。
ガサガサ、ガサガサ!
依然として不規則に鳴る音は、笹の海から曲悪に発せられ続けていた。音から位置を割り出そうにも、それを予見するがごとく、前へ後ろ横へとずれ響く。
「かかか、神薙! どど、どうすんねんっ?」
「……同じ事を短時間に複数回も尋ねるな。俺から二メートル以上離れるな」
信じとるでっ! っと、神薙に比べて明らかに脆弱な霊子装甲を展開する岸堂は、震え立っているのが精一杯であった。
「ひ、ひぃ!」
……不図に音が止む。迫りくる威喝が、加虐心に任せて煽るのを止めたのか、あるいは本腰を入れたのか。
不気味な沈黙が、しじまが覆う。
「な、薙っ!」
「――そうだな。もっと泣き喚いていいぞ」
まるで見捨てる風に呟く。
「ここ、こんな時に何ゆーとんねんお前ぇ!」
神薙は広範囲に割いていた神経を三方向、いや、二方向程度へと絞る。
サ――ガサァ!
手近な笹が揺れる。
猿蠍が姿を見せるより、岸堂が口を開くよりも速く、神薙の逆手が動く。
「――へっ? うぼぁ!」
神薙は上半身を半回転させると同時に、岸堂の襟首を掴み持ち、瞬時に笹床へ叩きつける。
ぶへぇ! ――などという声は聞こえないばかりに、岸堂が向いていた方へと向き直る。ほぼ同時に、気味悪く口を開いた猿の顔、つまりは毒針を構えた状態で、岸堂が立っていた場所を目掛け、飛びこんでくる!
「アギャギャ!」
攻撃動作を予見された猿蠍だが、その表情に別段の焦りは認められず、寧ろ微笑さえ浮かべている余裕であった。
それもそのはず。幾ら正確無比な射撃手であったとしても、岸堂を庇い、態勢を立て直し、照準を合わせるという動作を、一秒以内に為せる道理はなかった。
仮に攻撃の手番を放棄して避けたとしても、追撃を受けずに目前の笹の海へ飛び込み逃げられる完璧な一手と言えた、――だが。
「!」
相手は、あの神薙であった。
飛びかかってくる蠍猿の頭部を補足した神薙は、銃身を流れる様に水平に構え持ち、腕を振りかぶる。
「ギャッ?」
なんだ? っと少し気にしつつも、刺突する速度を緩めない蠍猿の顔面が、あろうことか、黒く塗りつぶされた。
バギィッ!
「!」
猿蠍の鼻から目、頭部を直線的に捉え、打撃位置に見据えて、まるで剣の様に銃身を振り抜く!
「ャ! ッ、ァァ、ィ」
凄まじい強度を誇る黒き霊銃の銃打は鼻骨を撃砕し、眼球を損壊させ、かち割った頭骨の破片をそのまま脳へと刺し込む!
「ヒッ、ヒビビ、ィッ!」
断末魔をあげるよりも早く、頭部を打ち振り抜く。ビチャン、とだらしなく、あるいは汚らしく、笹の上に身体全てを投げ堕とす。
もはや趨勢は決していたが、眉一つ動かさず、霊銃を持ち直す。
パァン! パァン!
確殺の咆吼が放たれる。
「……」
忌まわしき不浄な存在が蒸発し、霧散する耳障りな音が、清浄なる森の中を泳いだ。
「よし、あと一体だな」
「ちょちょちょ、待てやぁ!」
三秒に満たない戦闘風景に目を丸くしつつ、身体を起こしながら、岸堂が声高に叫ぶ。
「? 敵の頭数を減らせて、お前も無事。何が不満だ?」
「な、なんやねんお前の今の超反応。まるで幻覚生物の動きを読み切った様な動きやったやんけ!」
蒼い瞳の神薙は、銃身の汚れだけを気にしつつ、仕方なさそうに答える。
「毒液飛ばしでは攻撃速度が遅いため、毒針による一撃必殺を採用してくる想定でいた。お前がいい具合に慌てふためいたおかげで鳩尾、つまりは正面へ攻撃が行くよう調整でき、読み切って迎撃した次第だ」
一応は俺に来るパターンも想定しておいたがな、と付け足す。
「囮かいな俺は! ――にしても、銃で殴るとは恐れいったわ」
最後の一体を用心しつつも、解説を続ける。
「敵の策も悪くは無かったが、遠距離攻撃だけを警戒している様相が見え見えだった。知力はあっても知能はなさそうだ」
「――神薙相手に知恵比べとか、さすがに同情するわ」
さて、っと周囲を伺う神薙であったが、今度こそ、物音一つ聞こえなかった。
「最後の奴、ひょっとして森の奥深くまで逃げよったか?」
「いや、おそらくこの近くにいるはずだ」
「なんでわかんねん?」
冬の風が赤松の枝を小さく揺らせる。
「同類への仲間意識は薄いが、俺達、つまり外敵の排除に知恵を絞る様子は見てとれる。ゆえに、今の戦いぶりをどこかで観察している公算は高い」
「なるほど。自分の番に活かそうっていう魂胆か。すこいやっちゃなぁ」
生い茂る笹の海を見下ろせるのは、さらに高い樹々のみであった。もちろん、そちらへ目をやる神薙であったが――ふと、遠くの広葉樹の枝葉が、不自然に揺れた様に感じた。
「この位置を覗き見るには、高木へよじ登って視る以外にない。行くぞ」
「お、おう!」
笹に潜んでの奇襲に注意しつつ、移動と索敵を始める。
「ところで、神薙」
「なんだ?」
「助けてもらってアレやねんけど。次はもう少し優しく助けてくれへん?」
「あ?」
なんでもありまへん――っと神薙の三歩後ろを歩く半人前の坊主であった。もっとも、過去に星宮を庇った時と比べれば、扱いがぞんざいな感は否めなかった。
まぁ、神薙のことであるから、異性どうこう以前に、戦闘への向きや不向きについて、性別差による不均衡の是正などではと推察される。が、そんな事まで考えない岸堂は、兎に角と、神薙の後を追った。
* * *
ザリ、パリ。
ヒノキや低木の落ち葉を踏みしめ歩く。時折、踏み折れる枯れ枝は、脆く、その半端な硬さゆえに、折れるのであった。
「おらんなぁ」
先程、神薙が怪しいと睨んだ椚を、すぐそばから視認する。伸び荒れる枝葉のせいで、頂点部までは見通せなかったが、おそらくは否であろうと、判断する。霊装を維持したまま、神薙は周囲を見渡す。
「(もしさっきの戦闘を見ていたのなら)――遠近両用の戦闘手段、鳩尾の防御、索敵している、という全てのカードを揃えているはずだ。逃げの一辺倒か? いや、しかし」
ふと、樹冠から差し入る光が、橙色に変わりつつあるのに気付く。時刻は十五時半。十二月の山間部なら陽が陰ってくる時間帯であった。
鋭く冷い微風が、岸堂の光る頭をそっと撫でる。
「寒っ」
「(夜を待たれると厄介だな。さりとて手分けして探すのは、向こうの思う壺といったところか)それくらい我慢しろ」
「まぁ、寒いのはええけど、どうすんねん? 霊装探偵」
真砂土を踏みしめる神薙に、かすかな焦りが見え始める。
「(妙だな。さっきから何かを見落としている気がする)あのなぁ、聞くばかりではなく、お前も少しは考えろ」
――んなこと言われても、っとぶつくさと言い出す。
それも無理はなかった、霊装を行いつつ荒れた国有林の斜面を上へ下へと移動するのは、その気候も相まって、疲労が蓄積していると言わざるを得なかった。
やむなく、息抜きをかねて問いを投げかける。
「普段の依頼で詰まった場合、どう対処している?」
「詰まるゆーてもなぁ。たまに受ける依頼は、殺害された被害者の犯人捜査の補助とかやねん。霊装を使って必要な情報を得て、協会を通して警察へ提出してるだけやし」
ぼやく岸堂は、だが弛緩しかけたその表情を、急に引き締める。
「神薙ちょい待ち。――えっ、なんや?」
「どうした?」
「いや、町盛さんの声が聴こえにくいねん。――ちょ、ちょっと、待ってや町盛はん。焦るとこっちがわからんから、さっきみたくゆっくり」
焦る? なぜだ。むしろ優勢な情勢と考えていた神薙は、岸堂の言に眉を動かす。
「おっ、聴こえそうや。えっと。リター、ミエナイ、バケモノ、ケイタイ――なんのこっちゃら?」
「りたー? 視えない、化物……けいたい?」
ここに来て新しい単語がいくつか耳に入ったことで、神薙ですら思わず、疑問符を浮かべてしまう。
視界外ということはわかるが、リター? ケイタイ?
「どういうことだ?」
そう口走りつつも――そういえば、亡くなった男性は森林施業に関する技官(※技術吏員)だ、と思い出す。
山に関してならある程度、樹々はもちろん、動物の生態にも詳しい精通者だ。
「リターは、上層木から落ちて来る葉や枝が溜まる層。つまり、足裏のこの層だ」
ガサ、ガサ、っと数枚の落ち葉を踏み込む。……ケイタイとは、生物形態の事、か?
「! しまっ!」
目を見開いて岸堂へ視線を飛ばす。無警戒の彼への距離は五メートル。霊銃を右手に構えたまま、慌てて駆け出す。
「岸堂っ!」
「は?」
神薙は空いた手を握り締める。
外観の奇妙さや攻撃手段、その印象的な猿顔についての特性ばかりに気を取られていたが――あの幻核生物の身体的形態、つまりはその有様の大半が蠍なのだ。
砂漠に生息する蠍は、柔らかい地面であれば、潜伏することが可能!
モコッ。
――まだ危機を察知できていない岸堂と、駆け出す神薙の間の、リター層が、僅かに盛り上がる。
「……アギャギャギャッ!」
体積した枝葉を吹き飛ばし、真砂土の中から、歯茎が剥き出しの蠍猿が跳び現れる。
――だが、その毒針は、岸堂ではなく、神薙の鳩尾であった!
「くっ!」
「か、神薙ぃ!」
岸堂を庇いにいくことを読み切っていた蠍猿は、神薙の裏をかく事に成功する。
ガキィン!
鉄と鉄がぶつかり合う様な鋭く高い音が林内に響く。
――鳩尾を狙うことを知っていた神薙は、辛うじて霊銃の銃身部分にて鳩尾を防御する。
しかし。
「アァギャ、グィャァ!」
「なにっ」
ガギィ!
蠍猿は両手の鋏を、音が出るほどの威勢にてかっ開き、神薙の霊銃を持つ右腕の、関節を狙いって挟み締める!
「うぐ!」
熱い疼痛が、右腕から全身の神経節へと走り抜ける。
岸堂の安否にばかり気が向き、霊子操作が疎かになり、装甲が希薄化してしまったのだろう。
「――まだまだ修練不足、だなっ」
「ギャギャギャギャ!」
神薙に対して目を見開き、口は歪に生えた黒い歯を打ち鳴らし、あらん限りの威嚇を行う。
「はぁっ!」
蒼い眼光を、最後の蠍猿に突き刺しながら、右手の霊銃を左手へ手早く投げ渡し、そして――。
パァン!
黒き霊銃の五回目の咆哮が、荒れ果てた人工林に響く。顔という名の尾を失った幻核生物は、両の鋏を――だらん――と落とし、重怠そうに地面へと落下していった。
ドチャ。
「ふぅ。相手が悪かったな」
左手で右手を軽く抑えつつ、消失を見届ける。
「か、神薙っ、大丈夫かいな!」
尻餅を着き、見守ることしか出来なかった岸堂が、焦りながら即座に駆け寄ってくる。
「あぁ、大丈夫だ」
右手の袖を捲るに、少し赤味を帯びてはいたが、医学知識が乏しい岸堂の目でも、せいぜい軽い打撲程度に見えた。
「心配したけど、ほんますごいやっちゃな。MMOゲーム風(※オンラインロールプレイングゲームの意)に言うなら、遠近両用のナイト・ウィザードやで!」
「? TVゲームの例えを言われて、俺がわかるわけないだろうが。そんなことよりも――」
袖を直しつつ、漸く霊装を解いた神薙は、一度だけ息をつく。
「(不意打ちも千差万別だな。――だが、学べた)さぁ、依頼は達成だ。帰るぞ」
「せやな! ――って。ちょ、ちょっとだけ待ってくれ、神薙!」
帰路の策定のため、手帳の地図を開ける神薙は、何事かと振り向く。だが、姿勢を正した岸堂が、手を合わせて中空へ向かい、頭を下げていた。
「町盛はん。友人の神薙が、仇とってくれましたわ」
そう言って一礼を行う。風が森の枝葉を揺らす中、十秒ほど頭を傾け、やがて姿勢を戻した。
手帳に目線を戻しつつ、尋ねる。
「さっきも聞いたが、供養できたわけじゃないんだろ?」
大仰な行為とその意図に、不思議がる神薙であったが、照れくさそうに笑い返す。
「せや。そもそも、誰か一人でもその死を悲しんでくれたのなら、供養なんて終わってんねん。――だから、俺らを助けてくれたのは、帽子に残った仏はんの思念に過ぎひんし、相手に伝えるすべもあらへん」
弱い、あるいは優しいと呼べる木漏れ日が照らす中、岸堂は霊媒たる帽子を、大事そうに握った。
「でもな、自己満かもしれんけど、ええやんけ。報告やお礼を言うくらい。それに一万回言ったら、一回くらいはあの世の魂に、届いてるかもしれへん」
「……」
岸堂は職業柄、または依頼により、遺体に接することが幾度もあった。しかし、一度として霊魂なるものを見たことは無いと言う。
鋭い名剣のごとき科学という名の物差しが、あらゆる概念を分かつ令和のこの時代。昔と違い、善霊も悪霊も、もはや存在出来てなくなったのかもしれない。
「(しかし)――そうか」
先月、草壁町の外場邸にて、不思議な声を聴いた気がしたのを思い出す。
尺度が、世界が変わろうと、変わらないものがあるのかもしれない、と。
あるいは神薙自身、遠い過去の、記憶の残像と照らし合わせようとしたのかもしれない。
目を細める神薙へ向き直る。
「終わったで」
「――あぁ、帰るぞ」
再び静寂を取り戻した森の中で、誰にもわからない程度に、小さく頷いた神薙が、そう呟いた。
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