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オルテュルスー獣の女ー
【オルテュルス】洞穴に踏み入る者
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「はいはい、また洞穴の話ね、ほんとアンタはそればっかりね」
「だって気にならない? 入ったら戻って来れないのに、穴には化物はおろか小さき者も棲んでないんだよ? じゃあ入った村の者はどうなったの?」
「知らないわよ。だから、その禍ってやつにどうこうされたんでしょ?」
「どうこう、ってだからそれなんなの!!」
「知らないわよそんなのぉ……。はぁ~もうアンタはめんどくさいなぁ」
まだ日が登りきらない頃、私達は今日のご飯を探しに森を歩いていた。
小さき者が見付からない時、妹は決まって洞穴の謎を私に質問してくる。
私だって何も知らないのに、だ。
まあ、気持ちは分からなくもない。この退屈な村に在る、唯一の謎であり、誰も、何も知らない事象なのだから。
好奇心旺盛な幼子達から、いつ亡くなっても可笑しくない長寿の村長二人まで、誰二人としてその洞穴の奥に何が在るかを知らないのだから。
私だって、知りたくないのかと聞かれたら「知りたくない訳がない」と答える。
誰かが教えてくれるのなら、私だって知りたい。
「可愛い妹に対してめんどくさいはひどくない? ちょっと先に目覚めたからって歳上ぶっちゃって。やだやだ。はぁーお姉様はこれだから」
私の言葉に妹は口を尖らせ、ため息混じりに嫌みたらしい眼差しを向けてくる。
「もぉ~、アンタはどうしてそういうこと言うかなぁ……、私が姉なのはたまたまでしょう? 別に私だって姉になりたくてなった訳じゃないわよ。そういう決まりなんだから、仕方がないじゃない」
「村の掟だもんね、はぁーーあ、あーやだやだ」
さっきよりも深いため息を吐くと、一拍おいてから妹は両手を上げ大きく伸びをした。
「んんー……っっはぁー。天気も良くて、風も良い匂い」
妹は豊かな乳房を息を大きく吸い込むことでさらに膨らませ、やる気のない顔で辺りを見回す。
「だって言うのに、ご飯は見付からないし、村も森も平和。ほんとう、退屈だなぁ」
「何も大事なくて、とても良いことじゃない」
宥める私の言葉に、妹は口を再び尖らせやる気のない顔をさらにだらしなく歪ませる。
「退屈なのは退屈なんですぅー。もう飽き飽きなんですぅー」
「平和で良いじゃないよ」
ふぅ。ご飯が見付かるまで、もうしばらくこの顔は続くのだろうなぁ。
「だって気にならない? 入ったら戻って来れないのに、穴には化物はおろか小さき者も棲んでないんだよ? じゃあ入った村の者はどうなったの?」
「知らないわよ。だから、その禍ってやつにどうこうされたんでしょ?」
「どうこう、ってだからそれなんなの!!」
「知らないわよそんなのぉ……。はぁ~もうアンタはめんどくさいなぁ」
まだ日が登りきらない頃、私達は今日のご飯を探しに森を歩いていた。
小さき者が見付からない時、妹は決まって洞穴の謎を私に質問してくる。
私だって何も知らないのに、だ。
まあ、気持ちは分からなくもない。この退屈な村に在る、唯一の謎であり、誰も、何も知らない事象なのだから。
好奇心旺盛な幼子達から、いつ亡くなっても可笑しくない長寿の村長二人まで、誰二人としてその洞穴の奥に何が在るかを知らないのだから。
私だって、知りたくないのかと聞かれたら「知りたくない訳がない」と答える。
誰かが教えてくれるのなら、私だって知りたい。
「可愛い妹に対してめんどくさいはひどくない? ちょっと先に目覚めたからって歳上ぶっちゃって。やだやだ。はぁーお姉様はこれだから」
私の言葉に妹は口を尖らせ、ため息混じりに嫌みたらしい眼差しを向けてくる。
「もぉ~、アンタはどうしてそういうこと言うかなぁ……、私が姉なのはたまたまでしょう? 別に私だって姉になりたくてなった訳じゃないわよ。そういう決まりなんだから、仕方がないじゃない」
「村の掟だもんね、はぁーーあ、あーやだやだ」
さっきよりも深いため息を吐くと、一拍おいてから妹は両手を上げ大きく伸びをした。
「んんー……っっはぁー。天気も良くて、風も良い匂い」
妹は豊かな乳房を息を大きく吸い込むことでさらに膨らませ、やる気のない顔で辺りを見回す。
「だって言うのに、ご飯は見付からないし、村も森も平和。ほんとう、退屈だなぁ」
「何も大事なくて、とても良いことじゃない」
宥める私の言葉に、妹は口を再び尖らせやる気のない顔をさらにだらしなく歪ませる。
「退屈なのは退屈なんですぅー。もう飽き飽きなんですぅー」
「平和で良いじゃないよ」
ふぅ。ご飯が見付かるまで、もうしばらくこの顔は続くのだろうなぁ。
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