52 / 72
二章 chocolate brothers
2月11日『準備4』
しおりを挟む
「それさぁ~、成功するかなぁ~?」
ミホさんが従業員休憩室のテーブルに頬杖をついて溜め息を吐いた。
「え、何がですか? どこかイケてないトコあります?」
「え~、どこがって言うか、全体的に~?」
「全体的にじゃ分かんないですよ。改善の余地があるなら教えてくださいよ」
「う~ん、じゃあ言うけど~、お兄さん、もうバレンタインにはチョコ食べてくれないと思うよ~? 悪ノリの結果とはいえ、ほぼお酒のチョコレート飲まされたら、次は警戒しちゃうでしょ~可愛い妹が作ったチョコでもさぁ~」
「……マジですか?」
「う~ん、たぶん」
「……マジか」
「たぶんね~」
それはマズイ。
そんなことになってはお兄ちゃんの初めてを奪うどころではなくなってしまう。
お兄ちゃんにあげるプレゼントを決めかねて、贈り物に詳しそうなミホさんに相談を聞いてもらうついでにチョコフォンデュを試作してお兄ちゃんの観察をしたところまで話したら、まさかこんな回答をもらうことになるとは。
寝耳に水の事態だ。
「どうにかお兄ちゃんにチョコを食べさせる方法はないですかね」
「チョコは難しいかもね~。お酒の匂いが全然しないとかなら、食べてくれると思うけど、それじゃ意味ないんでしょ~?」
「そうですね、泥酔したところを襲うのが作戦なので」
「どうしてそんな成功率低そうな作戦を採用したかなぁ~」
「え、成功率低そうですか!?」
「え、って。こっちが驚きだよぉ~。チョコレートにお酒混ぜて酔わせて寝込みを襲うとか、絶対無理じゃん~。睡眠導入剤飲ませるとかのがよっぽど現実味あるよぉ~」
「お薬はちょっと……怖そうだし……」
「いやまあそうなんだけどさぁ~、酔わせるにしても、チョコをチョイスするっていうのが現実味無いってことだよぉ~」
呆れ顔で話すミホさん。
左腕でついていた頬杖を右腕に交代して、「う~ん、どうしたものかなぁ~」なんて呟いている。
ちゃんと相談に乗ってくれる良い先輩だ。
「睡眠導入剤とかはちょっと使えないと思うんですけど、例えば晩酌で酔わせるとか、どうですかね。もう、お酒として飲ませて酔わせちゃうとか」
「チョコよりは可能性あると思うけど、お兄さんお酒自体弱いんでしょ~? 晩酌に付き合ってくれるかなぁ~」
「じゃあ逆に私が酔い潰れて、酔った勢いで襲うとかどうですか?」
「もう何が『逆に』なのか分かんないけど、それで上手くいくならもっと早くに上手くいってると思うけど~」
「ですよねー」
「うん~」
これはマズイ。
作戦を根本から練り直さなくちゃいけないんじゃないかな。
確かにミホさんの言う通り、お兄ちゃんは昨日の夜は静かに怒ったような顔で私と口をきいてくれなかった。
『てへ、やり過ぎちゃったゾ』みたいな気持ちでほとぼりが冷めるのを待っていた私だけど、冷静に考えてみると今回怒らせてしまったのだとしたら、次回は普通に考えて無いんじゃないだろうか。
「こないだはゴメンねお兄ちゃん、今度は大丈夫だからチョコフォンデュ食べてー」と良いながらお酒の匂いをぷんぷん漂わせたチョコフォンデュを差し出したら「何考えてるんだお前は」なんて言われるに違いない。
口をきいてくれないどころではなくなってしまうことだろう。
「ミホさ~ん、私、どうしたら良いですかねー?」
「お兄ちゃんのこと好きなのは知ってるけど、そんなにお兄ちゃんとシたいのぉ~? それがよく分かんないんだよねぇ~。相手は血の繋がりのある兄妹だよ~?」
「そう言われましてもぉー、好きなものは好きですし、やらしいことしたいかと言われたらシたいし。血の繋がりがあるとかないとか、私には関係ないんですよねー」
「やっぱ分かんないなぁ~」
まぁ、そうだろうなとは思う。
分かってほしいとも思ってない。
この気持ちは私だけのもので良い。
この身を捧げたいと、私の人生を以て添い遂げたいと、そう思わせてくれるのは紛れもなくお兄ちゃんだし、そう思って良いのは私だけだと思ってる。
お兄ちゃんに関心があるのは私だけで良いと、お兄ちゃんを好きになるのは私だけで十二分だと思ってる。
それ以外は、きっと私は邪魔になるだろう。
それこそ、ヤンデレのように。
「ミホさん、私とお兄ちゃんが結ばれる何か良いアイディアないですかぁ? チョコフォンデュ作戦がダメなら、何か良い代案思い付きませんかー?」
「う~ん」
「やっぱ無いですかねぇ」
「無くは無いけどぉ~」
「おっ!?」
「でも、まぁ、卑怯と言うかぁ~~。お兄さんがちょっと可哀相と言うか~……」
「えぇ、お兄ちゃんが可哀想になっちゃうようなことですか?」
「う~ん、まぁ、お兄さんは良い気分はしないかもだけど、ある意味正攻法とも言えると思うぅ……かなぁ~」
「正攻法……? そんな方法が」
「後でお兄さんに怒られても良い覚悟があるなら、教えてあげるけどぉ……聞く?」
拳をぎゅっと握って、ミホさんの言葉に頷く。
「それで、お兄ちゃんと結ばれるなら……」
「嫌われるかもなのに?」
「……それでも、何か、変えないといけないと思うから」
「……そっかぁ。ゆかちゃんは本当にお兄さんのこと大好きなんだなぁ~。羨ましいよぉ~」
「……羨まれるような関係ではないですけどね」
「だねぇ~」
「はい……」
「じゃあ、教えてあげるね」
私はもう一度、ゆっくり頷いた。
ミホさんが従業員休憩室のテーブルに頬杖をついて溜め息を吐いた。
「え、何がですか? どこかイケてないトコあります?」
「え~、どこがって言うか、全体的に~?」
「全体的にじゃ分かんないですよ。改善の余地があるなら教えてくださいよ」
「う~ん、じゃあ言うけど~、お兄さん、もうバレンタインにはチョコ食べてくれないと思うよ~? 悪ノリの結果とはいえ、ほぼお酒のチョコレート飲まされたら、次は警戒しちゃうでしょ~可愛い妹が作ったチョコでもさぁ~」
「……マジですか?」
「う~ん、たぶん」
「……マジか」
「たぶんね~」
それはマズイ。
そんなことになってはお兄ちゃんの初めてを奪うどころではなくなってしまう。
お兄ちゃんにあげるプレゼントを決めかねて、贈り物に詳しそうなミホさんに相談を聞いてもらうついでにチョコフォンデュを試作してお兄ちゃんの観察をしたところまで話したら、まさかこんな回答をもらうことになるとは。
寝耳に水の事態だ。
「どうにかお兄ちゃんにチョコを食べさせる方法はないですかね」
「チョコは難しいかもね~。お酒の匂いが全然しないとかなら、食べてくれると思うけど、それじゃ意味ないんでしょ~?」
「そうですね、泥酔したところを襲うのが作戦なので」
「どうしてそんな成功率低そうな作戦を採用したかなぁ~」
「え、成功率低そうですか!?」
「え、って。こっちが驚きだよぉ~。チョコレートにお酒混ぜて酔わせて寝込みを襲うとか、絶対無理じゃん~。睡眠導入剤飲ませるとかのがよっぽど現実味あるよぉ~」
「お薬はちょっと……怖そうだし……」
「いやまあそうなんだけどさぁ~、酔わせるにしても、チョコをチョイスするっていうのが現実味無いってことだよぉ~」
呆れ顔で話すミホさん。
左腕でついていた頬杖を右腕に交代して、「う~ん、どうしたものかなぁ~」なんて呟いている。
ちゃんと相談に乗ってくれる良い先輩だ。
「睡眠導入剤とかはちょっと使えないと思うんですけど、例えば晩酌で酔わせるとか、どうですかね。もう、お酒として飲ませて酔わせちゃうとか」
「チョコよりは可能性あると思うけど、お兄さんお酒自体弱いんでしょ~? 晩酌に付き合ってくれるかなぁ~」
「じゃあ逆に私が酔い潰れて、酔った勢いで襲うとかどうですか?」
「もう何が『逆に』なのか分かんないけど、それで上手くいくならもっと早くに上手くいってると思うけど~」
「ですよねー」
「うん~」
これはマズイ。
作戦を根本から練り直さなくちゃいけないんじゃないかな。
確かにミホさんの言う通り、お兄ちゃんは昨日の夜は静かに怒ったような顔で私と口をきいてくれなかった。
『てへ、やり過ぎちゃったゾ』みたいな気持ちでほとぼりが冷めるのを待っていた私だけど、冷静に考えてみると今回怒らせてしまったのだとしたら、次回は普通に考えて無いんじゃないだろうか。
「こないだはゴメンねお兄ちゃん、今度は大丈夫だからチョコフォンデュ食べてー」と良いながらお酒の匂いをぷんぷん漂わせたチョコフォンデュを差し出したら「何考えてるんだお前は」なんて言われるに違いない。
口をきいてくれないどころではなくなってしまうことだろう。
「ミホさ~ん、私、どうしたら良いですかねー?」
「お兄ちゃんのこと好きなのは知ってるけど、そんなにお兄ちゃんとシたいのぉ~? それがよく分かんないんだよねぇ~。相手は血の繋がりのある兄妹だよ~?」
「そう言われましてもぉー、好きなものは好きですし、やらしいことしたいかと言われたらシたいし。血の繋がりがあるとかないとか、私には関係ないんですよねー」
「やっぱ分かんないなぁ~」
まぁ、そうだろうなとは思う。
分かってほしいとも思ってない。
この気持ちは私だけのもので良い。
この身を捧げたいと、私の人生を以て添い遂げたいと、そう思わせてくれるのは紛れもなくお兄ちゃんだし、そう思って良いのは私だけだと思ってる。
お兄ちゃんに関心があるのは私だけで良いと、お兄ちゃんを好きになるのは私だけで十二分だと思ってる。
それ以外は、きっと私は邪魔になるだろう。
それこそ、ヤンデレのように。
「ミホさん、私とお兄ちゃんが結ばれる何か良いアイディアないですかぁ? チョコフォンデュ作戦がダメなら、何か良い代案思い付きませんかー?」
「う~ん」
「やっぱ無いですかねぇ」
「無くは無いけどぉ~」
「おっ!?」
「でも、まぁ、卑怯と言うかぁ~~。お兄さんがちょっと可哀相と言うか~……」
「えぇ、お兄ちゃんが可哀想になっちゃうようなことですか?」
「う~ん、まぁ、お兄さんは良い気分はしないかもだけど、ある意味正攻法とも言えると思うぅ……かなぁ~」
「正攻法……? そんな方法が」
「後でお兄さんに怒られても良い覚悟があるなら、教えてあげるけどぉ……聞く?」
拳をぎゅっと握って、ミホさんの言葉に頷く。
「それで、お兄ちゃんと結ばれるなら……」
「嫌われるかもなのに?」
「……それでも、何か、変えないといけないと思うから」
「……そっかぁ。ゆかちゃんは本当にお兄さんのこと大好きなんだなぁ~。羨ましいよぉ~」
「……羨まれるような関係ではないですけどね」
「だねぇ~」
「はい……」
「じゃあ、教えてあげるね」
私はもう一度、ゆっくり頷いた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる