異世界の住人を見守るだけの簡単なお仕事です。

虫圭

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【ピピリとピリリの隊商道中記―其の四】

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「うわぁ。竜属だぁ」
「これが、竜属……」

 ウチとおねーちゃんは地下神殿を訪れています。参拝ってやつです。
 砂漠を抜け、山岳を越え、荒野を突き進んだ先では、地聖竜をまつった神殿の入り口が大口を開けてがウチ達を出迎えました。
 
 ウチとおねーちゃんが嗅いだ知らない魔物の匂いというのは、神殿の最奥に棲んでいる地竜のものだったのです。どうりで匂いが籠って嗅ぎ取りづらかったわけだ。
 ん、いや、地聖竜は大地を守護する聖竜なんだから、魔物呼ばわりしたらばちが当たるかな? 聖獣って言うんだっけ?
「ピピリ、竜属って確か、私達の言葉が解るんだよね? 何か質問しても良いのかな?」
「ピリリ、駄目よ。相手は大地を守護する聖獣。私達が声をかけていい存在じゃないわ」
 やっぱダメかー。

 地下神殿というのは、地竜が大昔から棲んでいた大穴を人の手で掘り拡げ、神聖文字を彫刻し神聖化させた場所だそうです。
 今では地聖竜と呼ばれる地竜ですが、元はこの地に棲むただの魔獣だったそうです。竜属はただの・・・とは呼べない存在だけど。
 その太古の魔獣を人が聖獣として敬いたてまつった結果、地竜は神格化し地聖竜として大地を守護する、神々と同格の存在になったと言い伝えられています。
 さっき、たいちょーさんから教えてもらいました。
 だから、この荒野一帯では魔獣の被害が極端に少ないそうなのです。
 地聖竜さんってば、超凄いですね。

 ふんふんとたいちょーさんの説明を真剣に聞くウチの姿を見ておねーちゃんがにこにこしてたのは何でかな? 何か可笑しなことがあったかな。
「ピピリ、地聖竜さん、ずっと寝てるね。退屈なのかな。やっぱ何か質問してみたらダメかな? ウチ達とお話したら退屈が紛れるんじゃないかな」
「ピリリ。退屈だなんて失礼な言い方しないの。地聖竜様は、この地に存在しているだけでこの地に暮らす人に恩恵を与えて下さっているんだから」
 おぉ、成る程。それが地聖竜さんのお仕事なのかー。寝てるだけでみんなに敬われるって良いなぁ。食べ物にも困らないみたいだし。
 地聖竜さんが寝そべり眠っている玉座を模した巨大な台座には、地聖竜さんの体をぐるっと囲んで乾燥した果物や干し肉などの保存食が所狭しと転がっている。
 食べ物に囲まれて眠るなんて、贅沢の極みだなぁ。保存食だから喉が渇きそうだけど。

 ウチは、眼を瞑り静かに寝息を立てる地聖竜さんを暫くじっと見詰めていた。

(To be continued)
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