異世界の住人を見守るだけの簡単なお仕事です。

虫圭

文字の大きさ
上 下
24 / 48

【モーガンと相棒―其の三】

しおりを挟む
「ケイティはスフィンクスってぇ魔属を知ってるかい?」

 ケイティの部屋に招かれ、白いヒラヒラしたクロスが敷いてある可愛らしいテーブルと俺が座るには随分小さい椅子を前に、俺は直接地べたに胡座あぐらをかいて座った。床にはこれまた真っ白なふかふかの絨毯が敷いてある。
 ケイティはお上品に椅子にちょこんと座り、紅茶を口にしている。
 俺は紅茶をずずずと啜りながら、一緒に出された茶菓子をぼりぼりと頬張った後、ケイティを少し下から見上げて質問した。

「スフィンクス……。いえ、存じませんわ。どのような魔物なんですの?」
「獅子の胴に鷲の翼、尾は大蛇、そして獅子の胴から女の体が生えてるって化け物だ。頭部も女だな。獅子の頭は付いてねぇ」
「……キメラのような魔獣ということかしら」
「その認識で間違いねぇが、半分正解ってとこだな。魔物って一括りにしちまえば確かにそうなんだが、スフィンクスは魔獣じゃなくて魔属だ」
「魔属……。今一つ得心しかねますわ。魔獣と魔属はどう違うんですの?」
「一言で言うと、言語を使えるかどうかってことだな。魔獣にも言語を理解できるヤツはいるが、話せる程の知能を持ってるのは魔属だけだ。そして、言語を操れる魔属の殆どが、魔王の配下だ」
「魔王の、配下……」
 俺の言葉をゆっくり反芻はんすうしながら視線を落とすと、ケイティは顎に手を当てコクコクと頷き理解したと動きで示す。
「それで、そのスフィンクスと戦ったことがあると」
「ま、そうだな。あれは俺が用心棒になる前、そして傭兵になる前だ。もう随分昔のことになるな」
「何か、重要な岐路だった。もしくは岐路になったということですの?」
「相変わらず頭の回転が早いな。そうだ。俺が傭兵になる切っ掛けになったのがそのスフィンクスとの一戦だった。傭兵になるっつーか冒険者ギルドの依頼とかじゃなく誰か個人に雇われるという立場になった、ってのが正しいな。まあ、俺の人生を変える切っ掛けになったことは確かだ」
「ふぅん。何だか面白そうですわね。続けて頂戴」
 カチャ、と紅茶が半分程入ったカップを置いて、ケイティが体ごと俺の方を向く。
 興味本位から、真剣に聞く姿勢になったことが解った。

 あんまり期待されても困るんだけどな。
 なんせ、俺がクソ田舎でスフィンクスに襲われてたひょろっちいガキと出会うってだけの話だからな。

(To be continued)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Link's

黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。 人類に仇なす不死の生物、"魔属” そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者” 人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている―― アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。 ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。 やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に―― 猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

処理中です...