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☆12.
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やっぱり――。
好きだ。
わたし、このひとが、好きなんだ。
だから。
このひとには苦しんでほしくない。
泣いてほしくない。
いつも、笑っていてほしい。
★
「あの、すこし、いいですか?」
わたしは、昼休み、隣の教室の前まできた。
ノックをして、扉の前に立つ。
「何か用?」
「えっと、静岡幸成くんに」
ざわっと教室の中がさわがしくなった。
ひそひそ声が聞こえる。
だけど、わたしは、なるべく、そういうものを無視することにした。
「お、おい、日夏……」
幸成はわたしが現れたことに動揺していた。
だけど――。
「幸成くん、ごめんなさい!」
わたしは彼の前でぺこりと腰を折った。
「わたしのせいで、変な噂流れちゃって!」
教室のなかのざわめきが大きくなる。
「変な噂?」
「うん。わたしが、あなたにパシられている、って」
ざわざわっ。
「デマなのはわかっているけど、優しい幸成が、この噂がわたしの株を下げないから、きっとそのままにしてるんだろうって思って。でもさ、これって、幸成だけがかわいそうな感じじゃんか!」
急に頭の中が空回りしていくような、焦って、変な日本語になってしまう。
言いたいこと、伝わらない。
どうしよう。
ことばを重ねて、重ねて。
それで高く積み上げて――。
それで――。
「うん、そうだね」
「え?」
幸成は、神妙な顔になった。
「それで、何がいいたいの? もう俺とご飯はしてくれないって言いに来たの?」
「――!!」
がくん、と身体じゅうから力が抜けていきそうだった。
好きだ。
わたし、このひとが、好きなんだ。
だから。
このひとには苦しんでほしくない。
泣いてほしくない。
いつも、笑っていてほしい。
★
「あの、すこし、いいですか?」
わたしは、昼休み、隣の教室の前まできた。
ノックをして、扉の前に立つ。
「何か用?」
「えっと、静岡幸成くんに」
ざわっと教室の中がさわがしくなった。
ひそひそ声が聞こえる。
だけど、わたしは、なるべく、そういうものを無視することにした。
「お、おい、日夏……」
幸成はわたしが現れたことに動揺していた。
だけど――。
「幸成くん、ごめんなさい!」
わたしは彼の前でぺこりと腰を折った。
「わたしのせいで、変な噂流れちゃって!」
教室のなかのざわめきが大きくなる。
「変な噂?」
「うん。わたしが、あなたにパシられている、って」
ざわざわっ。
「デマなのはわかっているけど、優しい幸成が、この噂がわたしの株を下げないから、きっとそのままにしてるんだろうって思って。でもさ、これって、幸成だけがかわいそうな感じじゃんか!」
急に頭の中が空回りしていくような、焦って、変な日本語になってしまう。
言いたいこと、伝わらない。
どうしよう。
ことばを重ねて、重ねて。
それで高く積み上げて――。
それで――。
「うん、そうだね」
「え?」
幸成は、神妙な顔になった。
「それで、何がいいたいの? もう俺とご飯はしてくれないって言いに来たの?」
「――!!」
がくん、と身体じゅうから力が抜けていきそうだった。
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