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☆3.
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わたしが、幸成と、一緒にご飯をするようになった「きっかけ」は、一週間前――。
下校時刻ぎりぎり。
とっとと帰れとばかりに校内放送で下校をうながす放送が流れている。
それでもわたしがなかなか校門をくぐれないわけは――。
「ううっ、どうしよ! これじゃ帰れないしっ!」
通学用の自転車の後輪に、荷台に荷物をくくりつけるためのロープがからまってしまって、とれないのだった。
周囲にひとはいない。
みんなもう、とっくに学校を出てしまったみたい。
自転車置き場、ここにわたしはひとりだけ――。
「どうした?」
「へっ」
いや、いた――。
声をかけられて、その方を向いて、わたしは息を飲んだ。
し、静岡、幸成!?
イケメンで女子嫌いで、かまわれるのが苦手で人を避けていて――そんな噂ばかり聞いていたから、幸成がわたしに声をかけてきたのに、びっくりした。
「なに、その顔」
「え、いや……」
「……それ、とれないの?」
幸成は後輪にからみついたロープを顎でしゃくった。
「あ、うん」
わたしはうなづく。
「どけ」
「え? ……わっ」
どん! と押されて、わたしは、よろめきながら後ろにさがった。
何をするかと思えば、幸成はわたしの自転車の前にしゃがみこんで、じっと、ロープを凝視している。
「し、静岡くん?」
「ゆきなり」
「へ?」
「俺、幸成。あんたは?」
「あ、相川です」
「下の」
「日夏」
「へー、日夏。これ、めっちゃこんがらがってんじゃん」
……知ってます。
つか、困っています。
「へへ、大丈夫さ。ちょっと、どいてろ。危ないからな」
いや、もうどいてるって――ええ?
幸成は、手を強引に車輪の輪のなかにつっこむと、ロープを引っ張った。少し緩んだところで、車輪を静かにまわす。
「かなり複雑に巻き込まれてんじゃんか」
す、すみません。
苦戦しながらも、十分。
幸成はわたしの自転車からロープをきれいに外してくれた。
「あー、疲れた」
汗をぬぐいながら、幸成がそのまま立ち去ろうとした。
「待って!」
わたしはその背中を追いかける。
「これ、お礼に、どうぞ! あの……本当にすみませんでした!」
わたしは朝焼いていたクッキーを彼に手渡した。
本当はおやつのために、と思って持ってきたのだが、いつもわたしのおやつを分けている由美が委員会のせいで昼休みにいなかったので、わたしも食べずに今まで持っていたのだった。
途端、幸成の表情が、変化した。
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