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「いってきまーす」
あたしは、勢い良く玄関を開けて外へ。
そこに待っているのは、忠犬ならぬ、あたしの後輩。
「先輩って、あいててて……」
あたしは浅田の耳をきゅっと掴んだ。
「なにするんですかぁ」
「なにって、もう先輩って呼ぶのはやめてって話してるよね?」
「うわーん、ひどぃぃ」
「ひどくないでしょ。もう学校だって違うんだし」
「違くても、オレの先輩は先輩だけですから~」
私服のときのかっこいいお前はどこいったんだ。
「ほら、行くよ、陽治!!」
「あっ」
あたしが下の名前を呼ぶ。
それだけで陽治はカーッと頬を真っ赤にした。
「……世子さん」
「よろしい!」
「ねぇ、世子さん」
「なぁに?」
「今日も、あなたに会えて嬉しです」
「そりゃ良かった。ところで」
「ん?」
「あんた、もう三年になってるけど、進路、決めてんの?」
「ええ……?」
「まさか、あたしと同じとこ進学しようなんて考えてないでしょうね?」
「えええ、そ、それは……」
「あのねぇ、いくら、あんたがあたしのこと、好きでもそれはナシよ!! あんたはあんたの進みたい道を選ぶんだからね!! わかった!?」
「はーい」
「それに、そうじゃなくちゃ、なんのために……カレカノになったの?」
……浅田は、にこっとほほえんだ。
「先輩と、ずーっと一緒にいるためですっ!」
そんな純粋さにときめいて。
そんなあたしは、ときめきをごまかすために。
「あーっ! また先輩って呼んだな!?」
「だってーっ、身に染み付いたのはなかなかやめられないんですーっ!」
そんなふうにふざけあって。
「あー、もう、陽治がしっかりしないから、時間押してきてるよ。せっかくだから、あんたを学校まで送ってやろうと思ったのに~」
「いいですよ、オレ、走っていくんで」
「そお?」
「だって、最後の夏には一花咲かせたいじゃないですか」
「おー、そうだな、頑張れ!」
「はいっ。先輩みたいにいいプレーをできるようになります!!」
「ほら、また先輩って……」
「あっ!?」
「もー、いいから、いってらっしゃい」
すると、陽治は、あたしを引き寄せて。
「いってきます、世子さん」
ほっぺに軽くキスをして、走り去っていった。
こ、このやろっー!!
反則なのは、お前だってのー!!!!
✿おしまい✿
Thank you for reading.⁽⁽ଘ( ˊᵕˋ )ଓ⁾⁾
「いってきまーす」
あたしは、勢い良く玄関を開けて外へ。
そこに待っているのは、忠犬ならぬ、あたしの後輩。
「先輩って、あいててて……」
あたしは浅田の耳をきゅっと掴んだ。
「なにするんですかぁ」
「なにって、もう先輩って呼ぶのはやめてって話してるよね?」
「うわーん、ひどぃぃ」
「ひどくないでしょ。もう学校だって違うんだし」
「違くても、オレの先輩は先輩だけですから~」
私服のときのかっこいいお前はどこいったんだ。
「ほら、行くよ、陽治!!」
「あっ」
あたしが下の名前を呼ぶ。
それだけで陽治はカーッと頬を真っ赤にした。
「……世子さん」
「よろしい!」
「ねぇ、世子さん」
「なぁに?」
「今日も、あなたに会えて嬉しです」
「そりゃ良かった。ところで」
「ん?」
「あんた、もう三年になってるけど、進路、決めてんの?」
「ええ……?」
「まさか、あたしと同じとこ進学しようなんて考えてないでしょうね?」
「えええ、そ、それは……」
「あのねぇ、いくら、あんたがあたしのこと、好きでもそれはナシよ!! あんたはあんたの進みたい道を選ぶんだからね!! わかった!?」
「はーい」
「それに、そうじゃなくちゃ、なんのために……カレカノになったの?」
……浅田は、にこっとほほえんだ。
「先輩と、ずーっと一緒にいるためですっ!」
そんな純粋さにときめいて。
そんなあたしは、ときめきをごまかすために。
「あーっ! また先輩って呼んだな!?」
「だってーっ、身に染み付いたのはなかなかやめられないんですーっ!」
そんなふうにふざけあって。
「あー、もう、陽治がしっかりしないから、時間押してきてるよ。せっかくだから、あんたを学校まで送ってやろうと思ったのに~」
「いいですよ、オレ、走っていくんで」
「そお?」
「だって、最後の夏には一花咲かせたいじゃないですか」
「おー、そうだな、頑張れ!」
「はいっ。先輩みたいにいいプレーをできるようになります!!」
「ほら、また先輩って……」
「あっ!?」
「もー、いいから、いってらっしゃい」
すると、陽治は、あたしを引き寄せて。
「いってきます、世子さん」
ほっぺに軽くキスをして、走り去っていった。
こ、このやろっー!!
反則なのは、お前だってのー!!!!
✿おしまい✿
Thank you for reading.⁽⁽ଘ( ˊᵕˋ )ଓ⁾⁾
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