罰ゲームから始まる陰キャ卒業

negi

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 冬休みが始まってもほぼ毎日塾に通っているから余り代り映えしない毎日を過ごしていた。今通っている高校は進学校だったから頑張って勉強しないと合格するのが難しいラインにいた僕は中学二年から猛勉強した。
 そのおかげで無事合格出来たんだけど、頑張って入った進学校だから授業について行けるようにと部活はやらずに塾に通うことに決めていた。
 でも受験勉強を頑張っていたら色々と理解できるようになるのが楽しくなってきて、せっかく進学校に入学したしもっと勉強していい大学を目指したいって思うようになったんだ。

 高校に入ってから勉強を頑張るようになったら母から「やっぱり姉弟は似るのね」って言われたけど、僕はあそこまで勉強馬鹿じゃないと思う。

 姉は物凄く頭が良くてその上勉強が大好きで医者になりたいと言って難関大の医学部に一発合格してしまうような人なのだ。そして父の後を継ぐ気満々で「和希と遥希は好きな事していいよ。でも医者になるなら私が雇ってあげる」と言われている。大学に入ってからバイトを始めたけど成績はまったく落ちていないらしい。そんな姉と僕を一緒にしないで欲しい。まあ、僕は自分でも医者には向いていないと思うし姉のおかげで気が楽で助かるけどね。


 塾も流石に年末年始の三十日から年明け四日までお休みになる。ちょうど両親の休みと同じで毎年特にやることの無い僕が母のおせち料理作りを手伝わされている。
 子供達から提案して家族行事を免除したんだから手作りじゃ無くてデパートとかで予約してゆっくりすればいいのにって言ったら「折角時間があるから凝ったお料理を作りたいの」って張り切ってしまう母はワーカホリックなんじゃないかな。
 ピーラーで根菜の皮むきをしていたら隣で栗きんとんの準備を始めた母が手を動かしながら聞いてきた。

「カズ君はお友達と冬休みの約束は無いの?」

「年明けは先輩と初詣に行く約束をしたよ」

「先輩ってカズ君の彼氏の? クリスマスもデートだったんでしょ?」

「か、彼氏じゃないしっ! わっ、と、と」

 びっくりして持っていた蓮根を落としてしまった。あの時ちゃんと否定したのにやっぱり信じていなかったんだな。

「隠さなくてもいいのに~。紹介してよ」

「だから違うってばっ。…面倒見の良い人だから僕に声をかけてくれてるんだよ」

 落とした蓮根を拾って水洗いしてから皮むきを再開する。自分の言った言葉が引っかかって胸がもやもやしてきた。

( 僕が姫だから構ってくれるのかな )

 高橋さんは最初から僕の事を姫だと知っていた。僕が姫じゃなかったらクリスマスや初詣も声をかけてくれることは無かったのかもしれない。



 年が明けてすぐ、スマホの表示がまだ「0:00」の時に届いたメッセージは、高橋さんからの新年の挨拶だった。続けて予定通り二日の夜に戻ってくることと、初詣は三日でどうだろうかと書いてあった。こちらからも新年の挨拶を送って三日で大丈夫だと返したら、直ぐにまた返って来て待ち合わせの場所と時間を知らせてきた。
 リビングで家族とテレビから流れてくる除夜の鐘を聞いていた時にメッセージが届いてその場で返信しているのを母がニコニコしながら見ていた。

「新年の挨拶をもう送ってきた人がいるの?」

「うん。先輩から。一緒に初詣の待ち合わせの事も書いてあって、三日に行くことになった」

「じゃあ和希は元旦に一緒に神社には行かないのか?」

 僕と母のやり取りを聞いていた父が残念そうな声で言った。うちの両親は子離れ出来ていなくて、今年は姉が大学の友達と旅行も兼ねた年越しパーティに行ってしまって不在だから余計に寂しいみたいだ。
 年末年始の旅行の準備はいつもバタバタと大変そうだったし、言った先でも楽しんでいるのは僕達子供ばかりで両親は休暇なのにちっとも休めていないからと思って無くした家族旅行だけど、もしかしたら寂しい思いをさせちゃっているのかも…。

「行くよ? 確か初詣って何回行ってもいいんでしょう? 鰻食べたいし」

「なあ、俺今年は鰻重の大盛が食べたい」

 遥希がちゃっかり要求を挟んできた。剣道をはじめてから食べる量が増えたもんな。
我家は毎年初詣の帰りに鰻を食べる習慣になっている。何故かはわからないけど、確か父が「お正月くらい贅沢しよう」って言ったのがきっかけだったと思う。 

 なによりそこでいつもお年玉を貰うので外せないイベントなのだ。



 
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