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明日から冬休みに突入する今日、授業はなくてホームルームの後に大掃除をしてそれから終業式で二学期は終了になる。部活動はあるけど僕みたいな帰宅部はお昼前には帰る事が出来てしまう。
うちの学校は十二月二十三日が終業式で来年一月七日までが冬休み。つまり明日は二十四日でクリスマスイブ。高橋さんとイルミネーションを見に行く約束をした日だ。
季節限定のハンバーガーを一緒に食べてからは期末テストがあったり高橋さんは部活と生徒会活動もあるし、僕は週三日塾があるのでお互い予定が合わなくてスマホでの連絡しか出来ていない。でも一緒に出掛ける事はクラスメイトにバレたくないから学校で会えない事は良かったのかもしれない。
帰宅途中にスマホが振動したのが鞄越しに伝わってきて、邪魔にならない様に道の端に避けてから鞄から出してメッセージを確認する。高橋さんからだ。明日の待ち合わせ場所と時間の再確認と、楽しみって可愛い犬のスタンプが送られてきててつい笑ってしまった。
***
クリスマスイブだからか駅前は凄く人が多い。約束の時間の五分前に到着したのに既に高橋さんは待っていた。
「お待たせしてすみません」
「大丈夫、時間前だよ。お互い早く来たみたいだね」
私服姿の高橋さんは初めてだ。パーカーにジーンズで膝丈のコートを羽織っているのが大人っぽくて凄く似合っている。背も高くてこんなに恰好良い人が恋人いないなんて本当かな? ぼおっと見ていたら高橋さんも僕を見て嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「私服初めて見た。可愛い」
僕はダッフルコートを着て来たから高橋さんと並ぶと余計に子供っぽく見えるかも。リュック背負ってるし、可愛いって言われたし…。
「子供っぽいですよね」
「そういう意味の可愛いじゃないよ。似合っていて可愛い。さあもう改札入ってしまおう。カード? それとも切符買う?」
「切符買います」
姫ポジになって可愛いって言われる事に抵抗が無くなっているけど、学校以外で改めて言われると何だか恥ずかしいかも。それを誤魔化すためにそそくさと切符を買いに行こうとしたら高橋さんもついて来た。
「すぐ戻りますよ?」
「ん? ああ、目を離すと攫われそうだからね」
「子供扱いしてます?」
「可愛いから心配なだけ。買えた?」
「…買えました」
なんかいつもより高橋さんの僕の扱いが優しい気がする。いつも優しいけど、もっと柔らかい感じ。
改札を入ると駅のホームもそれなりに混雑していた。階段をのぼって隣のホームに向かいちょうどやって来た電車に乗った。電車内も人が多い。
ドア近くのバーにつかまる僕の肩には高橋さんの手が回されていて、乗って直ぐに混雑した車内で人にぶつかりよろけた僕を支えてくれている。ほら、やっぱりいつもより優しい。何だか顔に熱が集まるしムズムズする。
目的の駅に着くと大勢の人が下りたから目的地は一緒なのかもしれない。でも僕達はまずはご飯を食べに行くから改札を出たら他の人達とは違う方向に向かう。
高橋さんが予約してくれたカフェレストランに着いて名前を告げると直ぐに窓際のテーブルに案内された。クリスマス仕様に飾り付けられた店内はカップルばかりで僕達浮いてないかな? それにこんなところで家族意外と食事をするのは初めてで、少し気後れしながら席に着いた。
「どうしたの?」
「いえ、カップルばっかりだなって…」
「ああ、クリスマスだからね」
サラッと言える高橋さんは慣れている感じだ。もしかしたら今は恋人はいないけど過去にお付き合いしていた人がいて、こう言った事は経験済みなのかもしれない。
「過去に彼女さんと来たことあるお店ですか?」
「もおぉ、彼女いないって言ったでしょ? 検索してクチコミ評価が高かったからここにしたんだよ。中でもお料理の評価が一番高かったから楽しみだね」
確かに周りの席の色々なお料理を横目で見ると凄く美味しそうだ。期待しつつしばらく待つと僕達の席にも運ばれてきた。クリスマス限定メニューの骨付きチキンローストがメインのお料理は見た目にも美味しそうな盛り付けをされている。まず口にしたカップに入ったスープはかぼちゃのポタージュだった。滑らかで優しい味でパンとも良く合う。サラダもクリスマスらしく色とりどりの野菜が新鮮で美味しい。
高校生の僕らがちょっと奮発して予約したその料理は本当に美味しくて自然と笑顔になってしまう。もちろん自分の分は払ったよ。
「このチキン美味しいですね! パンも温かくてふわふわ」
「骨付きの肉って見た目でもう美味しいのが保障されてるよね」
美味しい料理を堪能して最後に高橋さんはコーヒー、僕はミルクティーが出て来た。
これでお終いだと思っていた僕の前にデザートプレートが置かれて、高橋さんの前にチーズケーキを置いて店員が下がって行く。
「え? これセットに入ってないですよね?」
「実は追加で頼んでいたんだ。小林君は甘い物が好きだろう? クリスマス限定のデザートプレートだよ」
まさかそんなサプライズを用意していたなんて…。目の前のお皿にはクリスマスモチーフの小さめなケーキやフルーツが綺麗に盛り付けられていて凄く美味しそうだ。
「ありがとうございます! うわぁ、どれから食べようかな」
「喜んでもらえて良かった。俺はそこまで甘い物に執着が無いからどれが良いのかわからないんだけど、クリスマス限定ならいいかなって思ってさ」
デザートはどれも凄く美味しかった。なにより高橋さんの気持ちが嬉しくてさっきから心臓がどきどきしている。そんな僕に周りのカップルの幸せそうな様子が目に映って急にストンと納得してしまった。
そうか、僕は高橋さんの事が好きなのかもしれない。
うちの学校は十二月二十三日が終業式で来年一月七日までが冬休み。つまり明日は二十四日でクリスマスイブ。高橋さんとイルミネーションを見に行く約束をした日だ。
季節限定のハンバーガーを一緒に食べてからは期末テストがあったり高橋さんは部活と生徒会活動もあるし、僕は週三日塾があるのでお互い予定が合わなくてスマホでの連絡しか出来ていない。でも一緒に出掛ける事はクラスメイトにバレたくないから学校で会えない事は良かったのかもしれない。
帰宅途中にスマホが振動したのが鞄越しに伝わってきて、邪魔にならない様に道の端に避けてから鞄から出してメッセージを確認する。高橋さんからだ。明日の待ち合わせ場所と時間の再確認と、楽しみって可愛い犬のスタンプが送られてきててつい笑ってしまった。
***
クリスマスイブだからか駅前は凄く人が多い。約束の時間の五分前に到着したのに既に高橋さんは待っていた。
「お待たせしてすみません」
「大丈夫、時間前だよ。お互い早く来たみたいだね」
私服姿の高橋さんは初めてだ。パーカーにジーンズで膝丈のコートを羽織っているのが大人っぽくて凄く似合っている。背も高くてこんなに恰好良い人が恋人いないなんて本当かな? ぼおっと見ていたら高橋さんも僕を見て嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「私服初めて見た。可愛い」
僕はダッフルコートを着て来たから高橋さんと並ぶと余計に子供っぽく見えるかも。リュック背負ってるし、可愛いって言われたし…。
「子供っぽいですよね」
「そういう意味の可愛いじゃないよ。似合っていて可愛い。さあもう改札入ってしまおう。カード? それとも切符買う?」
「切符買います」
姫ポジになって可愛いって言われる事に抵抗が無くなっているけど、学校以外で改めて言われると何だか恥ずかしいかも。それを誤魔化すためにそそくさと切符を買いに行こうとしたら高橋さんもついて来た。
「すぐ戻りますよ?」
「ん? ああ、目を離すと攫われそうだからね」
「子供扱いしてます?」
「可愛いから心配なだけ。買えた?」
「…買えました」
なんかいつもより高橋さんの僕の扱いが優しい気がする。いつも優しいけど、もっと柔らかい感じ。
改札を入ると駅のホームもそれなりに混雑していた。階段をのぼって隣のホームに向かいちょうどやって来た電車に乗った。電車内も人が多い。
ドア近くのバーにつかまる僕の肩には高橋さんの手が回されていて、乗って直ぐに混雑した車内で人にぶつかりよろけた僕を支えてくれている。ほら、やっぱりいつもより優しい。何だか顔に熱が集まるしムズムズする。
目的の駅に着くと大勢の人が下りたから目的地は一緒なのかもしれない。でも僕達はまずはご飯を食べに行くから改札を出たら他の人達とは違う方向に向かう。
高橋さんが予約してくれたカフェレストランに着いて名前を告げると直ぐに窓際のテーブルに案内された。クリスマス仕様に飾り付けられた店内はカップルばかりで僕達浮いてないかな? それにこんなところで家族意外と食事をするのは初めてで、少し気後れしながら席に着いた。
「どうしたの?」
「いえ、カップルばっかりだなって…」
「ああ、クリスマスだからね」
サラッと言える高橋さんは慣れている感じだ。もしかしたら今は恋人はいないけど過去にお付き合いしていた人がいて、こう言った事は経験済みなのかもしれない。
「過去に彼女さんと来たことあるお店ですか?」
「もおぉ、彼女いないって言ったでしょ? 検索してクチコミ評価が高かったからここにしたんだよ。中でもお料理の評価が一番高かったから楽しみだね」
確かに周りの席の色々なお料理を横目で見ると凄く美味しそうだ。期待しつつしばらく待つと僕達の席にも運ばれてきた。クリスマス限定メニューの骨付きチキンローストがメインのお料理は見た目にも美味しそうな盛り付けをされている。まず口にしたカップに入ったスープはかぼちゃのポタージュだった。滑らかで優しい味でパンとも良く合う。サラダもクリスマスらしく色とりどりの野菜が新鮮で美味しい。
高校生の僕らがちょっと奮発して予約したその料理は本当に美味しくて自然と笑顔になってしまう。もちろん自分の分は払ったよ。
「このチキン美味しいですね! パンも温かくてふわふわ」
「骨付きの肉って見た目でもう美味しいのが保障されてるよね」
美味しい料理を堪能して最後に高橋さんはコーヒー、僕はミルクティーが出て来た。
これでお終いだと思っていた僕の前にデザートプレートが置かれて、高橋さんの前にチーズケーキを置いて店員が下がって行く。
「え? これセットに入ってないですよね?」
「実は追加で頼んでいたんだ。小林君は甘い物が好きだろう? クリスマス限定のデザートプレートだよ」
まさかそんなサプライズを用意していたなんて…。目の前のお皿にはクリスマスモチーフの小さめなケーキやフルーツが綺麗に盛り付けられていて凄く美味しそうだ。
「ありがとうございます! うわぁ、どれから食べようかな」
「喜んでもらえて良かった。俺はそこまで甘い物に執着が無いからどれが良いのかわからないんだけど、クリスマス限定ならいいかなって思ってさ」
デザートはどれも凄く美味しかった。なにより高橋さんの気持ちが嬉しくてさっきから心臓がどきどきしている。そんな僕に周りのカップルの幸せそうな様子が目に映って急にストンと納得してしまった。
そうか、僕は高橋さんの事が好きなのかもしれない。
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