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そろそろ交代の時間だからもう少し見て回ってから帰るって言う姉達と別れて教室に戻ることにした。一年の教室は一階だから直ぐ着くと思ったのに予想以上に人が多い。中々進めないでいたら他校の制服を着た男子二人が話しかけて来て、その一人に肩に腕を回されてしまった。
「メイド服可愛いね。なんでコスプレで来たの?」
「離して下さい。僕はここの生徒で教室に帰るところなんです」
「え? 男? 嘘だろ! こんなに小さい男子高校生いるのか?」
「でも確かに声が…、こんなに可愛いのに男なのか?」
「男です。だから離して下さい!」
男だってわかったのに何で肩に回った手を離してくれないんだよ! 振り払える腕力が無いのが悔しい。
「うちの生徒に何をしているんですか?」
もがいていたら僕の後ろから低い声が聞こえてきて、振り返れば生徒会の腕章を付けた高橋さんともう一人も腕章を付けた知らない上級生が立っていた。男が驚いた拍子に腕を離したので直ぐに高橋さんの方に逃げたら肩に手が回って来た。
「その制服は北高ですよね? うちの文化祭で目に余る行為は…」
「いやっ、そんなつもりじゃ無くて…」
「しつこくして悪かった。おい、行くぞ!」
生徒会の腕章を見た二人は慌てて去って行った。また高橋さんに助けられてしまった。何だか情けないところばかり見られている気がする。恥ずかしいなって思って落ち込んでいたらもう一人の上級生が僕を不思議そうに見ていた。
「なあ高橋、本当にうちの生徒なのか?」
思い切り疑われている。やっぱり女装してると紛らわしいんだな。でも声を聞けば男だってわかってもらえるはずだ。
「一年A組の小林です。本当に助かりました。ありがとうございます」
「確かに声は男子だな。でもこれは絡まれちゃうよなぁ」
「どうして一人で出歩いているんだ?」
「お昼休憩で訪ねてきた家族と外で食べていて、別れて教室に戻る所でした」
僕の答えに高橋さんが大きく息を吐き出して隣の上級生を見た。
「遠藤、俺は小林を教室まで送ってから戻る」
もう一人は遠藤さんっていうんだ。会長と副会長以外は顔も名前も知らないからな。遠藤さんと別れて僕を送ると言った高橋さんと一緒に教室に向かう。朝もこんな風に送って貰ったのにまた面倒をかけてしまった事が申し訳ない。
「何度もすみません」
「小林君、今の君は誰が見ても可愛いんだよ。普段も可愛いけど、そんな服装でメイクなんてしているからもの凄く可愛いんだ。それを自覚して行動して欲しい」
「へ? あの、はい。わかり、ました」
そんな何度も可愛いって言われるとどんな顔をしていいか分からなくなる。だんだんと顔が熱くなってきた。
教室まで送ってくれた高橋さんは何故かそのまま裏方の方の入口から僕と一緒に中に入って来た。教室には前と後ろに扉があるからそれぞれ売り場側と裏方側の入口になっている。驚くクラスメイトに高橋さんがさっきの事を告げた。
「一人でここに戻る途中で小林が北高の男子に絡まれた。たまたま通りかかった俺が助けて、危ないからここまで送って来たんだよ」
「何だって!? 小林、本当か?」
「うん。でも生徒会長が直ぐ助けてくれたから…」
ぎょっとするみんなに慌てて無事をアピールしたんだけど高橋さんが…
「姫をちゃんと守れよ! 今日は特に危ないだろ! こんなに可愛いんだから!」
「すみません! 迂闊でした!」
「そうだよ、こんなに可愛いのに、俺達は何を呑気にっ!」
「可愛いんだから狙われて当然なのに。くそっ!北高め!」
流石に恥ずかしい。それにみんな文化祭のテンションでおかしくなってる。
「みんな何言ってんの!? 落ち着いて! 僕は男だし…」
「「「「「 でも可愛いから! 」」」」」
キリっとした顔でハモられて顔に熱が上がってきた。なにこれ、なんかすっごく恥ずかしくてみんなの顔が見れない。両手で顔を覆って何とか声を絞り出した。
「うう―…、もう、いいから。一人で出歩かないから。それならいいだろう?」
そう言ったらやっと静まってくれたみたいだけど「耳真っ赤。可愛い」って小さく呟くのが聞こえて更に熱が上がってしまった。
高橋さんが告げた内容がクラスのみんなに伝わっていて、売り子をする僕の隣には見張り役の柔道部の生徒が必ず立つことになった。午後になったら一般来場者よりも学校内の生徒がお客としてくる数が多くなって「噂通り可愛いね」とか「評判を聞いて来た」って話しかけられる事が何度かあった。そんなお客さんに対応していたら進行係の山田君がクラスメイト達と相談している声が聞こえてきた。
「もう小林は下がらせた方がいいんじゃないか?」
「校内の奴ら完全に小林狙いの客ばっかだろ?」
「一応客として来て買ってくれてるから売り上げは良いんだよな」
「おい! 姫を犠牲にしていいのかよっ」
あんまり大きな声を出すとお客さんに聞こえちゃうぞ。ちょっとハラハラしながら売り子をしていたら柄の悪そうな上級生二人が入って来た。
「メイド服可愛いね。なんでコスプレで来たの?」
「離して下さい。僕はここの生徒で教室に帰るところなんです」
「え? 男? 嘘だろ! こんなに小さい男子高校生いるのか?」
「でも確かに声が…、こんなに可愛いのに男なのか?」
「男です。だから離して下さい!」
男だってわかったのに何で肩に回った手を離してくれないんだよ! 振り払える腕力が無いのが悔しい。
「うちの生徒に何をしているんですか?」
もがいていたら僕の後ろから低い声が聞こえてきて、振り返れば生徒会の腕章を付けた高橋さんともう一人も腕章を付けた知らない上級生が立っていた。男が驚いた拍子に腕を離したので直ぐに高橋さんの方に逃げたら肩に手が回って来た。
「その制服は北高ですよね? うちの文化祭で目に余る行為は…」
「いやっ、そんなつもりじゃ無くて…」
「しつこくして悪かった。おい、行くぞ!」
生徒会の腕章を見た二人は慌てて去って行った。また高橋さんに助けられてしまった。何だか情けないところばかり見られている気がする。恥ずかしいなって思って落ち込んでいたらもう一人の上級生が僕を不思議そうに見ていた。
「なあ高橋、本当にうちの生徒なのか?」
思い切り疑われている。やっぱり女装してると紛らわしいんだな。でも声を聞けば男だってわかってもらえるはずだ。
「一年A組の小林です。本当に助かりました。ありがとうございます」
「確かに声は男子だな。でもこれは絡まれちゃうよなぁ」
「どうして一人で出歩いているんだ?」
「お昼休憩で訪ねてきた家族と外で食べていて、別れて教室に戻る所でした」
僕の答えに高橋さんが大きく息を吐き出して隣の上級生を見た。
「遠藤、俺は小林を教室まで送ってから戻る」
もう一人は遠藤さんっていうんだ。会長と副会長以外は顔も名前も知らないからな。遠藤さんと別れて僕を送ると言った高橋さんと一緒に教室に向かう。朝もこんな風に送って貰ったのにまた面倒をかけてしまった事が申し訳ない。
「何度もすみません」
「小林君、今の君は誰が見ても可愛いんだよ。普段も可愛いけど、そんな服装でメイクなんてしているからもの凄く可愛いんだ。それを自覚して行動して欲しい」
「へ? あの、はい。わかり、ました」
そんな何度も可愛いって言われるとどんな顔をしていいか分からなくなる。だんだんと顔が熱くなってきた。
教室まで送ってくれた高橋さんは何故かそのまま裏方の方の入口から僕と一緒に中に入って来た。教室には前と後ろに扉があるからそれぞれ売り場側と裏方側の入口になっている。驚くクラスメイトに高橋さんがさっきの事を告げた。
「一人でここに戻る途中で小林が北高の男子に絡まれた。たまたま通りかかった俺が助けて、危ないからここまで送って来たんだよ」
「何だって!? 小林、本当か?」
「うん。でも生徒会長が直ぐ助けてくれたから…」
ぎょっとするみんなに慌てて無事をアピールしたんだけど高橋さんが…
「姫をちゃんと守れよ! 今日は特に危ないだろ! こんなに可愛いんだから!」
「すみません! 迂闊でした!」
「そうだよ、こんなに可愛いのに、俺達は何を呑気にっ!」
「可愛いんだから狙われて当然なのに。くそっ!北高め!」
流石に恥ずかしい。それにみんな文化祭のテンションでおかしくなってる。
「みんな何言ってんの!? 落ち着いて! 僕は男だし…」
「「「「「 でも可愛いから! 」」」」」
キリっとした顔でハモられて顔に熱が上がってきた。なにこれ、なんかすっごく恥ずかしくてみんなの顔が見れない。両手で顔を覆って何とか声を絞り出した。
「うう―…、もう、いいから。一人で出歩かないから。それならいいだろう?」
そう言ったらやっと静まってくれたみたいだけど「耳真っ赤。可愛い」って小さく呟くのが聞こえて更に熱が上がってしまった。
高橋さんが告げた内容がクラスのみんなに伝わっていて、売り子をする僕の隣には見張り役の柔道部の生徒が必ず立つことになった。午後になったら一般来場者よりも学校内の生徒がお客としてくる数が多くなって「噂通り可愛いね」とか「評判を聞いて来た」って話しかけられる事が何度かあった。そんなお客さんに対応していたら進行係の山田君がクラスメイト達と相談している声が聞こえてきた。
「もう小林は下がらせた方がいいんじゃないか?」
「校内の奴ら完全に小林狙いの客ばっかだろ?」
「一応客として来て買ってくれてるから売り上げは良いんだよな」
「おい! 姫を犠牲にしていいのかよっ」
あんまり大きな声を出すとお客さんに聞こえちゃうぞ。ちょっとハラハラしながら売り子をしていたら柄の悪そうな上級生二人が入って来た。
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