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きゅぅ、とお腹が鳴って目が覚めた。薄暗い室内のベッドで寝ている俺の目の前には逞しい胸板がガウンの合わせ目から見えて腕枕されているのがわかった。見上げるとダグラスが目を細めて微笑んでいる。
「目が覚めたようだな。すまない、無理をさせてしまった。痛むところはないか?」
そうだ俺、ダグラスと…。赤くなっているだろう俺にダグラスが笑みを深くしてキスを落とす。布団の中で抱き寄せられて大きな手に腰から尻を撫でられて、自分が何も身に着けていない事に気付いた。
「シャワーで綺麗にしたつもりだが、まだ動けないだろう? 食事を部屋まで運ばせるからゆっくり休んでいてくれ」
「はい。あの、ありがとうございます」
額にキスをしてからベッドを出ていくダグラスを見送りながら羞恥に耐える。意識を無くしたとはいえ後始末までさせてしまった。服を着るため起き上がろうしたら下半身がいう事を聞いてくれずベッドに突っ伏すことになった。
(ううう、無理。動けない。これが腰が抜けた状態というものなのか?)
なんとかベッド脇に用意されていたガウンを着ようとしてもたもたしていたらダグラスが戻って来て俺の状態に気付いて着るのを手伝ってくれる。
「すまない、君が可愛くて抑えられずにたくさん付けてしまった。もう少し隠れる服を用意しよう」
「え? たくさん?隠れる…?」
言われて見下ろした自分の体にはキスマークがいたるところに...
部屋が薄暗いから気が付かなかった…。ガウンの合わせ目をぎゅうっと閉じて固まった俺をダグラスが軽々と抱き上げて食事の席まで運んでくれた。
3日間の休暇はあっという間に終わり、この村での魔獣討伐に出る準備が始まった。今回は俺も参加する。でも、クライド様がいるので攻撃には積極的な参加はしない。主な仕事は給水と衛生。俺が居れば水場が無くても野営できるしクリーンの魔法で清潔も保てるというのは村への移動で実証済みだからだ。そのことにクライド様が一番喜んでいた。
「カイくんが居てくれるとむさ苦しくならないから嬉しいよ。よろしくね!」
今は元気そうなクライド様は休暇3日目の朝まで部屋から出てこなかった。2日ぶりに見かけたとき、お疲れの様子なのを良い笑顔のライアンが甲斐甲斐しくエスコートしていた。
つい目で追っていたら気付いたクライド様が俺の首元をつついて「君は手加減してもらったみたいだね」と耳打ちしてきて...
(手加減? ……あっ⁉ ここにはダグラスがつけた…)
慌てて手で隠してしまい、そんな俺を見てクライド様が楽しげに笑っていた。
魔獣討伐は危なげなく終わった。
覚醒した勇者であるクライド様の魔法は凄まじかった。ライアンの得意な土魔法で魔獣の足止めをするとクライド様が風魔法で飛翔し上空から炎魔法で焼き払う戦法で連携も素晴らしく余裕で倒していた。
今回の討伐はどちらかと言うと兵士の訓練の意味合いが強く、魔獣に立ち向かうための戦法や陣形を確かめながらの戦闘になっていた。
そして俺は自分の魔法の新しい使い方を見つけることが出来た。
兵士達の倒した魔獣の死体はアンデッド化を防ぐために掘った穴に集めて燃やさなければならない。でも倒した後に俺が辺り一帯に浄化魔法をかけると穢れた気が霧散してただ土に返るだけの死骸になることが分かった。
これには部隊の指揮官でもあるダグラスとグレゴールも驚いて、水の供給や衛生面も合わせて俺が討伐に参加するメリットを高く評価してくれた。
そしてスタンピードでの活用も望まれる適正だと教えられた。スタンピードが起こるとどうしても死者が相当数出てしまう。その場所には悪い気が溜まってしまうため、すぐに燃やさなければならない。魔獣の死体も同様だ。けれど俺の浄化魔法があれば遺品の回収をすることも可能になるだろうと言われた。
討伐も終えて王都に向かうことが決まってこの村で過ごす最後の夜。ダグラスが部屋にクライド様とライアンとグレゴールを招いた。机の上の書類にそれぞれ署名してもらったそれは婚約の書類だった。最後に俺とダグラスも署名すれば婚約が成立する。震える指でなんとか署名をして2人で血判を押したら書類が一瞬光に包まれた。俺が驚いているとダグラスが
「魔法契約書だよ。私達の他に3名の貴族の署名があれば成立するんだ。これでカイは私の正式な婚約者になった」
「カイは覚醒した勇者だから誰も文句は言わないとは思うが、まあお前の場合はこのくらいしておいた方が良いだろうな」
グレゴールの言った言葉にやっぱりな、という気持ちになってしまう。
「元平民だから認めてもらうのは難しいのでしょうか…」
「カイには全く問題はない。私の家族や立場が少し面倒くさいだけだよ」
ダグラスの実家の第一婦人とその息子の長男が何度家は継がないと言っても警戒していて自分達に都合の良い縁談を持ち込んできて断るのに苦労していたらしい。その事情を幼馴染のグレゴールは知っているから今のうちに婚約を成立させるのは賛成だと言ってくれた。
3人からお祝いの言葉をもらって嬉しくて涙が滲んでしまう。それを優しく拭うダグラスにお邪魔みたいだからと言って3人はそれぞれの部屋に帰って行った。
「目が覚めたようだな。すまない、無理をさせてしまった。痛むところはないか?」
そうだ俺、ダグラスと…。赤くなっているだろう俺にダグラスが笑みを深くしてキスを落とす。布団の中で抱き寄せられて大きな手に腰から尻を撫でられて、自分が何も身に着けていない事に気付いた。
「シャワーで綺麗にしたつもりだが、まだ動けないだろう? 食事を部屋まで運ばせるからゆっくり休んでいてくれ」
「はい。あの、ありがとうございます」
額にキスをしてからベッドを出ていくダグラスを見送りながら羞恥に耐える。意識を無くしたとはいえ後始末までさせてしまった。服を着るため起き上がろうしたら下半身がいう事を聞いてくれずベッドに突っ伏すことになった。
(ううう、無理。動けない。これが腰が抜けた状態というものなのか?)
なんとかベッド脇に用意されていたガウンを着ようとしてもたもたしていたらダグラスが戻って来て俺の状態に気付いて着るのを手伝ってくれる。
「すまない、君が可愛くて抑えられずにたくさん付けてしまった。もう少し隠れる服を用意しよう」
「え? たくさん?隠れる…?」
言われて見下ろした自分の体にはキスマークがいたるところに...
部屋が薄暗いから気が付かなかった…。ガウンの合わせ目をぎゅうっと閉じて固まった俺をダグラスが軽々と抱き上げて食事の席まで運んでくれた。
3日間の休暇はあっという間に終わり、この村での魔獣討伐に出る準備が始まった。今回は俺も参加する。でも、クライド様がいるので攻撃には積極的な参加はしない。主な仕事は給水と衛生。俺が居れば水場が無くても野営できるしクリーンの魔法で清潔も保てるというのは村への移動で実証済みだからだ。そのことにクライド様が一番喜んでいた。
「カイくんが居てくれるとむさ苦しくならないから嬉しいよ。よろしくね!」
今は元気そうなクライド様は休暇3日目の朝まで部屋から出てこなかった。2日ぶりに見かけたとき、お疲れの様子なのを良い笑顔のライアンが甲斐甲斐しくエスコートしていた。
つい目で追っていたら気付いたクライド様が俺の首元をつついて「君は手加減してもらったみたいだね」と耳打ちしてきて...
(手加減? ……あっ⁉ ここにはダグラスがつけた…)
慌てて手で隠してしまい、そんな俺を見てクライド様が楽しげに笑っていた。
魔獣討伐は危なげなく終わった。
覚醒した勇者であるクライド様の魔法は凄まじかった。ライアンの得意な土魔法で魔獣の足止めをするとクライド様が風魔法で飛翔し上空から炎魔法で焼き払う戦法で連携も素晴らしく余裕で倒していた。
今回の討伐はどちらかと言うと兵士の訓練の意味合いが強く、魔獣に立ち向かうための戦法や陣形を確かめながらの戦闘になっていた。
そして俺は自分の魔法の新しい使い方を見つけることが出来た。
兵士達の倒した魔獣の死体はアンデッド化を防ぐために掘った穴に集めて燃やさなければならない。でも倒した後に俺が辺り一帯に浄化魔法をかけると穢れた気が霧散してただ土に返るだけの死骸になることが分かった。
これには部隊の指揮官でもあるダグラスとグレゴールも驚いて、水の供給や衛生面も合わせて俺が討伐に参加するメリットを高く評価してくれた。
そしてスタンピードでの活用も望まれる適正だと教えられた。スタンピードが起こるとどうしても死者が相当数出てしまう。その場所には悪い気が溜まってしまうため、すぐに燃やさなければならない。魔獣の死体も同様だ。けれど俺の浄化魔法があれば遺品の回収をすることも可能になるだろうと言われた。
討伐も終えて王都に向かうことが決まってこの村で過ごす最後の夜。ダグラスが部屋にクライド様とライアンとグレゴールを招いた。机の上の書類にそれぞれ署名してもらったそれは婚約の書類だった。最後に俺とダグラスも署名すれば婚約が成立する。震える指でなんとか署名をして2人で血判を押したら書類が一瞬光に包まれた。俺が驚いているとダグラスが
「魔法契約書だよ。私達の他に3名の貴族の署名があれば成立するんだ。これでカイは私の正式な婚約者になった」
「カイは覚醒した勇者だから誰も文句は言わないとは思うが、まあお前の場合はこのくらいしておいた方が良いだろうな」
グレゴールの言った言葉にやっぱりな、という気持ちになってしまう。
「元平民だから認めてもらうのは難しいのでしょうか…」
「カイには全く問題はない。私の家族や立場が少し面倒くさいだけだよ」
ダグラスの実家の第一婦人とその息子の長男が何度家は継がないと言っても警戒していて自分達に都合の良い縁談を持ち込んできて断るのに苦労していたらしい。その事情を幼馴染のグレゴールは知っているから今のうちに婚約を成立させるのは賛成だと言ってくれた。
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