お兄ちゃんは妹の推しキャラに転生しました

negi

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16 ガゼボで

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 馬車でキスをしてから殿下はセレスティンに対して恋人として接するようになった。
学園内では側に寄り添い別れ際に手の甲へキスをするのは日常となり、周りも騒ぐことは無くなったし、俺もだいぶ慣れた。でも、人目のない所で抱きしめて唇や額にキスをされるのは恥ずかしくて心臓はバクバク言うしまだ慣れそうもない。すぐ赤くなる俺に殿下は嬉しそうで余裕を感じる。幼いころから王族として教育を受けていたためか殿下は他と比べても大人びていて落ち着いていると思う。

 そんな俺達の様子に周りはもう殿下の婚約者はセレスティンになるだろうと思ったらしく、最近は接触してくる生徒が増えた。まあコネ作りの為だけどね。
 正直忙しくて相手をしている暇はないんだよな。この時期の生徒会がこんなに大変だとは思わなかったよ。

 でも、滅亡を回避するためには生徒会役員である攻略対象者と親しくならないといけないから、俺は生徒会活動に精を出して新入生用のパンフレット作成もほぼ一人で進めて完成させた。その頑張りを殿下の側近候補のクラレンスとイグナーツも認めてくれて、最近は二人と良く会話するようになった。
 ダニエルは俺と殿下の様子から色々と察したらしく、はじめのうちは少し態度が硬かったけど今は普通に会話出来ていると思う。
 鍛錬の時間にはコルトレーン先生と交流を重ねて他の教師達よりは親しい間柄になれたんじゃないだろうか。

 最近殿下とは食事を一緒に取れる機会が減っていて少し寂しい。でも年度末だから兎に角忙しいのだ。三学期に入って三年生は生徒会から引退したから役員も足りていないし、それなのにやることが多い。
 慌ただしく過ごしているうちに気付けば三月の半ばを過ぎていた。



 ***



「セレス! 良かった間に合った」

「殿下⁉ 王宮ではなかったのですか?」

 食堂に向かう途中で殿下に声をかけられて驚いてしまった。今日は王宮での会談のため夕食は一緒には出来ないはずだったのにどうしたんだろう。

「会談が急遽中止になったんだ。だから急いで戻って来た」

「そうだったんですね。驚きました」

 走ってきたらしく少し息が上がっている。でも一緒に食事をするために来てくれたのは凄く嬉しい。

「あ~、俺達は外しますので二人でどうぞ」

「お邪魔でしょうから失礼します」

 ここまで一緒に来ていたアーヴィンとシーヴァートが殿下の登場で気を遣ってくれて離れていく。ありがたいけど少し恥ずかしい。
 いつものようにカウンターでメニューを選び空いた席に二人で座る。夕食を一緒に取るのは久しぶりだ。殿下も嬉しそうでいつもよりテンションが高い気がする。

「やっとセレスと食事が出来る。急いで来て良かった」

「あまり無理して欲しくないですが…その、嬉しいです」

 素直な気持ちを伝えたら殿下が一瞬目を見張ってから嬉しそうに微笑んだ。


 食事の後、殿下に誘われて学園の植物園を一緒に歩く。花壇のあちこちに灯りがあるのでそれ程暗くはない。少し歩いた先にガゼボが木立の中に建っていて、中のベンチにはクッションも置かれて休憩するのに良い場所になっている。そしてここはゲームでのイベントスポットだったはずだ。

「ここで休もう。先に座っていて」

 俺を先にベンチに座らせて殿下がガゼボの前の外灯を点けている。それは使用者がいると言う印だから他の生徒は近づいて来なくなる。灯りが点いたのを確認して中に入って来た殿下が俺のすぐ横に座って腰を抱き寄せた。

「セレスに会いたくて、会談が中止になった時につい喜んでしまってね。父が呆れていた」

「陛下が⁉」

「父には隠しても意味が無いからセレスの事は報告しているんだ。さっさと行けと笑って送り出してくれたよ」

 確かに殿下の近辺には陛下の目が届いているのだろう。それでも報告済みだと言われると驚いてしまう。
狼狽えていたら殿下の手が頬を包んで唇が重なって来た。小さなリップ音を立てて吸われて、また重なり食まれる。

「セレス、口を開けて?」

 優しく請われて少しだけ開いた隙間を柔らかくなぞった舌が入ってきて、ビクッと身体が震えてしまう。そうしたら抱きしめる腕に力が入って、更に強く引き寄せられて交わりが深くなった。

「う、…んん、でん、か…」

「…名前を呼んで?」

  言いながら覆いかぶさって来るから、押されてベンチに横たわると殿下の唇が頬から首筋へと下りていく。

「あ…? ジークハルト、さま? 」

ブラウスのボタンが一つ、また一つとはずされていき、露わになっていく首筋や鎖骨を唇が辿っていく感触に戸惑っているうちにボタンはどんどん外されて……

急に恐怖が湧き上がってきて軽いパニック状態になった。

「えっ、あっ、いやぁ!?」

 鎖骨の上を強く吸われて大きな声が出ると同時に、涙が溢れてガタガタと身体が震えて血の気が引いていく。殿下のシャツを指が白くなるほど握りしめていた。

「セレス? ―っ! 泣いてっ、ごめんっ」

 俺の様子がおかしい事に気付いた殿下が抱き起して胸に抱きしめてくれた。殿下の香りに包まれたら少し落ち着いてきたけど、震えが治まらない。

「すまない。少し強引だった」

「ごめん、なさい…。驚いて…」

「いや。悪いのは私だ。落ち着いたら帰ろう」

 違う。殿下が悪いんじゃない。やり直す前の記憶のせいだ。無理やりされた行為に対する恐怖が刻まれ傷ついたセレスティンの心が泣いている。
 婚約者候補から外され冷たくあしらわれた記憶も混ざり、頭の中が混乱してまた突き放されてしまうのではという怖さに涙が止まらない。殿下の服を握って縋りついた。

「ごめっなさ、い。嫌い、に、ならな、いで。ひっくっ、離さ、な、で。ぐす、」

「嫌いになんてならないよ。こんなに可愛いセレスを手離すわけないだろう?」

 いつの間にか殿下の膝の上に座らされていて、優しく背を撫でながら唇が目尻やこめかみを辿っていく。涙が収まって来て恐々顔を上げたら、触れるだけのキスを額と唇に落とした殿下がとろけるような笑顔でこちらを見ていた。

「怖がらせてごめんよ。でも、セレスから初めて私への想いが籠った言葉を聞けて嬉しい…」

 言われて気付く。殿下から愛しいと言われたけど自分からは気持ちを言葉にしていなかったことに。

「ジークハルト様。好きです。ずっと前から…」

 言葉にしたら涙が一筋流れ落ちた。最後の一言は確実にセレスティンの言葉だった。
嬉しそうに抱きしめてくれた殿下の胸でまた少し涙が出た。


 俺が落ち着くのを待ってくれてから植物園を出て寮に帰ってきた。心配した殿下が部屋の前まで付き添ってくれて、扉を閉じる前にキスを交わしてから帰って行った。




 シャワーを浴びて脱衣所で着替えていると、鎖骨の上に殿下の付けた印があるのを鏡越しに見つけた。指でなぞるとその時の殿下の体温や香りが思い出されて下腹の奥の方にじわりと熱を感じる。殿下と初めてキスをした時にも感じたこの熱は俺がオメガだから? オメガバースについてはセレスティンの記憶の閨教育と、ゲームプレイに最低限必要だった分の知識しか持っていない。

 今日行ったガゼボはゲームのイベントスポットだった。そこで主人公が攻略対象者と過ごすスチルはどれも艶っぽいものだったのを思い出した。キスをしていたり、服が少しはだけていた画像が多くて、それに添えられていた文章も………ん?

 …そうだよ、15禁のゲームだからぼかしてあったけど「二人は結ばれた」とか「熱い夜を過ごした」って書いてあったじゃん。つまり実際はあの場所で……。

 殿下が思い止まらなかったらどうなっていたんだろう。あの時は恐怖が湧いて来たのに、かぁっと身体が熱くなって下腹の奥の熱もはっきりと感じた。 
 自分でも混乱してベッドに入ってもグルグルしていたけど、精神的に疲れていたこともあって直ぐに眠りに落ちてしまった。 







*****************************

ようやく第一部が終了というところまで辿り着きました。


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