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22 恋愛の常識
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こくりと一口お茶を飲んだらほぅっと溜息が出てしまった。
寝室にもあるソファーセットに座って、ハイムくんの入れてくれたお茶を飲んだら体の力が抜けた。
「落ち着きましたか?」
「うん、そうだね。あと、魔道具もありがとう。助かった」
その私の言葉にレヴァンテがショックを受けた顔になってオロオロし出した。
「無理強いしたつもりはっ。あまりにも嬉しくて、それに…」
あの後、服の乱れを整えている間に他の護衛達は寝室から出て行って、今は三人だけが残っている状態だ。叱られたワンコみたいになっているレヴァンテは放置して、ハイムくんがお茶を入れてくれて今に至る。
「レヴァンテ様、思い出して下さい。トモヒロ様は獣人の常識に疎い方です。寝室での振舞も、その意図も、理解されていないと思います」
ハイムくんの言葉にレヴァンテが息を呑み、直ぐに真っ青になって私の前にずざっと跪いてきた。
「申し訳ありません! 嬉しさのあまり失念しておりました。許されたのだと思い、あんな暴挙をしでかしましたっ」
「暴挙って、そんな大げさな…」
私の覚悟が足りなかっただけだし、と思って否定しようとしたらハイムくんが頭を横に振って言った。
「いいえ。トモヒロ様が助けを呼ぶほどの事をしたのですから暴挙で正解です。そしてトモヒロ様、寝室での振舞によってはこういう事態が起こる事を知っていただけたかと思います」
寝室で、それもベッドのすぐそばで想いを告げるのは物凄く積極的な閨への誘いなのだと聞かされた。つまり私は、レヴァンテを自分からベッドに誘っておいて事に及ぼうとしたら助けを呼んだという事になる。うわぁ、それは、本当に、…ごめん。
ハイムくんは元々レヴァンテの気持ちは知っていたし、最近の私の様子を見ていて感づいていたけれど、そっち方面の私の知識が乏しい事もわかっていたのであの魔道具を持たせてくれたようだ。
「あのまま魔道具が鳴らなくても想い合っているお二人ならば良いかと思っていましたが、念のため護衛の皆様には待機してもらっていました。思った以上に早く鳴ったので待ちぼうけにならなくて良かったです」
「私一人では止められないかもしれませんから」と言っているハイムくんの用意周到さに感心してしまう。それで護衛達も直ぐに入って来れたんだ。
「私が無知なせいで世話をかけてしまうね。何だか色々とありがとう」
「…トモヒロ様じゃなければこんなに親身になれません。それと、お仕えする上で確認しておきたいのですが、レヴァンテ様とは恋人関係になったのでしょうか? まさか無体を働いただけではありませんよね?」
「…うん。そう、なるのかな。レヴァンテがこんな年上の私で良ければだけど…」
もう隠してもしょうがないので素直に認めたら、跪いたままだったレヴァンテが足に縋りついて来た。一体どうしたんだ?
「本当ですか⁉ 私を恋人と認めてもらえるのですか⁈ あんな無体を働いた私を?」
「レヴァンテの気が変わっていないなら…」
「そんなことは一生ありません! トモヒロ様を愛しているんです」
そう言って私の手の甲に唇を寄せてきた。かぁっと顔に熱が集まるのがわかる。こういう事に慣れていないから本当に反応に困ってしまう。きっとまた顔が赤くなってしまっているだろう。
「その、私は恋愛をちゃんとしたことが無いんだ。だから、わからない事が多くて…また何かしてしまう前に、色々教えてもらいたい、かな?」
「ぐぅっ…!」
正直に伝えたらレヴァンテが胸を鷲掴んでうずくまってしまった。ハイムくんの顔も赤くなっている。二人ともどうしたんだ? ハイムくんが盛大に溜息を吐いて言った。
「トモヒロ様、私達以外の前ではこの手の話は絶対にしないで下さい」
「えっ、しないよ。こ、恋人意外とそんな話、するわけないだろう。ハイムくんはもう知ってるから例外だけど」
「本当に気を付けて下さい」と念を押された。恥ずかしいからしないけど、そこまで言われると心配だから気を付けよう。けれどその後ハイムくんが言った内容に驚いてしまった。
「今日の出来事で恋人に立候補する人が急増するでしょうから、レヴァンテ様はますますトモヒロ様から目を離さないようにしないと取られてしまいますよ?」
「わかっている。けれど負けるつもりはない」
…ん? 恋人に立候補? もうレヴァンテと恋人になったのになんで急増するんだ? また獣人特有の常識かもしれないから確認した方が良さそうだ。
「どうして恋人に立候補する人が急増するんだ?」
聞いたらハイムくんもレヴァンテもきょとんとした顔になった。そして恐る恐るという感じで確認してきた。
「トモヒロ様のところでは複数の方とお付き合いするものではないのですか…?」
「えぇっ⁉ しないよ⁉ あ、してる人もいるけど、それは不誠実な事だから相手にも失礼だし、普通はしないんだよ」
獣人の常識じゃなかった。こちらの常識だと思われているみたいだけど、なんでだ?そこでふと思い出した。ここ何代かの聖女様は複数の伴侶と結婚していると言う事を。
―――それかっ⁉
「今までの聖女様は複数の人とお付き合いしていたのかもしれないけど、私はそんなことはしない…というか、出来ないよ。だから立候補されても困る」
だいたい聖女様が複数の人と結婚することになったのも、元々は王家の都合のためじゃないか。私達がふしだらみたいに言われるのは違うと思う。少し憤慨していたらレヴァンテが私の手を握ってきた。そしてその瞳からぽろぽろ涙を流していた。
「レヴァンテ⁉ どうしたんだ?」
「嬉しいです。恋人は私だけなんですよね。信じられないくらい幸せです」
本当に嬉しそうな顔で言われて照れてしまう。座っているソファーの隣をポンポンと叩いて即すと、おずおずと腰かけて来たから取り出したハンカチで涙を拭く。そんな私達を見ていたハイムくんが困ったように言った。
「恋人に立候補してくる人はどうしましょう? 確実に凄い人数から求愛をされることになると思います…」
どうしてそうなってしまうのかを聞いて頭が痛くなった。
寝室にもあるソファーセットに座って、ハイムくんの入れてくれたお茶を飲んだら体の力が抜けた。
「落ち着きましたか?」
「うん、そうだね。あと、魔道具もありがとう。助かった」
その私の言葉にレヴァンテがショックを受けた顔になってオロオロし出した。
「無理強いしたつもりはっ。あまりにも嬉しくて、それに…」
あの後、服の乱れを整えている間に他の護衛達は寝室から出て行って、今は三人だけが残っている状態だ。叱られたワンコみたいになっているレヴァンテは放置して、ハイムくんがお茶を入れてくれて今に至る。
「レヴァンテ様、思い出して下さい。トモヒロ様は獣人の常識に疎い方です。寝室での振舞も、その意図も、理解されていないと思います」
ハイムくんの言葉にレヴァンテが息を呑み、直ぐに真っ青になって私の前にずざっと跪いてきた。
「申し訳ありません! 嬉しさのあまり失念しておりました。許されたのだと思い、あんな暴挙をしでかしましたっ」
「暴挙って、そんな大げさな…」
私の覚悟が足りなかっただけだし、と思って否定しようとしたらハイムくんが頭を横に振って言った。
「いいえ。トモヒロ様が助けを呼ぶほどの事をしたのですから暴挙で正解です。そしてトモヒロ様、寝室での振舞によってはこういう事態が起こる事を知っていただけたかと思います」
寝室で、それもベッドのすぐそばで想いを告げるのは物凄く積極的な閨への誘いなのだと聞かされた。つまり私は、レヴァンテを自分からベッドに誘っておいて事に及ぼうとしたら助けを呼んだという事になる。うわぁ、それは、本当に、…ごめん。
ハイムくんは元々レヴァンテの気持ちは知っていたし、最近の私の様子を見ていて感づいていたけれど、そっち方面の私の知識が乏しい事もわかっていたのであの魔道具を持たせてくれたようだ。
「あのまま魔道具が鳴らなくても想い合っているお二人ならば良いかと思っていましたが、念のため護衛の皆様には待機してもらっていました。思った以上に早く鳴ったので待ちぼうけにならなくて良かったです」
「私一人では止められないかもしれませんから」と言っているハイムくんの用意周到さに感心してしまう。それで護衛達も直ぐに入って来れたんだ。
「私が無知なせいで世話をかけてしまうね。何だか色々とありがとう」
「…トモヒロ様じゃなければこんなに親身になれません。それと、お仕えする上で確認しておきたいのですが、レヴァンテ様とは恋人関係になったのでしょうか? まさか無体を働いただけではありませんよね?」
「…うん。そう、なるのかな。レヴァンテがこんな年上の私で良ければだけど…」
もう隠してもしょうがないので素直に認めたら、跪いたままだったレヴァンテが足に縋りついて来た。一体どうしたんだ?
「本当ですか⁉ 私を恋人と認めてもらえるのですか⁈ あんな無体を働いた私を?」
「レヴァンテの気が変わっていないなら…」
「そんなことは一生ありません! トモヒロ様を愛しているんです」
そう言って私の手の甲に唇を寄せてきた。かぁっと顔に熱が集まるのがわかる。こういう事に慣れていないから本当に反応に困ってしまう。きっとまた顔が赤くなってしまっているだろう。
「その、私は恋愛をちゃんとしたことが無いんだ。だから、わからない事が多くて…また何かしてしまう前に、色々教えてもらいたい、かな?」
「ぐぅっ…!」
正直に伝えたらレヴァンテが胸を鷲掴んでうずくまってしまった。ハイムくんの顔も赤くなっている。二人ともどうしたんだ? ハイムくんが盛大に溜息を吐いて言った。
「トモヒロ様、私達以外の前ではこの手の話は絶対にしないで下さい」
「えっ、しないよ。こ、恋人意外とそんな話、するわけないだろう。ハイムくんはもう知ってるから例外だけど」
「本当に気を付けて下さい」と念を押された。恥ずかしいからしないけど、そこまで言われると心配だから気を付けよう。けれどその後ハイムくんが言った内容に驚いてしまった。
「今日の出来事で恋人に立候補する人が急増するでしょうから、レヴァンテ様はますますトモヒロ様から目を離さないようにしないと取られてしまいますよ?」
「わかっている。けれど負けるつもりはない」
…ん? 恋人に立候補? もうレヴァンテと恋人になったのになんで急増するんだ? また獣人特有の常識かもしれないから確認した方が良さそうだ。
「どうして恋人に立候補する人が急増するんだ?」
聞いたらハイムくんもレヴァンテもきょとんとした顔になった。そして恐る恐るという感じで確認してきた。
「トモヒロ様のところでは複数の方とお付き合いするものではないのですか…?」
「えぇっ⁉ しないよ⁉ あ、してる人もいるけど、それは不誠実な事だから相手にも失礼だし、普通はしないんだよ」
獣人の常識じゃなかった。こちらの常識だと思われているみたいだけど、なんでだ?そこでふと思い出した。ここ何代かの聖女様は複数の伴侶と結婚していると言う事を。
―――それかっ⁉
「今までの聖女様は複数の人とお付き合いしていたのかもしれないけど、私はそんなことはしない…というか、出来ないよ。だから立候補されても困る」
だいたい聖女様が複数の人と結婚することになったのも、元々は王家の都合のためじゃないか。私達がふしだらみたいに言われるのは違うと思う。少し憤慨していたらレヴァンテが私の手を握ってきた。そしてその瞳からぽろぽろ涙を流していた。
「レヴァンテ⁉ どうしたんだ?」
「嬉しいです。恋人は私だけなんですよね。信じられないくらい幸せです」
本当に嬉しそうな顔で言われて照れてしまう。座っているソファーの隣をポンポンと叩いて即すと、おずおずと腰かけて来たから取り出したハンカチで涙を拭く。そんな私達を見ていたハイムくんが困ったように言った。
「恋人に立候補してくる人はどうしましょう? 確実に凄い人数から求愛をされることになると思います…」
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