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20 対策会議
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過保護生活も落ち着いたので、樹里に相談したいことがあると連絡したら「知宏は病み上がりなんだから」と妖精二人を伴ってこちらの部屋まで訪ねて来てくれた。
今日はファビアン殿下は一緒ではなく、ソファーの後ろには彼女の護衛が二人立っている。今回の相談は護衛達の意見も聞くことにしているので、レヴァンテと新しく護衛になったクレイトンが私の後ろに居て、四人共消音の魔道具の範囲内に入ってもらった。
ハイムくんが入れてくれたお茶を飲んでから話を切り出した。聖女の存在が勢力争いに利用されている事を彼女に伝えるのは気が重いと思っていたのだけれど、樹里には隠し事はしないと決めていたのでありのままを伝えたら、
「知ってるよ。ファビアンから自分はそんな奴らとは違うって言われて、信じて欲しいってプロポーズされたんだもん」
どうやら殿下から既に聞いていて、正式なプロポーズもされていたらしい。後ろで護衛の二人も頷いている。ファビアン殿下は本気で樹里を伴侶に迎えたいと思っているようだ。
「私も知宏と一緒で返事は保留にしてるの。だって私まだ17歳だよ? 婚約とか結婚とか全然想像できないし…。それより今は大司教の事でしょ? 妖精ちゃんも連れてきたから一緒に相談しよう」
殿下には申し訳ないが、私達の身の安全がかかっているのでこちらの問題を優先させてもらおう。
「大司教の意識が戻らない間も陛下とシリング公爵が色々手を回してくれていたらしい。それでも何か仕掛けて来るだろうからその対策をしようと思っているんだ」
私の拉致事件が起こって聖女至上主義者を取り締まる理由が出来たから、私と樹里の護衛はそれを踏まえて選ばれた者が就いている。この部屋に居る四人はその中でも信頼できる人物だ。
けれどあの事件の実行犯以外はどうすることも出来ないし監視の目も全てに届かせるのは難しい。相手は聖女至上主義者のトップで王族のひとりだし。大司教で地位も権力も持っている。
「樹里には大司教の都合の良い相手との婚約を進めてくると思うんだ。それと、私の存在は邪魔だろうから…何をしてくるだろう? いっそ囮になって…」
「いけません!」
私の提案にレヴァンテが声をあげた。
「トモヒロ様を危険に晒すなど、あってはならない事です。あんな事は二度と起きて欲しくありません」
苦しそうな表情で訴えるレヴァンテは、あの事件で私が連れ去られるのを阻止できなかった事が相当堪えているようだ。隣に立つクレイトンも険しい顔をしている。そんなレヴァンテに妖精が声をかけた。
『 トモヒロは、私達が守るから、大丈夫だよ 』
「わかった。もう囮なんて言わないからそんな顔をしないでくれ。ほら、妖精達が私の事は守るから大丈夫だと言ってくれたよ」
声を聞くことが出来ない護衛の二人に伝えたら驚いた顔をしている。レヴァンテには妖精の声は聞こえないけど、誘導くらいならしてもらえるかもしれない。肩に乗ってきた妖精にダメ元で頼み事をしてみた。
「もしもまた攫われたらレヴァンテに私の居場所を教えてもらう事は出来る?」
『 トモヒロの居るところに、連れていけばいいの? 』
『 トモヒロの居場所はわかるよ。レヴァンテ、連れていく 』
「ありがとう。頼りにしているよ」
あっさり引き受けてくれた。この子達のおかげで今までも本当に助かっているから何かお礼ができないかな。
「ねえ、知宏…」
私と妖精のやり取りを聞いていた樹里がなんだか難しい顔をしているけど、どうしたんだろう?
「もしかしたら連れて行くって、そのまんまなんじゃないかな。…妖精ちゃん、知宏の所にどうやって連れていくの?」
『 魔法で、飛ぶよ 』
『 だから、どこにいても、大丈夫だよ 』
驚きの答えが返ってきた。そういえばこの子達はいつも突然現れる。それも転移魔法を使っていたんだろうか。しかも自分以外を転移させる事も出来るようだ。
お互いの護衛達に妖精の言った内容を伝えると驚きを隠せない様子だった。
「…この事はまだ他にはお話にならない方が良いと思います」
樹里の護衛の一人でここにいる四人の護衛の中で一番年上のエイブナーが情報の秘匿を提案してきた。
「理由を教えてくれる?」
「ジュリ様、これは切り札になる情報だからです。いざという時に使う事柄は出来るだけ秘匿した方が良いのです」
一番経験値の高いエイブナーの言葉には説得力がある。この情報はここにいる六人以外には漏らさない事を決めた。
大司教は療養中だが、意識が戻ったから指示は出せているはずだと護衛達の意見が一致していて、仕掛けてくるとしたら必ず私達二人のお披露目よりも前になるという。
既に私達は国民の支持を少なからず得ているし、大々的にお披露目をしてしまうと手が出し難くなるからだ。
「最初の対面は大司教様が公務に復帰してからになるでしょう。国王主催で快気を祝う会が開かれるのでその時かと思います」
エイブナーの言うように、初対面が人の大勢いるところならば変な事も出来ないんじゃないかと思っていたんだけど…
「そいうところにこそ危険が隠れています。私達も気をつけますがご自身も注意していただかなければなりません」
「人が見ているところでも何かしてくるの?」
「本人が直接手を下す事はあまり考えられませんが、そういう人物は人に命令する力を持っています。飲み物や食事、食器などに給仕を使って薬物を混入させたり、関係者が握手などで体に触れてきたら手のひらに毒針を隠していたり」
「うわぁ~っ、えぇ? じゃあ、どうすればいいの?」
「私達護衛から決して離れないで下さい。必ず守ります」
樹里の問いにエイブナーが力強く答えると、他の三人も真剣な顔で頷いた。この四人なら信頼できる。
「ありがとう! 頼りにしてるね」
「わかった。私と樹里を守ってくれ」
「「「「はい!」」」」
先ずはその快気を祝うパーティーの為の対策が必須だろうという事で、色々意見を出し合った。関係者限定ではあるが、私と樹里が初めて人前に紹介される場でもあるので注意点を教えてもらう。
「そのパーティーで私と知宏は仲良しってことをアピールした方が良いのかな?」
「聖女様を敬っている人達ですから、樹里様が大切に思っている人物だと知れば牽制の効果はあると思います」
「それに離れているよりもお二人が一緒にいる方が警護もしやすいです」
護衛達からのアドバイスを聞いて色々な場面での対処を話し合った。私と樹里は浄化と治癒以外の魔法も使えるので、身を守る場合の効果的な使い方も教えてもらった。
今日はファビアン殿下は一緒ではなく、ソファーの後ろには彼女の護衛が二人立っている。今回の相談は護衛達の意見も聞くことにしているので、レヴァンテと新しく護衛になったクレイトンが私の後ろに居て、四人共消音の魔道具の範囲内に入ってもらった。
ハイムくんが入れてくれたお茶を飲んでから話を切り出した。聖女の存在が勢力争いに利用されている事を彼女に伝えるのは気が重いと思っていたのだけれど、樹里には隠し事はしないと決めていたのでありのままを伝えたら、
「知ってるよ。ファビアンから自分はそんな奴らとは違うって言われて、信じて欲しいってプロポーズされたんだもん」
どうやら殿下から既に聞いていて、正式なプロポーズもされていたらしい。後ろで護衛の二人も頷いている。ファビアン殿下は本気で樹里を伴侶に迎えたいと思っているようだ。
「私も知宏と一緒で返事は保留にしてるの。だって私まだ17歳だよ? 婚約とか結婚とか全然想像できないし…。それより今は大司教の事でしょ? 妖精ちゃんも連れてきたから一緒に相談しよう」
殿下には申し訳ないが、私達の身の安全がかかっているのでこちらの問題を優先させてもらおう。
「大司教の意識が戻らない間も陛下とシリング公爵が色々手を回してくれていたらしい。それでも何か仕掛けて来るだろうからその対策をしようと思っているんだ」
私の拉致事件が起こって聖女至上主義者を取り締まる理由が出来たから、私と樹里の護衛はそれを踏まえて選ばれた者が就いている。この部屋に居る四人はその中でも信頼できる人物だ。
けれどあの事件の実行犯以外はどうすることも出来ないし監視の目も全てに届かせるのは難しい。相手は聖女至上主義者のトップで王族のひとりだし。大司教で地位も権力も持っている。
「樹里には大司教の都合の良い相手との婚約を進めてくると思うんだ。それと、私の存在は邪魔だろうから…何をしてくるだろう? いっそ囮になって…」
「いけません!」
私の提案にレヴァンテが声をあげた。
「トモヒロ様を危険に晒すなど、あってはならない事です。あんな事は二度と起きて欲しくありません」
苦しそうな表情で訴えるレヴァンテは、あの事件で私が連れ去られるのを阻止できなかった事が相当堪えているようだ。隣に立つクレイトンも険しい顔をしている。そんなレヴァンテに妖精が声をかけた。
『 トモヒロは、私達が守るから、大丈夫だよ 』
「わかった。もう囮なんて言わないからそんな顔をしないでくれ。ほら、妖精達が私の事は守るから大丈夫だと言ってくれたよ」
声を聞くことが出来ない護衛の二人に伝えたら驚いた顔をしている。レヴァンテには妖精の声は聞こえないけど、誘導くらいならしてもらえるかもしれない。肩に乗ってきた妖精にダメ元で頼み事をしてみた。
「もしもまた攫われたらレヴァンテに私の居場所を教えてもらう事は出来る?」
『 トモヒロの居るところに、連れていけばいいの? 』
『 トモヒロの居場所はわかるよ。レヴァンテ、連れていく 』
「ありがとう。頼りにしているよ」
あっさり引き受けてくれた。この子達のおかげで今までも本当に助かっているから何かお礼ができないかな。
「ねえ、知宏…」
私と妖精のやり取りを聞いていた樹里がなんだか難しい顔をしているけど、どうしたんだろう?
「もしかしたら連れて行くって、そのまんまなんじゃないかな。…妖精ちゃん、知宏の所にどうやって連れていくの?」
『 魔法で、飛ぶよ 』
『 だから、どこにいても、大丈夫だよ 』
驚きの答えが返ってきた。そういえばこの子達はいつも突然現れる。それも転移魔法を使っていたんだろうか。しかも自分以外を転移させる事も出来るようだ。
お互いの護衛達に妖精の言った内容を伝えると驚きを隠せない様子だった。
「…この事はまだ他にはお話にならない方が良いと思います」
樹里の護衛の一人でここにいる四人の護衛の中で一番年上のエイブナーが情報の秘匿を提案してきた。
「理由を教えてくれる?」
「ジュリ様、これは切り札になる情報だからです。いざという時に使う事柄は出来るだけ秘匿した方が良いのです」
一番経験値の高いエイブナーの言葉には説得力がある。この情報はここにいる六人以外には漏らさない事を決めた。
大司教は療養中だが、意識が戻ったから指示は出せているはずだと護衛達の意見が一致していて、仕掛けてくるとしたら必ず私達二人のお披露目よりも前になるという。
既に私達は国民の支持を少なからず得ているし、大々的にお披露目をしてしまうと手が出し難くなるからだ。
「最初の対面は大司教様が公務に復帰してからになるでしょう。国王主催で快気を祝う会が開かれるのでその時かと思います」
エイブナーの言うように、初対面が人の大勢いるところならば変な事も出来ないんじゃないかと思っていたんだけど…
「そいうところにこそ危険が隠れています。私達も気をつけますがご自身も注意していただかなければなりません」
「人が見ているところでも何かしてくるの?」
「本人が直接手を下す事はあまり考えられませんが、そういう人物は人に命令する力を持っています。飲み物や食事、食器などに給仕を使って薬物を混入させたり、関係者が握手などで体に触れてきたら手のひらに毒針を隠していたり」
「うわぁ~っ、えぇ? じゃあ、どうすればいいの?」
「私達護衛から決して離れないで下さい。必ず守ります」
樹里の問いにエイブナーが力強く答えると、他の三人も真剣な顔で頷いた。この四人なら信頼できる。
「ありがとう! 頼りにしてるね」
「わかった。私と樹里を守ってくれ」
「「「「はい!」」」」
先ずはその快気を祝うパーティーの為の対策が必須だろうという事で、色々意見を出し合った。関係者限定ではあるが、私と樹里が初めて人前に紹介される場でもあるので注意点を教えてもらう。
「そのパーティーで私と知宏は仲良しってことをアピールした方が良いのかな?」
「聖女様を敬っている人達ですから、樹里様が大切に思っている人物だと知れば牽制の効果はあると思います」
「それに離れているよりもお二人が一緒にいる方が警護もしやすいです」
護衛達からのアドバイスを聞いて色々な場面での対処を話し合った。私と樹里は浄化と治癒以外の魔法も使えるので、身を守る場合の効果的な使い方も教えてもらった。
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