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3 妖精の加護
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この国には聖女がどうしても必要であることを知り、二人揃って黙り込んでいるとソファーから立ち上がった王子が斉藤さんの前まで来て膝をついた。
「その凶悪な黒霧もジュリの聖女の力があれば浄化できる。私達はあなたに縋るしか術がないのです。どうかこの国の民に手を差し伸べてはくれないだろうか」
「え…あ、あの、私にそんな魔法が使えるんですか?」
「もちろんです。ジュリは妖精の試練を乗り越え、その指輪を授かったのでしょう?それが聖女の証なんですから」
…今王子は聞き捨てならない事を言わなかったか?
指輪が聖女の証? じゃあ私のこれはなんなんだ?
――困惑している私の横で会話は続く。
「さっきのお話で私がここに呼ばれた意味を知って思ったんです。だって放っておけないですもん。私、聖女になります!」
「本当ですかジュリ! あなたはなんて慈悲深いんだ!」
「ちょっ、ちょっと斉藤さん⁈ 」
「だってこんなの見過ごせないじゃないですか! 私にしか出来ないんですよ⁉」
どうやら王子の話を聞いて決心してしまったらしい。ここでこの話を切り出すのは水を差すようで申し訳ないが、今確認しておかないと後々きっと大変な事になるだろうからと私は自分の右手を上げた。
「私にも指輪があるんだが、これにはどんな意味があるのだろうか?」
そう言うと皆一様にこちらを見た。王子に至っては目を丸くしている。皆さん驚いているけどさっき神殿みたいなところで見てただろ? 妖精が集まって光って指輪が出現したのを! しかもこの指輪ずっと外そうと試みているけど全く外せない。
「…あぁ、そうであったな。誰か鑑定版を持ってきなさい。話の続きは鑑定の後だ」
我に返った王様の言葉で、部屋の隅にいた兵士の一人が小走りで部屋から出て行く。跪いていた王子は斉藤さんの手を取って甲に口づけてからソファーに戻っていった。しばらく待つと兵士がA4サイズ位の一枚の金属の板を手に持った神官のような人を連れて来た。
「これは触れた者の魔法属性がわかる鑑定版という魔道具です。どちらを先に鑑定いたしますか?」
板を持ってきた神官が最初は私達に向かって告げてから後は王様に聞いている。先に斉藤さんの鑑定をすることになり、彼女が板に触れると文字が浮かび上がってきた。
浄化 極大
治癒 中
光 大
水 大
火 大
土 大
風 大
すぐに神官が結果を書き写しているとしばらくして文字は消えてしまった。次に私が触れてみた。
浄化 中
治癒 極大
光 大
水 大
火 大
土 大
風 大
二人の鑑定結果に周りが動揺しているのを感じる。斉藤さんは浄化が極大で私は治癒に極大が付いていたようだ。文字も読めるみたいだけど、ここに来てから視力がおかしくてぼやけて良く見えないんだよな。
「これはまた……どうしてこのような鑑定になったのだろうか…」
「二人がここにたどり着くまでの経緯を詳しく聞いてみましょう。何か手がかりがあるやもしれません」
王様と宰相が難しい顔で話している様子から、私達の鑑定はあまり良い結果ではなかったのかもしれない。とにかく話を聞かせて欲しいと言われ、二人が辿った内容を思い出しながら伝えた。
二人が話し終わると、それを書き記していた紙を見ながら王様と宰相はやはり難しい顔をしている。三つの試練は以前のものとほぼ 同じだったそうだ。そして試練を乗り越えた聖女は浄化も治癒も極大がつくらしい。治癒の極大が私の方についているのがおかしいということだ。
「私と藤崎さんの二人で解決したからじゃないですか?だって私ひとりだったら解決出来てないですもん」
斉藤さんの言葉に王様達が顔を上げた。すると私たちの近くを飛んでいた妖精が突然話し出した。
『 ジュリ、聖女だけど、試練を解いたのは、トモヒロ 』
『 ジュリ、従っただけ。授ける半分は、トモヒロ 』
『 トモヒロ、いなかったら、聖女来れなかった 』
「ほら! やっぱりそうですよ。妖精ちゃんごめんね。私にすっごく ハラハラしたよね。藤崎さんが一緒で良かったね 」
斉藤さん、本当に良い子だなぁ。私が一緒に来たせいで授かるはずのものが半分になったのに…聖女に選ばれたのも納得だよ。それなら私は本来彼女が授かるはずだった能力を使って全力でサポートしよう。
王様達も彼女の純真さに微笑んで見ていた。特に王子は胸を打たれたようで、また彼女の手を取って甲にキスをして熱烈に語り掛けている。
「ジュリ、君はなんて美しい心の持ち主なんだ。こんなに感動したのは生まれて初めてだよ。君に出会えた幸運に感謝しなければ… 」
「あ、あの。そんな、私は当たり前の事を、言っただけです…」
ふふっ、斉藤さん真っ赤になっているな。それにしてもぼやける。眼鏡替えたのそんなに前じゃないのにと思って外してみたら、滅茶苦茶視界が鮮明になった。そして周りを見て驚いた。うわぁ、獣人の皆さん美形ぞろいだよ。体格にも恵まれてて顔も良いなんて異世界は凄いところなんだな。
………なんだか皆さんこちらを凝視しているような?
「あれ?藤崎さん眼鏡外したんですか。ますます年齢不詳になってますよ~」
あっ! 超近視レンズで目が小さく見えていたのを忘れていた!これでは余計に童顔なのがばれてしまった。
「うぅ、あんまり見ないで下さい。何故か急に視力が良くなって眼鏡が合わなくなったんです」
「それは妖精の加護を授かったからです。体の不調はほぼ改善されているはずです」
なんと、そんな恩恵もあるんだ⁉ 宰相の言った通り視力だけでなく肩こりも無くなっていた。そういえば常にあった疲労感も無い。
「ホントだ! 練習で痛めた肘が治ってる。あっ!アトピーが、アトピーが消えてる!嬉しい‼ 妖精ちゃん、ありがとう!」
斉藤さんも大喜びだ。童顔がばれるけど視力が良くなったのは助かる。
………身長を授けて欲しかったと思うのは筋違いなんだろうなぁ。
「その凶悪な黒霧もジュリの聖女の力があれば浄化できる。私達はあなたに縋るしか術がないのです。どうかこの国の民に手を差し伸べてはくれないだろうか」
「え…あ、あの、私にそんな魔法が使えるんですか?」
「もちろんです。ジュリは妖精の試練を乗り越え、その指輪を授かったのでしょう?それが聖女の証なんですから」
…今王子は聞き捨てならない事を言わなかったか?
指輪が聖女の証? じゃあ私のこれはなんなんだ?
――困惑している私の横で会話は続く。
「さっきのお話で私がここに呼ばれた意味を知って思ったんです。だって放っておけないですもん。私、聖女になります!」
「本当ですかジュリ! あなたはなんて慈悲深いんだ!」
「ちょっ、ちょっと斉藤さん⁈ 」
「だってこんなの見過ごせないじゃないですか! 私にしか出来ないんですよ⁉」
どうやら王子の話を聞いて決心してしまったらしい。ここでこの話を切り出すのは水を差すようで申し訳ないが、今確認しておかないと後々きっと大変な事になるだろうからと私は自分の右手を上げた。
「私にも指輪があるんだが、これにはどんな意味があるのだろうか?」
そう言うと皆一様にこちらを見た。王子に至っては目を丸くしている。皆さん驚いているけどさっき神殿みたいなところで見てただろ? 妖精が集まって光って指輪が出現したのを! しかもこの指輪ずっと外そうと試みているけど全く外せない。
「…あぁ、そうであったな。誰か鑑定版を持ってきなさい。話の続きは鑑定の後だ」
我に返った王様の言葉で、部屋の隅にいた兵士の一人が小走りで部屋から出て行く。跪いていた王子は斉藤さんの手を取って甲に口づけてからソファーに戻っていった。しばらく待つと兵士がA4サイズ位の一枚の金属の板を手に持った神官のような人を連れて来た。
「これは触れた者の魔法属性がわかる鑑定版という魔道具です。どちらを先に鑑定いたしますか?」
板を持ってきた神官が最初は私達に向かって告げてから後は王様に聞いている。先に斉藤さんの鑑定をすることになり、彼女が板に触れると文字が浮かび上がってきた。
浄化 極大
治癒 中
光 大
水 大
火 大
土 大
風 大
すぐに神官が結果を書き写しているとしばらくして文字は消えてしまった。次に私が触れてみた。
浄化 中
治癒 極大
光 大
水 大
火 大
土 大
風 大
二人の鑑定結果に周りが動揺しているのを感じる。斉藤さんは浄化が極大で私は治癒に極大が付いていたようだ。文字も読めるみたいだけど、ここに来てから視力がおかしくてぼやけて良く見えないんだよな。
「これはまた……どうしてこのような鑑定になったのだろうか…」
「二人がここにたどり着くまでの経緯を詳しく聞いてみましょう。何か手がかりがあるやもしれません」
王様と宰相が難しい顔で話している様子から、私達の鑑定はあまり良い結果ではなかったのかもしれない。とにかく話を聞かせて欲しいと言われ、二人が辿った内容を思い出しながら伝えた。
二人が話し終わると、それを書き記していた紙を見ながら王様と宰相はやはり難しい顔をしている。三つの試練は以前のものとほぼ 同じだったそうだ。そして試練を乗り越えた聖女は浄化も治癒も極大がつくらしい。治癒の極大が私の方についているのがおかしいということだ。
「私と藤崎さんの二人で解決したからじゃないですか?だって私ひとりだったら解決出来てないですもん」
斉藤さんの言葉に王様達が顔を上げた。すると私たちの近くを飛んでいた妖精が突然話し出した。
『 ジュリ、聖女だけど、試練を解いたのは、トモヒロ 』
『 ジュリ、従っただけ。授ける半分は、トモヒロ 』
『 トモヒロ、いなかったら、聖女来れなかった 』
「ほら! やっぱりそうですよ。妖精ちゃんごめんね。私にすっごく ハラハラしたよね。藤崎さんが一緒で良かったね 」
斉藤さん、本当に良い子だなぁ。私が一緒に来たせいで授かるはずのものが半分になったのに…聖女に選ばれたのも納得だよ。それなら私は本来彼女が授かるはずだった能力を使って全力でサポートしよう。
王様達も彼女の純真さに微笑んで見ていた。特に王子は胸を打たれたようで、また彼女の手を取って甲にキスをして熱烈に語り掛けている。
「ジュリ、君はなんて美しい心の持ち主なんだ。こんなに感動したのは生まれて初めてだよ。君に出会えた幸運に感謝しなければ… 」
「あ、あの。そんな、私は当たり前の事を、言っただけです…」
ふふっ、斉藤さん真っ赤になっているな。それにしてもぼやける。眼鏡替えたのそんなに前じゃないのにと思って外してみたら、滅茶苦茶視界が鮮明になった。そして周りを見て驚いた。うわぁ、獣人の皆さん美形ぞろいだよ。体格にも恵まれてて顔も良いなんて異世界は凄いところなんだな。
………なんだか皆さんこちらを凝視しているような?
「あれ?藤崎さん眼鏡外したんですか。ますます年齢不詳になってますよ~」
あっ! 超近視レンズで目が小さく見えていたのを忘れていた!これでは余計に童顔なのがばれてしまった。
「うぅ、あんまり見ないで下さい。何故か急に視力が良くなって眼鏡が合わなくなったんです」
「それは妖精の加護を授かったからです。体の不調はほぼ改善されているはずです」
なんと、そんな恩恵もあるんだ⁉ 宰相の言った通り視力だけでなく肩こりも無くなっていた。そういえば常にあった疲労感も無い。
「ホントだ! 練習で痛めた肘が治ってる。あっ!アトピーが、アトピーが消えてる!嬉しい‼ 妖精ちゃん、ありがとう!」
斉藤さんも大喜びだ。童顔がばれるけど視力が良くなったのは助かる。
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