上 下
43 / 46
第四章 水の国

水の国

しおりを挟む
  

「なるほど……そんな理由が……」


 戻ってきたメリッサさんに筆記具を借り、今は手紙を書きながらティナさんに詳しい話を聞いた所。

 ミアさんは泣き止み、泣き疲れたのかベッドの上で静かに寝ていて……メリッサさんはティナさんにさっきの事をツッコまれて……頬を染めつつ、壁際に立っている。

 それで、ティナさんの詳しい話を纏めると……

 ・まず、今居る場所は、フルグンド王国。通称……水の国。
 そこの王城の一室。やっぱりね。

 ・フルグンド王国は一つの大きい島を国としている。

 ・有翼族、人魚族が主な国民。

 ・風の国とかがある大陸からは、結構離れているらしく、転移での移動は厳しい可能性。
 長距離移動が可能な有翼族か、若しくは人魚族くらいじゃないと、移動が厳しいみたい。
 船での往来も出来るけど……距離を考えて、補給地点が無い為に物資がしんどいとかなんとか。


 それで、一番大事な国が滅びる云々の話はというと……

 ・災厄と呼ばれる……巨大な海龍がポップアップする予兆があるらしい。

 ・具体的には……島の周りに強力な魔物のポップアップが盛んになるとか。

 ・今のフルグンド王国の国力での討伐は厳しく……それで滅びる云々の話に。
 ちょっとティナさんが先走ってる感あるけどね。

 ・歴史を遡ると……男が居た時代に、多大な犠牲を払って漸く討伐出来た程強力な海龍だとか。

 ・ティナさん曰く、俺様が泳げれば倒せる。らしい……。


「ティナさん、泳げないんですか……?」


「泳げねぇっつうか……息が出来ねぇ。潜られたら終いだな」


 なるほど……そりゃそうか。


「それで……僕が呼ばれた理由は?」


「あぁー……女王陛下がな、その……忙しくて……男を抱けねぇってボヤいてたからさ。そんで知り合いが風の国でリュカの話を聞いてだな……」


 少し言い辛そうにしているけど……僕にとってはご褒美だよ、それ。


「なるほど……慰安ですか。お任せ下さい!!得意分野ですっ!!」


 僕のその言葉に……ガタッ!!と反応したメリッサさん。
 皆がそちらに視線を向けると……澄まし顔で虚無を見つめている。バレバレで可愛い。


「ま、先に陛下ん所に弁明に行って……だな。そしたら俺様は手紙を運びに行く。……なぁに予兆があるだけだ。直ぐに滅ぶって訳じゃねぇから心配すんなよ?」


「は、早く帰って来て下さいね……」


 不安が顔に出ていたのか……ティナさんがフォローしてくれた。
 思わずお嫁さんムーブになってしまうが……気にしない。


「リュカは堪らんなぁ……帰ってきたらたっぷりセックスするからな?覚悟しとけよぉ?」


「ふふふ……また気絶させてあげますよ!」


「言うじゃねぇかぁ!!!次は負けねぇぞ!?」


 盛り上がる僕達を割くように、メリッサさんが間に入ってきて……


「んんっ!!!では、私は陛下の元へ。少々お待ち下さいませリュカ様」


 咳払いを一つしてそう言い放ち、優雅に立ち去るメリッサさんを見送り……手紙の続きを書き進める。

 陛下は忙しいのに謁見の時間くれるのかね?余り長居しない様にしないと……。

 手紙の内容は、僕は無事な事……それと、皆が無事かの確認。
 暫く戻れない事を書き、帰還時はエルフの森に行く事等、必要な事を纏めていく。


「しかし、女王陛下ですか……緊張しますね」


「……向こうからしたら男と会う方が緊張すんぜ?」


「ティナさん達はそうでも無かったですよね?」


「……興奮し過ぎて暴れた節はあるな。それに……ほら、リュカが俺様を挑発するもんだからよぉ……つい、な?」


 なんとも難儀な世の中だなぁ……。

 手紙を書き終え封をして、ティナさんに託し……まだメリッサさんが戻らないので、二人雑談を重ねる。


「それにしても……滅び行く国、ですか。それなのに僕が思っている程……皆悲壮感がありませんね」


「まぁな。最悪、俺様達有翼族が要人抱えて飛べば問題ねぇ……だからよ、皆悲壮感がねぇんだ。自分達が死んでも……陛下がいりゃ、国はまた建つ。だったら……命を賭してでも、戦ってやろうってな。男達の為によぉ」


「それは……!!そんなのって……!!」


 重い話を……軽く笑って言うティナさんが……理解出来ない。
 皆で逃げて……生きた方が良いに決まっているじゃないか……!!


「ま、そうすっと……人魚族が絶滅の危機になるがな。そんときゃリュカ……頼むぜぇ?」


「そんなの……そんな事、僕は……約束したく……ありません……!!それに、この国のシェルターの中にいる男の人達は……皆……!!」


「……だから皆、死んででも抗おうとするんだよ。男を守る為に……俺様達女は……暴力に立ち向かうんだよ、リュカ」


「ティナ……さん……」


 僕が皆とセックスするから大丈夫、だから皆で逃げよう……なんて軽口が叩けないくらい、真剣な表情。

 例えば……僕がティナさんの立場だったとしたら、同じ事が言えたのだろうか。

 好きでも無いのに……ただ、異性というだけで……命を賭けられるだろうか。


「凄いですね……ティナさんは。僕だったら……自分の命の方が大事だと……逃げちゃいます。きっと」


「はっ!!男のリュカはそれで良いんだよっ!!」


 高らかに笑いながら頭を撫でられ……なんだか、無性に悔しかった。

 たぶん、この世界の男なら受け入れていると思う……けど、僕はそれだけじゃないんだ。
 この世界じゃない……日本人としての心があるんだ……!
 弱いから守られる……それだけじゃダメなんだよ……僕……!!

 燃えろよ大和魂。探すんだ……セックス以外に僕が出来る事。

 きっと、今のこの状況は……僕に成長しろと、淫紋が導いた結果なのかも知れない。

 この先……何が待ち受けているかわからないこの世界で、生き延びる為に……一歩成長しないといけない……そんな風に都合良く解釈して、強く……強くならないと……!!


 だから……寂しいけど、エマ達とは暫くの別れ。僕が強くなる、その日まで。

 そう決意した所で……水を差す様にノックが響き、ティナさんが扉を開けるとメリッサさんが入ってきた。


「貴方は……。リュカ様が居られるのです。少しは気を遣いなさい」


「わりぃわりぃ……。一回セックスするとな、リュカは普通じゃねぇってわかるんだけどなぁ……」


 ニヤニヤしながらメリッサさんを煽るもんだから……メリッサさんの瞳孔が縦長に開き、ギンギンの殺意が部屋に充満する。


「ふぇっ……!?な、何事ぉ……!?」


 ……殺意の余波でミアさんが起きたのは良かったのかも知れない。


「兎に角……陛下が時間を開けて下さるそうです。直ぐに向かいますよ……リュカ様、宜しゅう御座いますか?」


「あ……え、えぇ!勿論です!!直ぐに行きましょう!!」


 殺気の残滓でちょっとビビったけど……ま、まだ強くなってないからセーフ。
 時間が無いし急ごう!!

 皆で部屋を出て、メイドさん達が並ぶ廊下に。

 僕が出てきたからか、壁際に並んだメイドさん達が一斉に頭を下げて……ちょっと廊下が歩き辛い。

 ……本来、この人達は僕の警護なんてしてないで……国防に回らなきゃいけない人達……な筈。

 あれ……メイド服だから違うかな?
 まぁ何にせよ余計な仕事な事は確かだ。女王陛下に余分な警護は不要だとお伝えしないと。


「では……此方へ」


「はい、メリッサさんっ!」


 当たり前の様に頭を下げるメイドさん達の中を通るメリッサさんのデカいお尻を追って廊下を進んでいく。

 グルグルグルグルと……目が回るくらい色んな廊下を突き進み、漸く辿り着いた扉は……凄く豪華な装飾が施された扉。たぶん……謁見の間かな?

 良く考えれば……カトリーヌ様の城は転移でピョンピョン飛んでたし、余り扉に注目しなかったなぁ。

 ボーッと扉を眺める僕を他所に、メリッサさんは扉を護る様に両脇に立つ、三叉槍を持った兵士に話し掛けている。

 その兵士二人は……二足歩行なんだけど、翼が生えていない。
 有翼族じゃないなら……人魚族なのかな?
 でも、足がなぁ……普通なんだよなぁ……。

 見たい、生足を見たい……けれども鎧が邪魔だ……。


「リュカ様。それでは参りますよ。マルティーナとミアも……覚悟は良いですね?」


「へっ!」


「お、お手柔らかにぃ~……」


「……行きましょうか」


 鼻で笑うティナさんと泣きそうなミアさん。

 ……ティナさんは陛下と仲が良いのか、それとも……龍人らしく傲岸不遜なだけなのか。

 まぁ……それは陛下に会えば分かるか。

 門番さんが開けてくれた、豪華で重そうな扉の先へと歩んで行く。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話

カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます! お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー あらすじ    学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。  ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。  そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。  混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?  これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。 ※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。 割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて! ♡つきの話は性描写ありです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です! どんどん送ってください! 逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。 受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか) 作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!

処理中です...