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第四章 水の国
獰猛猛禽類
しおりを挟む部屋に鐘の音が鳴り響き、間髪入れずに部屋にノックが響く。
……もしかしてずっと部屋の外で待機していたのかな?
「ど、どうぞー!」
鐘の音に負けないくらい声を張り、扉の向こうに居る人に声を届ける。
「失礼致しますリュカ様。御目覚めになられまして何よりで御座います」
扉が開き、入って来たのは……猛禽類を思わせる獰猛な目付きと、薄い茶色の雄々しい羽を備え、モノクルを付けた……少し年増の女性。凛とした鋭い声で……大人の女性感満載。
僕の本能が三十代半ばと伝えてくる。
着ている服は……ありがちなメイド服。くるぶしまでスカートがあるゴシックな雰囲気のやつ。
お乳様も……デカい。乳袋が凄い盛り上がっている。僕も盛り上がってきた。
「は、はい……!素敵なベッドで寝かせて貰えて、とても良く寝れたみたいですっ」
しかし……捕食者と非捕食者を感じさせる雰囲気を出す人で、思わず軽口が出てしまった。
「左様で御座いますか」
僕の軽口も冷たくあしらい、こちらに向かって歩みを進めてくる猛禽姉さん。
怖い……ティナさんとかこの人とか、怖い人ばかりの国なのかな……。
そんな彼女は……僕の前まで来ると、土下座をする様に跪き、頭を床に擦り付け始めた。
「え、ちょ……!!」
「この度は……我がフルグンド王国に属する、マルティーナ、ミアの二名による性的暴行、並びに誘拐……大変、申し訳御座いませんでした!!!」
「え、えぇ!?あ、えぇ!?……ちょっと待って下さい、心の整理をさせて下さい!!」
起き抜けにこんな事言われても……脳内の処理が追い付かない。
しかも、こんな凶暴そうな女性に土下座されても……困る。
まぁとりあえず……国家ぐるみの誘拐では無かったらしいので安心。
エッチな事したせいなのか、二人に対して罪を犯された……そんな意識は無かったので、少し混乱してしまった。
……まぁ普通に犯罪だよね。殴って気絶させられたし。
そう考えるとまともな世界だなぁ。
「えぇっと……まず、その件の二人は何処に……?」
「今は地下牢にて、幽閉しております。現在は詳しい取り調べを行っている最中かと思います」
……え、ちょっと待ってそんな大事なの!?
と、とりあえず……合意の元の行為だって証明しないと……!!二人が裁かれたら……悲しい。それにミアさんはまだ抱いて無いし!!
「今すぐ出して僕の元に連れてきて欲しい……っていうのはダメ、ですかね……?」
僕の言葉に対し、一瞬目を見開くが……直ぐに元に戻る猛禽姉さん。
食われるのかと思った……。
「リュカ様が……それをお望みでしたら」
「それなら、お願いします!後、出来るだけ健全な姿で!!」
「……畏まりました。暫しお待ち下さい」
そう言うと踵を返し、部屋から出る猛禽姉さん。
えぇ……そんなすんなりと……?
僕が男だから……なのかな?こんなに発言力あるのか……?
気になってしまい、彼女が出て行った扉から顔を出し、廊下を眺めると……壁際を埋め尽くす程、ズラッと沢山のメイドさんが並んでいたので……そっと部屋に戻った。
いや、警備厳重過ぎるだろう……!?
シェルター生活思い出すなぁ。
あ、だから部屋に誰も居ないのか……そう納得しつつ、部屋に戻ってベッドに腰掛ける。
最近普通に生きてきたから忘れていたけど、僕って貴重な生命体だったんだよね。
そもそも、僕自身が自分を特別な存在だと思ってはいるけど、敬われるとは思って無いから……少し乖離があるなぁ。
そんな事を思いつつ、心が落ち着かなくて貧乏揺すりをしながら待っていると……暫くして再びノックの音が響く。
「お入りくださーい!」
「失礼致します。お連れしましたリュカ様」
僕の声に反応して扉が開き……先程の猛禽姉さんと、ミアさんとティナさんが部屋に入ってきた。
突然の牢屋入りだったからか、服装は出会った時と変わっていなかったので安心。
ボロ布着せられて手錠とかされていたら罪悪感で死んじゃう所だったね。
「リュ、リュカちゃぁん……!!私、私ぃ……!!」
焦燥しきった顔で、目に涙を浮かべるミアさん……凄く、凄く唆る。
……発情している場合じゃなかった。
「ミアさんすみません……気持ち良すぎて、失神しちゃったみたいで……」
「うぅん。謝るのは私よぉ……!!ごめんねぇ……ごめんねぇ……興奮し過ぎて……我を忘れてしまったのぉ……」
涙を零してへたりこんでしまうミアさんに駆け寄り、そっと肩を抱く。
ティナさんは……後ろで気まずそうに腕を組んでいて、口は閉ざしたまま開こうとしない。
「僕も気持ち良かったし……おあいこですよ。誰も悪くありません。何か理由があって僕を攫ったんでしょう?ちゃんと説明してくれれば……僕は怒りませんから」
「リュ、リュカぢゃぁん!!!優しいのねぇ……こんな良い子攫って……ごめんねぇ……!!」
「よしよし……泣かないで下さい……」
ズピズピと鼻を啜り泣くミアさんを抱き締め、ふと正面を見上げると……猛禽姉さんが目を真っ赤に充血させながら、怒りを顕にしていた。
……見なかった事にしよう。なんであんな顔しているんだろう……ミアさんが羨ましいのかな?
男ってだけでモテモテ……気持ち良い世界だなぁ!!
「その……リュカ……悪ぃな……無理矢理しちまってよぉ……」
僕らの会話が止まったタイミングを見計らって、ティナさんが頭を掻きながら気まずそうに話し掛けてきたので……丁度良いので視線をそちらに向ける。
「いいえ気にしないで下さい。ティナさんも気持ち良かったでしょう?」
「そりゃあな!!過去一の男だった……よ……!!」
ニカッと笑って答えるティナさんだったけど……背後に佇む猛禽類の殺意の波動が強まり、徐々にぎこちなくなって行ってて……ちょっと面白い。
出会い頭に殴られた事の溜飲は下がったかも知れない。
「ははは……まぁ、仲間の安否だけは確認したい所なんですけど……そこの所はどうなんですかね?」
胸元で啜り泣くミアさんに聞いているつもりで話したんだけど……グズグズと鼻水を啜り、僕にしがみつくだけで何も返してくれない。
仕方が無いのでティナさんの顔を見れば、困った顔をしながら話してくれる。
「あー……まぁ、一時的に寝かせてるだけな筈だ。恐らく無事だろうよぉ」
「んん~……連絡取れれば良いんですけどねぇ……」
ぶっちゃけ、今すぐ転移で戻っても良いのだけど……一度体を重ねてしまうと、どうしても気になってしまう質らしくて、このままサヨナラは出来ないんだよねぇ……。
「だよなぁ……。しゃあねぇ、俺様がいっちょ手紙でも運んでやるしかねぇかぁ……」
「……マルティーナ、貴方が行けば混乱は免れないでしょう」
「でもよ……リュカの仲間の顔と、エルフの森の場所がわかってんのは、俺様とミアしか居ねぇだろ?だったら足の早い俺様の方が手っ取り早い」
随分とティナさんが乗り気なのは……贖罪のつもりか……それとも僕と同じで、体を重ねた僕に情が移ったか。
何にせよ、有難い申し出なので乗る事にした。
「それじゃあ……紙とペン、お願いできますか?えぇっと……」
猛禽姉さんに頼もうと思ったけど……名前聞いて無かった事に今気付いた。
「畏まりました。申し遅れましたが私、メリッサと申し上げます。以後、お見知り置きを」
優雅にスカートの裾を持ち上げ……綺麗なカーテシーを見せてくれるメリッサさん。
白く、艶かしいおみ足が……凄く良い。
「ありがとう御座いますメリッサさん。ご存知の通り……僕の名前はリュカと申します。暫くの間、宜しくお願いしますね?」
「はい、リュカ様。それと……私に丁寧な言葉遣いは不要で御座います。どうぞ楽になさって下さいませ」
「これが基本なので、余り気にしないで下さい」
困った様に笑えば、顔を真っ赤に染め上げるメリッサさん……チョロい、いけるわこの人も。抱こう、絶対。
「ん、んんっ!!では、筆記具を御用意させて頂きますので……暫しお待ちを」
バサバサと翼を忙しなく動かしながら部屋から出ていくメリッサさんを見送り……大きなため息を一つ吐いてティナさんが口を開く。
「アイツもだいぶ心が乱れてんなぁ……。男を前にアガりすぎだろうよぉ……」
「最後以外、結構冷静に見えましたけど?」
「いいやそんな事無いね。だってよぉ……この国、もう直ぐ滅ぶんだぜ?だから手紙なんて送ってる暇があったら、リュカを連れて帰る様にする筈だ」
「あの……ティナさんは……どんな所に僕を運んでいるんですか……」
僕の言葉に……再びニカッと笑うティナさん。
「俺様が傍に居りゃ無事さ。心配する事はねぇぜ?」
……貴女、手紙を運びに離脱するんでしょう?
とりあえず、先に詳しい話を聞いてからツッコミを入れよう……。
因みにミアさんはずっと僕の胸元でグズグズと泣いていた。
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