19 / 46
第二章 風の国
事実
しおりを挟む朝からセックスし始めたけど……終わったのは夕方。
水分は補給したが……ご飯は食べないで、ずっと激しいセックス三昧。
何度も狂った様にイきまくるメロディさんに……食い殺されるかと思った。
ご飯を食べなかったのは……ご飯食べてセックスするとお腹痛くなるよねっていう僕の我儘。
そんなこんなで……今はまったりとベッドで並んで寝ている。
「や、やばかった……とんだ拾いもんしたぜ……」
「僕も凄かったです……売春とか忘れちゃいましたもん」
本来の目的を忘れ、すっかりセックス漬けの一日。金云々よりも大事な何かが芽生えた気がする。
……こういう恋愛体質、というか情が湧きやすい性格で売春出来んのか僕……。
「あぁー……そういやそうだったなぁ。幾ら払えば良い?」
「えぇっと……メロディさんからは貰いたく無くなっちゃいました」
「なんじゃそりゃ。それで良いのかよぉ?」
呆れた様に苦笑いするメロディさん。
なんとなく、此処でメロディさんからお金を受け取ってしまうと……体だけの関係で終わってしまうと思うんだ。
それに対して、寂しいと思う僕が居て……つい口走ってしまった。
この世界に結婚なんて無いから、これ以上関係が発展する事は無いんだけどね。それでもなんだか寂しいんだ。
ま、メロディさんからお金を取るのが無理なら……別の人から取れば良いよね。
「思ってたよりメロディさんと相性が良くて……。そうだ!代わりに……一緒にビジネスしません?」
僕の提案に不思議そうな顔をするメロディさん。
「ビジネスって……?」
「メロディさんの知り合いとか同僚とかを連れて来て貰って……メロディさんは仲介料を。僕は売春で代金を貰うんです!」
警邏隊が売春斡旋ってのはどうかと思うけどね。
知り合ってしまったんだから……そして、知ってしまったから。
「とんだ淫乱だなリュカ……」
「はい、ご存知の通りセックス大好きですからっ!」
「それは身をもって知ったよ……」
ヤレヤレ、といった風に首を振り……突然僕の性器を鷲掴みして、人差し指と親指で輪を作る。
そして魔力を込めながら亀頭から根元までゆっくりと輪を通し……何してんだこれ。
「メロディさん……?何を……?」
「何って……スキャンしてんだよ。リュカのチンコがどんくらいデケェかサンプルが必要だろうが」
つまりこれが男根魔法……!?
なるほど……だから玉が無いのか。竿しか輪を通せないから……凄い納得した。
暫く僕の性器をスキャンして、ブツブツとメロディさんが何かを唱えると魔力が霧散していった。
「よっし終わり。そんじゃ……手当り次第声掛けてやるよ」
「という事は一緒にやってくれるんですね!?ありがとうございますメロディさんっ!」
飛びつく様にメロディさんに抱き付けば、優しく頭を撫でられる。
なんだか犬になった様な気持ち……だがそれが良い。
……情が移らない様に目隠ししながらやろう。便器になるんだ僕は……!
その後、話を詰めていき……
隔日朝9時からこの部屋集合という話に。
暫くはメロディさんがついてくるけど、慣れてきたら客だけがくるという形に。
期限は、約一ヶ月。
メロディさんがこの宿の経営者と仲が良いらしく、部屋の確保もお任せした。
警邏隊の仕事は良いのか……と思ったけど、この世界の人達は最低二人以上で仕事をするらしく、ペアの女性に話を付けてなんとかしてくれるみたい。
女性ばかりの社会だからか、妊娠して動けなくなると困るので、普通は二人以上で仕事に当たるらしい。
だからペアの両方が辞める、イーリスとエマは引き継ぎに時間が掛かるのかなぁ。
一人で仕事しているのは、何かしらの理由があるか……若しくは国が貧困だからか、という話になるみたい。
「それじゃ……明後日から宜しくな」
「こちらこそ宜しくお願いしますねっ」
腕枕をされつつ、頭を撫でながら言われ……なんだか愛人契約したみたいになっている。
実際は売春の斡旋……余計質悪いな。
宿+メロディさん+メロディさんの相方にもお金を分配するので……お客は一人当たりの単価は高くなり、僕の手元にくる金額は少なくなるけど……仕方が無い。
薄利多売で巨根リーピーター作戦だ。
目隠し薄情作戦が成功する事を祈るしかない。
話も終わり、気怠げな雰囲気で僕らは服を着て……最後にハグとキスを。
唇を離すと……モジモジと、何かを言いたげな空気を出すメロディさん。
「どうかしました?」
「あ?あぁ~……いや、なんでもねぇ」
ばつが悪い顔をして、歯切れの悪い言い方。
逆転した世界でも……女にこういう顔をさせちゃダメだよね。
僕も同じ気持ちだと思うから……メロディさんの言いたい事は分かっているつもり。
「また、二人っきりでセックスしましょうねメロディさん」
「バッ……!わかってんなら聞くなっ!!」
褐色肌の頬を染め、照れ隠しに僕の背中を叩き、朱に染めようとしてくる。
どうやら合っていたみたいで、僕も嬉しくて……たぶん、顔が赤い。
「それと……俺の事は呼び捨てで良い」
「わ、わかりましたメロディ……!」
「お、おうっ……!」
なんだか無性に照れ臭い雰囲気になってしまい、二人足早に連れ込み宿を出る。
受付で代金を払うメロディさんにお礼を言いつつ外に出てみると……僕らみたいに真っ赤な夕日。
こんな長居するつもりじゃなかった……早く転移で帰らないと……!
「それじゃあメロディ、僕はここで」
「あぁ?……ひょっとして空間魔法使えんのか」
「えぇ。ですから明後日からは部屋の中で待ってますね」
「おう……じゃ、またな」
「はい。また会いましょう」
寂しげなメロディに手を振り、転移でイーリス達の寮に戻る。
───────────────────────
パッと切り替わった視界。
転移した場所はリビング。
真っ先に映った物は……まるで生き物の様に自分の意思で動く、馬の形をした小さな土塊。
……コイツ絶対僕が生み出した土塊だろ。イーリスの仕業かな……?
「お、戻ってたのか。遅かったな、リュカ殿」
イーリスを探そうかと思ったら、キッチンからエプロンを着けたエマが顔を出して挨拶してきた。
良い感じに口調が砕けてきて嬉しい。
「遅くなってすみません。ただいま戻りました。それと……この土塊は……」
「心当たりが?イーリスが自立する珍しい土があると遊んでましたよ。それで……ほら、疲れ果ててベッドに」
優しそうな目でベッドルームに視線を送るエマの視線を追うと、ベッドでスヤスヤと眠るイーリスの姿が。
エマの優しそうな目を見て……二人の仲の良さがわかる。
けれど僕は……彼女たちの事を全然知らないや。
ヤルだけヤッて……体だけの関係。
なんだかこのままじゃいけない気がして、馬の土塊を避けつつキッチンに向かう。
「ん?飯はまだ出来ていないぞ?」
「はい。なんだか……エマ達の話を聞きたくなっちゃって」
「そ、そうか……!料理しながらで良ければ、なんでも聞いてくれっ!」
嬉しさか、恥ずかしさか……笑いながら語気を強く言うエマに微笑みつつ、テーブルに着く。
「それじゃ遠慮無く。まず……お二人は何処で知り合ったんですか?」
「む?私達は同じ病院で……あぁそうか、リュカ殿はシェルター産まれだったな」
「はい、男ですから。だからこの世界の女性達を知らなくて……」
この身体の中の、リュカ君の残滓が偶に物事を教えてくれるけど……出生の話とか、余り重要じゃない話は残っていなかったんだ。
「ならば、まず常識の話からしていこうか。リュカ殿は……女性の妊娠から出産までどれくらいかかると思う?」
「えっ……一年、とかですか?」
「いいや……基本一月だ。魔力量で若干前後するがな」
嘘だろマジで……?そんな早く産まれるの……?
「妊娠するとな……胎内に魔力が吸われ、集中するんだ。それで妊娠を自覚する」
魔力って……凄い。
この世界の根幹じゃないか。不思議パワー……そんなので片付けられる物じゃない。
「ペアの人に警護されつつな、近くの病院で鑑定魔法を受けるんだ。そこで女の子ならばそのまま産み、男の子なら近くのシェルターに連れて行かれる、そんな仕組だ」
「な、なるほど……」
未だに魔力という謎の力に引っ掛かりを覚えていて――
「ん?何か疑問でもあったか?」
――表情を読まれたのか、料理しているエマが此方を振り返り聞いてきた。
「あ、いえ……魔力ってなんだろうって……皆当たり前に使ってますけど、不可思議な力ですよね、これ」
「ん?リュカ殿は……シェルターで習ったんじゃないのか?」
思い出そうと考えても……見つからない知識。
リュカ君……それは残しておいて欲しかった知識だよ……。
そもそも、魔力の知識をそっちの世界に持って行っても……残念ながら地球には魔力無いんだよ……。
「そうか。魔力はな、魔女の呪いに対抗する力……そう言われている」
「えっ……?呪いが発動する前の世界はどうなって……?」
「む……?昔の事だからなぁ……」
唸り、鍋をかき混ぜながら首を捻るエマの背中を見つめる。
普通の世界……だったのか?謎だ……。
というより、魔力の存在が呪いの後だったら……
「それならば、シェルターの存在が間に合わないじゃない……ですか」
「あぁ、その知識も無いのか。シェルターとは……元々は魔物の脅威から身を守る為に、神様に供物を捧げて賜っていたと伝えられているんだ」
元々は魔力じゃない、神様の力……?余計分かんなくなったなぁ。
「……それが魔力のせいで形骸化して、新たに男を守るシェルターになった……」
「うむ」
「供物って何だったのでしょうねぇ……」
「それは――人間だ。今でも、シェルターの力が弱まれば……魔力の多い人間が人柱になる事もある」
ドクンと心臓が跳ね、全身の血が引いていく様な感覚に陥る。
魔力だけじゃなく……人体も必要な程、力を消費しないとシェルターは保てないのか……?
元は神様の力……そう言われればそうだと納得できる。けれど……そんなもの信じたくない。
知り合いが犠牲になった訳じゃないのに……誰かの命の上で成り立っているシェルターという存在に、何とも言えない嫌な気持ちが沸いた。
そして……この世界を歩き回れる男、そんな自分じゃ無きゃ、特別な僕が動かなきゃ……そんな義勇に駆られた。
0
お気に入りに追加
1,804
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる