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しがらみ編
魔術使いたち
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聞いた覚えのある甘ったるい声。
「……パシー嬢、呼んだ覚えはありませんが?」
「呼ばれた覚えはありません事よぉ? でも、私としてはボールを持っている方をお助けして借りをお作りしたくて来たの」
っち、結局、こいつらの罠にまんまとかかってしまったのか。
カヤとアカネを見ると黙ったままパシーの顔を見つめている。
「ッフ、貴様ら魔術使い崩れの力など借りる必要はない」
「あらあら、それをアサインするのは、貴男でなくてよぉ?」
パシーが扇子を掲げると、奥の森から大勢の魔術使い達が出てきた。
そして、EEたちに向けて魔術を使うかのように構えた。
「……どういうつもりですか? パシー・カイロン」
パシーは肩をすくめると
「ギリギリまで悩んだわぁ。だけど、最後に決め手となったのは」
魔術を込めた扇子をクラウスに向けて投げつけた。
クラウスは舌打ちをしながら、跳躍して扇子を避けた。
「私の仲間を傷つけたことよ」
魔術による拘束が解けンドルは地面に突っ伏した。
「……パシーさん……すまねぇ」
「次からは会長代行をつけなさい。ツケは倍払いでよろしく」
パシーはカヤの方に笑顔を向ける。
「それとカヤ『ちゃん』――私も、私の今の生き方、好きなの」
「ふん……ちょっと! パシー! 誰が会長代行ですって!? アタシの代行なんて誰にも務まらないんだから!」
「お兄ちゃんの代行も誰にも務まらないよ。ボクの傍を離れないでね……」
心配そうな目をしたアカネの頭をポンと叩く。
パシーはこちら側についたと解釈して良さそうだ。
だが、人数が拮抗したとはいえまだエアシップがある。
カヤとアカネの魔力が回復しない限りは、ピンチから脱したとは言えない。
「ふぅ、もう少し計算の出来る女性と思っていましたが、頭の中身はカヤ嬢と変わらないのですね。所詮は亜人ですか、良いでしょう、どの道、貴女たち魔術使いも一掃する予定でしたから手間が省けます」
クラウスは魔術使いに砲撃するように合図を送る。
だが、いつまで経っても撃つ気配が無い。
「何をしている! 砲撃しなさい!」
苛立ちを隠さずクラウスはエアシップの方へと向く。
エアシップの甲板に白いスーツの眼鏡の男が立っていた。
「飛ばないエアシップはただの鉄屑と、ある御方が良く言っておられました。まさにその通りで、すんなりと制圧できるものですね」
「カイルさん!」
「シドウさま、ミソノさま、そして杉山さま。お待たせいたしました、助っ人の参上です」
カイルがニコリとほほ笑むと甲板に続々と冒険者たちが現れた。
「ンドルに銀貨……って何だアイツ、伸びてやがるぜ」
「また、会えたわねぇ、坊や」
「ったく、あのガキのどこが良いんだか。ンドル、そいつを……またやられてるよ」
ゴロツキ冒険者たちがこうも頼もしく見えるとは思わなかったな。
エアシップに乗っていたEEが戦闘員というより作業員気味なのは敢えて突っ込まないでおこう。
とは言え奇襲でエアシップを沈黙させたのは大きいようで、俺たちに銃を向けているEE達にも動揺が広がっている。
「クラウス・シュミット、これ以上の争いは無益だ。退散しろ」
俺の言葉に反応したのか、鬼のような形相でクラウスは俺を睨みつけた。
「退散しろですと!? 貴様のような無能な異世界人が私に命令をすると言うのですか? ……ありえない、ありえないんですこんな事! こんな失態がアイスクラ―さまに知られたら」
「アイスクラ―? ピリスのことか?」
クラウスは歯をギリギリ鳴らしながら俺に銃を向けてきた。
「きさまがぁ、アイスクラ―さまのお名前を呼びつけにするなど絶対にありえんのだ!!」
引き金が引かれると同時に、銃そのものが爆散した。
それに連なるかのように、俺たちを囲むEEたちの銃も爆散していった。
「次は、貴様らの頭を吹き飛ばそうと思うけど? 賢明な副会長の言葉に従うか選びなさい」
カヤへの怒りと恐怖なのかクラウスは身体をプルプルと震わせながら俺を睨み続けている。
突然、クラウスの後方で金属が軋む音が鳴り響いた。
「鉄屑にしたよ! まだ飛べると思うけど……次は粉々にするからね」
濡れて捻じれた砲台と魔杖を持つアカネを見て、クラウスは絶望を浮かべた表情をしながら膝から崩れ落ちた。
「……パシー嬢、呼んだ覚えはありませんが?」
「呼ばれた覚えはありません事よぉ? でも、私としてはボールを持っている方をお助けして借りをお作りしたくて来たの」
っち、結局、こいつらの罠にまんまとかかってしまったのか。
カヤとアカネを見ると黙ったままパシーの顔を見つめている。
「ッフ、貴様ら魔術使い崩れの力など借りる必要はない」
「あらあら、それをアサインするのは、貴男でなくてよぉ?」
パシーが扇子を掲げると、奥の森から大勢の魔術使い達が出てきた。
そして、EEたちに向けて魔術を使うかのように構えた。
「……どういうつもりですか? パシー・カイロン」
パシーは肩をすくめると
「ギリギリまで悩んだわぁ。だけど、最後に決め手となったのは」
魔術を込めた扇子をクラウスに向けて投げつけた。
クラウスは舌打ちをしながら、跳躍して扇子を避けた。
「私の仲間を傷つけたことよ」
魔術による拘束が解けンドルは地面に突っ伏した。
「……パシーさん……すまねぇ」
「次からは会長代行をつけなさい。ツケは倍払いでよろしく」
パシーはカヤの方に笑顔を向ける。
「それとカヤ『ちゃん』――私も、私の今の生き方、好きなの」
「ふん……ちょっと! パシー! 誰が会長代行ですって!? アタシの代行なんて誰にも務まらないんだから!」
「お兄ちゃんの代行も誰にも務まらないよ。ボクの傍を離れないでね……」
心配そうな目をしたアカネの頭をポンと叩く。
パシーはこちら側についたと解釈して良さそうだ。
だが、人数が拮抗したとはいえまだエアシップがある。
カヤとアカネの魔力が回復しない限りは、ピンチから脱したとは言えない。
「ふぅ、もう少し計算の出来る女性と思っていましたが、頭の中身はカヤ嬢と変わらないのですね。所詮は亜人ですか、良いでしょう、どの道、貴女たち魔術使いも一掃する予定でしたから手間が省けます」
クラウスは魔術使いに砲撃するように合図を送る。
だが、いつまで経っても撃つ気配が無い。
「何をしている! 砲撃しなさい!」
苛立ちを隠さずクラウスはエアシップの方へと向く。
エアシップの甲板に白いスーツの眼鏡の男が立っていた。
「飛ばないエアシップはただの鉄屑と、ある御方が良く言っておられました。まさにその通りで、すんなりと制圧できるものですね」
「カイルさん!」
「シドウさま、ミソノさま、そして杉山さま。お待たせいたしました、助っ人の参上です」
カイルがニコリとほほ笑むと甲板に続々と冒険者たちが現れた。
「ンドルに銀貨……って何だアイツ、伸びてやがるぜ」
「また、会えたわねぇ、坊や」
「ったく、あのガキのどこが良いんだか。ンドル、そいつを……またやられてるよ」
ゴロツキ冒険者たちがこうも頼もしく見えるとは思わなかったな。
エアシップに乗っていたEEが戦闘員というより作業員気味なのは敢えて突っ込まないでおこう。
とは言え奇襲でエアシップを沈黙させたのは大きいようで、俺たちに銃を向けているEE達にも動揺が広がっている。
「クラウス・シュミット、これ以上の争いは無益だ。退散しろ」
俺の言葉に反応したのか、鬼のような形相でクラウスは俺を睨みつけた。
「退散しろですと!? 貴様のような無能な異世界人が私に命令をすると言うのですか? ……ありえない、ありえないんですこんな事! こんな失態がアイスクラ―さまに知られたら」
「アイスクラ―? ピリスのことか?」
クラウスは歯をギリギリ鳴らしながら俺に銃を向けてきた。
「きさまがぁ、アイスクラ―さまのお名前を呼びつけにするなど絶対にありえんのだ!!」
引き金が引かれると同時に、銃そのものが爆散した。
それに連なるかのように、俺たちを囲むEEたちの銃も爆散していった。
「次は、貴様らの頭を吹き飛ばそうと思うけど? 賢明な副会長の言葉に従うか選びなさい」
カヤへの怒りと恐怖なのかクラウスは身体をプルプルと震わせながら俺を睨み続けている。
突然、クラウスの後方で金属が軋む音が鳴り響いた。
「鉄屑にしたよ! まだ飛べると思うけど……次は粉々にするからね」
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