怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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ドッペルゲンガー 変化

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 その後その日の授業も終え、響香が帰りの支度をしていると淳士の方から声を掛けた。

「響香、今日何か予定ある?」

 予期していなかった淳士からの問い掛けに響香も少し戸惑いながら首を振った。

「えっ、無いよ。どうかした?」

「あ、いや、その、たまには帰り何処か寄らないかなって思って」

 少し照れながらそう言う淳士を見て、響香が破顔する。

「いいよ、たまには私が付き合ってあげよう」

 そう言って響香は元気に立ち上がると寄り添う様に淳士の横に立った。少しはにかみながら二人並んで歩いて行く。

「今日は雄一君良かったの?」

 街中を歩きながら響香が少し口角を上げて問い掛ける。微笑む響香の顔からはやや意地悪な印象も受けた。

「別に毎日一緒じゃなくていいだろ。それに雄一は今日バイトだし」

「ああなるほど。で、私を仕方なく誘った感じ?」

 言葉の端々に棘のような物を感じながら淳士が笑って首を振る。

「違うって。響香と二人で出かけた事ってあまりなかったからたまにはどうかと思って」

「へぇ、まぁいいけどさ」

 淳士の言う通り学校で仲良く話す二人だったが二人っきりで出かけた事はなかった。
 少しぎこちない淳士を嘲笑うかの様に響香が笑顔で明るく語り掛ける。

「ねぇせっかくだからちょっと行きたい所あるんだけどいいかな?」

「ああ勿論いいけど」

 響香は満面の笑みを見せると淳士を引き連れる様に先を歩き出し、街角にある小さな喫茶店へと辿り着いた。

「ここのカップル限定メニューのケーキ食べてみたかったんだよね」

 カップル限定――。

 その響きに淳士も思わず笑みがこぼれる。カップル限定とはいえ、男女のペアなら大丈夫だったが周りからはそう見られるかもと、思っただけで淳士は嬉しくなっていた。

 運ばれてきたケーキを目の前で美味しそうに頬張る響香を見て朗らかな気持ちになっていた時、ふと窓から外に目をやると雄一に似た人物が歩く姿が目に入った。
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