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縛られた想い⑤
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いつの間にか夜の帳は下り、夕方の事故の頃とは打って変わって交差点付近は静まり返っていた。
「詩織は居るんですか?」
俺が問い掛けると、鬼龍さんは笑みを浮かべたままかぶりを振る。
「見当たらないわね。何処かに行ってるのか、ただ単に見えないのか」
「そんな事あるんですか?」
「そんなもんよ霊なんて」
鬼龍さんはあっけらかんとした顔でそう言うと交差点を二度、三度と横断する。そして再び立ち止まると、こちらを振り返った。
「ねぇ詩織ちゃんに呼び掛けてくれない? 気配は感じるの。多分いるんだけど姿を見せてくれないからさ」
「呼び掛けろって言われてもどういう風に?」
呼び掛けろと言われても何をどうすればいいか分からず困惑していた。
「普通に呼び掛けたらいいのよ、付き合ってた頃の様に。そこに詩織ちゃんがいると思ってネックレスの事も含めて話し掛けてみて」
「いやでも、ネックレスも今持ってないんですよ」
「持ってなくてもいいの。その物自体よりも、プレゼントしてくれるその心が嬉しかった筈よ」
そう言われて一瞬悩んだが、俺は素直に詩織に対する想いを話しだす。
「詩織、もしここにいるならもう一度君に会いたい。会ってもう一度話したい。そして謝りたい。あの日、俺がプレゼントを忘れなければあんな事にはならなかったのに。俺のせいで君を死なせてしまった。俺のせいで俺達二人の幸せな時間を終わらせてしまった。俺はあの日からずっと悔やんでいた。あの時、この交差点を通らなければ……」
いつしか目からは涙が溢れ、感情を抑えきれなくなっていた。
すると周りの街灯が突然点滅を始め、信号さえも不安定に点滅を始めた。
そして、それと同時に俺の目の前に詩織が現れた。
俺は突然現れた詩織を目の前にし、驚きを隠せずにいた。
嬉しい感情と驚きの感情が入り混じり、俺が戸惑っていると、目の前に現れた詩織は悲しげな瞳のまま微笑み突然俺に抱きついて来た。
「やっと……やっと会えた。ずっと会いたくて探してたのに」
そう言って抱きつき泣いている詩織を思いっきり抱き締めた。信じられない想いだった。もう会えないと、二度と話せないと思っていた詩織と今こうして抱擁している。
「ごめん、本当にごめん。俺のせいで詩織をこんな目にあわせてしまって」
「謝らないで。私は将平と一緒にいれて幸せだったんだから」
そう言って泣きながら微笑む詩織の頭を俺はそっと撫でた。
「ふふ、間に合って良かったね」
遠巻きに見つめていた鬼龍さんが微笑み呟く。
「鬼龍さんありがとうございました。おかげでこうして詩織にもう一度会えました」
「ふふふ、いいわよ別に。良かったわ貴方が怨霊になる前になんとかなって」
そう言って満面の笑みを見せる鬼龍さんを見て俺は首を傾げた。鬼龍さんは今貴方がと言った? どういう事だ? 俺は抱き締めていた詩織を見つめる。
「将平思い出して、あの日の事」
そう言われて俺はゆっくりと思い出す。あの日俺は詩織と二人で家に向かっていた時にトラックに撥ねられて、そして……俺は死んだ。
詩織も死んだと知り、死なせてしまった事を謝りたくてずっと悔やんでいた。悔やんでも悔やみきれないまま時は過ぎ、俺は何時しか自分が死んだ事も忘れ、気が付くと因縁のあの交差点に立っていた。
「貴方は悔いて思い悩むあまり、気付かないうちに地縛霊となり怨霊への道を歩み始めていた」
「それを鬼龍さんが救ってくれたんですね」
「ふふふ、これ以上あそこで事故起こされたらたまらないからね」
そう言って笑顔を見せる鬼龍さんを見て、俺は深々と頭を下げた。初めの頃に見せていた哀しい眼をした笑顔は、死んだ事に気付かず怨霊になろうとしていた俺に対する哀れみや悲しみがあったからかもしれない。最後に鬼龍さんが見せてくれた笑顔は屈託のない、明るい笑顔だった。
「本当にありがとうございました」
そう告げて、俺と詩織は二人で旅立って行った。
「詩織は居るんですか?」
俺が問い掛けると、鬼龍さんは笑みを浮かべたままかぶりを振る。
「見当たらないわね。何処かに行ってるのか、ただ単に見えないのか」
「そんな事あるんですか?」
「そんなもんよ霊なんて」
鬼龍さんはあっけらかんとした顔でそう言うと交差点を二度、三度と横断する。そして再び立ち止まると、こちらを振り返った。
「ねぇ詩織ちゃんに呼び掛けてくれない? 気配は感じるの。多分いるんだけど姿を見せてくれないからさ」
「呼び掛けろって言われてもどういう風に?」
呼び掛けろと言われても何をどうすればいいか分からず困惑していた。
「普通に呼び掛けたらいいのよ、付き合ってた頃の様に。そこに詩織ちゃんがいると思ってネックレスの事も含めて話し掛けてみて」
「いやでも、ネックレスも今持ってないんですよ」
「持ってなくてもいいの。その物自体よりも、プレゼントしてくれるその心が嬉しかった筈よ」
そう言われて一瞬悩んだが、俺は素直に詩織に対する想いを話しだす。
「詩織、もしここにいるならもう一度君に会いたい。会ってもう一度話したい。そして謝りたい。あの日、俺がプレゼントを忘れなければあんな事にはならなかったのに。俺のせいで君を死なせてしまった。俺のせいで俺達二人の幸せな時間を終わらせてしまった。俺はあの日からずっと悔やんでいた。あの時、この交差点を通らなければ……」
いつしか目からは涙が溢れ、感情を抑えきれなくなっていた。
すると周りの街灯が突然点滅を始め、信号さえも不安定に点滅を始めた。
そして、それと同時に俺の目の前に詩織が現れた。
俺は突然現れた詩織を目の前にし、驚きを隠せずにいた。
嬉しい感情と驚きの感情が入り混じり、俺が戸惑っていると、目の前に現れた詩織は悲しげな瞳のまま微笑み突然俺に抱きついて来た。
「やっと……やっと会えた。ずっと会いたくて探してたのに」
そう言って抱きつき泣いている詩織を思いっきり抱き締めた。信じられない想いだった。もう会えないと、二度と話せないと思っていた詩織と今こうして抱擁している。
「ごめん、本当にごめん。俺のせいで詩織をこんな目にあわせてしまって」
「謝らないで。私は将平と一緒にいれて幸せだったんだから」
そう言って泣きながら微笑む詩織の頭を俺はそっと撫でた。
「ふふ、間に合って良かったね」
遠巻きに見つめていた鬼龍さんが微笑み呟く。
「鬼龍さんありがとうございました。おかげでこうして詩織にもう一度会えました」
「ふふふ、いいわよ別に。良かったわ貴方が怨霊になる前になんとかなって」
そう言って満面の笑みを見せる鬼龍さんを見て俺は首を傾げた。鬼龍さんは今貴方がと言った? どういう事だ? 俺は抱き締めていた詩織を見つめる。
「将平思い出して、あの日の事」
そう言われて俺はゆっくりと思い出す。あの日俺は詩織と二人で家に向かっていた時にトラックに撥ねられて、そして……俺は死んだ。
詩織も死んだと知り、死なせてしまった事を謝りたくてずっと悔やんでいた。悔やんでも悔やみきれないまま時は過ぎ、俺は何時しか自分が死んだ事も忘れ、気が付くと因縁のあの交差点に立っていた。
「貴方は悔いて思い悩むあまり、気付かないうちに地縛霊となり怨霊への道を歩み始めていた」
「それを鬼龍さんが救ってくれたんですね」
「ふふふ、これ以上あそこで事故起こされたらたまらないからね」
そう言って笑顔を見せる鬼龍さんを見て、俺は深々と頭を下げた。初めの頃に見せていた哀しい眼をした笑顔は、死んだ事に気付かず怨霊になろうとしていた俺に対する哀れみや悲しみがあったからかもしれない。最後に鬼龍さんが見せてくれた笑顔は屈託のない、明るい笑顔だった。
「本当にありがとうございました」
そう告げて、俺と詩織は二人で旅立って行った。
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