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あの日のかくれんぼ D団地の噂②
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「その中学生ってその団地で行方不明になったの?」
「その団地でかはわからないみたいだけど、最後に見かけられたのがその団地周辺なんだって。何年か前にニュースにもなってた筈よ、知らないの? 確かまだ見つかってないんじゃなかったかな?」
「そっか、まだ見つかってないんだ」
恵美が腕を組みながら考え込んでいると麻莉が覗き込むようにして話しかけてきた。
「来栖さん。貴女がどうするかは知らないけど私はその団地に近付くつもりはないからね。流石にいわくが多過ぎる。先生や警察には藍がその団地に興味を持っていたとは伝えたし、私はもうこれ以上その団地には関わらないから」
念を押すように言ってくる麻莉に対して、恵美は出来る限りの笑顔で応えた。
「ええ、今話をしてくれただけで十分よ、ありがとう。じゃあ最後のお願いとして、私があの団地について調べてたって事は内緒にしといてくれない? とりあえず今日のお礼として喫茶店の分は奢っとくから」
そう言って恵美が伝票を片手に立ち上がると麻莉は静かに笑みを見せ頷いた。麻莉と別れた恵美は喫茶店を出ると一人になってゆっくりと考える。団地が廃墟となる原因となったと言われる鳴り続ける電話や、亡くなった希ちゃんが出ると言われるひとりかくれんぼ。それに女子中学生の行方不明の話まで。
『どれにしてもここで考えたって答えは出ないか』
そう思った恵美は左手首に付けている時計に目をやる。麻莉と長く話していたせいもあって既に時刻は十七時を回っていた。時期を考えれば日が落ちるまではまだ時間はあるが、これから支度してO市に向かえば、ちょうどO市に着く頃には日が傾き始める頃かもしれない。そうなると、どんどん暗くなって行く中、団地内を捜索する事になってしまう。心情的にも暗くなって来る中、一人でいわく付きの団地内に侵入するのは勘弁願いたかった。
「流石にキツいな……」
ぽつりと呟いた恵美だったが、その反面、麗の安否も気になる為、一刻も早く捜索に行きたい気持ちもある。暫く一人で悩んだ恵美だったがゆっくりとO市に向かって歩み始める。まだ気持ちの整理はついていない。だが悩んでいる時間が勿体なかった。
駅に着くとタイミング良くO市方面へ行く電車が入って来る。余りにも良すぎるタイミングに、早くO市に行けと、促されている様な気さえしてしまう。恵美は電車に乗ると、二人掛けの座席に腰を下ろした。
恵美はおもむろにスマートフォンを取り出すと麗に送ったメッセージを確認する。やはり未だに既読にはなっていなかった。小さくため息をつき、窓の外に目をやったその時だった。突然、恵美のスマートフォンが鳴り響く。慌てて画面を見ると『着信 麗』の文字が目に飛び込んで来た。
「麗!!」
恵美は思わず叫ぶと電話に出る。
「麗!! 何処にいるの? 麗!?」
驚き、何度も呼び掛ける恵美だったが、スマートフォン越しに繋がっている向こうから返答が返ってくる事は無かった。
それどころか、スマートフォンから聞こえて来たのは寧ろ声なのか雑音なのかさえ分からない、何かくぐもった音が聞こえて来るだけだった。
「な、何?」
その不気味さに恵美は思わずスマートフォンを隣の空いた席に放り出し、嫌悪感をあらわにする。隣の席に放り出されたスマートフォンの画面には『通話中』の文字があり、通話時間だけがこくこくと刻まれていた。
気味が悪くなった恵美は通話を切ろうとスマートフォンに手を伸ばしたその時、突然伸ばした右手を掴まれた。
「きゃああ!」
恵美が思わず叫び、自らの手を掴んでいるその先に目をやると、中年の女性が恵美を睨んでいた。
突然の出来事に恵美は事態を飲み込めず硬直していると、その中年女性は恵美の手を掴んだまま静かな口調で語り出す。
「貴女、ここは電車よ。公共の場で大声で騒ぐなんて非常識にも程があるんじゃない?」
女性に注意され、恵美もようやく周りから寄せられる冷ややかな視線に気が付いた。恵美は女性の手を振り払うとスマートフォンを拾いあげる。
「すいませんでした」
俯き、小声で謝罪を口にすると、いたたまれなくなり立ち上がって車両を移動する。
二つ先の車両に移動した恵美は空いていた窓際の席に腰を下ろすと窓の外を見つめた。窓の外では夕日に照らされた街並みが過ぎ去って行く。
親友が行方不明になり心配していたらその親友から電話が掛かって来た。驚き、慌てて電話に出ると相手は無言で周りは嫌悪に満ちた視線を向けて来る。公共の場での通話が非常識な事は分かっている。だがそれでも……。
「私にだって事情があるのに」
恵美はそう呟き唇を噛んだ。周りでは不可解な事象が続き、過去のトラウマとも向き合わなければならない恵美の心は確実にすり減らされていた。
「その団地でかはわからないみたいだけど、最後に見かけられたのがその団地周辺なんだって。何年か前にニュースにもなってた筈よ、知らないの? 確かまだ見つかってないんじゃなかったかな?」
「そっか、まだ見つかってないんだ」
恵美が腕を組みながら考え込んでいると麻莉が覗き込むようにして話しかけてきた。
「来栖さん。貴女がどうするかは知らないけど私はその団地に近付くつもりはないからね。流石にいわくが多過ぎる。先生や警察には藍がその団地に興味を持っていたとは伝えたし、私はもうこれ以上その団地には関わらないから」
念を押すように言ってくる麻莉に対して、恵美は出来る限りの笑顔で応えた。
「ええ、今話をしてくれただけで十分よ、ありがとう。じゃあ最後のお願いとして、私があの団地について調べてたって事は内緒にしといてくれない? とりあえず今日のお礼として喫茶店の分は奢っとくから」
そう言って恵美が伝票を片手に立ち上がると麻莉は静かに笑みを見せ頷いた。麻莉と別れた恵美は喫茶店を出ると一人になってゆっくりと考える。団地が廃墟となる原因となったと言われる鳴り続ける電話や、亡くなった希ちゃんが出ると言われるひとりかくれんぼ。それに女子中学生の行方不明の話まで。
『どれにしてもここで考えたって答えは出ないか』
そう思った恵美は左手首に付けている時計に目をやる。麻莉と長く話していたせいもあって既に時刻は十七時を回っていた。時期を考えれば日が落ちるまではまだ時間はあるが、これから支度してO市に向かえば、ちょうどO市に着く頃には日が傾き始める頃かもしれない。そうなると、どんどん暗くなって行く中、団地内を捜索する事になってしまう。心情的にも暗くなって来る中、一人でいわく付きの団地内に侵入するのは勘弁願いたかった。
「流石にキツいな……」
ぽつりと呟いた恵美だったが、その反面、麗の安否も気になる為、一刻も早く捜索に行きたい気持ちもある。暫く一人で悩んだ恵美だったがゆっくりとO市に向かって歩み始める。まだ気持ちの整理はついていない。だが悩んでいる時間が勿体なかった。
駅に着くとタイミング良くO市方面へ行く電車が入って来る。余りにも良すぎるタイミングに、早くO市に行けと、促されている様な気さえしてしまう。恵美は電車に乗ると、二人掛けの座席に腰を下ろした。
恵美はおもむろにスマートフォンを取り出すと麗に送ったメッセージを確認する。やはり未だに既読にはなっていなかった。小さくため息をつき、窓の外に目をやったその時だった。突然、恵美のスマートフォンが鳴り響く。慌てて画面を見ると『着信 麗』の文字が目に飛び込んで来た。
「麗!!」
恵美は思わず叫ぶと電話に出る。
「麗!! 何処にいるの? 麗!?」
驚き、何度も呼び掛ける恵美だったが、スマートフォン越しに繋がっている向こうから返答が返ってくる事は無かった。
それどころか、スマートフォンから聞こえて来たのは寧ろ声なのか雑音なのかさえ分からない、何かくぐもった音が聞こえて来るだけだった。
「な、何?」
その不気味さに恵美は思わずスマートフォンを隣の空いた席に放り出し、嫌悪感をあらわにする。隣の席に放り出されたスマートフォンの画面には『通話中』の文字があり、通話時間だけがこくこくと刻まれていた。
気味が悪くなった恵美は通話を切ろうとスマートフォンに手を伸ばしたその時、突然伸ばした右手を掴まれた。
「きゃああ!」
恵美が思わず叫び、自らの手を掴んでいるその先に目をやると、中年の女性が恵美を睨んでいた。
突然の出来事に恵美は事態を飲み込めず硬直していると、その中年女性は恵美の手を掴んだまま静かな口調で語り出す。
「貴女、ここは電車よ。公共の場で大声で騒ぐなんて非常識にも程があるんじゃない?」
女性に注意され、恵美もようやく周りから寄せられる冷ややかな視線に気が付いた。恵美は女性の手を振り払うとスマートフォンを拾いあげる。
「すいませんでした」
俯き、小声で謝罪を口にすると、いたたまれなくなり立ち上がって車両を移動する。
二つ先の車両に移動した恵美は空いていた窓際の席に腰を下ろすと窓の外を見つめた。窓の外では夕日に照らされた街並みが過ぎ去って行く。
親友が行方不明になり心配していたらその親友から電話が掛かって来た。驚き、慌てて電話に出ると相手は無言で周りは嫌悪に満ちた視線を向けて来る。公共の場での通話が非常識な事は分かっている。だがそれでも……。
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