怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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神社②

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 神社についての噂をインターネットで調べてみたがやはり情報は少なかった。
 少ない情報とクラスメイト達が話していた事を元に整理してみると街の外れにある森の中にその神社はある事になる。
 時計に目をやると夜の八時を回った辺り。少し悩んだが気分転換も兼ねて行ってみる事にする。

「あら、姫こんな時間からお出かけ?」

「うん、勉強ばっかりで疲れたからちょっと散歩に」

 母親がキョトンとした顔で声を掛けてきたので何食わぬ顔で私は答えた。
 何時しか家族に対してまで私は仮面を着けるようになっていたのだ。
 これは私に『姫華』なんて似つかわしくない名前をつけた親に対して、ちょっとした反抗だったのかもしれない。ひとまず私の事を『姫』なんて呼ぶのは辞めてほしい。

 自宅を出た私は自転車のペダルを必死にこぎながら街の外れにある森を目指した。
 こんな時間にジャージ姿の地味な女子高生が自転車をシャカリキこいでるのを周りから見たら滑稽に映るかもしれない。そんな事を考えながら尚も必死に自転車を飛ばして行くと十分程で目的の森に辿り着く。

 私は基本、お化けだなんだという非科学的な事は信用していない。だが人気の無い夜の森を前にすると不気味さを感じるのは間違い無く、これはお化け等を信じる信じないに関係無く人間の本能なんだろう。

 私は森の手前で少し戸惑った後、森の中へと踏み出して行った。

 木々が生い茂る夜の森を一人どんどん進んで行く。森の奥まで少し進むと生い茂る木々に遮られ、月明かりさえ届かなくなってくる。
 私は小さなペンライトしか持って来なかった事を激しく後悔しつつも、仕方なく更に奥へと足を踏み入れて行った。

『この森ってこんなに広かったっけ?』

 そんな事を考えていた時古ぼけた朱色の鳥居に辿り着いた。

「こ、これか……」

 思わず一人呟く。
 私はそのまま鳥居をくぐり奥へと進んで行くとお賽銭箱とやや荒廃した本殿が目に入った。その瞬間、私の足が止まる。神社まで来て私は何を願う? そもそも私は一体何をしているんだろうか? ここまで来て何故か現実的な事を考えてしまう。

 しかしここまで来た道のりを考えると何もせずに帰るのも馬鹿らしい。私はポケットにあった百円玉をお賽銭箱に投げ入れた。

(カコーン、コーン、コン……)

 静寂の中、百円玉が落ちていく音だけが辺りに響き渡る。

 私が願い事をし、手を合わせ一礼した時、少し温い風が吹き抜けた様な気がした。
 私は少し驚き、その場からそそくさと逃げる様に退散する。再び鳥居をくぐり暗い森の中を一人歩いているとさすがに心細くなる。もしこんな状況で変質者なんかに出くわしたら、私は格好の獲物になってしまう……いや、寧ろこんな暗い森の中から私が現れたら相手の方が悲鳴をあげて逃げ出す可能性の方があるかもしれない。
 まぁどちらにしてもご勘弁願いたい話ではある。

 そんな事を考えながら真っ暗な森の中を足早に歩いていると、思いのほか早くに森を抜ける事が出来た。

『帰りはやっぱり早く感じるものね』

 そう思い私は再び自転車に跨り帰路へとついた。
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