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N.G400年 ルカニード王国での出会い
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――N.G四百年(現代)
ルカニード王国。そこは世界連合には属さず、中立の立場を崩さない独立した国家である。
絶対王政の国でありながら現国王は卓越した政治手腕と柔軟な思考を併せ持ち、国民からは絶大な支持を得ていた。
独自で開発した強力な軍事力を有しており、セントラルボーデン国家を始め、世界連合各国から連合への参加を打診されるが『我々はいかなる権力にも属さない中立国家である』とし固辞し続けている。
自国と陸続きのセントラルボーデンとラフィン共和国が三年前戦争になった際も国境付近に軍を配備し
『無断で我が国に侵入した者はどの国であっても、いかなる理由があろうと排除する』
とし強気な姿勢は崩さず、また何があろうと戦闘に介入する事はなかった。
そんなセントラルボーデン国家の北側に位置する中立国ルカニード王国には陸路で行く方法もあるが、セントラルボーデンから伸びている高速鉄道で行くのが一般的ではあった。セシルは高速鉄道で数時間揺られた後、巨大なターミナル駅に降り立つ。
『初めて来たけど流石に中心都市は賑わってそう。とりあえず到着ロビーで待ってればいいのよね? それにしても格好ミスったかな……』
今現在七月だがセントラルボーデンより北側という事もあり少しは暑さもマシかと考えていたセシルに容赦なく日射しが照りつける。
右腕のギブスはなんとか取れたものの、未だに包帯は巻かれており、それを隠す為に薄手ではあるが上着を羽織っていたのだ。
額にじわりと滲む汗をハンドタオルで拭いながら到着ロビーにたどり着くとすぐに一人の男性が歩み寄って来た。
「あのすいません。セシルさんで間違いないですか?」
「あ、はい。フェリクスさんですね?」
フェリクスと呼ばれた男性は細身の体躯ではあるが180cmはありそうな高身長で150cm台前半のセシルは少し見上げて話す。
「ははは、想像以上に高いね」
「セシルさんは逆に思ったより小柄ですね。横にいて圧迫感とかないですか?」
セシルが笑いながら話し掛けると、フェリクスは愛想笑いとも取れるような笑みを浮かべセシルに問い掛ける。
「ふふ、セシルでいいって言わなかった? それによそよそしい敬語も無しで」
「はは、まぁ初対面の挨拶ぐらいは礼儀という事で。さぁとりあえず行こうか」
そう言ってフェリクスがエスコートするように出口の方へ手を広げ指し示すと、二人並んで歩いて行く。
話は数日前に遡る。
ミア・シュタットの元を訪れた次の日、セシルはリオから聞いていたアドレスにメールを送っていた。
『お久しぶりです。セシル・ローリエです。今長期休暇中なので先日のお話、今のうちならと思ったのですがどうしますか?』
すぐには返信は来ないだろうと思い部屋のベッドで横になっていると思いの外すぐに返信が来た。
『お久しぶり。体は大丈夫かな? 無理なお願い聞いてくれてありがとう。本人には話通してあるから直接やり取りしてくれる? 彼の名はフェリクス・シーガー』
そうやって名前だけ教えられ、後はフェリクスと直接やり取りをし、お互いの都合を合わせて五日後が良さそうだという事になり今日を迎える事となったのだ。
「どうしようか? お腹減ってたりする? お昼まだなら軽く食事でも?」
時刻は十三時を回った頃。セシルもまだお昼は食べておらず丁度良い申し出に笑顔で頷いていた。
近くにあったレストランに二人で入ると店内は案内を待つ客も数組見受けられる。料理を運ぶ店員達も慌ただしく行き交いさながら戦場の様な雰囲気を醸し出していた。
「只今店内混み合ってましてお待ち頂きますがよろしいですか?」
店内入口で圧倒され苦笑いを浮かべるフェリクス達に女性店員が笑顔で問い掛けた。
「あ、いや予約していたフェリクス・シーガーですが待った方がいいですか?」
「すいません。ご予約のお客様ですね。確認して来ます。少々お待ち下さい」
フェリクスが予約している旨を伝えると女性店員は丁寧に頭を下げ奥へと消えて行った。
「予約しといてくれたんだ?」
「到着が昼頃って言ってたから一応ね。何が好みかわからないから色々あるレストランがいいかなって。それに、まぁお腹減ってなくても到着してすぐなら少しぐらいゆっくりして話せた方がいいかなと」
そう言って照れた様に笑うフェリクスを見て、セシルは少し感心していた。
『塞ぎ込んでるって聞いてたけど全然社交的ね。それに計画もちゃんと考えてくれてるし。私が知ってる塞ぎ込んでる奴よりもよっぽどちゃんとしてるじゃん』
良い意味で予想と違ったフェリクスを見て何時しかセシルの表情もほころんでいた。
ルカニード王国。そこは世界連合には属さず、中立の立場を崩さない独立した国家である。
絶対王政の国でありながら現国王は卓越した政治手腕と柔軟な思考を併せ持ち、国民からは絶大な支持を得ていた。
独自で開発した強力な軍事力を有しており、セントラルボーデン国家を始め、世界連合各国から連合への参加を打診されるが『我々はいかなる権力にも属さない中立国家である』とし固辞し続けている。
自国と陸続きのセントラルボーデンとラフィン共和国が三年前戦争になった際も国境付近に軍を配備し
『無断で我が国に侵入した者はどの国であっても、いかなる理由があろうと排除する』
とし強気な姿勢は崩さず、また何があろうと戦闘に介入する事はなかった。
そんなセントラルボーデン国家の北側に位置する中立国ルカニード王国には陸路で行く方法もあるが、セントラルボーデンから伸びている高速鉄道で行くのが一般的ではあった。セシルは高速鉄道で数時間揺られた後、巨大なターミナル駅に降り立つ。
『初めて来たけど流石に中心都市は賑わってそう。とりあえず到着ロビーで待ってればいいのよね? それにしても格好ミスったかな……』
今現在七月だがセントラルボーデンより北側という事もあり少しは暑さもマシかと考えていたセシルに容赦なく日射しが照りつける。
右腕のギブスはなんとか取れたものの、未だに包帯は巻かれており、それを隠す為に薄手ではあるが上着を羽織っていたのだ。
額にじわりと滲む汗をハンドタオルで拭いながら到着ロビーにたどり着くとすぐに一人の男性が歩み寄って来た。
「あのすいません。セシルさんで間違いないですか?」
「あ、はい。フェリクスさんですね?」
フェリクスと呼ばれた男性は細身の体躯ではあるが180cmはありそうな高身長で150cm台前半のセシルは少し見上げて話す。
「ははは、想像以上に高いね」
「セシルさんは逆に思ったより小柄ですね。横にいて圧迫感とかないですか?」
セシルが笑いながら話し掛けると、フェリクスは愛想笑いとも取れるような笑みを浮かべセシルに問い掛ける。
「ふふ、セシルでいいって言わなかった? それによそよそしい敬語も無しで」
「はは、まぁ初対面の挨拶ぐらいは礼儀という事で。さぁとりあえず行こうか」
そう言ってフェリクスがエスコートするように出口の方へ手を広げ指し示すと、二人並んで歩いて行く。
話は数日前に遡る。
ミア・シュタットの元を訪れた次の日、セシルはリオから聞いていたアドレスにメールを送っていた。
『お久しぶりです。セシル・ローリエです。今長期休暇中なので先日のお話、今のうちならと思ったのですがどうしますか?』
すぐには返信は来ないだろうと思い部屋のベッドで横になっていると思いの外すぐに返信が来た。
『お久しぶり。体は大丈夫かな? 無理なお願い聞いてくれてありがとう。本人には話通してあるから直接やり取りしてくれる? 彼の名はフェリクス・シーガー』
そうやって名前だけ教えられ、後はフェリクスと直接やり取りをし、お互いの都合を合わせて五日後が良さそうだという事になり今日を迎える事となったのだ。
「どうしようか? お腹減ってたりする? お昼まだなら軽く食事でも?」
時刻は十三時を回った頃。セシルもまだお昼は食べておらず丁度良い申し出に笑顔で頷いていた。
近くにあったレストランに二人で入ると店内は案内を待つ客も数組見受けられる。料理を運ぶ店員達も慌ただしく行き交いさながら戦場の様な雰囲気を醸し出していた。
「只今店内混み合ってましてお待ち頂きますがよろしいですか?」
店内入口で圧倒され苦笑いを浮かべるフェリクス達に女性店員が笑顔で問い掛けた。
「あ、いや予約していたフェリクス・シーガーですが待った方がいいですか?」
「すいません。ご予約のお客様ですね。確認して来ます。少々お待ち下さい」
フェリクスが予約している旨を伝えると女性店員は丁寧に頭を下げ奥へと消えて行った。
「予約しといてくれたんだ?」
「到着が昼頃って言ってたから一応ね。何が好みかわからないから色々あるレストランがいいかなって。それに、まぁお腹減ってなくても到着してすぐなら少しぐらいゆっくりして話せた方がいいかなと」
そう言って照れた様に笑うフェリクスを見て、セシルは少し感心していた。
『塞ぎ込んでるって聞いてたけど全然社交的ね。それに計画もちゃんと考えてくれてるし。私が知ってる塞ぎ込んでる奴よりもよっぽどちゃんとしてるじゃん』
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