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N.G397年 ラフィン戦争⑤
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「……ん、う~ん、え? ここ何処?」
落下してきて暫くするとクリスティーナも目覚める。
目を覚ますと見た事もない場所な為クリスティーナは少し戸惑っているようだ。
「ようやくお目覚めか? ここが何処かは俺もわからんが地下である事は確かだ」
「……あらそんな顔してたのね。それはそうと私なんで縛られてるの? 貴方の趣味? 私そういう趣味ないんだけど」
ひとまず面の部分を外して焚き火にあたっていたザクスにクリスティーナが問い掛ける。クリスティーナの言う通り彼女の手足は紐で拘束され、自由が奪われているような状態だった。
「お前が目覚めてすぐ暴れださないようにだよ。暴れないなら拘束は解く」
「暴れないわよ。何? 人を獣みたいに言って。それとお前とか言わないで。そういう言い方嫌いなの」
少し呆れる様に言ったザクスにクリスティーナが睨みながら言い返していた。二人の言い争う様な声だけが地下空間で反響する。
「悪かった。とりあえず……君の拘束を解く」
「……ひとまずクリスでいいわよ。もう殺し合いする雰囲気でもなくなったわね。さてどうする?」
とりあえずいがみ合っても仕方ないというのは二人の認識として確認出来たが見渡す限り脱出する手立てが見つからなかった。
「あそこから落ちてきたの? そりゃ気も失うか……!? 私が湖に落ちた後、ひょっとして貴方が引き上げてくれたの?」
クリスが自分達が落ちてきた遥か上にある穴を見つめていると、ふと気付いたように問い掛けてくる。
「そうだ。どれだけ待っても浮上して来ないから潜ったら沈んで行く君を見つけたんだ」
「へぇ、ありがとう。一応お礼ぐらいは言っとくわ」
「とりあえず煙草吸っていいか?」
「どうぞお好きに。これだけ広い空間なら気にもならないし」
火にあたりながら濡れた体を乾かし、ザクスは煙草をふかしていた。暫くして二人は歩き回って出口を探すがやはり見つからず元いた焚き火の場所まで戻って来た。
「どうすんのこれ? 出口は遥か上空。通信機は全く繋がらない。八方塞がりね」
「君の仲間のスナイパー。あの子鷹の目じゃないのか? 上手くこちらを見つけてくれないかな?」
「よくリオが鷹の目って気付いたわね? あの子どうかな? ずっとこっちを見ててくれてたら気付くかもしれないけど……まぁ暫く待つしかないわね」
ザクスはある程度の距離があるにも関わらず正確な狙撃をしてきた事からスナイパーは鷹の目を持っているのではないかと当たりをつけていた。見事それは的中した訳だが、結局一時間程経っても救助がくる様子は見られなかった。
「さてと、相変わらず救助が来る気配は無い訳だが、俺の部下も見捨てるとは思えないし必死になって探してくれてはいるんだろうが、この地下空間を見つけられるかどうかだな」
「あの子も探してくれてるんだろうけど……ねぇ、貴方この戦争どう思ってるの?」
座りながら上を見上げてザクスがため息をついているとクリスが唐突にザクスを見つめ問い掛ける。
突然の予期せぬ質問に驚いたザクスだったが一呼吸置いて改めて考えてみる。
始めこそ世界連合に対する不満や憤りが大きかったのは確かだ。しかし見方を変えればラフィン共和国がしている事も許される事ではないだろう。
「難しい質問だな。一兵士が何言った所で現状何も変わらないんだが……強いて言うなら部下や仲間を死なせない為に戦っている感じかな」
「なるほどね。私は貴方達から居場所を守る為に戦ってるんだけど……たまにわからなくなるのよ。何の為に戦っているのか」
敵同士が隣に座り互いの戦う理由を語る。実に不思議な光景ではあったが、皮肉にもこれが自分自身を見つめ直す契機にもなった。
ザクスがクリスに問われた事を改めて考えながら煙草をふかしていると突然上から声を掛けられる。
「姉さーん! 大丈夫かー?」
「リオ? 助かった。リオ早く引き上げて!!」
リオが鷹の目でクリス達を見つけたのだ。しかし事は簡単には運びそうになかった。
「姉さん。皆、作戦があるからとか言って行っちまったんだ。今は私しかいないんだけど、どうしたらいい?」
地上で明るく叫ぶリオとは正反対に地下で二人は頭を抱えた。発見された事は確かに素晴らしい。しかしリオ一人来た所で事態が好転するとも考えられない。
「リオって言うんだな? 近くに俺の仲間がいるはずだ。事情を説明して早く救助を……」
「ふざけるな!! 私は姉さんを助けに来たんだ! お前を助けるつもりなんかないからな! 勝手に命令するな!!」
ザクスが横から入り指示を出そうとしたがリオは激しく反発し、敵意をむき出しにしていた。
「くっ……じゃあ命令じゃなくて、頼むから俺の仲間を探して……」
「ほほう、頼みか? あの黒い死神が私に頼むんだ? しかし人に頼み事をするならしっかりと態度で示してもらわないとなぁ」
苦虫を噛み潰したような顔をしてザクスが下手に出ると、リオは勝ち誇ったような笑みを浮かべてさらなる要求をザクスに求めようとしていた。しかし見かねたクリスがリオの言動を窘める。
「リオいい加減にして! 私はここから早く出たいの。ザクス大佐の部隊を見つけて早くここに連れて来て。話はそれからよ」
クリスに一喝されたリオは即座に「了解!」と言い残しその場を後にした。
「ごめんね。一応謝っとくわ。なんていうか、問題児なの」
「そうみたいだな。なぁに気にしてないさ」
そう言うザクスは引きつった笑顔を見せながら拳を握り締めていた。
落下してきて暫くするとクリスティーナも目覚める。
目を覚ますと見た事もない場所な為クリスティーナは少し戸惑っているようだ。
「ようやくお目覚めか? ここが何処かは俺もわからんが地下である事は確かだ」
「……あらそんな顔してたのね。それはそうと私なんで縛られてるの? 貴方の趣味? 私そういう趣味ないんだけど」
ひとまず面の部分を外して焚き火にあたっていたザクスにクリスティーナが問い掛ける。クリスティーナの言う通り彼女の手足は紐で拘束され、自由が奪われているような状態だった。
「お前が目覚めてすぐ暴れださないようにだよ。暴れないなら拘束は解く」
「暴れないわよ。何? 人を獣みたいに言って。それとお前とか言わないで。そういう言い方嫌いなの」
少し呆れる様に言ったザクスにクリスティーナが睨みながら言い返していた。二人の言い争う様な声だけが地下空間で反響する。
「悪かった。とりあえず……君の拘束を解く」
「……ひとまずクリスでいいわよ。もう殺し合いする雰囲気でもなくなったわね。さてどうする?」
とりあえずいがみ合っても仕方ないというのは二人の認識として確認出来たが見渡す限り脱出する手立てが見つからなかった。
「あそこから落ちてきたの? そりゃ気も失うか……!? 私が湖に落ちた後、ひょっとして貴方が引き上げてくれたの?」
クリスが自分達が落ちてきた遥か上にある穴を見つめていると、ふと気付いたように問い掛けてくる。
「そうだ。どれだけ待っても浮上して来ないから潜ったら沈んで行く君を見つけたんだ」
「へぇ、ありがとう。一応お礼ぐらいは言っとくわ」
「とりあえず煙草吸っていいか?」
「どうぞお好きに。これだけ広い空間なら気にもならないし」
火にあたりながら濡れた体を乾かし、ザクスは煙草をふかしていた。暫くして二人は歩き回って出口を探すがやはり見つからず元いた焚き火の場所まで戻って来た。
「どうすんのこれ? 出口は遥か上空。通信機は全く繋がらない。八方塞がりね」
「君の仲間のスナイパー。あの子鷹の目じゃないのか? 上手くこちらを見つけてくれないかな?」
「よくリオが鷹の目って気付いたわね? あの子どうかな? ずっとこっちを見ててくれてたら気付くかもしれないけど……まぁ暫く待つしかないわね」
ザクスはある程度の距離があるにも関わらず正確な狙撃をしてきた事からスナイパーは鷹の目を持っているのではないかと当たりをつけていた。見事それは的中した訳だが、結局一時間程経っても救助がくる様子は見られなかった。
「さてと、相変わらず救助が来る気配は無い訳だが、俺の部下も見捨てるとは思えないし必死になって探してくれてはいるんだろうが、この地下空間を見つけられるかどうかだな」
「あの子も探してくれてるんだろうけど……ねぇ、貴方この戦争どう思ってるの?」
座りながら上を見上げてザクスがため息をついているとクリスが唐突にザクスを見つめ問い掛ける。
突然の予期せぬ質問に驚いたザクスだったが一呼吸置いて改めて考えてみる。
始めこそ世界連合に対する不満や憤りが大きかったのは確かだ。しかし見方を変えればラフィン共和国がしている事も許される事ではないだろう。
「難しい質問だな。一兵士が何言った所で現状何も変わらないんだが……強いて言うなら部下や仲間を死なせない為に戦っている感じかな」
「なるほどね。私は貴方達から居場所を守る為に戦ってるんだけど……たまにわからなくなるのよ。何の為に戦っているのか」
敵同士が隣に座り互いの戦う理由を語る。実に不思議な光景ではあったが、皮肉にもこれが自分自身を見つめ直す契機にもなった。
ザクスがクリスに問われた事を改めて考えながら煙草をふかしていると突然上から声を掛けられる。
「姉さーん! 大丈夫かー?」
「リオ? 助かった。リオ早く引き上げて!!」
リオが鷹の目でクリス達を見つけたのだ。しかし事は簡単には運びそうになかった。
「姉さん。皆、作戦があるからとか言って行っちまったんだ。今は私しかいないんだけど、どうしたらいい?」
地上で明るく叫ぶリオとは正反対に地下で二人は頭を抱えた。発見された事は確かに素晴らしい。しかしリオ一人来た所で事態が好転するとも考えられない。
「リオって言うんだな? 近くに俺の仲間がいるはずだ。事情を説明して早く救助を……」
「ふざけるな!! 私は姉さんを助けに来たんだ! お前を助けるつもりなんかないからな! 勝手に命令するな!!」
ザクスが横から入り指示を出そうとしたがリオは激しく反発し、敵意をむき出しにしていた。
「くっ……じゃあ命令じゃなくて、頼むから俺の仲間を探して……」
「ほほう、頼みか? あの黒い死神が私に頼むんだ? しかし人に頼み事をするならしっかりと態度で示してもらわないとなぁ」
苦虫を噛み潰したような顔をしてザクスが下手に出ると、リオは勝ち誇ったような笑みを浮かべてさらなる要求をザクスに求めようとしていた。しかし見かねたクリスがリオの言動を窘める。
「リオいい加減にして! 私はここから早く出たいの。ザクス大佐の部隊を見つけて早くここに連れて来て。話はそれからよ」
クリスに一喝されたリオは即座に「了解!」と言い残しその場を後にした。
「ごめんね。一応謝っとくわ。なんていうか、問題児なの」
「そうみたいだな。なぁに気にしてないさ」
そう言うザクスは引きつった笑顔を見せながら拳を握り締めていた。
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