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二人の行方②
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幸太が喫煙所から戻ると皆、談笑を交えながら片付けを進めていた。
「あ、俺も手伝いますよ」
素早く幸太が駆け寄るが、楓がそんな幸太を制した。
「幸太君いいよ。臨時で入ってくれただけで助かったから。叶ちゃんももう上がっていいよ。幸太君と用事あるんでしょ?」
叶の方を向き楓がにこやかに問い掛けると、叶は眉根を寄せて少し申し訳なさそうに会釈する。
「すいません、大丈夫ですか?」
「いいわよあと二時間もすれば終わるんだし、もうあれ以上のピークは来ないでしょう」
そう言って笑みを見せる楓に叶があらためて頭を下げると一旦奥のバックヤードへと姿を消した。
「すいません、ありがとうございます」
幸太もあらためて楓に礼を言うと楓は何も言わずウインクして笑みを浮かべる。
幸太は空いた席に腰掛け思いを巡らせる。思えば数週間前の自分は不安でいっぱいだった。唯とはまだ付き合っていたが唯は明らかに不満そうにしている事も増え、事ある毎にくだらない事で喧嘩になり、それが別れ話に進展する事も多々あった。
その度に幸太が謝り事なきを得ていたが、内心幸太はいつ本当の別れが来るのかとびくびくしていたのだ。
そして先日、唯に別れを切り出され別れる事となった。その時はこの世の終わりかの如く落ち込み、二度と人を好きになる事はないと思っていた。
それがまさにどん底にいた時に偶然叶と出会い、そしていつの間にか気が付けば心奪われていた。
「……現金なやつだよな」
幸太が自嘲気味に呟き笑うと、いつの間にか傍らに立っていた叶が不思議そうに首を傾げる。
「誰の事言ってるの?まさか私?」
「いやいや、そんなまさか。そんな訳ないじゃないですか……情けないくせにすぐに浮かれる奴の事です」
「誰よ?余計に気になるじゃん」
「まぁいいじゃないですか。さぁ行きましょう」
幸太が元気よく立ち上がると、叶も少し呆れた様な笑みを見せながら横について行く。
「すいません、お先に失礼します」
二人でそう言って頭を下げると海の家を後にした。
「さぁどうします?何食べたいですか?」
横を歩く叶に笑顔で尋ねると叶は一瞬真顔になったがすぐにいつもの様に笑みを見せる。
「そうだな、何も食べてないからお腹減ったんだけど、それで君はいつまで私に敬語使うわけ?」
思わぬ質問に幸太も一瞬言葉に詰まってしまう。
「はは、いや、なんかつい。普通に話してもいいんだろうけど……」
「そりゃ私の方が一つ上だし知り合って間もないかもしれないけど……なんか距離感じちゃうな」
そう言って儚い笑みを浮かべた叶を見て、幸太は思わず息を飲んだ。
『叶さん、その笑顔は反則です』
そう思った反面、自分の言動を深く反省した。相手に好きだと伝えたくせに自分の方から壁を作ろうとしていたなんて。相手からしたらどういうつもりなのかと呆れられても仕方ないかもしれないと。
「あ、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど馴れ馴れしくされるのも嫌かなって思って」
「ふふふ、そっか……じゃあ私だけだったんだね幸太君と仲良くなれたと思ってたのは。私の方こそごめんね、馴れ馴れしくしちゃって」
そう言って深々と頭を下げるとあからさまに叶は距離を取った。
「いや、ちょっと、ごめんて。ねぇ叶さん」
慌てて駆け寄る幸太を見て、叶は満面の笑みを見せた。
「ふふふ、とりあえずご飯行こ。朝から私ほとんど何も食べてないからお腹減っちゃった」
そう言って幸太の左隣に立つと叶は軽く腕を組んできた。思わず驚く幸太だったがそのまますまし顔で歩いて行く。
「ふふ、暑苦しい?」
「まさか。全然大丈夫」
汗ばむ左腕に幸せを感じながら二人並んで歩いて行く。
「あ、俺も手伝いますよ」
素早く幸太が駆け寄るが、楓がそんな幸太を制した。
「幸太君いいよ。臨時で入ってくれただけで助かったから。叶ちゃんももう上がっていいよ。幸太君と用事あるんでしょ?」
叶の方を向き楓がにこやかに問い掛けると、叶は眉根を寄せて少し申し訳なさそうに会釈する。
「すいません、大丈夫ですか?」
「いいわよあと二時間もすれば終わるんだし、もうあれ以上のピークは来ないでしょう」
そう言って笑みを見せる楓に叶があらためて頭を下げると一旦奥のバックヤードへと姿を消した。
「すいません、ありがとうございます」
幸太もあらためて楓に礼を言うと楓は何も言わずウインクして笑みを浮かべる。
幸太は空いた席に腰掛け思いを巡らせる。思えば数週間前の自分は不安でいっぱいだった。唯とはまだ付き合っていたが唯は明らかに不満そうにしている事も増え、事ある毎にくだらない事で喧嘩になり、それが別れ話に進展する事も多々あった。
その度に幸太が謝り事なきを得ていたが、内心幸太はいつ本当の別れが来るのかとびくびくしていたのだ。
そして先日、唯に別れを切り出され別れる事となった。その時はこの世の終わりかの如く落ち込み、二度と人を好きになる事はないと思っていた。
それがまさにどん底にいた時に偶然叶と出会い、そしていつの間にか気が付けば心奪われていた。
「……現金なやつだよな」
幸太が自嘲気味に呟き笑うと、いつの間にか傍らに立っていた叶が不思議そうに首を傾げる。
「誰の事言ってるの?まさか私?」
「いやいや、そんなまさか。そんな訳ないじゃないですか……情けないくせにすぐに浮かれる奴の事です」
「誰よ?余計に気になるじゃん」
「まぁいいじゃないですか。さぁ行きましょう」
幸太が元気よく立ち上がると、叶も少し呆れた様な笑みを見せながら横について行く。
「すいません、お先に失礼します」
二人でそう言って頭を下げると海の家を後にした。
「さぁどうします?何食べたいですか?」
横を歩く叶に笑顔で尋ねると叶は一瞬真顔になったがすぐにいつもの様に笑みを見せる。
「そうだな、何も食べてないからお腹減ったんだけど、それで君はいつまで私に敬語使うわけ?」
思わぬ質問に幸太も一瞬言葉に詰まってしまう。
「はは、いや、なんかつい。普通に話してもいいんだろうけど……」
「そりゃ私の方が一つ上だし知り合って間もないかもしれないけど……なんか距離感じちゃうな」
そう言って儚い笑みを浮かべた叶を見て、幸太は思わず息を飲んだ。
『叶さん、その笑顔は反則です』
そう思った反面、自分の言動を深く反省した。相手に好きだと伝えたくせに自分の方から壁を作ろうとしていたなんて。相手からしたらどういうつもりなのかと呆れられても仕方ないかもしれないと。
「あ、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど馴れ馴れしくされるのも嫌かなって思って」
「ふふふ、そっか……じゃあ私だけだったんだね幸太君と仲良くなれたと思ってたのは。私の方こそごめんね、馴れ馴れしくしちゃって」
そう言って深々と頭を下げるとあからさまに叶は距離を取った。
「いや、ちょっと、ごめんて。ねぇ叶さん」
慌てて駆け寄る幸太を見て、叶は満面の笑みを見せた。
「ふふふ、とりあえずご飯行こ。朝から私ほとんど何も食べてないからお腹減っちゃった」
そう言って幸太の左隣に立つと叶は軽く腕を組んできた。思わず驚く幸太だったがそのまますまし顔で歩いて行く。
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「まさか。全然大丈夫」
汗ばむ左腕に幸せを感じながら二人並んで歩いて行く。
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