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苦悩④
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「実は私、オカルトに興味があってね。倉井君から海女の話は聞いたんだけど、二人は何か知ってる事ないかな?」
叶の予想外の質問に二人は再び顔を見合わせた。叶が何故旧校舎に行ったのか疑問に思っていた二人だったが、叶からの質問を受け、なんとなくそれは理解した。
「オカルトですか……海女の話、幸太君からはどんな風に聞いてます?」
眉根を寄せて、少し困った様に咲良が尋ねると叶は思い出しながらゆっくりと答える。海女の基本的な話、それに実際サーフィンをしていた男性が行方不明になって、海女の話が急速に広まって行った話まで。
そこまで聞いて咲良は頷きながら少し身を乗り出した。
「叶さん、少しいいですか?」
普段から素直に多彩な表情を見せる咲良が真剣な表情を見せると、叶も静かに息を呑む。
「この街、ご覧の通り海水浴関係の観光が盛んです。そういう観光収入で生計を立てている人もいっぱいいますし、楓さんの海の家もそうです。楓さんの海の家も元々は楓さんの親戚の方が経営していたらしいんですよ。その当時楓さんはただのバイトだったそうなんですけどね。
ただそのサーファーの人が行方不明になって海女の話が広まると『幽霊が出る海』『女の祟りがある海』とか言う噂が広まって海水浴客が激減したらしいんです。
そうなると海水浴客をあてにしている人達は大打撃であの海の家も廃業するって話になったらしいんですけどね、楓さんが『私が跡を継いでやっていきたい』って言って引き継いだらしいんですよ。
初めはかなり苦労したみたいなんですけど、なんとか楓さんが頑張って耐えて、徐々に海水浴客も戻って来て、今に至るみたいなんですよ。だから私達の前ならまだいいですけど、楓さんの前や海の家では海女の話とか、心霊系の話はやめて下さいね。お願いします」
真剣な表情のまま咲良が頭を下げると叶も静かに頷いていた。
その後、三人は他愛もない事で笑いながら賑やかで楽しい時間を過ごして行く。
「ふふふ、本当に楽しかった。いつの間にかこんな時間ね。私が年長者なんだから払おうか?」
時計の針は既に零時を指し、日付は変わっていた。叶が腕時計に目をやりながら問い掛けたが、弘人と咲良は大きく首を横に振る。
「いえいえ、私達の方から誘ったんだし、何より今日は叶さんの歓迎会ですよ。だから今日は私達が払います」
そう言って咲良が制するので、叶はそれ以上何も言わず、手にしていた財布を再び鞄に戻す。
「今日はありがとう。本当に楽しかったわ、ご馳走様」
「いえ、私達も叶さんとお話出来て楽しかったです。あの、また今度は幸太君も呼んで四人で飲みたいんですけど」
店を出た所で挨拶を交わす叶に咲良が少し遠慮がちに問い掛けると、叶は満面の笑みを見せる。
「ええ、倉井君がいいって言うなら是非そうしましょ。じゃあ私は向こうなんだけど、お二人は?」
叶が指をさしながら尋ねると二人は顔を見合わせた。弘人と咲良が帰る方向は叶がさす方向とは逆だったのだ。
「あっ、私達は地元だし叶さん送りますよ。それに私達は二人ですし」
「ふふっ、その感じだと方向が違うんでしょ?いいわよ、一人で帰れるから。いつまでも二人の邪魔はしたくないし」
そう言って叶は踵を返し、さっさと歩き出すと、咲良が慌てて声を掛ける。
「あっ、あの、叶さん。本当に送りますから」
「大丈夫だって。もう変な動画撮影者について行ったりしないからさ。じゃあね、おやすみ」
少し悪戯っぽく舌を出し、手を振りながら叶は去って行った。弘人と咲良は仕方なく見送ると、振り返り帰路に着く。
「大丈夫かな?叶さん」
「うん。でもあれ以上言っても逆に迷惑かもしれないしな」
二人は叶の事を気にかけながらゆっくりと歩いて行った。
「ふぅ、久しぶりに楽しかったな」
部屋に帰って来るなりソファに身を投げ出して叶が呟く。
「……はは、何楽しんでるんだろ私?……まぁ今だけ……倉井君の怪我が治って、解決するまでよね」
静かな部屋に叶の呟きだけが響いた。
叶の予想外の質問に二人は再び顔を見合わせた。叶が何故旧校舎に行ったのか疑問に思っていた二人だったが、叶からの質問を受け、なんとなくそれは理解した。
「オカルトですか……海女の話、幸太君からはどんな風に聞いてます?」
眉根を寄せて、少し困った様に咲良が尋ねると叶は思い出しながらゆっくりと答える。海女の基本的な話、それに実際サーフィンをしていた男性が行方不明になって、海女の話が急速に広まって行った話まで。
そこまで聞いて咲良は頷きながら少し身を乗り出した。
「叶さん、少しいいですか?」
普段から素直に多彩な表情を見せる咲良が真剣な表情を見せると、叶も静かに息を呑む。
「この街、ご覧の通り海水浴関係の観光が盛んです。そういう観光収入で生計を立てている人もいっぱいいますし、楓さんの海の家もそうです。楓さんの海の家も元々は楓さんの親戚の方が経営していたらしいんですよ。その当時楓さんはただのバイトだったそうなんですけどね。
ただそのサーファーの人が行方不明になって海女の話が広まると『幽霊が出る海』『女の祟りがある海』とか言う噂が広まって海水浴客が激減したらしいんです。
そうなると海水浴客をあてにしている人達は大打撃であの海の家も廃業するって話になったらしいんですけどね、楓さんが『私が跡を継いでやっていきたい』って言って引き継いだらしいんですよ。
初めはかなり苦労したみたいなんですけど、なんとか楓さんが頑張って耐えて、徐々に海水浴客も戻って来て、今に至るみたいなんですよ。だから私達の前ならまだいいですけど、楓さんの前や海の家では海女の話とか、心霊系の話はやめて下さいね。お願いします」
真剣な表情のまま咲良が頭を下げると叶も静かに頷いていた。
その後、三人は他愛もない事で笑いながら賑やかで楽しい時間を過ごして行く。
「ふふふ、本当に楽しかった。いつの間にかこんな時間ね。私が年長者なんだから払おうか?」
時計の針は既に零時を指し、日付は変わっていた。叶が腕時計に目をやりながら問い掛けたが、弘人と咲良は大きく首を横に振る。
「いえいえ、私達の方から誘ったんだし、何より今日は叶さんの歓迎会ですよ。だから今日は私達が払います」
そう言って咲良が制するので、叶はそれ以上何も言わず、手にしていた財布を再び鞄に戻す。
「今日はありがとう。本当に楽しかったわ、ご馳走様」
「いえ、私達も叶さんとお話出来て楽しかったです。あの、また今度は幸太君も呼んで四人で飲みたいんですけど」
店を出た所で挨拶を交わす叶に咲良が少し遠慮がちに問い掛けると、叶は満面の笑みを見せる。
「ええ、倉井君がいいって言うなら是非そうしましょ。じゃあ私は向こうなんだけど、お二人は?」
叶が指をさしながら尋ねると二人は顔を見合わせた。弘人と咲良が帰る方向は叶がさす方向とは逆だったのだ。
「あっ、私達は地元だし叶さん送りますよ。それに私達は二人ですし」
「ふふっ、その感じだと方向が違うんでしょ?いいわよ、一人で帰れるから。いつまでも二人の邪魔はしたくないし」
そう言って叶は踵を返し、さっさと歩き出すと、咲良が慌てて声を掛ける。
「あっ、あの、叶さん。本当に送りますから」
「大丈夫だって。もう変な動画撮影者について行ったりしないからさ。じゃあね、おやすみ」
少し悪戯っぽく舌を出し、手を振りながら叶は去って行った。弘人と咲良は仕方なく見送ると、振り返り帰路に着く。
「大丈夫かな?叶さん」
「うん。でもあれ以上言っても逆に迷惑かもしれないしな」
二人は叶の事を気にかけながらゆっくりと歩いて行った。
「ふぅ、久しぶりに楽しかったな」
部屋に帰って来るなりソファに身を投げ出して叶が呟く。
「……はは、何楽しんでるんだろ私?……まぁ今だけ……倉井君の怪我が治って、解決するまでよね」
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